第72回
北の国だから vol.5
〜五日目 帰郷〜

 函館といえば、やはり朝市である。網走で行き損ねたので函館では何としても行かなくてはいけない。まだ海の幸はきちんと食べていないのである。

 函館朝市 8/30(火) 7:00 総走行距離 2066.5km

 函館の朝市は函館駅のそばにある。札幌のものと違い、どう見ても観光客向けだが、どの店も言っていることが多種多様でなかなか面白い。だいぶ冷やかしたが、他の店の話をするとライバル心がむき出しになるのか、「うちの商品は…」と説教が始まる。で、どんなもんかと聞くと「ちょっと食べてみて」となるのである。こうして品物を少しずつ引き出して腹を満たす作戦である。決して買う気が満々であることを見せてはいけない。奴らはプロだ。いろいろ買わされることになる。カニも、ウニも、メロンも、とうもろこしも、少しずついろんな店で食べるのがカギだ。デパートの地下食品売場の試食とは訳が違う。

 腹を満たしそうになるが、この日のメインはウニなので、ウニ丼を食べに。何も選ばずに呼び込まれた食堂に入る。ウニ丼は相変わらず値段が書かれていないので怖い。今回はやや日和見をしてウニホタテ丼に。2000円。味はやはり美味だ。ウニもバフンウニだし。ただし、丼一杯はかなり腹が満たされてしまった。この後の試食に支障をきたすことになってしまった(それでも食べたが)。

 結局ここではお土産も何も買わず。自分の食べる分だけキッチリ食べた。この日が帰りならまだ考えるが、この旅行はもう1日あるし、何より荷物になる。郵送しても一人で食べきれないし、賢明な選択だろう。

 朝市を出発。この日は札幌に向かうことに。もう残ったチェックポイントは札幌しかない。途中寄り道するところもない。と思ったが、函館市内を何も観光していないことに気づく。函館といえば、やはり五稜郭だろう。そう遠くないらしいので行ってみる。

 五稜郭 8/31(水) 8:20 総走行距離 2071.4km

 あっさり到着。公園に隣接された駐車場はまだ開いていなかったが、一周してみると無料で停められる場所があったので停めて中に入る。しかし、グランドレベルでは五角形をしているかどうかが全くわからない。中央部が何やらあったので行くと、ビニールシートがかぶせてあった。何やら発掘中らしい。平和台球場跡に行った時もこんなんやった。

入口
発掘
武田斐三郎の石碑

 歩いて一周するのは時間がかかりそうなので諦めた。聞くと、五稜郭タワーなるものがあり、エレベータで上に上がると五稜郭の五角形がきれいに見えるらしい。これは行かなくては。しかし、駐車場も開いていないような時間である。当然このタワーも営業しているわけがない。

 函館は海も山もある街だが、山側から見ることはできないだろうか…!?と土地勘の無い私がひねり出した答えは、函館山だった。これならさすがに見えるだろう。

 函館山は夜景スポットで、夜には観光客もカップルも総出で見に行くものらしい。函館が夜景のきれいなところということは知っていたが…函館山ってそんなにみんなして行くものなのか?ちなみに、函館山に登る車道は晩に通行止になるようで、頂上に行きたかったらバスに乗るかロープウェーに乗るかしかないらしい。今は早朝に近い朝なので全く問題ないが、山道は住宅街に近いような家が密集した狭い道も通るので、バスだとすると相当な運転技術が必要になるに違いない。

函館山入口

 山道に入ると、全くといっていいほど対向車がいなくなった。前日、温泉宿に行った時と同じ気配を感じる。ということは…この後に細い道が待っているのか?と思ったが、さすがにバスも通る道だ。そんなことはない。ただ、かなり蛇行しているのは間違いない。ガードレール無い部分もあったし、高所恐怖症ではなかなかうまいこと運転できないのでは?という道だ。

 函館山 8/31(水) 9:05 総走行距離 2084.4km

 しばらくして頂上に到着。ここまでで何と1台も対向車が現れなかった。こんな有名な観光スポット、誰も通らないとはどういうことなのだろうか。頂上には駐車場があったので停め、展望台に。しかし、五稜郭があると思しき方角を向くと…

頂上の展望台から。海側
市街地。朝靄

 全然見えへんがな。高すぎる、というのもあるが朝靄は計算外だ。時間が悪い。対向車が通らないのはこういうことか。納得。そら夜の方がキレイやろな。

 結局五稜郭を上から見る作戦は失敗。ここからまた五稜郭に戻ればチャンスもあっただろうが、面倒くさかったので断念。それほど思い入れも無いし。函館はきっとまた来るだろうからその時にでも。

