ボーイ・ソプラノによるCD等


 ルネ・シマール ゴールデン☆ベスト リミテッド

  題名からしてもおわかりのように、日本で制作されたルネ・シマールの限定 ベスト盤CDです。しかも、とりわけこの中に含まれているライブ録音は日本のステージで行われたものですから、日本の観客を意識して選曲されているところがあります。なお、1974年から1975年という2年間の録音ですから、13~14歳という短い期間の歌声で、しかも、その中に甲高いソプラノヴォイスを輝かせる歌から、変声期に入りかけて高音がやや落ち着きを見せた曲までが混じっていますので、その時間軸による歌の変化を聴き分けるのも、このCDの楽しみ方のポイントかもしれません。
 もちろん、デビュー曲の「鳥」から、ルネの名を日本に知らせた「ミドリ色の屋根」などは、スタジオ録音とライブを聴き比べることができます。この二つでは、同じ曲を聴いてもかなり印象が違います。また、クリスマスソングなどもあり、日本のファンのために創られたCDと言えそうです。日本語で歌われる恋の歌も多く、大意はつかんでいたでしょうが、どこまで日本語の歌詞を深く理解して歌っていたのかはわかりませんが、これぐらい声が出たら声を出すことに喜びを感じるだろうなあと思わせるほど声を張って歌うルネらしい歌唱表現を楽しむことができます。
 しかし、何といっても、ルネの魅力は、「ミドリ色の屋根」や「小さな生命」のような悲しんでいる人・苦しんでいる人を想って歌う歌と、その歌に添えられた心がストレートに伝わってくるところです。スタジオ録音では、繊細な編曲の伴奏に支えられてそれがよく伝わってきました。一方、ライブでは、観客のうちティーンエイジャー女子の「キー」「キャー」「ヒュー」といった叫び声が、伴奏だけでなく歌の中にも入ってくるので、それが気になる私は、正直言って歌の世界に入り込めませんでした。


[DISC:1]
1. ミドリ色の屋根
2. 雨上りのデイト
3. 水色の天使
4. 青空の向うへ
5. 僕の国へおいで
6. 小さな生命
7. 鳥(7~12 フランス語)
8. 美しい星
9. 日曜日の午後
10. アン・アンファン・コム・レ・ゾートル 
     普通の子供

11. 島の少年
12. 僕のママは天使
13. 君のすべてがほしい
14. 愛の翼をひろげて
15. 虹をあげよう 
16. 純白の花嫁
17. 涙のプレリュード
18. サヨナラ 少年時代
19. 朝露のきらめき
20. この旗の下で
21. 内気なマリー
22. ピアノの聴こえる道
23. クリスマス・トゥリー
24. 君にあげる子守唄 
[DISC:2]
1. 去年の夏
2. みんなあなたに
3. モントリオール讃歌(3~15 フランス語)
4. アヴェ・マリア
5. きよしこの夜
6. ジングル・ベル
7. ホワイト・クリスマス
8. オーヴァチュア
9. 僕の国へおいで (ライヴバージョン)
10. 雨にぬれても TOUTE LA PLUIE (ライヴバージョン)
11. 鳥 (ライヴバージョン)
12. ラ・メール (ライヴバージョン)
13. バラを切らないで (ライヴバージョン)
14. ヨー・ヨー (ライヴバージョン)
15. アン・アンファン・コム・レ・ゾートル 普通の子供 (ライヴバージョン)
16. 廃墟の鳩 (ライヴバージョン)
17. 小さな生命 (ライヴバージョン)
18. ミドリ色の屋根 (ライヴバージョン) 









 「セレンSEREN(星)」  カイ・トーマス

  注文してから3か月近くかかって入手した噂のCD「セレンSEREN(星)」(国内流通仕様)は、二つの意味でこれまでにないCDでした。
 その一つは、クラウドファンディングなどによって支援が集まり、デビュー・アルバム「SEREN(星)」の製作が実現したことです。イギリスにおいては、「トレブル」と呼ばれるような名ボーイ・ソプラノは、アーネスト・ロフ以来、その歌声を録音して後世に残していますが、それは、決して誰でもできるというものではなく、かなりの経済的な負担を伴うものであるということがわかってきました。しかも、このクラウドファンディングに対しては、世界中から支援が集まり、とりわけ、最近までボーイ・ソプラノであった(現在はバリトン)ノルウェーのアクセル・リクヴィンがこの企画に賛同して、CDでも共演しています。しかも、「SEREN(星)」という題名の曲は、このCDにありません。このCD全体を包括する題名として、この「SEREN(星)」という題名が選ばれたのでしょう。ウェールズ語で、「SEREN(星)」は、自ら光を発する天体という意味を持っているようです。カイ・トーマスは、自分の歌集に自らが発光体となって世を照らすという意味を持たせたかったのかもしれません。
 もう一つは、ライナー・ノートをカイ・トーマス自身が書いていることです。幸い私が購入したCDには、生塩明彦訳の日本語訳のライナーノートがついていました。それは、ただ、その曲の概略を解説するだけでなく、なぜこの曲をこのCDの1番最初に持ってきた理由とか、この曲は、もともとバリトンのための曲であるとかいった、自分とのかかわりにおいてその曲の位置づけや解説をしていることが大きな特色になっています。
 選曲は、いわゆるボーイ・ソプラノの定番曲と呼ばれる宗教曲から、ミュージカル「レ・ミゼラブル」よりバリケードの中で眠るマリウスを見ながら、コゼットのためにもマリウスを生きて帰らせたいと願ってジャン・バル・ジャン(バリトン)が歌う「彼を帰して」や、郷土のウェールズの民謡「スオ・ガン」「とねりこの木立」のような曲までがちりばめられています。また、その歌声は、ただ透明度の高い高音がどこまでもよく伸びるというだけでなく、そこに柔らかな温かみを感じます。歌声としてのボーイ・ソプラノの成長を考えるとき、ただ高い声が出るというだけでなく、そこに柔らかな温かみが加わって、聴いていて包み込まれるような感覚にとらわれます。また、特別出演のような形で参画したアクセル・リクヴィンのバリトンは、変声してからまだ2年ぐらいですが、芳醇な響きを感じさせます。むしろ、少年時代のバロックの演奏に見られた技巧とは違う側面を感じさせてくれます。


【曲目】
(1)エセンヴァルズ:オンリー・イン・スリープ
(2)ウェールズ民謡:スオ・ガン
(3)ヴォーン・ウィリアムズ:サイレント・ヌーン
(4)ヘンデル:オンブラ・マイ・フ
(5)クロード=ミシェル・シェーンベルク:彼を帰して
  (「レ・ミゼラブル」より)
(6)モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
(7)モーツァルト:主を褒め称えよ
(8)ヘンデル:私を泣かせてください(「リナルド」より)
(9)フォーレ:慈愛深いイエスよ(「レクイエム」より)
(10)ジョン・ブランニング:主は私の羊飼い)
(11)スタンフォード:青い鳥
(12)ウェールズ民謡:とねりこの木立
(13)ヤイロ:ザ・グラウンド 


 【演奏】
カイ・トーマス(ボーイ・ソプラノ)
アクセル・リクヴィン(バリトン 6)
ロバート・ルイス(ディレクター)、
ロンドン・モーツァルト・プレーヤーズ 3.5.6.7.10)
ペガサス室内合唱団 1.7.11)
ボーン聖トーマス教会聖歌隊 2.13)
ボーン・アンサンブル 2.4.8.9.12.13)
ジュリアン・クーパー(オルガン 9)

【録音】
2019年7月1日、10月3日-4日、ボーン聖トーマス教会
(ファーナム、イギリス)
2019年9月23日、セント・ジョン・ザ・エヴァンゲリスト教会
(アッパー・ノーウッド、ロンドン)
2019年11月28日、ソフィエンベルグ教会(オスロ、ノルウェー)



 EDELweiss?   エーデルワイスかしら?

   この“EDELweiss? ”という2枚組のCDの題は、EDELを大文字で書き、weissを小文字で書いて?を付け、一瞬ギャグではないかと思わせます。しかし、聴いてみると、1枚目は、録音時(2016年)における聖フロリアン少年合唱団のトップソリスト サイモン・ベルンハルトのソロによる「エーデルワイス」の清純な歌声が聴こえてきて、その後も、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」からおなじみのナンバーが英語で歌われます。何じゃこれは?と思っていると、宗教音楽、オペラ、オペレッタとソロやデュエットを交えた少年合唱が続き、男声アンサンブル、民謡、ヨハンシュトラウス一家のワルツ・ポルカ・マーチと異質な曲が次々とつながっていくことで、この聖フロリアン少年合唱団のレパートリーがいかに広いかを知らされることになります。2枚目は、OBで、カウンター・テナーのアロイス・ミュールバッハーのソロで古典派からロマン派の歌曲やオペラのアリアが披露され、二重唱、サイモン・ベルンハルトのソロ、独唱と男声四重唱、最後は再びアロイス・ミュールバッハーのボーイ・ソプラノ ソロで締めくくるというこのCD集は、聖フロリアン少年合唱団が、かつてのいわゆる地味な少年合唱団から、華のある少年合唱団へと変身したことを物語っています。当然のことながら、その仕掛け人は、音楽監督で、指揮、ピアノ伴奏も自ら行っているフランツ・ファルンベルガーです。フランツ・ファルンベルガーが音楽監督になることで、アロイス・ミュールバッハーはソリストとして見い出され、歌声や技術と共に、人間的な感化も受けているように感じます。そして、このCDでは、従来の聖歌隊や少年合唱団が扱わなかったような曲まで積極的にレパートリーに採り入れています。音楽の世界でも、当然のことながら、時代の感覚を読んで行かなければ、人の心は離れていきます。そういう意味でも、フランツ・ファーンベルガーは、資質の高い団員をソリストとして抜擢することで、新たな道を切り開いているように思えるのです。さて、YouTubeに公開された最近の演奏を観ると、ステージ効果を考えた数々の演出がなされています。その演奏は、気取ったところがなく、しかしながら一定の気品を保っていて、聴き手を楽しませてくれます。

 [CD1]
≪ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」より≫
1. エーデルワイス(ソロ)
2. ドレミの歌
3. ひとりぼっちの羊飼い
4. エーデルワイス(合唱)
≪宗教音楽≫
5. メンデルスゾーン:詩篇第100篇
6. ブルックナー:アヴェ・マリア
7. モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
8. ウィリアム・ゴメス:アヴェ・マリア
9. マーク・ヘイズ:私のちいさな光
≪オペラ、オペレッタ≫
10. ビゼー:ハバネラ(オペラ「カルメン」より)
11. レハール:ヴォルガの歌(オペレッタ「ロシアの皇太子」より)
12. オッフェンバック:舟歌(オペラ「ホフマン物語」より)
13. ロッシーニ:猫の二重唱
≪男声アンサンブル≫
14. スコットランド民謡:ロッホ・ローモンド
15. バート・ライスフェルド:私の小さな緑のサボテン
16. ゲイリー・ジュールズ:狂った世界
≪民謡≫
17. 森の中と荒野の上
18. Heissa, Kathreinerle
19. 元気で、一緒にいて
≪ワルツ、ポルカ、マーチ≫
20. J.シュトラウス2 世:ウィーンの森の物語
21. J.シュトラウス2 世:美しく青きドナウ
22. J.シュトラウス2 世:トリッチ・トラッチ・ポルカ
23. J.シュトラウス1 世:ラデツキー行進曲
 [CD2]
≪アロイス・ミュールバッハーのソロ≫
1. モーツァルト:夕べの想い KV 523
2. モーツァルト:すみれ KV 476
3. シューベルト:音楽に寄せて Op.88-4
4. シューベルト:アヴェ・マリア Op.52-6
5. R.シュトラウス:あなたは私の心の王冠 Op.21-2
6. R.シュトラウス:黄昏の夢 Op.29-1
7. R.シュトラウス:夜 Op.10-3
8. R.シュトラウス:明日! Op.27-4
9. R.シュトラウス:献呈 Op.10-1
10. ブルックナー:アヴェ・マリア
11. ヘンデル:オンブラ・マイ・フ
12. ヘンデル:私を泣かせてください
≪二重唱≫
13. ドリーブ:アヴェ・マリス・ステッラ
14. ロイド=ウェッバー:ピエ・イエズ
≪サイモン・ベルンハルトのソロ≫
15. シューベルト:野ばら
16. シューベルト:ます
17. モーツァルト:春への憧れ
18. ベルンハルト・フリース:子守歌
≪独唱と男声四重唱≫
19. シューベルト:セレナード D920
≪アロイス・ミュールバッハーの名録音≫
20. プッチーニ:誰も寝てはならぬ

フランツ・ファルンベルガー(指揮、ピアノ)
サイモン・ベルンハルト(ボーイ・ソプラノ)
アロイス・ミュールバッハー(カウンター・テナー)

 Heintje (ハインチェ)  Seine Grossen Erfolge 「彼の偉大な業績」

   少年時代に受けた栄光は、その人の人生にとって幸か不幸かはわかりませんが、「彼の偉大な業績」と題された3枚組のCD集は、ハインチェの少年時代の歌の集大成と言えるものでしょう。ビキシオ作曲の「マンマ」は、同名の映画の主題歌としてベニアミーノ・ジーリの歌唱によって世界に広まりましたが、第二次世界大戦中はイタリアの兵士達は軍歌のようにこの歌を歌って、故郷の母を恋い慕ったそうです。この歌は、戦後はロベルティーノによって新たな命を与えられました。それから数年後に歌われたハインチェの歌「Mama」は、CDの1曲目ですが、健康的で声量ある力強いアルトの声で朗々と歌い上げられます。また、声質はアルトでありながら、高音もそのままの音色で歌い上げるところに特色があります。ところが、全部通して聴くと、2曲目のロマンティックな雰囲気の「Ich bau dir ein Schioss(城を建てます)は、その雰囲気を感じさせますが、日本では「庭の千草」として紹介されたアイルランド民謡が原曲の「Letzte Rose in Unser'm Galten」は、哀愁を感じるよりも、むしろ健康的な歌で、3枚39曲全体がほぼ同じ雰囲気の歌に聞こえてきます。これは、戦後の復興が軌道に乗ってきたその時代の西ドイツが求めていた少年像をそのまま歌に表したような曲という言うこともできます。そのような意味では、恋の歌でも色気に欠けるところもあります。「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉があるように、歌は世相を表しています。

 ROBERTINO(ロベルティーノ)

