筋膜リリースについて
近年、テレビや雑誌などを通じて「筋膜」について紹介されることが増えております。
情報が多すぎて、何が本当の情報なのか?話す人によりかなり内容に違いがあります。
大きく2種類の情報発信があるように感じています。
1つは、整体やフットネス関係の方が一般の方にわかりやすく柔軟性との関わりを発信しているもの
もう一つは、医療従事者が痛みについて専門的に発信しているものがある様に感じます。
例えば、筋膜リリース、ハイドロリリース、筋膜マニプレーション、アナトミートレイン、ロルフィングなどなど
鍼灸治療やトリガーポイント療法も、医療の専門家が筋膜をターゲットにしている内容の書き込みを見ることが増えています。それぞれ、いろいろな考え方がりどの治療にもそれぞれの効果があると思いますが、それぞれの説明には様々な意見が専門家同士お互いにあります。

筋膜と言う言葉の誤解
日本では「Fascia」を筋膜と訳しているため誤解されています。正しくは、筋膜は「Myofascia」、膜は「Membrane」なので「Fascia」については適切な英語訳が見つからないのでその様に訳されています。日本では一般的に筋肉を包む膜が筋膜であり、筋膜と訳された英語のFasciaの本来の意味は筋肉だけを包む膜ではなく、皮下組織から存在する白く薄い膜であり、骨、内臓器官、血管、神経など身体のあらゆる構成要素を包みこみ、それぞれの場所に適正に位置するように支えているものを意味しています。先ずはここの理解が必要です。


Fascia
←この白く薄い膜がFasica

と言うことは、全ての人間は全身が皮膚の下に存在する「 Fascia」で包まれていることになります。
その為、筋膜について語る時には、筋肉を包む筋膜について書かれているのか?それとも英語のFascia(筋膜と訳されている)について書かれているものなのかを、筋膜を説明する前に明確にしておく必要があります。


英語で表記されているFasciaについて
Fasciaについて、Ida P.Rolf博士は、『筋膜は構造の器官であり、三次元空間で身体を正しく保つための器官である。』と述べています。 Fasciaはコラーゲン組織のため可塑性に富んでいます。そのためにケガや精神的な緊張など様々な内的・外的ストレスによって短縮や過緊張を起こしたりする事があります。また、Fasciaはその他のFasciaが癒着して変形すると書かれているものが多いです。筋膜リリースはFasciaの癒着を剥がすと書いているものには、多くの専門家から疑問が語られています。
Fasciaはよくベストに例えられ、ベストは引っ張るとストレスは様々な方向へ広範囲に伝わります。そしてそのストレスがベストの伸縮限界を超えるとベストは縒れてしまい、このような状態が人体の中でも起きていると考えられています。この考え方がとてもシンプルで皮膚からFasciaに繋がり、さらにFasciaは筋肉から骨に繋がるので皮膚や皮神経だけをターゲットにしている治療法も存在しています。
皮膚の動きが制限されると関節の動きも制限されますので、姿勢についても形状記憶しているように、どれだけ筋肉をストレッチしても短時間で元の状態に戻ってしまいます。皮膚の下のFasciaに目を向けた時、Fasciaが身体のバランスを維持するためにコンスタントに変化を遂げ、身体に動きを与えていることがわかります。
このYouTube動画では皮膚下の構造を観察し、その複雑なシステムが持つ、重要な役割について解説しています。



皮膚の下の Fascia の構造

セーターコンセプト
皮膚の下の Fascia の構造 セーターコンセプト

こちらのセーターコンセプトの考え方はとても大切だと思っています。どこか皮膚にケロイドや手術痕などがあると皮膚が突っ張ることで皮膚の下の筋膜にも影響するため皮膚の突っ張りに合わせて姿勢も歪みます。さらに関節の可動域にも影響を与えるため関節運動時の痛みにも直結します。
その為、皮膚の動きを改善することで不良姿勢が改善したり関節運動時の痛みが改善したりします。
Fasciaは上半身だけではなく身体全体に張りめぐらされている網状の白くて薄い伸縮性のある組織です。
筋肉や骨は、血管、神経、内臓器官などと共に、この網状の組織Fasciaのなかで支えられており、私たちのからだを構成している大切な組織になります。歩き方や姿勢などで、遠くからでも友達や家族を容易に認識できる事があるように、姿勢や筋肉の緊張状態、筋膜の状態によって、個人個人が認識されます。それほど筋膜の役割は大きいと言えます。つまり全身タイツを履いたような感じで筋膜に覆われているわけです。

