ボーイ・ソプラノによるCD発売

アロイス・ミュールバッハー
『ALOIS UNERHORT/ALOIS〜The Boy and his Voice』




「アロイス・ミュールバッハー (Alois Muhlbacher)」 その名を知ったのは、2010年のウィーン国立歌劇場でウィーン少年合唱団を卒団した中島信太郎とダブルキャストでヘンデルの幻のオペラ「アルチーナ」を上演した時です。その時は、日本人ソリストの登用ということが大きく採り上げられましたが、アロイス・ミュールバッハーのCDが輸入盤で次々と日本にも入ってくるにつれて、このたぐいまれなオペラシンガーとしての資質をもったボーイ・ソプラノに注目するようになりました。1995年、オーストリア中部のヒンターシュトーダーに生まれ、2005年に聖フローリアン少年合唱団に入団することで才能を開花させます。どちらかと言えば、地味な歌声の少年合唱団には似つかわしくない華やかな声と技巧的な歌いっぷりで驚かされます。
 初めてのソロCD『ALOIS UNERHORT/ALOIS〜The Boy and his Voice』が録音されたのは2009〜2010年にかけてで当時14〜15歳、2011年にリリースされました。このCDは、オペラアリア集といったもので、いきなりモーツァルトの「魔笛」から「夜の女王のアリア」で超ド級の怒りに満ちた金切声で始まります。また、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」から「私の大好きなお父さん」や「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」は、清純な娘というよりもはかなり成熟した女性の歌を感じさせる歌を歌います。さらに、J.シュトラウス2世の「こうもり」では、コケティッシュなキャラクターでコロラトゥーラの技巧を聴かせる歌を歌ってくれます。このように多様な歌を聴かせてくれますが、映像でその容姿を見ると、スマートな少年というよりむしろぽってりした大柄なおばちゃんタイプでこのような身体から発する声だからこそ、このような華麗な歌が歌えるのだと納得してしまいます。

(収録曲)
・モーツァルト:『魔笛』〜復讐の炎は地獄のように/愛の喜びは露と消え
・ドヴォルザーク:『ルサルカ』〜月に寄せる歌
・コルンゴルト:『死の都』〜私に残された幸せ
・グリーグ:『ペール・ギュント』〜ソルヴェイグの歌
・プッチーニ:『ジャンニ・スキッキ』〜私の大好きなお父さん
・プッチーニ:『蝶々夫人』〜ある晴れた日に
・カタラーニ:『ワリー』〜私は遠くに行きましょう
・J.シュトラウス2世:『こうもり』〜田舎娘を演じたら/侯爵様、あなたのようなお方は/チャルダーシュ
・R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』〜偉大な王女様
・ドリーブ:『ラクメ』〜花の二重唱

 アロイス・ミュールバッハー(ボーイ・ソプラノ)
 フランツ・ファルンベルガー(ピアノ)

 なお、このCDを私は上京時に銀座の山野楽器店で入手しましたが、通信販売のamazonでも簡単に入手できます。



TOKYO FM 少年合唱団 
天使のハーモニー 〜ボーイソプラノの魅力〜

 

 平成25年のクリスマスコンサートの会場で入手した「天使のハーモニー 〜ボーイソプラノの魅力〜」は、TOKYO FM 少年合唱団のコンサートに通っている人なら、必ずどこかで耳にしたことがある曲が集められています。これまでも、私家盤のような形で定期演奏会やクリスマスコンサートのCDがコンサート会場で頒布されたことがありますが、文字通り会場の拍手やざわめきも入ったものでした。今回のCDは、LIVE盤ということですが、録音状態も非常によくスタジオ録音と変わらないほどです。曲目は、大きく3つに分けられます。

1 女声合唱のための唱歌メドレー「ふるさとの四季」全曲 「ほたるこい」
2 クリスマスキャロルより 「ジングルベル」「ママがサンタにキッスした」「赤鼻のトナカイ」「もろびとこぞりて」
  「マリアは歩みぬ」「神の御子は今宵しも」「きよしこの夜」
3 ぼくらのレパートリー 「おお牧場はみどり」「気球にのってどこまでも」「翼をください」「BELIEVE」