  芸名のファーストネームを題名とした24曲入りのCDは、海外から購入したものです。残念なことに、このCDのカバー写真はどう見ても青年時代のもので、この歌が歌われた頃の10代前半の少年時代の写真ではありません。しかし、70代になった現在も現役のカンツォーネ歌手であるロベルティーノにとっては、人生のある時期の写真であることに間違いありません。
 このCD集は、10代前半に歌われたもので、「オー・ソレ・ミオ」や「サンタ・ルチア」のような古典的なカンツォーネ・ナポリターナをはじめ、「ルナ・ロッサ」や「ロマンティカ」のような第二次世界大戦後の比較的新しいカンツォーネ、シューベルトの歌曲の「セレナーデ」「アヴェ・マリア」、ブラームスの「子守唄」、歌謡曲といってもよい「ジャマイカ」まで幅広い曲が収められています。しかも、これらは約3年間の間に歌われたものです。
 さて、24曲通して聴くと、カンツォーネ・ナポリターナを中心とした25センチLPとは違った感想をもつことができました。カンツォーネ・ナポリターナは、恋の歌でもかなり子どもらしさを前面に出していましたが、大人の恋の歌では、それとは違うものが聞こえてきました。つまり、声のトーンは、ボーイ・ソプラノそのものなのですが聖歌隊的な清純な響きではなく、わざと崩した歌い方をして、大人のセクシーさとも言えるものを感じさせるというギャップがこの少年歌手の本質的な魅力ではないでしょうか。
 新たな発見としては、この中で歌われている「マンマ」「ガリオーネ」「シューベルトのセレナーデ」「ピノキオへの手紙」という曲におけるロベルティーノの歌いっぷりが、竹宮恵子編のLP「過ぎゆく時と友だち」で歌ったビクター少年合唱隊員 久世基弘や日向理(ひなたおさむ)の歌の節回しや伴奏のオーケストラの編曲にも大きな影響を与えているということです。そのような意味では、ロベルティーノは、このような形で日本にも影響を与えたと言うことができるでしょう。


 『Let’s Go! 令和(れいわ)キッズ こどもヒット・ソング』より
岡村要の「リメンバー・ミー」

  少年は1年ぐらいの間に歌においてどれぐらい成長するのだろうか。そんなことを考えさせる岡村要の「リメンバー・ミー」の歌唱です。最近は、CDのうちの1曲だけを購入することもできるようになってきましたが、この1曲聴きたさにCD『Let’s Go! 令和(れいわ)キッズ こどもヒット・ソング』 を買いました。昨年録音した「めざせ! ミュージカル☆キッズ」の中の「メモリー」にみられたような劇的であってもあくの強さを排した清純な歌になっています。
  もしかしたら、「メモリー」は舞台上で歌う歌として劇的に歌い、「リメンバー・ミー」は、清純に歌って歌い分けているのかもしれません。日本においては石橋陽彩によって創唱されましたが、明るい声質を生かしてラテン的な雰囲気を醸し出している石橋陽彩の「リメンバー・ミー」と比べ、岡村要の歌は、高音はややファルセット気味ですが、全体的には清純さを前面に出した透明度の高い歌唱です。このCD発売時に中学2年生である岡村要にとって、ボーイ・ソプラノの一番美しい時期にその歌声をレコーディングすることができ、また、それを聴くことができるのは至福という言葉がふさわしいと思います。


 「あなたに会いたい」「Time To Say Goodbye」 比嘉いつき

  令和元(2019)年6月に発売された比嘉いつきのCDは、シングルの2曲ではありますが、日本のボーイ・ソプラノのCDとして特筆できるものです。声質は優しく柔らかいソプラノですがドラマティックな表現力もあります。メイン曲の「あなたに会いたい」は、曲そのものは昭和の歌謡曲風ですが、折り目正しい歌い方で、懐かしさ以上の温かい情愛を感じる歌になっています。「Time To Say Goodbye」は、アンドレア・ボチェッリによって「Con Te Partirò」として創唱され、サラ・ブライトマンとのデュエットや表題にもなっている英語の歌詞によって世界的に広がりました。比嘉いつきは、この歌をイタリア語でオペラティックに歌い上げ、むしろこの曲の方がメイン曲(EPレコードの時代ならA面)ではないかとさえ思わせます。このCD発売時は小学4年生ということですから、これからボーイ・ソプラノの更なる高みに向かって伸びていくことが期待されます。

 Soli Deo Gloria - Gud Alene Har Aren - 神のみが名誉を持てり-
ベンヤミン・イーサクセン

 ベンヤミン・イーサクセン(あるいはイサッツシェン Benjamin Isachsen)が2010年3月15日にリリースしたCDは、前作と同傾向の歌が集められており、バロックのヘンリー・パーセルから古典派・ロマン派の作曲家はもとより、ノルウェーのロマン派の作曲家 シンディング、アメリカの讃美歌の作曲家 ローウェル・メイスン作曲の「主よ、御許に近づかん」までの作品が集められています。曲は前作と比べて知られていない曲が多いように感じます。おそらく、前作の1年後ぐらいに録音されたのでしょう。歌声そのものは前作よりも母性的で成熟した感じがします。録音時が前作の1年後なら、15歳か16歳ということになり、現代のボーイ・ソプラノとしては驚異的な年齢です。1枚目と選曲の理念はほぼ同じではないかと思います。

1.ノールウェー民謡 & マティアス スカード 「日光浴」
2.ルードイッヒ イルゲンス イエンセン & ハルディス モーレン ヴァ―サス 「祭壇」
3.ヨーゼフ・ラインベルガー「パストラーレ」
4.ノールウェー民謡 & バーント ストリーレン「イム・イット・イット・ヒムメリック・エイ・ボルグ」
5.バッハ 「イエスは私の喜びのまま」
6.メンデルスゾーン  「ポール」より「アリア」
7.バッハ 「おお、イエス様、おお、やさしいイエス様」
8.モーツァルト 「ラウダーテ ドミヌム」
9.ヨハン・ゴットフリード・ヴァルター 「トマソ アルビノーニの協奏曲 I F-Dur: I. アレグロ 」
10.ヨハン・ゴットフリード・ヴァルター 「トマソ アルビノーニの協奏曲 I F-Dur: II. アダージョ」
11.ヨハン・ゴットフリード・ヴァルター 「トマソ アルビノーニの協奏曲 I F-Dur: III. アレグレット」
12.C.シンディング「主の母」
13.バッハ「あなた、あなた、エホバ、私は歌いたいのです」
14.ドイツの曲「誰もそれほど安全ではない 」
15.ローウェル・メイソン「主よ、御許に近づかん」
16.ヨーゼフ・ラインベルガー 「夜の歌」
17.ノールウェー民謡「私はイエスの名の下に眠ることを知っています」
18.ヘンリー・パーセル「夜」


 Canto Ergo Sum - われ歌う、ゆえにわれあり‐ ベンヤミン・イーサクセン

  ベンヤミン・イーサクセン(あるいはイサッツシェン Benjamin Isachsen)が2008年6月~8月に録音し、2009年5月18日にリリースされたCDは、バッハ・ヘンデル等の古典派から、シューベルトやメンデルスゾーン等のロマン派までの著名な宗教曲を中心にしながらも、日本ではあまり知られていないノルウェーの宗教曲も歌っており、典型的なクラシック系のボーイ・ソプラノです。ベンヤミン・イーサクセンが1993年生まれであるところから、15歳ぐらいではないかと思われます。これは、少年の変声期が前掲化している現代においては、長くボーイ・ソプラノを維持できた例と言えましょう。その歌声の特色は、ボーイ・ソプラノの特徴でもある金属的で透明度の高い聖堂に響き渡るような響きではなく、むしろ女声的あるいは、母性的な温かさを感じる歌声です。それは、シューベルトの「アヴェ・マリア」を聴くと特に感じます。

1.ヘンデル オラトリオ「メサイア」よりアリア 「美しきかな喜びの音信を告ぐるものの足よ」
2.バッハ 「われは忠実に静寂を守り 」
3.バッハ/グノー 「アヴェ・マリア」
4.ガブリエル・フォーレ 「レクイエム」より「ピエ・イエズ」
5.トロン・クヴェルノ 「エレミア - カンティーレナ」
6.ハイドン 「神なる聖ヨハネのミサ・ブレヴィス」
7.シューベルト 「アヴェ・マリア」
8.シェル・モルク・カールセン 「夜の訪れは船足速く」
9.ジェフリー・バーゴン 「ヌンク・ディミティス」
10.メンデルスゾーン 「鳩のように飛べたなら」
11.バッハ 「御身が共にいるならば」
12.トラディショナル「天つみ国に 」
13.ジークフリート・カルク=エーレルト「今すべての森、静かなり」


 Moray West Scotland Boy (モーレイ・ウェスト スコットランドの少年)

  サブタイトルにもあるようにスコットランドの民族楽器バグパイプの伴奏で始まる民謡風の歌が2曲続き、モーレイ・ウェストの歌声もイギリスの伝統的な歌声の少年で、そういう系統の素朴な歌を歌う少年なのかと思って聴いていたら、3曲目は、いきなりモーツァルトの歌劇「魔笛」の「夜の女王のアリア」です。しかし、このアリアも華麗で金属的な技巧を聴かせるというよりも、そこにそこはかとない自然さを感じてしまいます。また、初めて聴く曲もありましたが、古楽・宗教曲・民謡・現代曲といろいろなジャンルの歌をそれぞれの雰囲気に合うように歌い分けているところが心に残ります。自己主張の強い歌ではなく、それぞれの曲に合わせた歌い方ができる少年だと感じました。また、バックコーラスの少年たちの歌声は、やや幼く聞こえますが、決して不調和にはなっていません。なお、モーレイ・ウェストは、1995年、英国スコットランドのグラスゴーに生まれました。スコットランド国立少年合唱団とスコットランド王立交響楽団付属ジュニアコーラスで訓練を積んでいます。このCDは、そんなモーレイ・ウェストの多様な側面を収めています。

1. Highland Cathedral
2. Miss You
3. Queen Of The Night
4. Music For A While
5. Iona Boat Song
6. The Lord Is My Shepherd
7. You Raise Me Up
8. Down In The Glen
9. Refuge
10.Bist Du Bei Mir, BWV 508
11. In Dreams
12. Hear Ye Israel
13. Laudate Dominum
14. Ombra Mai Fu
15. Believe
16. Will Ye No Come Back Again



 DIE CHORJUNGEN

 アウクスブルク大聖堂聖歌隊のトップソリストを務めるヤン(Jan Enderle 13歳)、ゲオルグ(Georg Star 14歳)、ニコラス(Nicolas Schwandner 13歳)の3人でユニットを組んで、クロスオーバーに近いクラシック曲を演奏させたらどうだろうという企画のもと、2014年にディ コールユンゲン(Die Chorjungen)は誕生しました。そのような企画ゆえに、選曲も、彼らにとっての母語である"An Der Schonen, Blaunen Donau" や、"konnt ich fliegen wie Tauben dahin"のようなドイツ・オーストリア系の曲よりも、"Tears In Heaven"、"Amazing Grace"、 "You Raise Me Up"等イギリス系の曲が多く、しかも、 "Ave Maria"や"Miserere"のような宗教音楽が多いこともあって、歌声もまたそれらの曲に似つかわしく硬質で金属的な響きと言うよりは、全体的に柔らかで包み込むような感じを受けます。

1.エリック・クラプトン「ティアーズ・イン・ヘヴン」
2.ヨハン・シュトラウスⅡ「美しく青きドナウ」
3.バッハ/グノー「アヴェ・マリア」
4.ハワード・グッドール「この人を見よ」
5.フェリックス・メンデルスゾーン「鳩のように飛べたら」
6.アンドリュー・ロイド・ウェバー「ピエ・イエズ」
7.トラディショナル「アメイジング・グレイス」
8.ガブリエル・フォーレ「レクイエム」より「楽園にて」
9.トラディショナル「朝の光は輝けり」
10.ラインハルト・メイ「雲の上」
11.ヨハン・アブラハム・ペーター・シュルツ「月は昇りぬ」
12.トラディショナル「オールド・ラング・サイン 」
13.グレゴリオ・アレグリ「ミゼレレ」
14.ロルフ・ラヴランド「ユー・レイズ・ミー・アップ」


 めざせ! ミュージカル☆キッズ
~歌ってみたい憧れの名曲&オーディションに役立つカラオケ集

 最近の日本において、ミュージカルは、お稽古事としても注目されつつあり、その中には、プロの子役を目指す子どもも増えてきています。日本の少年合唱団の中で、創立以来長年ミュージカルに力を入れてきたのは、北九州少年合唱隊です。また、TOKYO FM 少年合唱団も、年によってはオペラや、合唱ミュージカルにも挑むこともあり、最近では広島少年合唱隊も毎年のように合唱ミュージカルに挑んでいます。ところで、合唱団員を育てるのと、ミュージカル劇団員を育てるのでは、育成の理念や方法にかなり違いがあると考えられます。
 さて、子役が主演を務めるミュージカルにおいて、少女の場合は「アニー」が有名です。少年の場合は、「ライオンキング」においてヤング・シンバが重要な役です。とりわけ、2017年に上演された「ビリー・エリオット」は、日本の少年にこの役を演じることができるかと危惧されましたが、ビリーは5人(マイケルは4人)の子役によって見事に演じられ、2020年には再演が決定しています。また、主役ではありませんが、東宝の「レ・ミゼラブル」でガブロージュ役を演じた子役は、長じて有名な俳優やミュージカル俳優になっています。ところで、これらのミュージカルのオーディションは、たいへんな狭き門と言われています。ミュージカルを目指すには、歌・ダンス・芝居の3つの技術が必要となります。
 このうち、歌に特化したCD「めざせ! ミュージカル☆キッズ~歌ってみたい憧れの名曲&オーディションに役立つカラオケ集」が、発売されました。女優、声優、歌手であり、ディズニー映画で、歌の部分の吹き替えを担当することが多い伊東えりの指導の下、100名を超えるオーディションで選ばれた子どもたちと、テレビや舞台で活躍する合唱団の子どもたちが歌う、ミュージカル&映画の名曲・人気のこどもの歌が、全曲カラオケつきで発売されました。収録曲は、次のようです。

(Disc1) 歌入り (Disc2) カラオケ
●憧れのミュージカル&映画ナンバー
01. ビビディ・バビディ・ブー~「シンデレラ」より
02. チキ・チキ・バン・バン~「チキ・チキ・バン・バン」より
03.雲の上のお城~「レ・ミゼラブル」より
04.私のお気に入り~「サウンド・オブ・ミュージック」より
05.トゥモロー~「アニー」より
06.パート・オブ・ユア・ワールド~「リトル・マーメイド」より
07.どこまでも~How Far I'll Go~ ~「モアナと伝説の海」より
08.友だちはいいもんだ~「ユタと不思議な仲間たち」より
09.スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス~「メリー・ポピンズ」より
10.ドレミの歌~「サウンド・オブ・ミュージック」より
11.ジッパ・ディー・ドゥ・ダー~「南部の唄」より
12.メモリー~「キャッツ」より

