十字架の指し示す場所


降り注ぐ雪の中、一人の女性が歩いていた。

金色の髪に、雪のような白い肌。

青く輝く瞳は大陸ラキの人間である事を示している。

茶色のコートに身を包み、白のマフラーといった出で立ち。

常に極寒の寒さにさらされているこの大陸の人間にとって、この服装は普通の格好だ。

だが、何処にでもいるようなこの少女の耳には、誰もが目を見張るものがつけられていた。

そう・・・。


『十字架の耳飾り』


それを見る人間によって歓迎する存在か、それとも恐怖の存在へと変わる物。

世界中の人間が知っている伝説の人物『マリアヴェール』の裁きの道具として使われたのが、この世界の十字架である。

しかし、どのように十字架を使って人を裁いたのかは誰も知らなかった。


キィーン・・・


スピーカーの雑音のような、超音波の様な音がその十字架から聞こえたような気がした。

隣に人がいたとしてもおそらく誰も気が付かないだろう。

ただ一人、その女性だけが聞こえるその音。

彼女は意識していない。だが、無意識のうちに足が動く。

ザクッ、ザクッ。

膝近くまで積もっている雪は、彼女の歩みを遅くするものだった。

だが、その女性は顔色一つ、息切れ一つ起こさずに進んでいる。


キィィィーン・・・


進む距離に従って『音』は徐々に大きくなっているようだった。

その視界には一つの町が見えて来ている。

彼女は一人、つぶやいた。




「私はこの十字架の奴隷のように生きるのか。」と・・・。