 このCDには、TOKYO FM 少年合唱団の十八番と言われるような曲が並んでいます。「ふるさとの四季」は、平成25年3月の定期演奏会でも披露されましたが、流麗なピアノ伴奏に乗って四季の唱歌を端正でありながらそれぞれ違う色彩に歌い分けています。とりわけ、日本の唱歌が「われは海の子」「村祭り」のような元気な歌でさえいかに抒情的な歌であるかということがわかるような仕上がりになっています。クリスマスキャロルは、声質としては、北村協一先生が中心になって指導されていた頃と比べると、清澄さという点ではやや及ばないけれども、歌詞が非常にはっきりと歌われています。だから、クリスマスキャロルはややボリュームを絞って聴く方がよいかもしれません。また、「ぼくらのレパートリー」は、コバルト色の明るい声で歌われており、どの歌も一つのドラマであると感じさせ、最近のTOKYO FM 少年合唱団の実力を示した1枚となっています。このCDでは、クリスマスキャロルや「BELIEVE」で、Soliを多用しており、ステージと同質の歌を聴くことができます。いずれにしても、TOKYO FM 少年合唱団の今の姿を知るうえでは、貴重なCDと言うことができましょう。


幻と消えたアニメ「星の王子さま」のテーマ曲 「プチ・プランス」のCD化

 

 これまでに多くの日本の少年による独唱を生であるいは録音で聴いてきました。それは、ほとんどが童謡・唱歌や宗教曲をボーイ・ソプラノの声で歌うというものでした。そして、「荒城の月」やバッハ=グノーの「アヴェ・・マリア」などには、名唱と呼ばれるものが残っています。ところが、日本のオリジナルの少年のための独唱曲と言えば数少なくなってきます。例えば、戦前なら「昭和の子」、戦後なら「少年ジェット」等のテレビ番組のテーマ曲などを挙げることができましょうが、これらは、時代を反映した凛々しいあるいは正義を体現した歌です。ところが、日本のボーイ・ソプラノの歌唱史に独自で孤高の位置を占める名曲があります。それは、鈴木賢三郎の「星の王子さま」のオープニング・テーマ曲「プチ・プランス」です。「星の王子様 プチ・フランス」は、昭和53(1978)7月から昭和54(1979)年3月まで、朝日放送(ABC)制作で、毎週火曜日の19時30分〜20時にその系列で放送されました。サン=テクジュベリの原作から離れた創作の話が中心ですが、ストーリーは忘れても、この歌だけは忘れることができません。
 フレーベル少年合唱団に所属していた鈴木賢三郎は、録音時中学1年生。合唱団でのパートは、メゾ・ソプラノということですが、変声期直前のボーイ・ソプラノとして最高の時期の歌唱を聴くことができます。まろやかで温かく、また高貴な香りのするその歌唱は、聴く人をこの歌詞に描かれた世界へといざなってくれます。とりわけ、「だけど あるんだよ 見上げてごらん」と曲想の替わるところなど、希望に満ちた実に見事な歌唱です。放映当時は、レコードやソノシートも発売されたようですが、今では入手も難しく、その後、アニメ番組のDVD化はなされましたが、歌唱は1番だけのため、長く全曲のCD化が待たれていたところです。ところが、どのような事情があったのか、直前になって、企画そのものが変わり、「プチ・プランス」は外されました。実に、痛恨の極みであります。


栗原一朗の「ありがとう」(森田和美「千年の渚」より)

 