タイツ このようにタイツの一部を引っ張ると、引っ張られた方向に身体が歪むのがわかると思います。


Fascia(筋膜)の構造について
筋膜は下の図のように全身を覆っている繊維状の薄い膜で、「浅筋膜」「深筋膜」「筋外膜」の3層構造からなり、筋肉・骨・内臓・血管・神経などさまざまな器官とつながっています。

筋膜の層構造

筋膜(特に深筋膜)には痛みの刺激を受け取る神経(機械的受容器)が多く存在しています。そのため、『筋膜』は痛みの原因にもなります。
筋膜リリースの効果は、筋膜に存在する神経に対する刺激によるものがあると考えています。
筋膜には豊富な神経があり、局所的な血流に関与していている神経線維もありその感覚を中枢(脳)に伝えています。つまり、筋膜に関連する神経は局所的な血流を悪くする可能性もあると考えています。これまで痛みは「筋肉痛」「神経痛」などと聞く事が有ったと思います。「筋膜痛」と聞く事は無かったと思いますが、実は殆どは筋膜痛です。


筋膜
筋膜 プロメテウス解剖学アトラス
筋の概略図
NSCA決定版ストレングストレーニング&コンディショニング第4版

深筋膜は全身の筋肉をつなげてボディスーツのようにすっぽりと包み込み、筋外膜はひとつひとつの筋肉を包み、筋周膜と筋内膜に連続しています。さらに筋周膜は筋束を、筋内膜は筋線維1本1本を包み込んでいます。この筋膜は頭から手や足の先まで全身につながり、「第2の骨格」ともいわれています。筋肉を正しく動かすためには、これら筋膜が柔軟に動くことが必要なのです。い姿勢や、同じ作業を繰り返すなどの偏った動作を長時間続けていると、不必要な負担がカラダの一部分に集中して筋肉が硬くなり、それにともなって筋膜も自由度を失います。そうなると筋膜の上にある皮膚と筋膜の下にある筋肉がそれぞれ動きづらくなります。つまり、ひとつの筋肉を包む筋外膜に問題が生じるとその上にある全身の筋肉を包む深筋膜に問題が生じて、深筋膜のつながりを介して他の筋肉に影響します。筋膜には多くの交感神経があり、血管運動に関係しています。
この神経への刺激は血液の循環不良による痛みになります。自律神経と関係しているのでストレスと腰痛との関係も納得できます。交感神経系は筋膜の緊張を増加させる働きがあり、筋膜への刺激は交感神経の活性を抑制します。特に、持続的な引っ張り方向への伸張に反応する神経(ルフィニ小体)のセンサーへの刺激は、交感神経系の働きを抑えるとされています。この持続的な引っ張りが俗に言う筋膜リリースだと思われます。筋膜リリースは穏やかな圧力と弾性・膠原線維を意識した持続伸張により膜組織のねじれを元に戻し、可動性や伸張性の改善を目的としたテクニックです。筋膜リリースのゴールは筋膜制限を解除して血液循環を改善する事ができます。
通常のストレッチと筋膜リリースの効果を比較すると筋膜リリースの効果は1日以上継続し、ストレッチに比べ他動運動時の伸張性の改善あるいは疼痛閾値の上昇を期待できると報告されています。筋膜リリースの穏やかな圧力と持続的伸張は筋にリラクセーション効果をもたらし、筋-腱移行部に存在するゴルジ腱器官にも伸張刺激を直接入れることで筋を伸張しやすくすることができます。


アナトミートレイン
出典:アナトミートレインhttps://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=89101

また、筋膜のつながり 張力を感じ合う12種類の筋膜のラインをアナトミートレインと呼びます。
ロルファーのトーマス・マイヤー氏によって考えられたアイデアです。身体中に張り巡らされた筋・筋膜の網を通して、姿勢や動作の安定がどのように得られるか解剖学的見解から編み出された理論です。表層筋膜を網羅する筋膜面としてみることができ、深層筋膜も全身の骨格系を構成する筋と結合組織の三次元的な集まりとして見る事ができます。


痛みの原因になっている筋膜はどうなっているのか?
人体での潤滑油はヒアルロン酸であり、関節に打つ注射やお肌に使う化粧水などに入っているヒアルロン酸ですが、実は筋膜の中にも存在しています。このヒアルロン酸がサラサラの人は痛みを引き起こしません。お互いによく滑るからです。一方、ヒアルロン酸がサラサラではなくベトベトになると、筋膜同士お互いが滑らなくなってしまうため痛みを引き起こしてしまう可能性が高いのです。筋膜の順応性のメカニズムは収縮性と結合性で成り立ちます。安定性を高めストレスを防ぐ為、筋膜組織は萎縮し、厚くなり、隣の組織に癒着しようとします。その結果、隣接した組織はその動きに引っ張られ、動きが円滑ではなくなります。これが痛みの原因になることはよくあることです。さらにこうなると日常生活のなかでも無駄なエネルギーを使うことになってしまい、疲れやすくもなります。