●人気のこどものうた
13.手のひらを太陽に
14.にんげんっていいな
15.あめふりくまのこ
16.アイスクリームのうた
17.ドロップスのうた
18.上を向いて歩こう
19.さんぽ~「となりのトトロ」より
20.君をのせて~「天空の城ラピュタ」より
21.〈ボーナス・トラック〉民衆の歌~「レ・ミゼラブル」より (カラオケのみ)

 ここでは、本ホームページの趣旨に従って、少年(少女と交互)によって歌われているものを紹介します。
 「ジッパ・ディー・ドゥ・ダー」は、1946年公開のディズニー映画『南部の唄』の挿入歌で、1947年のアカデミー歌曲賞を受賞している曲です。10人の少年の合唱(一部ソロ)によって歌われていますが、明るい爽やかな声で曲想にあった歌が歌われています。「メモリー」は、ボーイ・ソプラノとして一世を風靡したアレッド・ジョーンズによっても歌われましたが、その歌は歌曲の延長線上にありました。岡村要は、曲の流れによって声を使い分けながら大きな山場をつくり、劇的な表現をしています。たいへんうまみのある歌ですが、このうまみは一歩間違うと臭みにもつながるとも感じました。舞台においては、このような表現力が必要になってくるのでしょう。「あめふりくまのこ」では、男女4人(竹内彰良・東條莞典)で1番ずつ歌われていますが、物語歌という意識をもって表情豊かに歌われています。「アイスクリームのうた」では、「ビリー・エリオット」で、マイケル役を演じた山口れんの歌を聴くことができます。山口れんの歌は、童謡ということもあって大げさな表現をせず、綺麗な歌声で、「ぼくは王子ではないけれど」と歌いながら、王子様のような気品のある歌を歌っています。「ドロップスのうた」は、吉浦陽によって通して歌われていますが、ここでも、有節の童謡を一番ごとに違う歌を歌って、一編の物語を作っています。


藤木大地 ニューアルバム「愛のよろこびは」(込山直樹協演)

 日本が誇るカウンターテナー 藤木大地は、2017年4月にオペラの殿堂ウィーン国立歌劇場でのデビューしましたが、同年4月には武満徹の「死んだ男の残したものは」をはじめとする日本歌曲や英国の民謡等カウンターテナーで歌うことによってそのよさが浮かび上がる名曲集でCDデビューしました。さらに、2018年10月ワーナーからメジャー・デビュー・アルバムを発売しました。バロックから現代曲まで幅広い曲を集めたアルバムですが、フランクの「天使のパン」では、2017年7月にバーンスタイン「ミサ」で共演し、それ以後も、自らのコンサートにゲスト出演させたりして可愛がっているボーイ・ソプラノの込山直樹がデュエットで共演しています。カウンターテナーとボーイ・ソプラノの共演は、ヨーロッパでは、ペルゴレージの「スターバト・マーテル」など前例がありますが、日本においては、おそらく初めてではないでしょうか。そのような珍しさだけではなく、藤木大地の歌は言葉がよく聴き取れ、情景が浮かんでくるような歌で、込山直樹の歌は、それに清純な響きで呼応しています。

【曲目】
1 アヴェ・ヴェルム・コルプス (モーツァルト)
2 アヴェ・マリア (カッチーニ )
3 愛のよろこびは(マルティーニ ) 映画「ハナレイ・ベイ」主題歌 Original Version
4 献呈 (シューマン )
5 アヴェ・マリア (シューベルト)
6 はすの花 (シューマン)
7 それはすばらしい (リスト)
8 原光~「交響曲第2番 “復活"」 (マーラー)
9 リュートを弾くオルフェウス (ヴォーン・ウィリアムズ )
10 静かな真昼「生命の家」(ヴォーン・ウィリアムズ)
11 シンプル・ソング~「ミサ」(バーンスタイン )*
12 アヴェ・マリア (バッハ/グノー )
13 クロリスに (アーン)
14 ピエ・イエズ~「レクイエム」 (フォーレ)
15 天使のパン (フランク ) **
16 アメイジング・グレイス (賛美歌) アカペラ

【演奏】
:藤木大地(カウンターテナー)
マーティン・カッツ(ピアノ)
*上野星矢(フルート)
**込山直樹(ボーイ・ソプラノ)



ウィーン少年合唱団 ニューアルバム ”Strauss For Ever”

 ウィーン少年合唱団が、オーケストラの伴奏によるシュトラウス家のワルツやポルカのニューアルバム ”Strauss For Ever”(「シュトラウスよ永遠に」と訳すべきでしょうか)を出しました。ウィーン少年合唱団は、最近では、毎年来日していますが、カぺルマイスターの先生のピアノ伴奏が基調で、ところどころに、団員の楽器演奏が入るというのが普通になっています。かつて1960年代ぐらいのLP(後にCD化されたものもあります。)に、オーケストラの伴奏によるシュトラウス家のワルツやポルカの演奏はありますが、音響の古さはあっても、ゆったりとした優雅なウィーン情緒を楽しむことができます。最近ではウィーンフィルのニューイヤーコンサートで、2曲ぐらいを歌うことはありますが、まとめて14曲も聴けるCDが発売されたことは、快事であります。

 音響もクリアーであるとともに華やかで、来日した団員も歌っていると思うと、身近に感じます。ソリストとして名前が記載されているRobert君は、ボーイ・ソプラノの美質というべきビブラートがなく、気品のある歌い方で好感が持てます。しかし、ソリストが、Robert君一人だけかどうかは不明です。選曲も、「美しく青きドナウ」「ウィーンの森の物語」「皇帝円舞曲」のような定番のワルツ、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「鍛冶屋のポルカ」のような定番のポルカに加え、この数年の間にウィーン少年合唱団の演奏によって知られるようになってきた埋もれていた名曲の「水兵のポルカ」や「永遠に」が加えられていることに新味を感じます。アンサンブルとして面白かったのは「春の声」で、声部の絡み合いは聴き応えがありました。一方、優雅なウィーン情緒を代表する「南国のばら」や「芸術家の生涯」が最近のコンサートでもこのCDにもないのが、少しさびしく感じます。これらは、最近のコンサートでも歌われておりません。また、一度でも聴いてみたいのは「宝のワルツ」です。シュトラウス家の曲にも流行というものがあるのでしょうか。

【曲目】

1. 休暇旅行で Op.133
2. 水兵のポルカ Op.52
3. 皇帝円舞曲 Op.437
4. 山賊のギャロップ Op.378
5. ウィーンの森の物語 Op.325
6. 浮気心 Op.319
7. 春の声 Op.410
8. トリッチ・トラッチ・ポルカ Op.214
9. 千夜一夜物語 Op.346
10. 鍛冶屋のポルカ Op.269
11. ハンガリー万歳 Op.332
12. 美しく青きドナウ Op.314
13. ラデツキー行進曲 Op.228
14. 永遠に Op.193

【演奏】
ウィーン少年合唱団、
ジェラルド・ワース(指揮)
ウィーン・サロン・オーケストラ

【録音】
2018年3月-4月、オーストリア


ライト・ディヴァイン ~ トレブルとアンサンブルのためのバロック音楽』

   2003年生まれのノルウェーのボーイ・ソプラノ、アクセル・リクヴィン待望の第2弾は、ノルウェ  ーのプロ室内楽団の一つ、MINアンサンブルと共演したバロック音楽集。美しいボーイ・ソプラ ノの歌声で贈るヘンデルやラモーを中心としたトレブルと古楽のアンサンブルのための音楽は 、ボーイ・ソプラノファンにも古楽ファンにもお薦めです。ただ、この中でアクセル・リクヴィンが 歌っているのは、14曲中(ヘンデル:神の光の永遠の泉、ヘンデル(ベネット編):狩りにて(女猟 師ディアナ)、アルビノーニ:新たな恐ろしい戦争が起こる(《ラ・スタティーラ》より)、ラモー:アバリ スのエントリー(《レ・ボレアド》より)、ラモー:何が私を抑えているのか私は知らない(《ナイス》よ り)/の5曲だけで、後はトランペットを中心とした器楽曲なので、このような曲になじんでいない クラシックファンの中でもロマン派以降の曲がお好きな方には、ややワンパターンの退屈な曲 に聞こえるかもしれません。この中での代表曲は、何と言っても、ヘンデルの「神の光の永遠の泉」でしょう。装飾音が実に美しく滑らかに歌われており、おそらく、これらの歌は、初演当時はカストラートによって歌われていた可能性が高く、当時の人々を熱狂させたのではないかということが伺えます。このような曲に21世紀の今、改めて光を当てたアクセル・リクヴィンの感性や着眼点に驚きさえ感じます。しかし、師事した先生の示唆はあったとは思いますが、自分の持ち味を生かすという視点から観ると、自分をよく知っていると言えます。また、フランスのバロック・オペラの頂点を極めたラモーのオペラアリアは、前奏が長く、歌に入ると、独得の装飾音を入れながら高音を長く響かせる、様式美を重んじる作風であり、また、アクセル・リクヴィンは、それに応える演奏をしています。このCDの題名には、「トレブル」という言葉が使われていますが、それは“独唱者”という位置づけを強調したものでありましょう。
 なお、アクセル・リクヴィンは2017年の秋には変声期を迎え、2018年の現在はバリトンのオペラ歌手として新たなキャリアを歩んでおり、このアルバムはボーイ・ソプラノとしてのアクセルの無垢な歌声を記録した貴重な録音となります。変声期前に2枚のCDを出すことができたというだけでも、このボーイ・ソプラノがいかにその実力を評価されていたかということが伺えます。

【曲目】
ヘンデル(ベネット編):協奏曲ヘ長調 HWV.331/
ヘンデル:神の光の永遠の泉 HWV.74/
ヘンデル(ベネット編):トリオ・ソナタ第4番ト長調Op.5-4, HWV.399より パッサカリア/
ヘンデル:どんな情熱が音楽を盛り上げたり静めたりできないだろうか HWV.76/
ヘンデル(ベネット編):狩りにて(女猟師ディアナ) HWV.79/
アルビノーニ:新たな恐ろしい戦争が起こる(《ラ・スタティーラ》より)/
フィリップ・ヤコプ・リットラー:7声のチャッコーナ/
ラモー(オーレスキョル/
ベネット編):リトルネッロ(《イポリートとアリシ》より/
ラモー:アバリスのエントリー(《レ・ボレアド》より)/
ラモー(オーレスキョル/
ベネット編):悲しみの支度(《カストールとポリュックス》より)/
ラモー(ベネット編):バレエ・フィギュアとエール(《ゾロアストル》より)/
ラモー(オーレスキョル/
ベネット編):嵐(《プラテー》より)/
ラモー:何が私を抑えているのか私は知らない(《ナイス》より)/
ラモー(ベネット編):シャコンヌ(《優雅なインドの国々》より)

【演奏】
アクセル・リクヴィン(トレブル)、
MINアンサンブル、
マーク・ベネット(トランペット&芸術監督)、
ラザール・ミレティッチ(アンサンブル・ディレクター)

【録音】
2017年7月4日-7日、ヤール教会(ノルウェー)



少年たちだけによって歌われたペルゴレージの「スターバト・マーテル」

  ヨナ・シェンケル(ボーイ・ソプラノ)が歌ったペルゴレージの「スターバト・マーテル」の中で、私は、この曲の演奏には、①ボーイ・ソプラノ+カウンター・テナー ②ソプラノ+カウンター・テナー ③ソプラノ+アルト(メゾ・ソプラノ)の3種類の演奏があると述べましたが、これを加筆訂正する必要が出てきました。④として、ボーイ・ソプラノ+ボーイ・アルトのCDが登場したからです。ヨスト・ザルムが率いるドルトムント・アカデミー少年合唱団のソリストたちは、このCD作成のために選ばれて、猛特訓を受けたのはないかと想像されます。このCDには、ペルゴレージの  「スターバト・マーテル」だけでなく、ペルゴレージと同時代を生きたヨハン・ヴァレンティン・ラートゲーバー(1682-1750)のミサ・ブレヴィスや、ディートリヒ・ブクステフーデ(1637-1707)の悲歌「それでもなお死は逃れられないのか」が、その前後に演奏されているのも、このCDの特色と言えます。さて、「スターバト・マーテル」に絞っていえば、ボーイ・ソプラノのティツィアン・ガイヤーとボーイ・アルトのスヴェン・ヴァーグナーの歌声のバランスがよく、比較的ゆったりとしたテンポで歌っており、ティツィアン・ガイヤーは、ボーイ・ソプラノ特有の金属的でない温かい響きで歌ってます。また、高音になっても決してファルセット系の声にならずに歌い切ったところがすばらしいと思います。一方、ボーイ・アルトのスヴェン・ヴァーグナーは、これまでボーイ・ソプラノと比べて録音も少なかったため、その魅力が伝わりにくかったボーイ・アルトの包容力のある歌声の魅力を伝えることができました。2015年6月の録音ということで、これを執筆する3年後の今、このソリストたちも既に今では、この歌声を失っている可能性が高いでしょうが、それだけにかけがえのない美しいものを後世に残してくれたと思います。
  なお、調査を進めていきますと、ヌイイ聖十字架パリ少年合唱団(Petits Chanteurs de Sainte-Croix de Neuilly )のメンバー ピエール・ムザール (12歳)と、ハドリアヌス・ルフェーブル(11歳)がソロを歌っているCDが、2001年に録音されていることがわかりました。


ヨナ・シェンケルの歌声を残すために?

