「やぁん・・・。」
「あはぁぁ・・・。」
僕の声は激痛の叫びとは別のものになっていた。
「気持ちよくなったの?」
「楽しみ方覚えたの?」
僕は首を振る。
「嘘、そうやって僕を求めてきたのも事実じゃない。」
「ずっとずっと逃げられないんだよ、君は・・・。」
高石の声は穏やかだが、淡々として冷たい。
「帰る・・・。」
「そう・・・。」
僕は剥ぎ取られた服を拾い、着る。
高石は引き止めなかった。
僕はそのまま高石の家を出る。悔しさと腹立たしさと嫌悪感であとからあとから涙が止まらなかった。
エレベーターを降りた時だった。目の前にいたのは大輔だった。
「賢・・・。お前塾行ったんじゃ・・・。」
僕は俯いた。
「泣いてるのか?」
僕は首を振る。
「泣いてる・・・。お前・・・。な、にがあったんだ・・・。」
僕は黙るしかなかった。
「タ、ケルか・・・。」
「そう、なんだな・・・。」
「ごめん、大輔。ごめん、ごめん・・・。」
僕はひたすらこの言葉を繰り返す。涙が止まらない。
「お前は悪くない・・・から・・・。」
言う大輔は怒りの感情を露にしていた。
泣く僕を残して、大輔は一人でエレベーターに乗った。
僕は逃げることはできなかった。その後僕は大輔を追ってエレベーターに乗る。
高石の家行くと、大輔の声が聞こえる。
「タケル、お前、賢に何やったんだ。」
「答えろ。」
「そうだよ。僕は一乗寺君を抱いた。無理矢理だけどね。」
「てめえ・・・。」
大輔は高石のむなぐらを掴みなぐりかかった。
高石はクスリと笑う。乾いた笑いだった。
「一乗寺君は穢れてる。」
大輔は肩を震わせた。僕のことを怒っているのか。それとも軽蔑?
「お前が・・・。」
「彼最初は確かに嫌がってた。でも、気持ちよさそうだったよ。僕が最初じゃないんじゃない?多分誰でもいいんだよ。彼は・・・。」
高石は淡々とした口調で言う。
もう、終わりだと思った。大輔は僕に失望したと思った。
「てめえ、よくも・・・。」
大輔が高石を殴る。高石の頬が赤く染まる。
「これで満足?」
「一乗寺君は君が思ってるほど綺麗じゃない。」
「一乗寺君は汚れてる。現に彼は僕に抱かれながらも、何事もなかったかのように君を騙してたじゃない。」
そう、僕は大輔を騙してた。自責の念が込み上げる。
しかし、大輔は・・・。
「賢は変わろうとしてたんだ。それをテメエが・・・。許せねぇ。」
大輔が怒っている。僕のために・・・。僕に失望し軽蔑するどころか、僕のことを思って怒ってくれている。すまない気持ちで一杯だった。たくさん、たくさん嘘をついたのに・・・。
「賢は俺が守る。テメエの好きにはさせねぇ。絶対にな。」
「帰るぞ、賢。」
大輔は強引に僕の手を引っ張ってエレベーターに乗る。