 クラシック系の日本の少年のソロがCD化されることは、極めて少ないと言えます。笛、フルート奏者の森田和美氏のアルバム「千年の渚」に収録されている『ありがとう』は、森田和美氏の作詞・作曲によるものですが、この曲の人が生かされていることへの感謝という心を体現するためには、ボーイソプラノこそがふさわしいと考えたのでしょう。フルートの柔らかい伴奏に乗って、抒情的な栗原一朗の「ありがとう」の歌声が、繰り返されます。
 また、この「千年の渚」というアルバムでは、森田和美氏によって篠笛、インディアンフルート、フルート、木の実、アルトフルート、能管など和洋東西のフルート系の管楽器が演奏されていますが、柔らかい音色の楽器と思われがちなフルートやその仲間の楽器たちが、多様な音色や響きを聞かせてくれます。なによりも、雅(みやび)の心が伝わってくる演奏です。

「天涯。」のソリスト聴き比べ

  「天涯。」・・・その曲の名を私は数か月前まで知りませんでした。家庭電器・音楽産業の大手「SONY」の創業者でもある故・盛田昭夫氏を偲んで、島田雅彦の壮大な詩に三枝成彰が作曲したカンタータ。2000年10月に初演されたこの曲は、混声合唱で演奏されていますが、その初演のライブがCD化されています。また、2006年から2007年にかけては、男声合唱版が六本木男声合唱団倶楽部によってが海外公演も含め3度上演されています。中でも2006年2月に行われた六本木男声合唱団倶楽部演奏会のライブはCD化されています。その後、六本木男声合唱団倶楽部によって、最終曲の「第8番」だけが単独に演奏されていますが、2013年7月に全曲が演奏され、これはDVD・ブルーレイ化されました。これらの演奏史を表にまとめると次のようになります。

 演奏年月日 指揮   合唱  ソリスト オーケストラ 
 2000.10.22  大友直人 晋友会合唱団  ルートウィヒ・ミッテルハンマー ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・
シンフォニー・オーケストラ
 2006. 2. 4  大友直人   六本木男声
合唱団倶楽部
 小澤賢哲 東京フィルハーモニー交響楽団 
 2013. 7. 3  大友直人  六本木男声
合唱団倶楽部
 栗原一朗 東京交響楽団 

 ここでは、合唱やピアノを含むオーケストラについては論じませんが、ボーイ・ソプラノのソリストについて比較研究してみましょう。

 

 初演のボーイ・ソプラノのソリストが、ルートウィヒ・ミッテルハンマーになった本当の理由は知りません。しかし、この年来日公演したテルツ少年合唱団のトップソリストであったミッテルハンマーが、帰国後ソリストとして再来日してこの初演にかかわったということは、その実力もさることながら、日本の少年でこの曲のソリストが務まる少年がすぐに見つからなかったという事情もあるのではないでしょうか。このソリストには、ロングトーンの高音が求められるだけでなく、曲全体をリードする歌唱力が求められます。さて、実際の演奏ですが、むしろ金属的な強い響きが持ち味のルートウィヒ・ミッテルハンマーは、むしろそれを抑えてレガート唱で歌い、最後には天に届けとばかり高らかに歌い上げます。しかし、惜しいかな。kやtなどの無声音は日本語の発声が十分習得できているとは言い難いところがあります。それさえ気にならなければ、大変立派な演奏であると思います。(なお、ルートウィヒ・ミッテルハンマーは、現在バリトンとして活躍しています。)

 

 それから6年たって、TOKYO FM 少年合唱団の小澤賢哲がソリストに迎えられます。「小澤賢哲」その名と歌声を私はTOKYO FM 少年合唱団第22回定期演奏会で聴いています。コンサート会場のエスカレーター前で並んでいると前後に団員のお母さんらしい人が並んでいて、「小澤君の歌声がききものである。」という情報を得ました。事実、そのコンサートの中での独唱曲「オー・ソレ・ミオ」は、くせのない明るい朗々とした歌声でした。この定期演奏会は、「天涯。」の演奏の直後ですから、ほぼ同じ頃の演奏と言えます。さて、CDを聴くと、くせのない明るい朗々とした歌声であるだけでなく、その歌からは温かい慈しみを感じ、癒されます。

  