バッハ/ヘンデル/モーツァルト/シューベルト/メンデススゾーン/フランク:歌曲集

 少年合唱団が合唱曲を録音することはありますが、このCDは、その前年に録音された「スターバト・マーテル」同様、いやそれ以上にチューリッヒ少年合唱団にとって不世出のソリスト ヨナ・シェンケルにスポットを当てたアルバムと言えます。なぜなら、番号に〇印をつけた12曲中8曲がヨナ・シェンケルの独唱だからです。しかも、ヘンデルの「ハレルヤ」以外は、オーケストラ曲ですから、事実上のヨナ・シェンケルのソロ・アルバムと言ってよいでしょう。年齢的には14歳ぐらいの頃の演奏で、前作よりもさらにボリューム感と伸びのある歌声を堪能することができます。いわゆるボーイ・ソプラノソロの定番曲となっている曲も多くありますが、とりわけ、ヘルベックの「しもべらよ、ともに歌え」の神々しさには、心を奪われてしまいます。また、バッハ/グノーの「アヴェ・マリア」は、むしろ楚々とした歌い方を基調にしていますし、シューベルトの「アヴェ・マリア」は、濃密な情感に満ちた歌い方で対比的に聴くことができます。

1、G線上のアリア
②、オンブラ・マイ・フ
③、ヘンデルのオラトリオ・メサイアより 「シオンの娘よ大いに喜べ」
4、ヘンデルのオラトリオ・メサイアより「ハレルヤ」
5、アルビノーニのアダージョ ト短調
⑥、主をほめ讃えよ(Laudate Dominum モーツァルト)
⑦、アヴェ・マリア(バッハ/グノー)
⑧、しもべらよ、ともに歌え(Pueri Concinite ヘルベック)
⑨、天使のパン
10、パッヘルベルのカノン
⑪、アヴェ・マリア(シューベルト)
⑫、わが祈りを聞きたまえ(Hear my Prayer メンデルスゾーン)

ヨナ・シェンケル - Jonah Schenkel (ボーイ・ソプラノ)
チューリッヒ少年合唱団 - Zürcher Sängerknaben
北谷直樹 - Naoki Kitaya (オルガン)
アルフォンス・フォン・アールブルク - Alphons von Aarburg (指揮)



ヨナ・シェンケル(ボーイ・ソプラノ)が歌ったスターバト・マーテル

 わずか26歳という短い生涯の死の直前、最後の力をふりしぼるかのように作曲されたペルゴレージ(Giovanni Battista Pergolesi, 1710~1736)の「スターバト・マーテル」は、近年バロック音楽に新たな光があてられるようになってくる中で、演奏・録音される機会が増えてきました。我が子が付けられた十字架のもとに佇む聖母の気持ちを歌ったこの曲の演奏は、ソプラノとアルトのパートに次の3種類があります。①ボーイ・ソプラノ + カウンター・テナー ②ソプラノ + カウンター・テナー ③ ソプラノ + アルト(メゾ・ソプラノ)しかし、作曲された時代的にも本来の姿は①であると思います。この演奏の代表盤としては、カウンター・テナーの第一人者ルネ・ヤーコプスがセバスチャン・ヘニッヒの清澄なボーイ・ソプラノを従えた名盤がありますが、あくまでも主役はルネ・ヤーコプスです。このCDは、むしろ、チューリヒ少年合唱団の名ソリスト ヨナ・シェンケル(ボーイ・ソプラノ)のやがて消え去る歌声を残そうと企画されたものかと思います。聴いていても、ヨナ・シェンケルとアレックス・ポッター(カウンター・テナー)とは対等な感じがします。録音は、2013年1月24-27日 チューリヒ・ノイミュンスター教会ということですから、ヨナ・シェンケル12歳ぐらいの時の歌声ということができます。その声は、明るい清澄さを基調としながらも、曲によっては陰影を感じさせるところが魅力的です。

【曲目】
(1)ペルゴレージ: スターバト・マーテル(35:17)
(2)グレゴリ: 合奏協奏曲Op.2-9(3:38)
(3)グレゴリ: 合奏協奏曲Op.2-10(5:05)

【演奏】
カプリッチョ・バロック・オーケストラ(リーダー:ドミニク・キーファー)
(1)チューリヒ少年合唱団(アルフォンス・フォン・アールブルグ:合唱指揮)
ヨナ・シェンケル(ボーイ・ソプラノ)
アレックス・ポッター(カウンター・テナー)

【録音】
2013年1月24-27日 チューリヒ・ノイミュンスター教会


未来和樹のデビュー盤「たまねぎたまちゃん」
 写真左CD 写真右 未来和樹デビューコンサートちらし

  平成29(2017)年、日本人キャストによるミュージカル「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」において、主演のビリー役を演じた未来和樹は、その2年前に童謡でCDデビューしていることがわかりました。曲は赤塚不二夫作詞・筒井広志作曲の「たまちゃんなみだがめにしみて」とやなせたかし作曲・小森昭宏作曲の「おんぶマン」の2曲です。前者は、たまちゃんを泣かしたり、笑わせたり、怒らせたら、涙が目にしみるからだめよというあたたかいメッセージが伝わるような歌です。むしろ、注目すべきは後者で、張りのある明るい声の弾むような歌で、基礎のしっかりした歌を歌っています。なお、NPO日本国際童謡館かながわ主催で、 平成28(2016)年3月28日(月)新宿文化センター小ホールで、「童謡を未来の風にのせて 未来和樹デビューコンサート」が行われ、この2曲以外にも「かわいい魚屋さん」「小さな木の実」「富士の山」「夕焼小焼」「黒ネコのタンゴ」ほかが歌われたようです。未来和樹の持ち味からして、「小さな木の実」など、情愛あふれる歌に仕上がっていたのではないかと思われます。

MIKEY ROBINSON Boy Soprano
マイキー・ロビンソン  ボーイ・ソプラノ


  マイキー・ロビンソンがCDを出してから約3か月。偶然なことに本ホームページ開設の記念日に入手することができたので、急遽文章化して掲載します。CDは全16曲ですが、そのうちピアノの師であり伴奏者のバートランド・リーのピアノソロが2曲入っていますので、マイキー・ロビンソンが歌っているのは14曲です。宗教曲からオペラのアリア、歌曲からクラシカル・クロスオーバークロスオーバー・ミュージカルナンバー日本の唱歌まで多様な歌を聴くことができます。曲ごとに求められるものは異なりますが、カッチーニやバッハ=グノーの「アヴェ・マリア」や「アヴェ・ヴェルム・コルプス」「天使のパン」のような宗教曲では清澄さや様式美を大切にしながらも、多くの曲では濃密な情感を味わうことができるアルバムになっています。昨年の10月に名古屋で実際の演奏に接していますので、その時聴いた曲は、一層緻密な歌になっています。「ブライト・アイズ」や「ダニーボーイ」のような曲にこそマイキー・ロビンソンの濃密な情感という歌の本領が発揮されていると感じます。明るい声質は、ともすれば軽く感じられるものですが、マイキー・ロビンソンの情感豊かな歌は、むしろ濃密さを感じさせます。


1 「アヴェ・マリア」(カッチーニ)
 カッチーニの「アヴェ・マリア」は、ソ連のウラディーミル・ヴァヴィロフの作曲であることが最近では明らかになっています。マイキー・ロビンソンの歌唱は、ただ流麗に声を響かせるだけでなく、高音域になるにつれて透明度が高くなり、清澄な旋律の美しさを浮き彫りにするように仕上がっています。

2 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」(モーツァルト)
 マイキー・ロビンソンは、モーツァルトのこの曲がもっている深い祈り心を浮き彫りにするだけでなく、転調による曲想の微妙な変化や陰影の部分を味わい深く歌っています。

3 「天使の糧」
 「天使のパン」という呼び名で知られるフランク作曲のこの曲に添えられたせっせつとした祈り心は、繰り返して歌われるたびに深まっていきます。

4 アヴェ・マリア(バッハ=グノー)
 ボーイ・ソプラノの定番曲になっているこの曲をマイキー・ロビンソンは、前半をやや抑え気味に歌いながら、大きな山場を創り上げるように構成美を大切に歌っています。

5 パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825(バッハ) ピアノ:バートランド・リー

6 歌劇「フィガロの結婚」より「恋の悩みを知る君は」(モーツァルト)
 この歌唱は、コンサート・ヴァージョンでしょうが、日本のステージで歌った時よりも声が前に出ていことに気付きます。「僕はこんなに想っているんだよ。」という情感がより直接的に伝わってくるように感じます。

7 「メロディーのように」(ブラームス)
  冒頭より、ブラームスらしい濃密な情感のあるれる内面的に豊かな歌唱を聴くことができます。しかも、この曲は、詩がどのようにして生まれるかを描いた詩です。豊かな感情と共に、そこはかとない気品を感じる歌唱になっています。

8 「バラよ、かわいいバラよ」 (シューマン)
 かわいいバラに呼びかける冒頭の言葉のウムラウトを強調した表現が、素朴な歌全体を引き締めているだけでなく、曲全体に濃密な情感を感じることができました。これがこの数か月の間の歌への傾倒であるのではないでしょうか。

9 「風景」(アーン)
 ベネズエラ生まれで、フランスで活躍したレイナルド・アーンが作曲したこのサロン音楽風の小粋で美しい歌曲は、美しいメロディとピアノ伴奏が溶け合って、至福な小宇宙を創り出しています。

10 Mandoline (フォーレ)
 ヴェルレーヌの有名な詩にフォーレ作曲のピアノ伴奏の独得のリズム形が面白い曲ですが、マイキー・ロビンソンは、歌はユーモアの中に優美さををそこはかとなく漂わせています。

11 前奏曲 第8番 亜麻色の髪の乙女 (ドビュッシー)  ピアノ:バートランド・リー

12 「ブライト アイズ(輝く瞳)」 (アート・ガーファンクル)
 1978年製作のイギリス製アニメーション映画「ウォーターシップダウンのうさぎたち」が作られ、その主題歌「Bright Eyes」がマイク・バットの作詞、作曲で、アート・ガーファンクルが歌いました。1980年に畑正憲監修で日本語吹き替え版が作られ、主題歌の「Bright Eyes」は、井上陽水の訳詩で発表されました。このようなポップス系の歌でもマイキー・ロビンソンは、歌い崩すことなく端正な歌を歌っています。かつて、アレッド・ジョーンズが「明日にかける橋」を歌ったように。

13 「ダニー・ボーイ」(アイルランド民謡)
 アイルランド民謡の「ロンドンデリーの歌」に作詞された曲で、女性の立場で男性に別れを告げる歌として、また両親や祖父母が戦地に赴く息子や孫を送り出すという設定で解釈されることも多い歌です。抒情的な表現に優れているマイキー・ロビンソンにあった曲ということもできましょう。

14 ミュージカル映画「オズの魔法使い」より「虹の彼方に」(アーレン)
 1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』でジュディ・ガーランドが歌った劇中歌で、スタンダードナンバーとして知られ、2001年に全米レコード協会等の主催で投票により選定された「20世紀の名曲」では第1位に選ばれた名曲です。前歌と本歌の対比や、本歌の冒頭でいきなり1オクターブ声が飛ぶところや、最後のロングトーンなど聴きどころの多い曲です。

15 「レクイエム」より「ピエ・イエズ」(R・ウェッバー)
 本来は、デュエットのために創られたこの曲のソプラノパートを明るい声質のマイキー・ロビンソンは、華やかさを抑え気味にして、祈り心が伝わるように慎ましやかに歌い上げています。

16 「ふるさと」(岡野貞一)
 1914年(大正3年)の尋常小学唱歌の第六学年用で発表された代表的な唱歌を日本の血を引き継いでいるマイキー・ロビンソンは、日本語の発音も確かで有節歌曲のように1番ごとに歌い分けています。


アクセル! ~ バッハ、ヘンデルとモーツァルトのアリア集~

  カバー写真に載せられた表題が「アクセル!」というファーストネームそのものであることが印象的で、まさに「今、聴くべきはこの少年の歌声!」と言っているようです。アクセル・リクヴィンは、ノルウェー・ナショナル・オペラ&バレエの少年合唱団、オスロ大聖堂の少年聖歌隊のトップ・ソリストで、12歳の歌声と思えないほどの極めて完成度の高い歌を歌っています。
 ロマン派の旋律美に満ちた歌曲を聴き慣れた耳には、バッハやヘンデルの宗教曲やオペラアリアに多用されるメリスマが機械的に聞こえてしまうこともあるのですが、アクセルの歌は、ただメリスマの技巧を聴かせるだけでなく、そこに血の通ったドラマを創り上げています。とりわけ、ヘンデルの歌劇『アルチーナ』の「人でなし!」という冒頭の叫びに似た歌声には戦慄さえ覚えてしまいます。だからこそ、それを聴いた後の同じヘンデルの『リナルド』の「私を泣かせてください」は、心の安らぎをもたせてくれます。このような対比的な歌唱がことができることが、歌のうまさと言えるでしょう。
 また、モーツァルトの『フィガロの結婚』の「恋とはどんなものかしら」は、最近ボーイ・ソプラノによって歌われた歌を聴く機会を多くもつようになりましたが、少年ならではの秘めやかで、ときめきを感じる歌を情感豊かに歌っています。それと比べると聴くことの少ない「自分で自分がわからない」は、多感さゆえに心が落ち着かずどうしたらよいかわからない様子を歌いこなしています。「アレルヤ」では、コロラトゥーラの華やかな技巧に圧倒されながらも、技巧を聴かせるだけでない美しい歌を聴くことができます。
 なお、アクセル・リクヴィンは、アレッド2世と呼ばれているようです。声質は違いますが、歌い方はアレッド・ジョーンズによく似ています。約30年前の録音を聴くことで影響を受けているだけでなく、モデルにしているとも考えられますが、単なる模倣ではなく、自分の歌として歌いこなしています。



フィンガー5 あきら 「ぼくの好きな歌」(LP)

 フィンガー5の玉元晃について改訂していた頃、ソロアルバムを入手することができました。日本のボーイ・ソプラノがソロのCDを出すことは、今でも珍しいことですから、ボーイ・ソプラノとして全盛期であった1974年にソロのLPを出したフィンガー5の玉元晃の「ぼくの好きな歌」は、同時期にソロアルバムを出した童謡~クラシック系の坂本秀明とは違った意味で画期的なアルバムです。選曲された10曲は、すべて当時あるいは少し前に流行ったポップスのカバー曲なのですが、歌唱力を求められる曲もあり、フィンガー5のオリジナル曲とは違った楽しみ方ができます。とりわけ、ピーノ・ドナッジオが創唱し、エルビス・プレスリーによって世界的なヒット曲となったカンツォーネ風の「この胸のときめきを」とスタンダードジャズ風の小坂明子の「あなた」は、このアルバム中双璧と言える歌唱です。この2曲の曲想の違いを歌い分けているところはさすがです。ただ、10曲通して聴くと、甲高い高音を張り上げて恋の歌を歌うことが基調で、しかもイェイ!を連発するのため、同じ色調に聞こえることもあります。これは、多くの少年歌手にありがちな傾向です。


「やなせたかしのうた」
~アンパンマンのマーチ~


 

 東京・駒込の六義園前にあるフレーベル館の社屋の前には、アンパンマンの像が建っています。これは、「アンパンマン」シリーズが会社への貢献が大きかったというだけでなく、アンパンマンが日本の子どもの人間的な成長に果たしたよい感化に対する顕彰という意味もありましょう。平成26年の6月に発売されたCD「やなせたかしのうた」~アンパンマンのマーチ~は、前年に急逝されたやなせたかしの詩に作曲された代表曲が、やなせたかしとゆかりの深いフレーベル少年合唱団をはじめとする3つの児童合唱団によって歌われた18曲とカラオケバージョン4曲が収められたものです。ここでは、フレーベル少年合唱団によって歌われた9曲を中心に述べていきます。