 さて、ようやく札幌に向かう道に。前日も通った国道5号線を今度は北上する形だ。だが、地図で確認すると途中に森町があることが発覚。森町、といえばやはりいかめしである。ただ、ここから森まではわずか60km。時刻は9時過ぎ。どう考えても早い。国道5号線はトラックの往来もあり、時間がかかるとはいえ北海道の60kmは短い方だ。途中寄り道できる場所もないので仕方なく向かうことに。

 森駅 8/31(水) 10:30 総走行距離 2084.4km

 見せ場が無いのですっとばして森駅到着。11時前はちと早すぎた。何しろ朝飯を函館の朝市でたらふく食べたのが朝の7時。それから3時間しか経過していないのである。この旅行の前、会社の健康診断があるためダイエットしていた私はただでさえ胃が小さくなっている。そこに函館の海の幸の後にいかめしである。途中に見せ場があれば寄り道したのだが。この旅行で初めてゆっくり走ったつもりだったが、60kmという北海道にしては短い距離にしてやられた。

 全国的に有名な駅のこと、もっと駅前が盛大に盛り上がっているかと思ったが、そうでもない。やはり電車の本数が少ないことが致命的。2時間に1本じゃ駅も盛り上がらない。駅前に「柴田商店」という店があり、どうやらここがいかめしの店らしい。軒で売っていたので購入。たしか470円。

森駅。駅舎は立派
いかめし
かなり小振り

 いやに値段が安いな、と思ったらやはり大きさが小さい。しかし朝市で腹いっぱいの私には逆にちょうどいい。2杯だがボリューム感はなし(今回に限りこの言葉はホメ言葉)。さくっと食べられた。味は評判通り文句なし。いつか駅弁大会で峠の釜飯を抜いてしまうときが来るだろう。

 さて、いかめしを食べたらここに用事はない。さっさと札幌を目指すことに。国道に戻ると森中学の立て看板が。森町に中学校が3つあれば、森三中があるはずだが、残念ながら町の中学校はここ1つだけのようだ(町役場前の地図で確認)。空気読め(←無茶やって)。

 国道5号線を北上。途中1つの標識を発見。よく見ると…

またオーバー200km

 稚内のあの標識をせせら笑っていた自分に悪夢が降りかかる。230km。本当に60kmとか可愛く見えるわ。今回は回避しようもないので地道に走る。もう急ぐ場所も無いのでチンタラと。トラックがいようがお構いなし。工事して片側車線だろうがお構いなし。ラジオが全然入らないのもお構いなし。手にいかの匂いが残っていようが…、いや、さすがにこれは嫌だ。

 途中、国縫から高速道路があるが、あえて一般道を選択。ここで時間と引き換えに金を浮かす作戦。こうして5時間あまりが経過し、

 札幌市内 8/31(水) 15:35 総走行距離 2411.6km

 札幌駅近辺に到着。って軽く書くけど5時間よ。280kmよ。とんでもない距離だという認識だけ持ってくれたら幸い。よい子はマネしてはいけません。一人で行ってもいけません。貴方が思っているその倍は退屈だから。

 この日の宿は、最終夜ということでなんとホテルニューオータニ!って書くとすごーく奮発した気になるが、実は旅の窓口で6,300円(税込)だったのは内緒である。通常価格は16,000円と桁が1つ違う。フロントも今までとは態度が違う。駐車場にも人がいる。金持ちになった気分にさせられる。

 チェックインの後、この日の晩の行動を決める。やはりここはすすきのぐらいはクリアしておこう。ニューオータニは札幌駅に近いので帰りに札幌駅もついでにクリアできそう。コロポックリはさすがに実在すると思っていないので諦める。車はホテルに置き、この旅始まって最初で最後の地下鉄に乗車。またしても北海道でJRに乗ることはなかった。

 すすきの 8/31(水) 16:00 総走行距離 2411.6km

 前倒ししすぎた昼食が10:30で、チェックインがすでに15時半を過ぎているので多少小腹がすいてきた。しかしながら、こんな時間に空いている店はやはり少ない。ブラブラ歩いても仕方ないので、とりあえずは前回すすきのに来た時に行ったおでん一平の様子を窺うことに。

