記事一覧

神社姫の森感想

えー、かな~り辛口になるのでこの作者さんのファンの方は読まないでください。
ファンじゃないけどこの作品を読んで面白いと思った方、個人の感想ですので、こいつはセンスも読解力もないなあと思ってスルーしてください。

ゴジラ云々の辺りはすごく面白く読んでました。
戦後も少し進んだ時代背景と、借り物ではなく作者本人の妖怪論みたいなのも見えて、すごいなと。
この時点ではそこまでに読んだ薔薇十字叢書シリーズ中一番ハイレベルで面白いと思ってました。
が、後は目眩坂を転がり落ちるが如くです。

まず榎さんの口調と、そのしゃべる内容に違和感が募るばかり。
榎さんはべつに何でもかんでもいつでも四六時中「!」が文尾に付くしゃべり方をしてるわけじゃないですよ。
読んでるだけでうるさくなってくる。
それに、自分が見えているものを、京極堂がそう言うのだから「記憶なのだろう?」とか言っちゃうのがまるで別人。
あいつはいくら言っても理解しないんだと本編で京極堂は言ってたし、その体質を自覚的にいわば武器として探偵作法に用いているという様子もないのに。

それから共時性云々のくだり。
くだりというか、なんかもう半分以上そんなこと言ってた印象。
同じ語彙と内容の繰り返しが延々続いてたように感じられた。
言霊とか呪という言葉の使い方も何か違わない? 少なくとも京極先生とは違ってないかな?
どちらもただの言葉遊びにしか感じられなかったんだけど。
こじつけにしか思えないというか。

そのうち読むのが苦痛になってきました。
特に憑物落とし? の場面では、これ単に作者が自分の知識を全部披瀝したいだけじゃないの? と感じてしまって。
京極先生の本編のうんちくだって、本当にどこまで必要なのかどうか分からないし内容を全部理解できるかと言ったらできてないんだけど、それでも初めて姑獲鳥を読んだときからそうなんだけど、なぜか飽きずに読んじゃうんだよね。
その辺はもう力量の違いが歴然。
ただの知識の羅列に見えてしまったのよね。
共時性だのなんだのって、漫画の『鬼灯の冷徹』23巻「ぐるっと回ってホルスの目」で言ってることと同じな気がするんだけど。神様のニアミスってやつね。

榎さんに関してもう1点。これだけは受け入れられない。
あのね、榎さんに視えるのは視覚的記憶だけ。脳内妄想は見えない。
それを、妄想も実際に見た記憶かのように記憶してしまう「久保」の特殊能力なんて反則。
なぜ榎さんにそれが視えるのかという京極堂の説明には一応筋は通っているけど、こっちは説得力と根拠がない。
そんなルール違反の後出しジャンケン駄目。

とにかく詰め込みすぎ。
姑獲鳥から邪魅まで全部の要素を詰め込みたかったんだろうけど、無理だと思うの。
最後のほう、若干『書楼弔堂』風味も入ってたしね。
せめて実在の人物を登場させるのは谷崎か大水木かどちらかで良かった。

ところで今泉くんて誰がモデルなんだろ。戦国武将の女体化って、私その手の話は好きじゃないから分からないわ。
そこだけちょっと気にはなるかな。