 最初の4曲はアンパンマンの歌です。三木たかし、いずみたく、馬飼野康二と3人の作曲家によって作曲されていますので、組曲ではないのですが、4曲通して聴くと、「アンパンマン」のもっているいろいろな要素が描かれていて、まるで組曲のように聞こえてくるところが面白いです。「アンパンマンのマーチ」は、飛び抜けて有名な曲で、フレーベル少年合唱団の定期演奏会では毎回エンディングステージで全員合唱として採り上げられていますが、幼稚園児の団員も入ると、どうしても幼い歌に聞こえてしまいます。この録音に参加したのはおそらくフレーベル少年合唱団のセレクトと呼ばれる選抜チームでありましょう。この曲では、爽やかな活力を前面に出しながらも、およそ童謡とは思えない哲学的な深い歌詞には、あっけらかんとした正義ではない内省的な考えや無常観が浮かび上がってきます。それと比べると、「勇気りんりん」は、登場人物を順番に紹介する曲であるために、一本調子なところがある曲ですが、ひたすら明るく歌われています。この曲のあとに「勇気の花がひらく時」を聴くと、たいへん内面性豊かな曲で、助けを求める人に対するアンパンマンのやさしさが浮き彫りになってきます。「アンパンマンたいそう」は、「体操」という形をとった応援歌で、子どもたち一人ひとりの中にいるアンパンマンに目を向けさせた歌であることがわかります。アンパンマンは背中を押してくれますが、最終的には自分で問題解決しないといけないんだよと言っているようにも聞こえます。この曲は内から元気が沸いてくるような歌声で歌われています。なお、これら4曲のうち「勇気の花がひらく時」を除く3曲は、最初は横山潤子編曲のピアノ伴奏で歌われていますが、最後にはカラオケバージョンという形で、オーケストラの伴奏によって歌われています。オーケストラ伴奏になると、伴奏部分において楽器の多様性が楽しめます。

 「ぎんいろの太陽がもえる朝に」は、合唱曲ならではの声の重なりが美しい曲ですが、輝きに満ちた旅立ちの歌として爽やかに仕上がっています。「雪の街」は、しんしんと降り積もる雪と元気な子どもの対比が面白い曲です。「シドロアンドモドロ」は、生まれたばかりのカバの双子のよたよたしたしぐさが浮かび上がるような歌になっています。「老眼のおたまじゃくし」は、年をとっても「かえる」になれないというところがこの歌のミソで、逆に童心をいつまでも持ちつづけているおたまじゃくしに共感した歌です。やなせたかしの歌としては、「アンパンマンのマーチ」以上に幅広い世代によく知られている「手のひらを太陽に」は、誕生から半世紀が経つ曲ですが、力強い生命への讃歌であることを再発見する歌です。なお、これらの合唱曲は、作曲の力にもよるのですが、声が重なり合っても歌詞が非常にはっきりと聞き取れるところがよいと思います。また、このCDは、フレーベル少年合唱団が、昭和30年代以来日本の少年合唱の原点である「正義感に支えられた元気」という要素をきちんと受け継いでいることもわかる1枚です。なお、八千代少年少女合唱団とすみだ少年少女合唱団によって歌われた歌は、団員のほとんどが少女と考えられます、ふくよかな柔らかい声でありますが、金属的な声の少年合唱との違いがはっきりとわかります。



栗原 一朗
「永遠~Engel Song~」
『悠久の時を越えて響き渡る、天使の歌声』

三枝成彰氏作曲、大友直人氏指揮によるカンタータ『天涯。』にてソロを歌い上げた「天使の歌声」を持つ栗原一朗。
その温かくも透き通った繊細なボーイソプラノを詰め込んだ、奇跡のCDが遂に誕生。
ピアノ伴奏に数々の国際音楽コンクールで受賞をした篠崎朝子氏を迎えた永久保存版!
(amazonの紹介文より)
2014年5月10日発売
「永遠~Engel Song~」ボーイソプラノ 栗原一朗 税込1500円

【収録曲】

1、神の御子は
2、Ave Maria
3、Pie Jesu
4、Panis Angelicus
5、Amazing Grace
6、Walking In The Air
7、You Raise Me Up

 なお、試聴は、下記のアドレスでできます。
http://youtube/NWfKvXn2QEs

 これら7曲は、平成25(2013)年12月23日 東京ヴィヴァルディ合奏団 第14回ファンタジックなクリスマス ~天使の秘密~ でも歌われたものですが、この日サントリーホールでこの歌に接した人は約400人。CDでは、どのように歌われているでしょうか。CDレポートは、後日聴いてから発表します。

「永遠~Engel Song~」発売を記念して、オフィシャルサイトが立ち上がりました。
Profile  Discography  Music Video  Photo Galleryから構成された情報満載のホームページです。

http://kckuriamazon.wix.com/ichiro-kurihara

     「永遠~Engel Song~」に寄せて

  私は時々「ボーイソプラノ」や「少年合唱」のキーワードでYoutubeを検索することがあります。それは、もう3年も前になりましょうか。「我楽多荘」という信州の庭園が美しい宿や伊那の山並みを背景にIchiroという名の9歳の少年が歌う「歌の翼に」の動画を発見しました。19世紀の初めにハインリッヒ・ハイネがまだ行ったことのないガンジス川のほとりの赤い花が咲く園に憧れて、想像して書いた詩にフェリックス・メンデルスゾーンが作曲したこの曲をあくのない清純な声で流麗に歌う日本には珍しいヨーロッパ系の歌声をもった少年は、どんな少年だろう。想像は膨らんでいきました。Youtubeの動画は、それからも不定期的に次々と更新されていきました。デュエットを歌う姿が映されたとき、Ichiro君たちは、手を後ろに組んで歌う姿からフレーベル少年合唱団の団員ではないだろうかという想像が頭に浮かびました。毎年平日に東京で行われるフレーベル少年合唱団の定期演奏会に仕事を休んでまで行くことのできなかった私は、10数年前よりビデオやDVDを購入することで定期演奏会を鑑賞していました。DVDの最後に表示される団員名から、この少年は栗原一朗君に間違いなかろうと思うようになりました。それから2年、Youtubeにアップされる歌声は、次第に美しい声で歌うだけでなく、歌のもつドラマ性を増していきました。

 それは、天啓とも言える出会いかもしれません。私に多少の時間のゆとりができた平成25年7月、六本木男声合唱団倶楽部のコンサートのカンタータ「天涯。」のボーイソプラノのソリストとして初めて栗原一朗君の生演奏に接する機会を得ることができました。さらに、10月にはフレーベル少年合唱団のリーダーとして、12月には東京ヴィヴァルディ合奏団のクリスマスコンサートのソリストとして。約半年という短い間に3回も。ボーイソプラノは、変声期の直前が最もよく響き美しいと言われています。まさに、燃え尽きる前のろうそくの輝きにも似て。もしも、12月のコンサートがボーイソプラノのソリストとして歌う最後の機会ならば、再び生演奏で栗原一朗君のボーイソプラノに直接接することはなかろうと思っていたところ、ほぼ同時期にCDとして歌声を残したということを知りました。

 7曲からなる「永遠~Engel Song~」と名付けられたCDには、東京ヴィヴァルディ合奏団のクリスマスコンサートで歌われた歌声が刻まれています。それは、3歳からフレーベル少年合唱団で学び続け、周囲と調和しながら自分を活かすように努めてきた学びの成果として、得意とする清澄で透明度の高い高音域だけでなく、低音域の充実を含め、一人の少年の歌声の成長を見ることができます。最初の5曲の宗教曲では「祈り」という歌の本質が伝わってきますが、このCDの白眉ともいえるのは「Walking In The Air」や「You Raise Me Up」といった比較的最近の曲で、そこでは、歌の主題やドラマ性が浮き彫りとなっており、ボーイソプラノとしての栗原一朗君の歌の集大成と言えるものに仕上がっています。また、ピアノ伴奏の篠崎朝子氏は、これらの曲を陰影の深いものに高めています。

 1、神の御子は(神の御子は 『賛美歌』第111番)
 たいへん古い曲で、10世紀頃フランスの僧侶によって作られたと言われています。原題はラテン語で、「来たれ神へ、忠実なる者よ」という意味です。クリスマスソングの代表の一つですが、このような聖なる曲こそ、清らかなボーイソプラノで歌われることが望ましいと言えるでしょう。一朗君は、日本語と原語で1番ずつ歌っていますが、一節一節を大切に歌っています。

 2、Ave Maria(アヴェ・マリア  バッハ=グノー)
 バッハが、1722年、「平均律クラヴィーア曲集」48曲の第1曲として作曲したハ長調前奏曲をもとにして、グノーが150年後、歌唱部分の旋律を作曲して加えたものです。バッハの曲による伴奏部と、ラテン語祈祷文との美しい調和によって、敬虔な祈りの歌になっている名曲です。一朗君は流麗なだけでなく、深い祈り心を感じる歌を歌っています。

 3、Pie Jesu(『レクイエム』からピエ・イエス ラター)
 ラターの作品は、現代音楽の作曲家でありながら、フォーレの系譜につながる古典的な香りがするのが特色とも言えましょう。「レクイエム」は1985年に発表された作品で、初演にはプラシド・ドミンゴ等も参加しており、CD化されています。第3曲の「ピエ・イエズ」は、天上的な雰囲気もった佳曲で、一朗君の歌は高音になるにつれて輝きを増しています。
 
 4、Panis Angelicus(天使の糧 荘厳ミサ イ長調から フランク)
 「Panis Angelicus」は、「天使の糧」とも「天使のパン」とも訳されますが、フランクが作曲した「荘厳ミサ」の一曲です。旋律の美しさから、この曲だけがコンサートで単独に歌唱・演奏されることが多くあります。一朗君は繰り返しの部分を丁寧に歌うことで一層温和な雰囲気を醸し出しています。

 5、Amazing Grace (アメイジング グレース 讃美歌)
 作詞者はジョン・ニュートン。作曲者は不詳。作詞者のジョン・ニュートンは家庭教育において敬虔なクリスチャンの教えを受けて育ったのにかかわらず、「奴隷貿易」に携わり富を得るようになりました。やがて、それを悔い改悛したニュートンは牧師として生まれ変わり、この曲を作詞しました。この曲は、多くの歌手によって歌われていますが、一朗君は、そのような泥にまみれた曲の背景を全く感じさせない清純な歌を歌っています。ジョン・ニュートンが達した境地とは、このような世界ではなかったでしょうか。
 
 6、Walking In The Air(ウオーキング・イン・ジ・エア「スノーマン」から ブレイク)
 アニメ「スノーマン」から「ウォーキング・イン・ジ・エア」は、雪だるまと少年が手を取り合って夜空を飛びまわりますが、翌朝目覚めたら雪だるまはとけて消えているという「スノーマン」の物語の雪だるまと、ボーイソプラノというやがて消えていく声のはかなさを重ね合わせて、一朗君の哀愁あふれる歌を聴けば、せつないものを感じてしまいます。

 7、You Raise Me Up (ユー・レイズ・ミー・アップ シークレット・ガーデン)
 この曲は、「ロンドンデリーの歌」の旋律をベースに作曲されたと言いますが、哀感に満ちた旋律と「あなたが祈ってくれるから私は強くなれる」と元気を与える歌詞が不思議な融合をして、聴く人のその時の心境によって慰めや癒しだけでなく励ましや生きる勇気を与えてくれる歌にもなるのが魅力的です。リフレインで半音上げて歌うあたりから、この歌は一層心に迫るものになってきます。 



アロイス・ミュールバッハー
『ALOIS UNERHORT/ALOIS~The Boy and his Voice』


  「アロイス・ミュールバッハー (Alois Muhlbacher)」 その名を知ったのは、2010年のウィーン国立歌劇場でウィーン少年合唱団を卒団した中島信太郎とダブルキャストでヘンデルの幻のオペラ「アルチーナ」を上演した時です。その時は、日本人ソリストの登用ということが大きく採り上げられましたが、アロイス・ミュールバッハーのCDが輸入盤で次々と日本にも入ってくるにつれて、このたぐいまれなオペラシンガーとしての資質をもったボーイ・ソプラノに注目するようになりました。1995年、オーストリア中部のヒンターシュトーダーに生まれ、2005年に聖フローリアン少年合唱団に入団することで才能を開花させます。どちらかと言えば、地味な歌声の少年合唱団には似つかわしくない華やかな声と技巧的な歌いっぷりで驚かされます。
 初めてのソロCD『ALOIS UNERHORT/ALOIS~The Boy and his Voice』が録音されたのは2009~2010年にかけてで当時14~15歳、2011年にリリースされました。このCDは、オペラアリア集といったもので、いきなりモーツァルトの「魔笛」から「夜の女王のアリア」で超ド級の怒りに満ちた金切声で始まります。また、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」から「私の大好きなお父さん」や「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」は、清純な娘というよりもはかなり成熟した女性の歌を感じさせる歌を歌います。さらに、J.シュトラウス2世の「こうもり」では、コケティッシュなキャラクターでコロラトゥーラの技巧を聴かせる歌を歌ってくれます。このように多様な歌を聴かせてくれますが、映像でその容姿を見ると、スマートな少年というよりむしろぽってりした大柄なおばちゃんタイプでこのような身体から発する声だからこそ、このような華麗な歌が歌えるのだと納得してしまいます。

(収録曲)
・モーツァルト:『魔笛』~復讐の炎は地獄のように/愛の喜びは露と消え
・ドヴォルザーク:『ルサルカ』~月に寄せる歌
・コルンゴルト:『死の都』~私に残された幸せ
・グリーグ:『ペール・ギュント』~ソルヴェイグの歌
・プッチーニ:『ジャンニ・スキッキ』~私の大好きなお父さん
・プッチーニ:『蝶々夫人』~ある晴れた日に
・カタラーニ:『ワリー』~私は遠くに行きましょう
・J.シュトラウス2世:『こうもり』~田舎娘を演じたら/侯爵様、あなたのようなお方は/チャルダーシュ
・R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』~偉大な王女様
・ドリーブ:『ラクメ』~花の二重唱

 アロイス・ミュールバッハー(ボーイ・ソプラノ)
 フランツ・ファルンベルガー(ピアノ)

アロイス・ミュールバッハーの「クリスマス・リート集」
Von Hirten und Engeln ~ Wagner, Wolf, etc. : Christmas

 一人のボーイ・ソプラノのソリストが、複数枚のLPやCDを世に送るということは、ごく限られた少年だけに与えられた特典、いや栄典と言ってもよいでしょう。アロイス・ミュールバッハーの超絶技巧のオペラ・アリア集のCDは、このコーナーでも紹介しましたが、それから約2年後の16~17歳でまだボーイ・ソプラノの声を維持しているということ自体が現代では奇跡的ですが、このCDは、クリスマスにちなんだドイツ・リート集です。楽劇の方があまりにも有名なワーグナーをはじめ、ヴォルフ、レーガー、コルネリウスなど19世紀のリート作曲家たちの有名・無名の作品27曲からなるこのCDは、先のオペラ・アリアのCDのように声の力やきらびやかな技巧よりも、歌そのものを聴かせるアルバムに仕上がっています。アロイス・ミュールバッハーの声そのものの華やかな明るさは、バリトンで歌われたほの暗いドイツリートを聴き慣れた私の耳には、明るすぎるように聴こえることもあります。このCDに収められた曲の中で最もよく知られているであろうレーガーの「マリアの子守歌」など、何人かのボーイ・ソプラノのソリストの歌で聴き比べてみることもできますが、やはり飛び抜けて明るい声なのです。しかし、クリスマスが1年で一番昼が短い冬至の直後にあり、これから世が明るくなっていくことを予知させるならば、こういう歌もあってもよいのではないでしょうか。

