チャリンコ



少年Uは新しい自転車に乗って走っていた
特に用事があるというわけでもなかったが
いつもの見なれた道を
ただ前へとひたすらにペダルをこぎ続けた


たいした距離もない、家の周りの道なので
すぐに家の前にたどり着いてしまうのだが
それでも少年Uは家に帰ろうとはしなかった・・・



つい先日まで、子供用自転車から補助輪を
外した状態で乗っていたのだが
ついに、大きい自転車を親から買い与えられたのだ!


そう、少年Uは嬉しかったのである


今まで乗っていた小さい自転車でも
兄貴や友達と一緒に、ある程度遠くまでは行ったことがあった


しかし、今度からは
小さい自転車だから子供だと思われたり
一こぎで進む距離が短いために、必然的に
置いてきぼりをくらうということもなくなるのだ


前の自転車には付いてなかった鍵も
今度のやつにはちゃんと付いている
もう見知らぬ誰かに盗まれる心配もない



少年Uは喜びを噛み締めながら走った!
周りの景色も、まるで初めて通る道のように
新鮮に流れているように見え
数日前よりはるかに大人になった気分だった


「これならいける!」


少年Uは、自転車をこぐスピードを上げた!
周りには歩行者の姿も、車も見当たらない
突き当たりのT字路までにはまだかなりの距離がある

「今までの自転車では出せなかったスピードに挑戦したい!」

その気持ちが、少年Uのペダルをこぐ足を突き動かしたのだ



少年Uは、T字路に向かって突き進んだ
今まで出したことのないスピードで
開放感溢れる、心地よい風を感じながら
喜びに震える気持ちを鎮めるように体全体でこぎ続けた


しかし、少年Uは忘れていた・・・




















キイィィィ〜〜〜〜

数時間前までの雨で、路面がかなり濡れていたことを・・・















ガサガサッ、ベキベキッ?!





















ドガッ!!!


少年Uは、自転車ごと林の中に突っ込んだ
ブレーキはもちろんちゃんとかけた
雨上がりでなければ、普通に止まれていただろう


しかし、無常にも自転車は路上では止まらず
一本の木にぶつかりやっと止まった



少年Uはしばらくそこから動けなかった
悔しくてたまらなく、涙がこぼれそうだったが
歯をくいしばって耐え忍んだ


そして帰り道、少年Uは
痛みと悔しさで震える体を鎮めるように





















ゆっくりとペダルをこぎ続けた・・・


家に帰った少年Uは、ぶつけた痛みをかかえながらも
両親には一切この話しはしなかったらしい
(できなかったんだよ)





少年U、のちにうめきちと出会い、HPうめきちを始める男・・・



NEXT     過去目次     コラム目次     TOP