書籍紹介


扶桑社ミステリー アン・ライス著、柿沼瑛子訳「トニオ、天使の歌声」
 (上巻下巻に分かれた文庫本) 2冊とも800円+税
1人のカストラートの生涯を書いた作品 下巻の最後に増山のりえ先生の解説あり

「TOKYO FM少年合唱団 20年のあゆみ」


 ウィーン少年合唱団をはじめ、世界の少年合唱団について採り上げた書籍はそれなりにありますが、日本の少年合唱団に関する書籍は、ほとんどないというのが実情でしょう。磯部俶の自伝エッセイ「遙かな友に」の中にフレーベル少年合唱団のことが採り上げられた数ページと、もともと少年合唱団として出発した東京少年少女合唱隊の「歌おう 東京少年少女合唱隊 50年の挑戦」ぐらいかもしれません。アルバムとしても、桃太郎少年合唱団第40回定期演奏会のときに発行されたメッセージと写真で綴られた豪華なプログラムがあるぐらいです。
 2005年、TOKYO FM 少年合唱団が創設20周年を迎えましたが、その20年のあゆみをを編集したアルバムが発行されました。フルカラー88頁の豪華版で、過去のすべての定期演奏会、外部出演、海外公演の記録、合宿等が掲載されています。
 写真集ではありますが、定期演奏会のプログラムも掲載されていることから、この合唱団がどのような曲を採り上げて演奏きたかということがよくわかります。指導者がプロの音楽家であることから、いわゆる教育音楽としての合唱曲だけにとどまらない多様な選曲が見られます。また、写真を見ても、視覚的にも楽しめる演出がある合唱団であることがわかります。さらに、この20年間の制服だけでなく少年服の変遷が伺えるのも、写真集ならではです。
 卒団生たちの一言も、短い言葉の中に万感が込められており、読みごたえがあります。あの美しい歌声を届けてくれた少年が、ステージの裏側ではこんな悩みをかかえながら頑張っていたのかということを知るとき、かえって感動が大きくなるのを覚えます。

 定価 \5,000 (税込)で、TOKYO FM 少年合唱団のホームページを通して購入可能です。

桃太郎少年合唱団創立50周年記念誌


   平成24(2012)年、桃太郎少年合唱団は創立50周年を迎えました。11月には記念定期演奏会を行いましたが、それに先立って同年8月に創立50周年記念誌を発行しています。ページ数も128ページからなり、桃太郎少年合唱団の紹介や歴史はもとより、多くの写真によって飾られています。
特筆すべきは、多くの紙面を使って、当時の三木行治岡山県知事の情熱によって桃太郎少年合唱団が誕生したことが描かれていることです。また、日本の少年少女合唱団組織への参加を通して、児童合唱の振興に貢献したことや、数少なくなった少年合唱団の調査を通して、組織化を図っていったことは、高く評価されますが、これらの詳細についても記述されています。








「音楽現代」’14 3月号

  

ボーイ・ソプラノのコンサート評が、著名な音楽雑誌に掲載されることは、極めて稀なことです。ところが、「音楽現代」’14 3月号 142ページ(写真は136ページ)には、津嶋りえこが、平成25(2013)年12月23日にサントリーホールで行われた東京ヴィヴァルディ合奏団 第14回ファンタジックなクリスマス(独唱 栗原一朗)のコンサート評を書いています。限られた紙面の中で、栗原一朗の歌の本質について正鵠を射た批評を書いています。



 隔月刊 Hanna(ショパン5月号別冊第61号)


 日本の児童合唱を長年にわたってリードしてきた東京少年少女合唱隊正指揮者長谷川冴子先生が、「日本の少年合唱」という表題の記事(話し言葉で書かれているので、おそらくインタビューをもとにして編集されたものと考えられる)が、掲載されていました。約60年近く前のウィーン少年合唱団の来日が日本の音楽教育や児童合唱界に与えた影響から始まって、その後の日本の社会的変化の中で、「うたごえ運動」「ママさんコーラス」「合唱コンクール」などがどのような変遷をしてきたかとか、時代と共にそこから派生した課題など、少年合唱について巨視的な観点から述べられています。