3層構造の筋膜の模式

過去にケガをした事が原因のことも?
身体のどこかケガをして痛みが治りにくい場合、以前にケガをした全く関係のない部位の影響を受けていることもあります。何年も前に骨折した所から随分離れた部位に痛みが出現した場合も、筋膜は繋がっているため筋膜の繋がりに捻れが生じると、いつまで経っても怪我が治らないことはよくあることです。
そうした場合、全く関係の無い以前ケガをした部位の周囲の筋膜を治療してから、現在痛みがある患部を治療すると、驚くほど何処に行っても治らなかった痛みが軽減又は消失することがあります。そうしたことから慢性的な痛みでお悩みの患者様には、過去のケガに遡って治療を行っております。筋膜は肉体の変化を可能にしている弾力性や適応性という属性があるため、ロルフ博士は身体の“形成器官”と呼びました。
からだは、普段の生活の中で、ストレスなどから身を守ろうとする時など、筋膜の構成を変化させることが可能です。いくつかの変化は“肩こり”のような一時的なものですが、慢性的なものもあります。例えば、足首を捻挫したとしましょう。その時、足首の組織は少し厚くなり足首と膝に“ねじれ”を残して回復していきます。私たちのからだの器官は一固体として動くため、その制限“ねじれ”がからだ全体のバランスを崩し、それを修正しうとするからだは新しい“癖”を作り出します。それが痛みの原因になっていることがとても多いのです。


痛みを起こさない筋膜にする方法
ヒアルロン酸は分子が大きいとネバネバしており小さいとサラサラします。ヒアルロン酸の分子を小さくするためには、徒手による「圧迫」や「摩擦」を加えて、わざと炎症を起こす必要があります。慢性的な痛みの多くは炎症が弱すぎて組織修復のための免疫機能がうまく働かない状態です。例えば骨折しても同じで、激しい炎症が起こり、強い免疫反応が起こることで骨が修復します。また風邪をひいてもウイルスにより発熱し、発熱することで免疫系が働くため風邪が治ります。微熱が続いた方が免疫機能が働きにくく高熱を出した時より風邪が治りにくいことがあります。
そのため微細な慢性炎症に対しては、わざと炎症を作り免疫機能を強めることで治癒に導く様に治療します。
炎症が起きて48時間〜72時間かけて炎症が治る過程で小さくなっていきますますのでご安心ください。


若田プロモーションにおける筋膜治療の歴史

ファッシャル・インテグレーション(Fascial Integration)
Bruce Schonfeld
(ロルファー)
ファッシャル・インテグレーションとは?
講師を務めるBruce Schonfeld 氏によって開発された最新の筋膜に関する研究理念に基づいて、主に、筋膜を介した内蔵と筋骨格系の繋がりに着目し、内臓疾患と整形外科的疾患の関係性を理解した上で、評価&筋膜へのアプローチをおこなってゆく療法です。
Bruce Schonfeld

アナトミー・トレイン(Anatomy Trains)
Tomas Myers
(ロルファー)
アナトミー・トレインとは?
体中に張り巡らされた筋・筋膜の網を通して、姿勢や動作の安定がどのように得られていくのかを解明する画期的な理論です。この理論は米国のマニュアル・セラピストの第一人者であるTomas Myers 氏によって、解剖学見地からあみ出されたまったく新しい手技療法としてそのテクニックは、最も注目されるリリーステクニックです。
Tomas Myers

ファシアマニュプレーション(fascial manipulation)
国際コースLevel1Level2終了
PT:Marco Pintucci
PT:Giorgio Rucli
ファッシアマニュプレーションとは?
イタリアの理学療法士Luigi Stecco氏による徒手療法です。筋膜機能異常による疼痛を解消し、筋出力、柔軟性、運動パフォーマンス、ADLの改善を目的とした療法で、.筋力のベクトルが収束する協調中心と幾つかの筋膜の単位の力が収束するより幅広い領域または点としての融合中心を治療対象とします。筋膜機能異常を筋膜配列、筋膜対角線、筋膜螺旋の視点から解きほぐす全身性の治療で、痛みの解消、筋出力の向上、パフォーマンス向上に非常に効果的な徒手療法です。
PT:Marco Pintucci、PT:Giorgio Rucli





トップページに戻る 自費治療に戻る