2.ホームステイ
とりあえず、ウォレスのホームステイ先は大輔の家ということだった。
「あーあ、京かヒカリの家が良かったなぁ。」
「贅沢言うな。特にヒカリちゃんの家は絶対行かせねぇ。」
「大輔ってヒカリのこと好きなんだね。」
「何、言ってんだよ。ヒカリちゃんの前で。」
大輔は顔が真っ赤になっていた。ヒカリはくすくす笑っている。
「大輔さん、それで隠していたつもりなんですか。ばればれですよ。」
「伊織てめぇ〜。」
大輔とウォレスは大輔の家のあるマンションの前で車を降りる。
「ほら、着いたぞ。」
「お邪魔しまーす。」
「あら、いらっしゃい。」
大輔の母親が出迎える。
「大輔のママ、はじめまして、ウォレスといいます。」
「あら、日本語お上手なのね。」
「大輔のママ綺麗だね。」
「あら、上手なんだから。」
「こいつは〜。」
大輔はぶつぶつ言っている。これがウォレスの癖だということは分かってはいたが、どうも慣れない。特にヒカリに対しては。
「きゃー、ホームステイ、アメリカ人、いや〜可愛い。」
大輔の姉のジュンがとんでくる。
「うるさいのがきたよ。」
「はい、ウォレスっていいます。素敵なお姉さんだね。」
「いや〜ん、素敵だなんて。」
「こいつにそんなこと言うなよな。」
「何よ、可愛くないのは黙ってて。」
「うっせー、バカアネキ。」
「さぁ、上がって、上がって。」
「お邪魔します。」
「あたしウォレスとお話しした〜い。」
「はい、お話しましょう。」
ウォレスはニッコリ微笑む。
「あ〜、うっとおしい・・・。」
家族の自己紹介も終わり、大輔はウォレスを部屋に案内した。
「大輔のお姉さんってほんと明るくて、素敵だね。」
「アイツ調子乗んだからあんま言うなよ。」
「だってほんとのことだよ。」
「グミモン、チョコモンあちょぼ。」
「そうだね。」
「遊ぶー。」
グミモンとチョコモンとチビモンはふざけあって遊んでいた。
「ほんとおまえ達って仲いいんだぁ。」
「だって僕達兄弟だもの。」
「二人とも、おやつよ。」
「そこ、置いといてよ。」
「ありがとう、大輔のママ。」
「いいのよぉ。」
大輔の母親は初のホームステイ受け入れとウォレスの容姿に浮かれているようだった。
「食べよう。」
チビモンとグミモンとチョコモンはおやつを食べる。
「日本のおやつっておいしいんだよね。」
「おいら、おかちだいちゅき。」
「すきー。」
「まったく、お前ってちっとも変わってねぇの。」
「大輔こそ、成長してないよね。」
「いちいちムカツク奴だよな。」
不意にウォレスの顔が真剣になった。
「でもさ、嬉しかったんだ。あの時、大輔が僕達のために泣いてくれて・・・。」
「ウォレス・・・。」
「良かったな・・・。」
「うん。だからこうして日本に報告に来たんだよ。」
「そっか。」
「でもな・・・、」
「何?」
「ヒカリちゃんには近づくな。」
「別にいいじゃない。」
「だめだ。」
「でも、僕は、大輔も好きだよ。」
「はぁ?」
「これはマナーじゃない、本心から。」
「べ、別にお前に好かれたって気持ちわりいだけだよ。」
口ではこういうが、大輔は照れ隠しに似た表情していた。というか、照れ隠しだった。
「照れてる。男に好きって言われて。」
「うるせー。」
不意にウォレスは真面目な顔になる。
「僕ね、ほんとは大輔みたいなトモダチがずっと欲しかったんだ。」
「お前・・・。」
「言っとくけど、絶対君なんかに恋はしてないからね。」
「わかってらー。」
部屋の外で大輔の母親の声がする。
「大輔、お風呂沸いたから、ウォレスに入ってもらったら?」
「へーい。」
「風呂、入ってこいよ。」
「じゃあ、そうさせてもらう。グミモンとチョコモンも。」
「ああ、でも、見つからないようにな。」
「分かってる。」
「いこ、グミモン、チョコモン。」
「わーい。お風呂だー。」
「大輔も入りたい?」
「んなわけねーだろ。ちょっと見ねーうちにその気もついたのかよ。」
「ジョークに決まってるでしょ。日本の子どもってジョークも分からないの?」
「うっせー、うっせー、さっさと入ってこい。」
(全くこいつがいると調子が狂う・・・。つーか俺振り回されてやしねーか・・・。)
一人ぼやく大輔だった。