1.再会
「みんなありがとう、来てくれて。」
空港。やたらと流暢な日本語を話すアメリカ人の少年。彼はウォレスという。去年の夏、大輔達選ばれし子どもたちがと関わった悲しいデジモン事件で知り合った少年だった。
彼は「いつか日本にも遊びに行く」その言葉どおり早速日本に遊びに来たのだった。
大きなカバンの中からデジモンが顔が出す。1、いや2体いる。
「久しぶり、チビモン、みんな。」
「グミモン、おいら達もおまえとあいたかったよ。」
「おい、ウォレス、もう一体いるぞ。もしかして・・・。」
「うん、チョコモンだよ。」
まだ、幼年期のそのデジモンはあの時死んだ筈のチョコモンだった。
「チョコモン、みんなに挨拶。」
「ぼくチョコモン・・・。」
「よろちくな、チョコモン。」
デジモン達が口々に言う。
「可愛い。」
「チョコモンね、帰ってきたんだよ。」
「良かったわね。」
「ほら、俺の言ったとおりだろ。」
「そうだね、大輔。」
言ってウォレスは微笑む。
「ありがとう、日本の選ばれし子どものおかげだよ。」
ウォレスはすかさず京とヒカリの頬にキスをする。タケルはあの時と一緒で唖然としていたが大輔が黙っていない。
「おい、ウォレスてめえ、京はともかくヒカリちゃんまでぇ〜。」
「大輔も。」
ウォレスは大輔の頬にもキスをする。これには一同唖然としてしまった。
「あ〜あ、やっぱ女の子の方がいいや。」
数秒間唖然としていた大輔は顔を真っ赤にして
「ウォレスてめぇ〜。」
「アハハハハ。やっぱり君って単純だね。」
その場を取り繕うようにタケルが、
「あっ、ウォレス、君に紹介したい人がいるんだ。」
「えっ、女の子なら大歓迎だけど・・・。」
「たく・・・。」
大輔は拗ねてぶちぶち言っている。
「一乗寺君とワームモン、僕達と同じ選ばれし子ども。」
ずっと後ろにいた賢がおずおずと顔を見せる。
「あの、一乗寺です・・・。」
「僕はウォレス。可愛いね。君、黒い髪も素敵だし。」
そして、京やヒカリにしたように賢の頬にもキスをする。
「あの・・・。」
賢は困ったようだった。一同もどうしていいか分からなかった。
さっきまで拗ねていた大輔は嬉しそうに
「黙っとこうぜ。」
伊織は、
「だめですよ。嘘ついちゃ・・・。」
「あのさ、ウォレス・・・。」
「何?京、君も素敵だよ。」
「そういうことじゃなくって・・・。」
「何?」
「えっと、彼、男の子・・・。」
「えっ?今なんて?」
京ははっきりと
「賢君はね男の子よ。」
「嘘・・・。」
今度はウォレスが唖然とする番だった。
「ぶはははは・・・。バッカじゃねーの。」
大輔が爆笑する。
「うるさい。」
ウォレスは拗ねたように言った。
「ほんと、ウォレスってばすぐ勘違いするだよね。」
グミモンが口を挟む。
「グミモン、お前もうるさいぞ。」
「はーい、はいはい。」
「わーい。」
「日本の子どもって不思議だよな。」
「ハハ・・・。」
女の子と間違えられた挙げ句キスまでされた賢は苦笑するしかなかった。
チョコモンは意味が分からないが嬉しそうに笑っている。
とりあえず、一通り再会と出会いの挨拶を終え、一同は空港からお台場へ戻ることとなった。車はたまたま、ヤマトの父親が休暇で、タケルのたってのお願いで選ばれし子ども達を空港に連れてきたのだった。
一同は車に乗り帰路に着く。