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ジュリエット・ゲェム感想

これは神社姫と打って変わってストレスフリーというか、その分軽いのだけれど。
タイトルに妖怪や化け物(この辺の使い方については京極先生の『妖怪の理妖怪の檻』の中で考察されているような厳密なものではありません)を付けてないのがいいですね。
敦ちゃんの少女時代にどろどろした事件を持ち込まなかったのは正解かと。
かといって『百鬼夜行』隠と陽みたいなのも難しいだろうし。
いわば普通の少女小説なので物足りないと感じる向きもあるかもしれないけど、私は神社姫を読んだ後だったから、口の中でほの甘くさらさらとほどける可愛らしい和三盆の干菓子みたいでほっとしました。
こっくりさんの件はもうちょっと深掘りしてほしかったような気もするけど。

登場人物のすべてがあの戦争を生き抜いたとするのはご都合主義かもしれないけど、せめて万里さんはあれだけ大騒ぎさせたのだから、若い頃の一時の熱にしないで、戦後その彼と結ばれてほしい。
ひさ実はなかなかいいキャラなので、雑誌記者になった敦ちゃんに情報提供して助けるポジションで、大人になったこの少女たちの話を読んでみたいな。

榎さんの登場はわずかながら違和感もなく、むしろその役割をしっかり果たしていたと思う。