 歌唱指導を通した人間教育
「白ひげ先生の心に響く歌唱指導の言葉がけ」
                     蓮沼勇一 著


 この本の存在を知ったのは、今年3月の暁星小学校聖歌隊のチャリティコンサートの会場に、見本本が置いてあったことがきっかけです。これまでも蓮沼先生は、ビデオやDVDを通して、全国の音楽教育、とりわけ合唱指導者に多くの指導上の示唆を与えてこられました。ところが、この本は、蓮沼先生の歌唱指導の在り方を文章化しただけにとどまらず、一冊全体が人間形成・人間教育のための本に感じられました。この著は、大きく、気持ちづくりの章、声づくりの章、曲づくりの章からなっていますが、どの章でも日頃の児童への言葉掛けや、その指導を支える理念のようなものが、強く感じられ、何によって人は育つのかということを考えさせます。また、終章は合唱や音楽を通して学べることや教師の在り方にまでふれられています。暁星小学校の児童は、卒業してから社会の様々な分野で活躍しています。そのうち何人かは職業として音楽の道に進むこともあるでしょうが、ほとんどの卒業生にとって音楽は趣味などの人生を豊かにしてくれるものになるでしょう。そのときに、永久に生き続けるものは何かを考えたとき、終章の言葉にたどり着きます。そのような意味で、この本は音楽教育に携わる人はもとより、教育に関心のあるすべての人にとって座右の書になることでしょう。



 「童謡百年史」   童謡歌手がいた時代
                                                       井上 英二  著


   今年(平成30年)は、鈴木三重吉の児童雑誌『赤い鳥』発刊から百年ということで、そこから誕生した「童謡」百年記念の演奏会等の行事や出版が行われています。日本における「子どものための歌文化・童謡」は世界に類のないものといわれており、それらの歌への愛着は今もなお根強く残っています。ところが、大正時代と昭和20〜30年代に多く作られた童謡の名曲の愛好者はむしろ高齢者に多く、若い世代に歌い継がれていない傾向もみられます。現代においても「だんご三兄弟」のように新しい童謡も作られ歌われてはいますが、一時的なもので永続性に欠けるようです。本著は、童謡文化の歴史をたどりながら、その魅力を多面的・多角的に語っています。また、副題にもある童謡歌手が童謡を広める上で果たした役割の大きさについて述べているのが本著の特色の一つでもあります。
 著者の井上英二氏は、元日本コロムビア学芸部プロデューサーということで、特に録音された童謡については、詳細な記録をもとに執筆しています。とりわけ、第四章 レコード文化の隆盛と童謡歌手においては、「ボーイソプラノの活躍」という一項を設けて、藤山一郎、村山忠義、金子一雄、石井亀次郎、加賀美一郎、桑原研郎、土屋忠一、土屋道典、岡田孝、佐々木行綱、河野ヨシユキを採り上げて8ページにわたってその録音について記載しています。ただし、これほど多くのボーイソプラノたちの歌声を耳にしていながら、歌唱の特色についての記載はほとんどなく、録音された記録の記載が中心であることが惜しまれます。
  また、土屋忠一と土屋道典とは兄弟であろうかと、確かなことは述べていません。これについては、以前このホームページに投稿されていたTosiさんも同様に述べています。そこで、この分野において近年情報を頂いている方に問い合わせたところ、土屋道典と同時期に在団したひばり児童合唱団の卒団生の方より、兄弟ではないという確かな情報を得ました。これで、長年の謎であったこの問題に結論が出ました。