曲目リスト
1. コルネリウス : 9つの宗教歌曲集よりあなたの国が私たちへとやって来る op.2の3
2. J.ハース : 6つの子供の歌 op.49
3. ヴォルフ : スペイン歌曲集より いざ、さすらえマリア
4. ヴォルフ : 幼な子よ、私をベツレヘムへ連れていって
5. ヴォルフ : ああ、この子供の目は
6. コルネリウス : クリスマスの歌 op.8 (全6曲)
7. レーガー : 12の宗教的なリートより ひとりの御子がわれらのために生まれたもうた op.137の3
8. レーガー : 素朴の歌より マリアの子守歌 op.76の52
9. レーガー : 12の宗教的なリートより 幼な子キリストの子守歌 op.137の10
10. ワーグナー : 女声のための5つの詩より 天使
11. F.フィリップ : 猟師 それを探したい
12. J.ハッツフェルド : 私のナイチンゲールが来る
13. ヴォルフ : メーリケ詩集より 古い絵に
14. ヴォルフ : 眠れる幼な子イエス
15. ヴォルフ : 新しい年にゲーテ詩集より
16. ヴォルフ : エピファニスの祭
17. ヴォルフ : フォン・パーストリ : 森のアドベント

 アロイス・ミュールバッハー(ボーイ・ソプラノ)
 フランツ・ファルンベルガー(ピアノ)

なお、これらのCDを私は上京時に銀座の山野楽器店で入手しましたが、通信販売のamazonでも入手できます。


TOKYO FM 少年合唱団 
天使のハーモニー ~ボーイソプラノの魅力~

 
 平成25年のクリスマスコンサートの会場で入手した「天使のハーモニー ~ボーイソプラノの魅力~」は、TOKYO FM 少年合唱団のコンサートに通っている人なら、必ずどこかで耳にしたことがある曲が集められています。これまでも、私家盤のような形で定期演奏会やクリスマスコンサートのCDがコンサート会場で頒布されたことがありますが、文字通り会場の拍手やざわめきも入ったものでした。今回のCDは、LIVE盤ということですが、録音状態も非常によくスタジオ録音と変わらないほどです。曲目は、大きく3つに分けられます。

1 女声合唱のための唱歌メドレー「ふるさとの四季」全曲 「ほたるこい」
2 クリスマスキャロルより 「ジングルベル」「ママがサンタにキッスした」「赤鼻のトナカイ」「もろびとこぞりて」
  「マリアは歩みぬ」「神の御子は今宵しも」「きよしこの夜」
3 ぼくらのレパートリー 「おお牧場はみどり」「気球にのってどこまでも」「翼をください」「BELIEVE」

 このCDには、TOKYO FM 少年合唱団の十八番と言われるような曲が並んでいます。「ふるさとの四季」は、平成25年3月の定期演奏会でも披露されましたが、流麗なピアノ伴奏に乗って四季の唱歌を端正でありながらそれぞれ違う色彩に歌い分けています。とりわけ、日本の唱歌が「われは海の子」「村祭り」のような元気な歌でさえいかに抒情的な歌であるかということがわかるような仕上がりになっています。クリスマスキャロルは、声質としては、北村協一先生が中心になって指導されていた頃と比べると、清澄さという点ではやや及ばないけれども、歌詞が非常にはっきりと歌われています。だから、クリスマスキャロルはややボリュームを絞って聴く方がよいかもしれません。また、「ぼくらのレパートリー」は、コバルト色の明るい声で歌われており、どの歌も一つのドラマであると感じさせ、最近のTOKYO FM 少年合唱団の実力を示した1枚となっています。このCDでは、クリスマスキャロルや「BELIEVE」で、Soliを多用しており、ステージと同質の歌を聴くことができます。いずれにしても、TOKYO FM 少年合唱団の今の姿を知るうえでは、貴重なCDと言うことができましょう。


幻と消えたアニメ「星の王子さま」のテーマ曲 「プチ・プランス」のCD化

 
 これまでに多くの日本の少年による独唱を生であるいは録音で聴いてきました。それは、ほとんどが童謡・唱歌や宗教曲をボーイ・ソプラノの声で歌うというものでした。そして、「荒城の月」やバッハ=グノーの「アヴェ・・マリア」などには、名唱と呼ばれるものが残っています。ところが、日本のオリジナルの少年のための独唱曲と言えば数少なくなってきます。例えば、戦前なら「昭和の子」、戦後なら「少年ジェット」等のテレビ番組のテーマ曲などを挙げることができましょうが、これらは、時代を反映した凛々しいあるいは正義を体現した歌です。ところが、日本のボーイ・ソプラノの歌唱史に独自で孤高の位置を占める名曲があります。それは、鈴木賢三郎の「星の王子さま」のオープニング・テーマ曲「プチ・プランス」です。「星の王子様 プチ・フランス」は、昭和53(1978)7月から昭和54(1979)年3月まで、朝日放送(ABC)制作で、毎週火曜日の19時30分~20時にその系列で放送されました。サン=テクジュベリの原作から離れた創作の話が中心ですが、ストーリーは忘れても、この歌だけは忘れることができません。
 フレーベル少年合唱団に所属していた鈴木賢三郎は、録音時中学1年生。合唱団でのパートは、メゾ・ソプラノということですが、変声期直前のボーイ・ソプラノとして最高の時期の歌唱を聴くことができます。まろやかで温かく、また高貴な香りのするその歌唱は、聴く人をこの歌詞に描かれた世界へといざなってくれます。とりわけ、「だけど あるんだよ 見上げてごらん」と曲想の替わるところなど、希望に満ちた実に見事な歌唱です。放映当時は、レコードやソノシートも発売されたようですが、今では入手も難しく、その後、アニメ番組のDVD化はなされましたが、歌唱は1番だけのため、長く全曲のCD化が待たれていたところです。ところが、どのような事情があったのか、直前になって、企画そのものが変わり、「プチ・プランス」は外されました。実に、痛恨の極みであります。


栗原一朗の「ありがとう」(森田和美「千年の渚」より)

 

 クラシック系の日本の少年のソロがCD化されることは、極めて少ないと言えます。笛、フルート奏者の森田和美氏のアルバム「千年の渚」に収録されている『ありがとう』は、森田和美氏の作詞・作曲によるものですが、この曲の人が生かされていることへの感謝という心を体現するためには、ボーイソプラノこそがふさわしいと考えたのでしょう。フルートの柔らかい伴奏に乗って、抒情的な栗原一朗の「ありがとう」の歌声が、繰り返されます。
 また、この「千年の渚」というアルバムでは、森田和美氏によって篠笛、インディアンフルート、フルート、木の実、アルトフルート、能管など和洋東西のフルート系の管楽器が演奏されていますが、柔らかい音色の楽器と思われがちなフルートやその仲間の楽器たちが、多様な音色や響きを聞かせてくれます。なによりも、雅(みやび)の心が伝わってくる演奏です。

「天涯。」のソリスト聴き比べ

  「天涯。」・・・その曲の名を私は数か月前まで知りませんでした。家庭電器・音楽産業の大手「SONY」の創業者でもある故・盛田昭夫氏を偲んで、島田雅彦の壮大な詩に三枝成彰が作曲したカンタータ。2000年10月に初演されたこの曲は、混声合唱で演奏されていますが、その初演のライブがCD化されています。また、2006年から2007年にかけては、男声合唱版が六本木男声合唱団倶楽部によってが海外公演も含め3度上演されています。中でも2006年2月に行われた六本木男声合唱団倶楽部演奏会のライブはCD化されています。その後、六本木男声合唱団倶楽部によって、最終曲の「第8番」だけが単独に演奏されていますが、2013年7月に全曲が演奏され、これはDVD・ブルーレイ化されました。これらの演奏史を表にまとめると次のようになります。

 演奏年月日 指揮   合唱  ソリスト オーケストラ 
 2000.10.22  大友直人 晋友会合唱団  ルートウィヒ・ミッテルハンマー ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・
シンフォニー・オーケストラ
 2006. 2. 4  大友直人   六本木男声
合唱団倶楽部
 小澤賢哲 東京フィルハーモニー交響楽団 
 2013. 7. 3  大友直人  六本木男声
合唱団倶楽部
 栗原一朗 東京交響楽団 

 ここでは、合唱やピアノを含むオーケストラについては論じませんが、ボーイ・ソプラノのソリストについて比較研究してみましょう。

 

 初演のボーイ・ソプラノのソリストが、ルートウィヒ・ミッテルハンマーになった本当の理由は知りません。しかし、この年来日公演したテルツ少年合唱団のトップソリストであったミッテルハンマーが、帰国後ソリストとして再来日してこの初演にかかわったということは、その実力もさることながら、日本の少年でこの曲のソリストが務まる少年がすぐに見つからなかったという事情もあるのではないでしょうか。このソリストには、ロングトーンの高音が求められるだけでなく、曲全体をリードする歌唱力が求められます。さて、実際の演奏ですが、むしろ金属的な強い響きが持ち味のルートウィヒ・ミッテルハンマーは、むしろそれを抑えてレガート唱で歌い、最後には天に届けとばかり高らかに歌い上げます。しかし、惜しいかな。kやtなどの無声音は日本語の発声が十分習得できているとは言い難いところがあります。それさえ気にならなければ、大変立派な演奏であると思います。(なお、ルートウィヒ・ミッテルハンマーは、現在バリトンとして活躍しています。)

 

 それから6年たって、TOKYO FM 少年合唱団の小澤賢哲がソリストに迎えられます。「小澤賢哲」その名と歌声を私はTOKYO FM 少年合唱団第22回定期演奏会で聴いています。コンサート会場のエスカレーター前で並んでいると前後に団員のお母さんらしい人が並んでいて、「小澤君の歌声がききものである。」という情報を得ました。事実、そのコンサートの中での独唱曲「オー・ソレ・ミオ」は、くせのない明るい朗々とした歌声でした。この定期演奏会は、「天涯。」の演奏の直後ですから、ほぼ同じ頃の演奏と言えます。さて、CDを聴くと、くせのない明るい朗々とした歌声であるだけでなく、その歌からは温かい慈しみを感じ、癒されます。

  

 2010年から「第8番」だけを歌い続けてきたフレーベル少年合唱団の栗原一朗が、全曲に取り組んだ2013年7月の演奏では、この少年のもつ声質が「祈り」というこの歌の本質にあっていることが挙げられます。日本では、このような声質の少年は希少です。日本の少年は青竹のようなタイプが多く、同じ系列に当たるソリストを思い出しても、東京少年少女合唱隊の隊員の水谷任佑(フォーレの「レクイエム」のソロをCDに残しています。声はややアルト系)横須賀芸術劇場少年少女合唱団の秋山直輝(実際にソロを聞きました)の声に近いと思います。決して大きな声ではないのですが、その清澄な響きは曲全体を折り目正しい清冽なものにしてくれます。また、品のよい哀愁を感じさせるところもあります。曲想とこの曲におけるボーイ・ソプラノの位置づけを考えたとき、曲と歌い手・栗原一朗の間に至福の関係を感じることができます。平成26(2014)年、この演奏は、DVD・ブルーレイ化され、その演奏に接することができるようになりました。



スノープリンス合唱団の「スノープリンス」主題歌

 スノープリンス合唱団は、平成21年11月1日に結成されたジャニーズJr.内ユニットですが、森本慎太郎の主演する映画『スノープリンス 禁じられた恋のメロディ』の題名をとって命名されています。厳密に言えば、同年6月に 森本慎太郎と過去のメンバーで構成された、スノープリンス合唱団が「森本慎太郎withスノープリンス合唱団」として登場していますが、11月1日にメンバーを入れ替えると同時に、合唱団名を簡略化しています。ただ、この合唱団は映画の宣伝、主題曲のためのユニットであり、平成22年1月までの期間限定予定です。ジャニーズ最年少ユニット(平均10.4歳)であり最年少CDデビューで、その年の紅白歌合戦にも登場しました。この映画は、「フランダースの犬」を下敷きにしながら、ジャニーズJrの森本慎太郎を浮かび上がらせようとした作品であるが故の矛盾点は克服しきれません。(2・26事件があった昭和11年の雪深い田舎にこんな髪型で赤いマフラーをした少年がいるかと言い出したら、作品そのものが成立しません。)ところで、主題歌の「スノープリンス」は、野島伸司の作詞で、色と心を重ね合わせた色彩感豊かな歌詞になっています。冒頭部分にドビッシーの「月の光」をアレンジし、J-POP特有のあくの強い臭みを抜いた3部合唱の歌唱に清純さを求めたと言えましょう。森本慎太郎は、アルトの声質で歌詞を鮮明に歌いあげています。


加藤清史郎の「かつおぶしだよ人生は」

 平成21年放映の大河ドラマ『天地人』で樋口与六(直江兼続の幼少期)役を演じ一躍人気者となった加藤清史郎は、その後もトヨタ自動車の「こども店長」役でCMに出演。神木隆之介によってブーム化した「子役ブーム」を再現しました。そうなると、このブームに便乗するのが芸能界の常。NHKみんなのうたで平成21年夏に流れた「かつおぶしだよ人生は」で歌手デビューしました。この歌、題名からしてもわかるように「浪花節だよ人生は」を下敷きとしていますが、ネコの視点で描かれたかつおぶし讃歌の詩に、演歌風の曲がつけられています。さて、歌う加藤清史郎は、正確な音程で演劇的な歌を歌っています。同CDのB面?の「ランドセルどっかん」は、「1年生になったら」のような曲想の童謡で、背伸び感はなく、自然に聞こえます。なお、加藤清史郎は平成21年末の紅白歌合戦のスタートの司会を飾り、「かつおぶしだよ人生は」も歌っています。これは、河野ヨシユキの男子最年少出場記録であった11歳を塗り替えました(8歳)。


ママとあそぼう! ピンポンパン ベストコレクション

        このCD発売の意義
  この番組が放映されていた頃、私は既に幼児期を脱していました。それどころが、この番組が放映されていた平日朝の時間帯には、登校や出勤で家にいないこともありました。ビッグ・マンモスが登場する番組の後期頃には、ビデオデッキというそれまで放送局にしかない新製品も出始めていましたが、家庭に普及するにはまだ極めて高価過ぎるものでした。しかも、ソフトは120分収録できるものが1本100円台になった今からは想像できないほど高価でした。だから、当然のことながら、子どものお小遣いで手に入るいうなものではありませんでした。現在ほとんど録画が残っていない理由もそのようなところにあります。当時絶大な人気を誇ったこの番組のCDが初めて復刻されたことは、放送文化史的な価値と共に、この時代に少年少女時代を過ごした世代の人にとっては、かけがいのない1枚でありましょう。