閉店ガラガラ

 移転だそうで。場所は近そうだが諦めた。ちゃんと飯を食うほど腹は減っていないし店のアテもないので喫茶店で時間を潰す。本当に北海道旅行者か、わしは。完全に地域に溶け込んでしまっているではないか。

 手持ちの日刊サッポロ(日刊ゲンダイの札幌版)はおどろくほどの薄さなのですぐに読み終えてしまった。あとは普通のスポーツ新聞でガマンするが、日本ハム中心の記事ではさすがに飽きる。そうこうしているうちに時間も経過してしまったのでまたブラブラと。

 市電の駅に出てくると、とある看板が目に。そこにはコロポックとあるではないか。非常に惜しい!!

すすきの(ゲーム)
すすきの(実際)

 ちなみに何の店かは不明。行ってないからわからへん。

 ジンギスカンは一人では行きにくいし、寿司は朝食べたし(寿司と違うけど)…と迷い、結局うどんにしてしまった。酒の飲めない一人旅は楽しみが減ること間違いない。おすすめできん。

 札幌駅に戻るともう日暮れ。最後にライトアップされた札幌駅前をどうぞ。

札幌駅(ゲーム)
札幌駅(実際)
駅から市街を撮影

 朝が早かったせいかこの日も早めの就寝。ただ、さすがニューオータニだけあって、テレビはBSもSkyAもESPNも映る。ということでソフトバンクvsロッテを観戦。でもきっちり負け。つまんない。

 札幌市内 9/1(木) 10:00 総走行距離 2411.6km

 翌9月1日。9月だというのに夏休みとは優雅だ。小さい頃に今日から学校だ、と憂鬱になったのとは対照的。チェックアウト時間ギリギリまできっちり睡眠。朝は優雅に1階で食事。でもやっぱり高い。コーヒーおかわりして元を取りに行くが腹がいっぱいになり敗北。金考えてホテルの朝飯食べちゃダメ。

 さて、残るチェックポイントは手稲のみ。これは札幌駅からは多少距離がある。時間はたっぷりあるのでチンタラ進む。途中、札樽道のICがあり、「ああ、去年は札樽道走ったなー」と物思いにふけていると、去年同様白い恋人パークも発見。今年は一人なので行かず。去年の男3人で行ったのも私はどうかと思うのだが(甘いものあまり食べないし)。大倉山のそばも通過。こちらも今年は行かず。ジャンプシミュレータ、去年はもう1回やったらうまく飛べそうだったが、さすがに1年のブランクは厳しい。行っても三ヶ田礼一をまた探して終わってしまいそうだし。

 手稲 9/1(木) 12:00 総走行距離 2436.2km

 手稲は駅があったので駅を撮影。サンコーポというマンションは函館では偶然見かけたが、札幌では探す気すらなし。

手稲(ゲーム)
手稲(実際)

 似ても似つかない写真になってしまった。

 これでチェックポイントは全てクリア。長かった足跡を辿る旅もこの日で終了。ただ、フライトまでは多少時間があったので、

onちゃんと再会

 こんなところや、

札幌第一高校

 こんなところに行ってきた。最後、高校の写真で終わるところなんかは、沖縄の時とまったく同様で成長の兆しがまったくないことが窺える。でも南北海道大会の決勝進出2校を両方撮る奴なんざ、そうおらんやろ。

 最後にジンギスカンキャラメルを購入してレンタカーを返却。総走行距離は実に2496,2kmに達した。返却した時「どこ行ってたんですか?」と驚かれたが、説明しようがないので「いろいろと。」とだけ返答しておいた。

 今回の旅はかなり充実したものだったが、やはり一人であったことが良くも悪くも作用した。時間に融通がものすごく効く一人旅は遠出の際の制限時間が無いのが魅力。ただ、運転に疲れた時に止まって休むしかないのが大きなロス。こんな足跡を追う旅を自分もやりたい!!、という奇特な人は止めはしないが、無理をしないように。私はもう疲れたので仮に来年も北海道に行くことがあっても全道を回る無茶はしたくないし、しないであろう。2005年は北海道も沖縄も行ったし、しばらくは静養。5回にわたる長編を飽きもせず読んで下さった読者の方々には感謝感謝。2004年の北海道も全5回だったが、それだけボリュームがある土地なのだろう。いつかは住んでみたいものである(ただし雪が無い時だけ…我がままやな)。

北海道旅行 終了

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