「桃太郎少年合唱団とともに半世紀」
          
                   棚田 國雄 著


 著者の棚田國雄先生は、昭和37(1962)年の桃太郎少年合唱団創設以来、創立50周年記念定期演奏会までの半世紀にわたって、桃太郎少年合唱団を指導してこられました。現在は名誉団長になっておられ、指導を後進に譲られましたが、平成30年11月23日の定期演奏会の後には、関係者が集まって米寿のお祝いをしました。この40ページほどの小冊子は、公式記録を中心に編集された創立50周年記念誌に載せられなかった指導者として取り組んできたことはもとより、今だからこそ語れる練習場と近隣との関係のエピソードに到るまでが詳細に写真入りで描かれています。この冊子を読んで、少年合唱団を創立することよりも、長期間にわたって少年合唱団を維持・発展していくことの方がいかに難しいかを痛感しました。桃太郎少年合唱団が創立したころ、ウィーン少年合唱団等の来日を契機として、児童合唱への関心が高まり、全国各地で少年合唱団が創立されましたが、数年経つと、少年少女合唱団に移行したり、解散したりするところが相次ぎました。棚田先生は桃太郎少年合唱団を育成するだけでなく、日本各地の児童合唱団はもとより、ウィーン少年合唱団やレーゲンスブルグ大聖堂少年合唱団等と交流することで、視野を広め、音楽の質的向上を図ろうとされました。また、数少なくなった日本の少年合唱団の調査を通して、「全国少年合唱大会(祭)」という形で、その組織化を図っていこうとされた志は、高く評価されますが、同時にこのような宿泊を伴う形での交流の難しさや、指導者の交代等による継続の難しさも感じます。棚田先生は、自らが指導された桃太郎少年合唱団だけがよくなればよいという狭量な考えではなく、日本に児童合唱の文化(とりわけ少年合唱の文化)をそれぞれの地域に根付かせようという高邁な理想を実現しようとされました。この冊子は、書店で入手できませんが、この道一筋に生きた音楽教師の生きざまを知る上で貴重な資料になっています。


