プロローグ




僕は勘違いをしていたのかもしれない。


大陸最強の騎士団『イオ』に入ることで僕も・・・


僕も、最強の騎士になれるものだと思っていた。



この国の誇る騎士団、イオは常に勝利しかもたらさなかった。


戦争では全戦全勝!!


たった数人で、何百人という数の敵部隊にも匹敵する力。


この国の人間なら誰もが憧れ、騎士団に入りたいと希望を持った。


騎士団は国の・・・英雄だった。


だが、現実はどうだろう?


僕が騎士団に入って感じたことは?


僕は騎士団に入って何をしただろうか?


理解していなかったんだ。戦争という物の真実を。


英雄の持つ・・・恐怖、そして・・・闇。


僕の夢は全て狂ってしまった。




なぜ?




この戦争のせいだろうか?




いや、騎士団に憧れ、騎士になりたいと思った時からだろうか?




それとも・・・初めて人を、生身の人間を斬ってしまった時からだろうか?




・・・そうだ。



僕が初めて人を斬った日。


僕が・・・人を殺した日。


あの日の夜の、暗く重たい夢はもう思い出したくない。


永遠に続くかと思ったあの・・・悪夢。


今まで知るはずも無かった恐怖を。 そして、心の・・・闇を。




僕は知ってしまったんだ。




あの時。




あの場所で・・・。





国の為に、人々の為に、騎士になることの重さ、騎士であることの重さ。


国の英雄であるが故に背負ってしまった宿命。


心の闇。


僕は何も知らなかった。


何度も何度も嫌になる位、みんなが教えてくれていたはずなのに・・・。






何も知らなかった。






そう、何も知らなかった。






次第に遠くなる意識の中で、僕は・・・・・・。