Wind Climbing [
心ここにあらずに講習を受けて、すぐに仲間の姿を探した。
角を曲がったところで遠くの方に見慣れた後姿を見つけて、呼びかけようとした。
だけど声が出る前に、クラピカが頭を下げたものだから、引っ込んでしまった。
その視線の先は、ネテロ会長。
「お付き合い頂き、誠に感謝致します」
「いいんじゃよ。あの子がきた時点ですぐに引いて欲しかったがね」
一体何の話なのか解らなかったのはオレだけじゃないみたいだった。
「何の事だったんだ?」
オレが近づいて声を掛ける前にレオリオがそう聞いた。
「何って………私たちがキルアの不合格にクレームをつけた際の話だが?」
「それで何で今のやりとりになんだよ」
オレもレオリオと同意見だったけど、クラピカはすごく驚いたみたいだった。
「は………?お前、まさかあの頭の悪いやりとり、本気で言っていたのか?」
その言葉に今度はレオリオが驚いた。
「へ?当然だろ。本気でなけりゃ何だっていうんだよ?」
「………………呆れた。自分の合格がかかっているとゆうのに。その人の良さは尊敬に値するな。」
「だから、どういう意味だよ!」
クラピカは、目を伏せて視線を逸らしたようだった。
「どうして君たちは、そんなにたやすく手をさし伸ばす事ができるのか」
全面的に向こうを向いてしまった表情はオレからは読み取れない。
「私には、出来ない。 私は旅団を追うのに精一杯で、最優先事項なんだ。」
それでも何かを押し殺したような声はかろうじて聞き取れた。
「ゴンはいつも私の期待通りか、それ以上の結果を出してくるから。
彼に任せればいい。私はゴンが起きるまでの間あの男の足止めさえ出来れば良かったんだ」
あの男とはキルアの兄の事だろうか。
「……もし、ゴンが間に合わなかったらどうするつもりだったんだよ」
「かえって好都合だ。そうなれば、遠慮なく見捨てる事ができる」
え…………?
「何だよそれっ。見捨てたかったような言い方しやがって!」
「私はっ!!」
声を荒げたレオリオにつられたように、クラピカは一言だけ怒鳴った。
「…………私は旅団を追わなければならない。ほかの事に割く時間などありはしない。
だから、見捨てなければならない。見捨てたい。見捨てたいんだ!ゴンも……キルアも。」
「お前…………」
「話すのじゃなかった。近づかなければ良かった。そうすればこんなに気にかかりもしなかったのに」
始めの印象の通り、遠くから見ているだけなら放っておけたのに。
「それでも、それだけなら諦めたよ。そんな余裕は無い。無茶な事だ」
とりまく環境が強大すぎる。本願と違うところであまりにも無謀な真似はしたくないのに、と告げる。
「なのに、ゴンなら成し遂げると思ってる。根拠も無く信じてる。……いいや、私の期待を一度たりとも破ったことが無いことこそがその根拠か。私は未だ、…………裏切られていない。」
クラピカが今までどうやって生きてきたのか、その一端を垣間見せている。
「だからまた信じてしまう。ゴンならやれる。キルアを助けられると」
オレは、信頼されてる。だから、
「見守りたい、力になりたい。見たいんだ、どこまでやれるのか」
こたえなければ、いけない。
「だから、私も行く。もしも、一度でもゴンが私の期待にかなわなければ、それで見捨てる。置いて行く。私は私の道を進むことにする」
「クラピカ………おい、それは……」
「勝手だよ、本当に勝手だ」
レオリオが何か言いかけたけど、クラピカは首を振って遮った。
「だけど、それでも…………それでもいいと言ってくれるのならば―――――――」
クラピカは、ゆっくりとオレの方に振り向いた。
「私も……………………」
こちらに向かって伸ばされる手。
「私も、仲間に……入れてもらえるだろうか」
友達になりたいと言ったキルアも、こんな目をしていたのだろうか。
こんな不安そうにに揺れる目を。
仲間だと思ってた。
友達だと思ってた。
ずっと、そう思っていたのに。
オレの何が、不安にさせたんだろう。
何が、信じさせなかったんだろう。
何が、そんなにも苦しめた?
どうして、気付かなかった?
結局オレの思い込みでしかなかったの?
拳を握る。
………………だったら。
思い込みじゃあ無くすだけだ。
今度こそ、認めさせる。
二度と不安にならないくらい。
だから
だからオレは、駆け出した。
オレに伸ばされた手をとるために。
今、伸ばされているクラピカの手を。
そして、きっと待ってるキルアの手を。
今度はオレから手を伸ばすために。
私のゴンの位置付け話。短くまとまって良かった。
ゴンが信じて欲しいところと、クラピカ達が信じる部分は別のもの。
次でキリのいいところまで終わるかもう1つ入るかは未定。
考えて無い訳ではなく、どのネタを採用しようか迷い中。
どう考ええも全部入れる訳にはいかないからなぁ。