   音響だけでは表現できないものが
 しかし、このCDを1度通して聴いた感想は、この番組は音響だけでは表現できない部分があまりにも大きいということです。それは、CDの中に「体操の音楽」があるということだけでなく、ビッグマンモスを中心とするビデオを先に見てしまったためでもありましょう。この番組の歌は、映像でしか真に理解できないものがあります。

   ビッグマンモスに特化したDVDの発売を
 さて、このCDの中でビッグマンモスは、「あの子のこころはボクのもの」と「ゆくぞ!ビッグマンモス」の2曲を歌っています。(その他にも数曲参加していますが)とりわけ、「あの子のこころはボクのもの」は、おそらくこの番組の本来の視聴者である幼児には理解不可能なものでしょうし、歌い手より年上の少女にとってかなり斬新な歌詞と振付けの曲として受け容れられたことでしょう。その受容の心理はおそらくジャニーズjrを鑑賞するのと同質のものでしょう。しかし、ビッグマンモスが再評価されるとしたら、彼等がこの時代の少年の理想像を演じていたことを抜かして語ることはできません。同世代の少年が出演している「天才テレビ君」との違いがそこにあります。ビッグマンモスに特化したCD、いやDVDの発売が待たれるところです。

PONYCANYON INC.(PC)(M)
発売日: 2008/12/17  2500円


ハリー・セヴァーが加入したCantores Episcupi
「Strawberries&Cream」「Twilight」

  

  ボーイ・ソプラノのハリー・セヴァーは、「美しい水車小屋の娘」を録音したのとほぼ同時期、Winchester Collegeの学生によって組織される男声アンサンブルのCantores Episcupiに加入していましたが、変声期前と変声中に2枚のCDを残しています。

      「Strawberries&Cream」
 1枚目の
「Strawberries&Cream」で採り上げられた曲は、ビートルズをはじめとするポップスとミュージカルのナンバーや映画音楽であり、ハリー・セヴァーは男声アンサンブルの一員として歌っています。また、その位置づけはアルトということで、「美しい水車小屋の娘」のような輝かしさは抑え気味ですが、歌声が前面に浮かんでくるときには、持ち前の明るい声質を響かせています。しかし、その響きは、アルトそのものではないと思える箇所もあります。その歌声が前面に出てくるミュージカル「オリバー!」のナンバー「愛はいずこに」では、オリジナルのデニス・ウォーターマンの頼りない歌唱よりも、精神的にしっかりしたオリバー少年を想像しました。また、「And so it  goes」は、最もアルトらしいしっとりとしたまろやかな響きの歌唱が印象的です。「風のささやき」では、もの悲しげなスキャット風のバックコーラスと力強いソロが対比的に聞こえて来ます。

      「Twilight」
  「変声期の声なんか聴かれたくない、ましてや残したくない。」たいていのボーイ・ソプラノならきっとそう思うでしょう。でも、ハリー・セヴァーは、「たいていの」ボーイ・ソプラノではありませんでした。2枚目の「Twilight」のジャケットでもハリー・セヴァーの位置づけはアルトということでしたが、確実に前作の「Strawberries&Cream」と違って変声期が始まっていることが伺えます。しかも、ときおりは変声前の甲高い響きも聞こえながらテナーの響きに近づいているところが興味深いです。しかも、「Panny Lane」では、器楽的なオブリガードを声で表現するという新たな試みにも挑んでいます。変声期は普通声域が狭くなり1オクターブがやっとという場合もあるのですが、声楽を学び続けてきたハリー・セヴァーは、一生で一番広い声域を与えられたときと受け止めたのか、「Grease Magamix」では、まるで声のデパートのようにいろんな声質と高さの声を組み合わせてむしろ変声期を楽しんでいるかのごとき表現をしています。「Starship」は、まさに合唱版「芸術家のカドリーユ」というアレンジで心から楽しめました。

For detailed information on Cantores Episcopi's CDs, please visit Keiko's website
:

http://blog.goo.ne.jp/kurikeinosuke/



北村匠海の「リスに恋した少年」

  NHK「みんなのうた」平成20年2・3月のうたとして登場した「リスに恋した少年」が、3月5日にCD化されました。この作品はリスと遊ぶためにスウェーデンからロンドンまで遊びに来た親子のエピソードがもとになっています。ロンドンの観光地めぐりよりも子どものささやかな夢を叶えることに重きを置いた旅というところが、ほほえましいです。
 歌っている北村 匠海(きたむら たくみ)は、平成9(1997)年生まれの子役モデル。これまでにもCM等に出演していますが、映画「DIVE!!」も近日公開予定です。決して歌い巧者ではありませんが、少年らしい素朴な歌い方がこの歌の場合かえって好ましく、可憐な容姿とあいまって、人気上昇中です。

http://www.youtube.com/watch?v=qSNubdLe5rc


フレーベル少年合唱団の「千の風になって」

  

  フレーベル少年合唱団は、最近音楽的な質も向上し、秋の定期演奏会だけでなく、毎月六義園で開催される野外コンサートをはじめ、CD録音、テレビやコマーシャル出演と意欲的に取り組んでいますが、このたび、「千の風になって」をCD化しました。といっても、日本語詩の作詞・作曲者でもある新井満氏がプロデュースしたメモリアル盤のCD中の1曲という位置づけです。このメモリアル盤では、演奏はほとんど器楽によるもので、フレーベル少年合唱団が録音したものは、周防義和のシンセサイザーと共演です。シンセサイザーの幻想的な響きに乗って、少年たちの透明感あふれる歌声が聞こえてくるという企画です。
  ルルルルル~というスキャットで始まり、オブリガードを多用したこの編曲は、聴く人の魂を癒してくれます。途中からは、ボーイ・ソプラノソロも入って、その部分はけなげにさえ聞こえます。
  フレーベル少年合唱団は、数十年ぶりに単独のCDを出してもよい時期に来ているのではないでしょうか。



第2期 THE CHOIRBOYSキャロルアルバム

  イギリスの聖歌隊から選抜されたソリストで作られたコーラスユニットとしては、10年ほど前に結成され、いつの間にか消滅したボーイズ・エア・クワイヤーや、2005年末にCDデビューを飾った「クワイヤーボーイズ」が挙げられますが、このたび、2年後に「クワイヤーボーイズ」がメンバーも新たにして、CDアルバムを出しました。たぶん旧メンバーは変声期に入ったものと思われます。新メンバーは、ウィリアム・ダットン(William Dutton 1995.1.20生)、ビル・ゴス(Bill Goss 1994.12.11生) アンドリュー・スウェイト(Andrew Swait  1994.10.2生)の3名で、アンドリュー・スウェイトは、既にソロ・アルバムを出しており、本ホームぺージの「世界」のソリストのコーナーでも紹介しています。昨年末に発売された日本盤では次の14曲が歌われており、しっかりした基礎に基づいた安定感のある芯の通った歌を聴かせてくれます。


クワイヤーボーイズ
CD:UCCS-1112 \2,500(\2,381) UCJ [2007年11月7日発売]

1. オ・ホーリー・ナイト(さやかに星はきらめき)
 (with オール・エンジェルス)
2. ああベツレヘムよ
3. ディンドン、高らかに(フランス民謡)
4. どんな甘美な音楽よりも
5. メリー・リトル・クリスマス
6. きよしこの夜
7. 木枯らしの風ほえたけり
8. 神の子イエス様
9. 神のみ子のイエス様は
10. 昔、ダビデの村の
11. 甘い喜びのうちに
12. 神のみ子は今宵しも
13. ひいらぎとつたは
14. あめにはさかえ



妻吹俊哉とフレーベル少年合唱団の競作

 

 「となりのお兄さん」的な雰囲気の妻吹俊哉のデビュー盤のメインには、アイドル歌手槙みちるが1966年に創唱した宮川泰作曲の「若いってすばらしい」がカヴァーされています。これは、なかなかダイナミックな歌唱で好感がもてます。カップリングには、妻吹俊哉の師匠 合田道人の書き下ろし作品「愛ひとつぶん」が収録されています。これは、一言一言をかみしめるように表情豊かに歌われています。さらに、合唱用のアレンジとして、フレーベル少年合唱団が歌ったものも収録されています。フレーベル少年合唱団の歌は、同じ曲でもかなり雰囲気が違う歌唱で、さわやかさとひたむきさが売りです。10歳前後の少年が理解できる愛情表現はこのようなものなのだろうかと想いながら聴いていました。私には、「おおおお~」というせり上がるような合唱表現が背伸びのようにさえ聞こえるのですが、フレーベル少年合唱団の最近の活動を知る上では、ぜひ聴いてほしい1曲です。

ボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトソロによるモーツァルトのレクイエム


 ボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトソロによるモーツァルトのレクイエムの録音があるということは、かねてより聞いていましたが、本日、そのCDを手に入れることができました。ヨゼフ・クリップスの指揮でウェルナー・ベック(ボーイ・ソプラノ)ヴァルター・ルートヴィッヒ(ボーイ・アルト)というウィーン少年合唱団員をソリストに、さらに合唱のソプラノとアルトにも少年合唱を用いており、ウイーン宮廷合唱団、管弦楽団が演奏していることがCDジャケットには書かれています。1950年録音と書いてありますが、もう少し前という説もあります。
 大人の女声によるモーツァルトのレクイエムと比べると、ソリストの二人は不安定な声で声量不足でもあり頼りなさそうにも聞こえますが、そこはかとない色気を感じるのは私だけでしょうか。この曲のもっているどろどろした部分は見事に消されていますが、その代わり、清潔な色気を感じてしまうのです。それこそが、まさにボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトの魅力です。
 なお、このCDは、タワーレコードの企画によるもので1,000円とお手頃ですが、他の店にあるのでしょうか?





第6回 全国少年合唱大会開催記念CD発売

第2回全国少年合唱大会岡山大会(2000.2.11)のCD


  平成19年2月11日に岡山で開催された第6回全国少年合唱大会の成功を期して、桃太郎少年合唱団が録音した7年前の貴重な記録がCD化されました。私はこのコンサートのステージを視聴していますが、このCDは参加4団体の歌唱の魅力を再確認するものになっています。初めてミュージカルに挑戦した栃木少年合唱団、多様なレパートリーの一端を披露した呉少年合唱団(この当時は象牙色の制服)、明るい歌声で唯一の混声合唱を聴かせる広島少年合唱隊、清澄なハーモニーでCDでもその魅力を確実に伝えることができる桃太郎少年合唱団、150人を超える全員合唱と多彩な歌を聴かせてくれます。(このときの私のコンサート評は、「全国少年合唱祭」に書いています。












ハリー・セヴァーの「美しき水車小屋の娘」

  

   14歳の少年声楽家による「美しき水車小屋の娘」

 ハリー・セヴァー、その名を私はボーイズ・エア・クアイアの一員として来日したイギリスのトレブルの一人としてしか記憶していませんでした。その少年が前人未踏のボーイ・ソプラノによる「美しき水車小屋の娘」のCDを録音したといっても、その歌声に接するまでは「ボーイ・ソプラノの想い出」に録音された記念碑的なCDであろうぐらいにしか思っていませんでした。しかし、その認識はこのCDに接することで一変しました。

   「美しき水車小屋の娘」の歌唱

 歌曲王シューベルトの代表作の一つである「美しき水車小屋の娘」は、若者の歌である故に、これまでテノールかバリトンによって歌われてきました。シューベルトはこの歌曲集をテノールのために作っていますが、テノールでも感情によって崩れがちな歌い手ではなく、フリッツ・ウンダーリヒやイアン・ボストリッジのような様式美をもったテノールによってこそ表現できる世界であると考えていました。また、バリトンでもテノールの技巧をもったディートリヒ・フィッシャー=ディスカウや、気品のあるゲルハルト・ヒュッシュ、ビロードのような甘美な声のジェラール・スゼーの歌の評価が高くて、思慮深くて深みのある渋いバス・バリトンの持ち歌ではないと思ってました。さらに、カウンターテノールのヨッヘン・コヴァルスキーによる「美しき水車小屋の娘」もありましたが、これは歌そのものよりも技巧を聴いてしまいました。
 それでは、「美しき水車小屋の娘」はボーイ・ソプラノによって歌われたことはないのでしょうか。ありますとも!おそらく1960年代のウィーン少年合唱団員によって歌われた第1曲「さすらい」と第2曲の「どこへ」の歌唱が。しかし、この「さすらい」は前途への期待に満ちた希望の歌であり、「どこへ」は、ひたすら美しい流麗な歌であって、決して嘆きや苦悩といった激情を伴った起伏に満ちた歌ではありません。このソリストが全曲を歌ったとき、どんな歌を歌ったのだろうという興味はありますが、おそらくきれいな歌だっただろうと推察します。

   激しい感情表現と「初恋」の痛み

 先ず、何も見ないでCDの歌を聴きました。それから、歌詞の邦訳を見ながら聴きました。14歳の少年が、これまでに体験してきたことは、これから歩んでいく長い人生からすれば入口のわずかなことでしかないでしょう。それでも、感受性豊かな少年がそれを自分の心と身体で感じたことは、もっと増幅されて聴き手に伝わってきます。ハリー・セヴァーという14歳の少年声楽家の「美しき水車小屋の娘」は、思い込みが激しく、それ故に傷つきやすい感受性豊かな青春期の少年(それは青年と呼ぶべきかもしれませんが)の歌唱でした。とりわけ、「いらだち」「ぼくのもの」「ねたみと誇り」「いやな色」の激しさは、これがボーイ・ソプラノの音色かと思うようなものでありました。それでありながら、決してむき出しの感情の赴くままに歌われているのではありません。そこには、感情を抑制した知的なきらめきも感じます。それが同じ1曲の中に同時に現れているのです。とりわけ「しぼんだ花」の最後の「春は来たのだ。冬は去ったのだ」の印象的な一節は、まるで自分に言い聞かせているかのようでさえあります。さらに、終曲の「小川の子守唄」は、まるで石川啄木作詞 越谷達之助作曲の「初恋」の痛みに通じているように感じます。青春期は、人の精神におけるシュトゥルム・ウント・ドラング(「疾風怒濤」というよりも「嵐と衝動」がふさわしいでしょう)の時期。ハリー・セヴァーは、その青春期の精神を歌曲集「美しき水車小屋の娘」に乗せて感受性豊かに表現したのではないでしょうか。
 