参考・引用文献


本ホームページの研究編については、下記の文献を参考・引用しております。

1、新書館編 「少年合唱団」  新書館 1986
2、カワイ楽譜編 「声楽・合唱辞典」 カワイ楽譜 1970
3、音楽の友社編 「オペラ辞典」   音楽の友社 1993
4、音楽の友社編 「成長に応じた発声指導」   音楽の友社 1992
5、音楽の友社編 「GRAND OPERA」 音楽の友社 1991〜93
6、増山のりえ著 「天使の歌声」〜「ラヴェンダー・エンジェル」 白夜書房 1993
7、増山のりえ著 「THE・TREBLE」 雑誌「ショパン」 東京音楽社 1991〜92
8、増山のりえ著 「ボーイ・ソプラノあらかると」「マックス・エマヌエル・ツェンチッチリサイタル プログラム」 1992
9、米山文明著 「声がよくなる本」 主婦と生活社 1977
10、林 義雄著 「声がよくなる本」 音楽の友社 1961
11、加藤友康著 「ボイス&ボディートレーニング」 桐書房 1989
12、永吉大三著 「発声法の理論と技法」(改訂版) 音楽の友社 1982
13、澤田 昭著 「現代青少年の発達加速」 創元社 1982
14、松村直行著 「変声期と教材」大阪教育大学紀要第23巻第X部 1974
15、堀内 修著 「オペラに乾杯」 ベストブック 1994
16、永竹由幸著 「オペラと歌舞伎」 丸善 1993
17、瀬高道助著 「バロックのカストラート」〜「オペラの饗宴」 洋泉社 1990
18、ペヨトル工房編「カストラート・カウンターテナー」ペヨトル工房 1995
19、アンガス・ヘリオット著 美山良夫他訳 「カストラートの世界」 図書刊行会  1995
20、パトリック・バルビエ著 野村正人訳  「カストラートの歴史」 筑摩書房  1995
21、品川三郎著  「児童発声」  音楽の友社  1955
22、岩崎洋一著  「小学生の発声指導を見直す」   音楽の友社  1997
23、中尾和人著 「発声のヒント」  音楽の友社   1974
24、楓田琴次著 「かたい声、やわらかい声」 日本放送出版協会 1976
25,長田暁二著  「童謡歌手から見た日本童謡史」 大月書店  1994
26、アレキサンダー・ヴィデシュニック著 金子登・金子エリカ共訳「ウィーン少年合唱団」東京音楽社 1969
27、ラインハルト・ティール著 堀江みどり訳 「天使はうたう」 東京音楽社 1980
28、ケネス・S・ホイットマン著 小林利之訳 「フイッシャー・ディスカウ」東京創元社 1985
29、カンティド・ボンヴィテイーニ著 白崎容子訳 「ルチアーノ・パヴァロッティ」音楽の友社 1993
30、ヘルマン・プライ著 原田茂生・林捷訳 「ヘルマン・プライ自伝」 メタモル出版 1993
31、ホセ・カレーラス著 酒巻和子訳 「自伝・奇跡の復活」  音楽の友社 1989
32、家里和夫著 「スゼーの肖像」 春秋社 1988
33、長谷川新一著 「世界の少年合唱をたずねて」 東京音楽社 1972
34、竹宮恵子著 「鏡の国の少年たち」 新書館 1980
35、島田祐子著 「オペラとロックそして演歌」日本放送出版協会 1980
36、永田文夫著 「世界の名曲とレコード・シャンソン・カンツォーネ編」 誠文堂新光社 1967
37、五十嵐喜芳著 「幸福だった少年時代」〜 「くらしの中の音楽」音楽の友社 1960
38、五十嵐喜芳著「五十嵐喜芳自伝 わが心のベルカント」水曜社 2011
39、美輪明宏著 「紫の履歴書」 角川書店 1983
40、東京書籍編 「ひとりで ふたりで みんなと」 東京書籍 1992
41、大阪教育図書編「中学生の性教育ABC」 大阪教育図書 1992
42、伊藤武敏・藤井憲・渡辺陸雄著 「変声期における歌唱指導」 教育芸術社 1985
43、関 計夫著 「劣等感からの解放」 牧書店 1961
44、観世栄夫著 「『真の花』を咲かせる技と心」〜雑誌「歴史街道」PHP 1990.11
45、神渡良平著 「天地を貫く真理を己の生き方とする」〜雑誌「致知」 致知出版社 1994.2
46、磯部俶著「遙かな友に−我が音楽人生」音楽の友社 1991
47、服部公一著「子どもの声が低くなる」 ちくま書店 1998
48、鈴木松美編著「日本人の声」 洋泉社 2003
49、ダンスマガジン編 「少年合唱団」 新書館 2004
50、堀内敬三編 「学生の音楽事典」 音楽之友社 1957
51、長谷川新一他著 「歌おう 東京少年少女合唱隊 50年の挑戦」 朝日新聞社 2001
52、杉山 知子・佐藤 桂子 「小学校高学年の歌唱と器楽に関する一考察──声質の自覚症状に関連して──」
   美作女子大学・美作女子大学短期大学部紀要 1998
53、森恭子・関綾子著  「熊本県内の小・中学生における変声期の歌唱指導における実態調査」 熊本大学教育実践研究 
   2002
54、額田 成著 「子どもの身長を伸ばす育児法と治療法」  2004

55、竹内秀男著 「変声期と合唱指導法のエッセンス」〜授業で聴かせたい変声の様子〜 教育出版 2013
56、坂本博士著 「見果てぬ夢」〜はかせの音楽談義〜 音楽之友社 1993
57、金谷めぐみ・植田浩司著 「カストラートの光と影」 西南女学院大学紀要 Vol 18 2014
58、BIGLOBE NEWS https://news.biglobe.ne.jp/trend/0630/toc_160630_8419686229.html  2016
59、井上英二著 「童謡百年史 〜童謡歌手がいた時代〜」 論創社 2018
60、棚田國雄著 「桃太郎少年合唱団とともに半世紀」 201?
61、井上博子 「少年合唱における変声に関する一考察 : 我が国とドイツの事例を通して」 https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/2229997/p017.pdf  九州大学学術情報リポジトリ  2018
62、武川 寛海 著 「逸話で綴る音楽家物語」 玉川大学出版部 1972
63、江本 弘志 著 「イタリアの歴史と音楽 おもしろ見聞録」 芸術現代社 2002
64、渡辺陸雄 著 「型破りの履歴書」 三友社出版 1995
65、桃太郎少年合唱団 「日本の少年合唱団の現状と課題」 1998



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