ケンちゃんの「主題歌コレクション」

 「ケンちゃん」シリースは、昭和40~50年代に子ども時代を送った人にとっては懐かしい番組ですが、その主題歌を集めたCDが発売されています。「ジャンケンケンちゃん」(1969)から、「フルーツケンちゃん」(1976)まで7年間にわたっての主題歌集は、宮脇康之(1961~)の歌声の成長を聴くことができる貴重なCDです。聴き直してみて、8歳頃の舌っ足らずの甲高い声から変声期の歌声までを記録しています。ボーイ・ソプラノ期の歌としては「おもちゃ屋ケンちゃん」(1973)が充実した歌を歌っています。「おそば屋ケンちゃん」(1975)では、変声期を終えたばかりの艶のない歌声を聴くことができます。その中間である「ケンにいちゃん」(1974)では、天地総子が歌っていることから、この時期は歌えるような状態ではなかったのではないかという想像をすることさえできます。
 B面には、弟役で出演していた岡浩也のまだ幼い時期のかわいい歌声を聴くことができます。岡浩也は、その後多くの歌声を残しています。
 さて、宮脇康之は、日本の子役史上最高の人気子役です。写真にもある柔らかな横分けのヘアースタイルは、前で髪を切りそろえる坊ちゃん刈り全盛のころ、「けんちゃんロマネス」と呼ばれ、おしゃれなヘアースタイルでした。また、一年中半ズボンというスタイルを日本中に定着させました。このように、宮脇康之はファッション分野でも児童文化に影響を与えた子役と言えます。
 

アンドリュー・スウェイトの「ライト・オブ・ザ・ワールド 」

① G・F・ヘンデル:神の光の永遠の泉
② ワルター・アルコック:サンクトゥス
③ ジョフリー・バーゴン:ヌンク・ディミッティヌス
④ ジョン・ダンクワース:ライト・オブ・ザ・ワールド
⑤ F・メンデルスゾーン:主を待ちます
⑥ G・F・ヘンデル:正しきことを述べる者の足は美しい
⑦ サミュエル・セバスチャン・ウェズリー:父なる神の息吹き
⑧ F・シューベルト:アヴェ・マリア
⑨ R・シューマン:The Angel's Goodnight
⑩ C・ヒューバート&H・パリー:Long Since in Egypt's Plenteous Land
⑪ 伝承歌(マルコム・アーチャー編曲):Brother James' Air
⑫ B・ブリテン:《キャロルの祭典》より 子守唄、この小さな嬰児
⑬ J・ラッター:神は見守り祝福なさる
⑭ G・フォーレ:慈悲深き主イエスよ
⑮ コリン・マウビィ:アヴェ・ヴェルム・コルプス
⑯ 伝承歌:ロンドンデリーの歌
⑰ W・A・モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
⑱ モートン・ラウリッドソン:慈しみと愛
⑲ ジョン・ラッター:ゲール人の息吹き
⑳ 伝承歌:アメージング・グレース

アンドリュー・スウェイト(トレブル)、
カールトン・エセリントン(オルガン)、
ベンジャミン・ニコラス(指揮)、テュークスベリー修道院学校合唱団

 イギリスで注目を集めているトレブルのアンドリュー・スウェイトとテュークスベリー修道院学校合唱団が歌うキャロル、合唱作品集。この録音をしたとき(2005年)アンドリューはまだ10歳ということですが、繊細で透明度の高い音質ありながらも安定した歌を歌っています。選曲も宗教曲でも親しみやすいものが多く、ヘンデル「メサイア」からモーツァルトやシューベルトの有名な作品、「ロンドンデリーの歌」や「アメージング・グレース」など多彩です。なお、アンドリューはその後合唱団を退団したという情報も入っていますが、確かではありません。、





ウィリアム W. スピアマン 4世

   

"JOYFUL JOYFUL"

1.ジョイフル・ジョイフル(ベートーベン『第九』のテーマより)
2 .ピエ・イエス(A.ロイド=ウェッバー)
3.アメイジング・グレイス
4.アヴェ・マリア(F.シューベルト)
5.野ばら(F.シューベルト)
6.すみれ(W.A.モーツァルト)
7.アヴェ・マリア(C.グノー、J.S.バッハ)
8.アヴェ・ヴェルム・コルプス(W.A.モーツァルト)
9.アヴェ・マリア(G.カッシーニ)
10.ピエ・イエス(G.フォーレ)
11.グリーンスリーブス
12.エーデルワイス(R.ロジャーズ)
13.主われを愛す
14.久しく待ちにし

ウィリアム W. スピアマンIV (ボーイ・ソプラノ)
岡田知子(ピアノ)
MM-1113/平成13年10月25日発売/¥2,914(税抜)


<プロフィール>
ウィリアム W. スピアマン 4世 (William W. Spearman IV)

1987年 横須賀に生まれ。
5歳の頃から、横須賀米海軍のシアターグループに所属し、ミュージカルに出演し子役を務める。主な作品は、ミュージックマン、サウスパシフィック (南太平洋)等。 また、海外のプロや合唱団との共演、音楽之友社のレコーディング等で幅広い 活動をしている横須賀芸術劇場合唱少年少女合唱隊のオーディションに1998年に 合格し、武田雅博、渕上千里両氏の指導のもと、数々のオーディションにも選抜さ れ、同年、ルーマニア国立劇場主催の“カルメン”に子役の一人として出演。2000年には、東京交響楽団の定期演奏会、“DAN YEAR 2000 ”の“ 夕鶴”に子役 ソロに抜擢される。  その後、東京ヴィヴァルディ合奏団のクリスマスコンサートに 出演し、アヴェマリア、ピエイエスなど、主にクラシック、宗教音楽をうたう。平成13年にはファーストアルバム「ジョイフル・ジョイフル」を、平成18年には欧米的な音楽センスと、日本人を母に持つ故の美しい日本語、そして天が授けたソプラノで、『日本の歌』を繊細に色彩豊かに表現している。


JOYFUL JOYFUL のCD                                                       Kiyoshi
 昨日やっと"JOYFUL JOYFUL"のCDを購入しました。新宿のタワーにも渋谷のタワーにもなく、渋谷のHMVでようやく見つけました。これでは地方ではなかなか購入できないかもしれません。さて2914円という価格は、輸入盤を買い慣れているとだいぶ高いと思います。これで充分楽しめれば悪い気はしないのですが、収録時間がなんと33分30秒。これではシングルにも等しい時間です。同じようなCDが、イギリスのものだと60分以上ある場合が多いですから、これではなおさら高い買い物をしたという印象が強くなるでしょう。
 ウィリアム君の声は、細くてとてもきれいだと思います。歌の方は、後半になるほど声が安定し良くなってきます。カッチーニのアヴェマリアやエーデルワイスなどはとてもきれいで、印象に残りました。特にアメイジング・グレイス、グリーンスリーブス、主われを愛すなどの歌は、独特の歌いまわしで魅力があります。自分流の歌い方を身につけているようです。正統的なボーイ・ソプラノ用の歌よりも、アメリカの民謡、聖歌そしてフォスターの歌などをもっと聴いてみたい気がしました。


JOYFUL JOYFULのCD購入                      館長
  11月2日の夜、JOYFUL JOYFULのCDを入荷しましたという電話が入りましたので、3日大阪のシンフォニアで購入しました。
 ウィリアム君の声は、確かにKiyoshiさんも書かれているように繊細な美しさが魅力的です。また、いくつかの歌はただ、楽譜どおり正確に歌うのではなく、独自の節回しで歌っており、これが新鮮な感じを受けました。もう、この少年は
「自分の歌」として歌うことを覚えているのでしょうか。「エーデルワイス」はこれまでに聴いたどれよりも清楚で、しかも、最後の盛り上げ方も全体と調和しており、この歌の本質をつかんでいると感じました。歌全体を大きくつかんで歌っていることは、他のいくつかの曲でも感じました。
 フォスターの歌曲は、意外にこれまでボーイ・ソプラノでほとんど歌われていません。(大人の声楽家でも、リチャード・クルックスのテナーによって歌われたSP時代の歌唱を超えるものがないような状態です。)ウィリアム君なら、きっとよい歌を歌ってくれることでしょう。変声期までに残された時間は短いかもしれませんが、もっと多くの歌を残してほしいと願っています。

『美しい日本の歌』
Beautiful Japanese Songs


1 朧月夜 2 早春賦 3 花 4 さくらさくら 5 浜辺の歌 6 ゆりかごの歌 7 茶摘
8 夏は来ぬ 9 この道 10 夏の思い出 11 海  12 我は海の子 13 椰子の実  14 ちいさい秋みつけた
15  里の秋  16 夕焼小焼  17 紅葉  18 赤とんぼ  19 故郷  20 冬景色  21 雪  22 ペチカ

ウィリアム W. スピアマンIV (ボーイ・ソプラノ)
岡田知子(ピアノ)
MM-1201/平成18年3月25日発売/¥2,914(税抜)¥3,060(税込)


 横須賀芸術劇場少年少女合唱隊をこのたび卒隊したウィリアム・W・スピアマンⅣが、待望のCD第2弾、「美しい日本の歌」を出しました。
 「変声後もボーイ・ソプラノを維持」という言葉がふさわしい清らかな声質で歌われる唱歌・歌曲は、1曲ずつ情感豊かに歌われています。高校生のウィリアム・W・スピアマンⅣのこの声をボーイ・ソプラノと呼ぶかどうかは、意見が分かれるところでありましょうが、メール・ソプラノやカウンター・テナーと呼ばずあえて、ボーイ・ソプラノと呼ぶだけあって、ボーイ・ソプラノらしい清純な音色を楽しむことができます。これは、奇跡的なことでもあります。
 選曲は童謡・唱歌・日本歌曲の中でも人口に膾炙した名曲を集めていますので、1曲ずつの解説をすることは避けますが、有節歌曲でも1番ごとに違う歌い方をすることで、単調さを避けるだけでなく、色彩感あふれる歌に仕上げています。そのような特色は、ジャンルとしては歌曲に顕著に表れています。逆にこの声質ではやんちゃさを表現するのは難しいかもしれません。そのような意味でも「浜辺の歌」「この道」「夏の思い出」のような叙情的な歌曲においてそのよさがよく現れていると思います。

 詳細は、http://www.meister-music.com/new.html



Play of Kotohisa's voice.   上野琴久 声で遊ぶ
Chirping of the last 「囀(さえず)り」




1.鳥のように(上野哲生)
2.きらら(上野哲生)
3.星のダンス(上野哲生)
4.ピエ・イエズ(A.L.ウェッバー)
5.くりんこりん~トーナドーナ(松本雅隆:詞 上野哲生)
6.双子の星(上野哲生 宮沢賢治童話より)
7.今日も日が沈む(上野哲生)
8.アヴェマリア(G.カッチーニ)
9.Try-like(上野哲生)
10.星の国(上野哲生)
11.ののはな(谷川俊太郎:詞 上野哲生)
12.春のささやき(上野哲生)
13.アイ・アム・ザ・ウォルラス(ジョン・レノン)
14. 星の果てに(上野哲生&琴久)

歌/上野琴久 古楽器演奏・編曲・録音/上野哲生 panpipe&whisle/松本雅隆(2,7のみ)歌/上野律子〈6のみ〉
使用楽器 Psaltery,Santur,Lute,Zarb,Saz,Daf,Recorder/D-P&AppleG5sys,Mashfive,TC PowerCore,CAD E-200

 
 1~2曲ならともかく、日本のボーイ・ソプラノをまとまって聴けるCD(LPレコード)は、極めて少ないと言えます。古いものでは、金子一雄による歌曲をSPから復刻したものがありますが、この30年間のいろんなジャンルを入れても、坂本秀明、岡浩也、玉元晃、村上友一、KOUJI、ウィリアム W. スピアマンIVぐらいしかありません。
 
  さて、このたび発売された上野琴久君による「囀(さえず)り」は、これまでのボーイ・ソプラノのCD(LP)とは、かなり異なったものになっています。それは、副題の「声で遊ぶ」に見られるように、ボーイ・ソプラノという声を素材として、どのような表現が可能であるのかを追求した作品になっているからです。確かに、このアルバムには、ロイド・ウェッバーの「ピエ・イエズ」やカッチーニの「アヴェ・マリア」のような、ボーイ・ソプラノの定番としてよく歌われてきた曲も入っていますが、それはメインではありません。むしろ、「このような曲もこれぐらい歌うことができます」という証として入れているように感じます。あくまでも、このアルバムのメイン曲は、上野琴久君のボーイ・ソプラノの魅力を活かし、新しい声と歌の可能性に挑戦した父 上野哲生氏の作曲によるものです。
 これに匹敵する企画は、20年ほど前に、細野晴臣がプロデュースした、越美晴によるボーイ・ソプラノ -あるいは天使ののど自慢- ぐらいでしょう。しかし、これは女声がボーイ・ソプラノ風の声の表現をするもので、ホンモノのボーイ・ソプラノによる歌ではありませんでした。また、スキャット風の表現をする歌は、これまでに西洋にも日本にも数多くありましたが、このCDは、それらとも一線を画しています。
 第1曲目の「鳥のように」を聴くと、「囀(さえず)り」という副題をつけたわけがわかります。小鳥の囀りをボーイ・ソプラノで表現したらどうなるだろうという挑戦がそこにあります。しかし、それは決して声帯模写的なものではありません。小鳥の囀りがもたらす可愛いなという心情を引き起こすものや心の安らぎをもたらすものをこの曲は表現しているのです。このように「きらら」「星のダンス」「星の国」「春のささやき」など標題となっているものが引き起こす心情風景をボーイ・ソプラノは、決して雄弁ではなくむしろ控えめに表現しています。
 琴久君は、「くりんこりん~トーナ ドーナ」や「ののはな」のような日本語の歌詞を歌うときには、歌うというよりむしろ語るように表現しています。また、ジョン・レノンの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」では、従来の「ボーイ・ソプラノ」を超えた表現をしています。このあたりは評価の分かれるところでありましょうが、あえて、この1曲を入れたところにこのアルバムの挑戦があります。
 さて、これらの曲の伴奏は、すべて古楽器によって演奏されています。このアルバムの慎ましやかな表現は、この伴奏によるところが大きいだけでなく、ボーイ・ソプラノと不思議な調和をしています。上野琴久君は、この最初で最後のアルバムによって、日本のボーイ・ソプラノの新しいページを開きました。

ぜひ、このCDをお手にとってお聴きください。このCDの入手方法等、詳細は、下記のホームページをご覧ください。

http://homepage2.nifty.com/tessey/

「過ぎゆく時と友だち」 新しい別部屋を作成しました。赤字の題名をクリックしてください。

  
  漫画家の竹宮恵子が、ブレインの増山法恵と共にボーイ・ソプラノによるレコード「ガラスの迷路」と「過ぎゆく時と友達」を企画・制作したことは、この分野の愛好者にはよく知られているところです。特に「過ぎゆく時と友達」には、12曲の独唱曲(一部バリトンの平野忠彦や少年合唱とのかけ合いもある)が収められています。この当時の日本のボーイ・ソプラノの歌唱力の水準を知る上でも貴重なLPですが、40年経つ今も未だCDに復刻されていません。このレコードのCD化をすすめる運動を展開したいものです。
 そこで、このレコードがどのように優れたものであったのかを、このHPを通して曲は順不同に伝えていきたいと思います。

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