 2010年から「第8番」だけを歌い続けてきたフレーベル少年合唱団の栗原一朗が、全曲に取り組んだ2013年7月の演奏では、この少年のもつ声質が「祈り」というこの歌の本質にあっていることが挙げられます。日本では、このような声質の少年は希少です。日本の少年は青竹のようなタイプが多く、同じ系列に当たるソリストを思い出しても、東京少年少女合唱隊の隊員の水谷任佑(フォーレの「レクイエム」のソロをCDに残しています。声はややアルト系)横須賀芸術劇場少年少女合唱団の秋山直輝(実際にソロを聞きました)の声に近いと思います。決して大きな声ではないのですが、その清澄な響きは曲全体を折り目正しい清冽なものにしてくれます。また、品のよい哀愁を感じさせるところもあります。曲想とこの曲におけるボーイ・ソプラノの位置づけを考えたとき、曲と歌い手・栗原一朗の間に至福の関係を感じることができます。平成26(2014)年、この演奏は、DVD・ブルーレイ化され、その演奏に接することができるようになりました。



スノープリンス合唱団の「スノープリンス」主題歌



 スノープリンス合唱団は、平成21年11月1日に結成されたジャニーズJr.内ユニットですが、森本慎太郎の主演する映画『スノープリンス 禁じられた恋のメロディ』の題名をとって命名されています。厳密に言えば、同年6月に 森本慎太郎と過去のメンバーで構成された、スノープリンス合唱団が「森本慎太郎withスノープリンス合唱団」として登場していますが、11月1日にメンバーを入れ替えると同時に、合唱団名を簡略化しています。ただ、この合唱団は映画の宣伝、主題曲のためのユニットであり、平成22年1月までの期間限定予定です。ジャニーズ最年少ユニット(平均10.4歳)であり最年少CDデビューで、その年の紅白歌合戦にも登場しました。この映画は、「フランダースの犬」を下敷きにしながら、ジャニーズJrの森本慎太郎を浮かび上がらせようとした作品であるが故の矛盾点は克服しきれません。(2・26事件があった昭和11年の雪深い田舎にこんな髪型で赤いマフラーをした少年がいるかと言い出したら、作品そのものが成立しません。)ところで、主題歌の「スノープリンス」は、野島伸司の作詞で、色と心を重ね合わせた色彩感豊かな歌詞になっています。冒頭部分にドビッシーの「月の光」をアレンジし、J−POP特有のあくの強い臭みを抜いた3部合唱の歌唱に清純さを求めたと言えましょう。森本慎太郎は、アルトの声質で歌詞を鮮明に歌いあげています。


加藤清史郎の「かつおぶしだよ人生は」



 平成21年放映の大河ドラマ『天地人』で樋口与六(直江兼続の幼少期)役を演じ一躍人気者となった加藤清史郎は、その後もトヨタ自動車の「こども店長」役でCMに出演。神木隆之介によってブーム化した「子役ブーム」を再現しました。そうなると、このブームに便乗するのが芸能界の常。NHKみんなのうたで平成21年夏に流れた「かつおぶしだよ人生は」で歌手デビューしました。この歌、題名からしてもわかるように「浪花節だよ人生は」を下敷きとしていますが、ネコの視点で描かれたかつおぶし讃歌の詩に、演歌風の曲がつけられています。さて、歌う加藤清史郎は、正確な音程で演劇的な歌を歌っています。同CDのB面?の「ランドセルどっかん」は、「1年生になったら」のような曲想の童謡で、背伸び感はなく、自然に聞こえます。なお、加藤清史郎は平成21年末の紅白歌合戦のスタートの司会を飾り、「かつおぶしだよ人生は」も歌っています。これは、河野ヨシユキの男子最年少出場記録であった11歳を塗り替えました(8歳)。


ママとあそぼう! ピンポンパン ベストコレクション



        このCD発売の意義
  この番組が放映されていた頃、私は既に幼児期を脱していました。それどころが、この番組が放映されていた平日朝の時間帯には、登校や出勤で家にいないこともありました。ビッグ・マンモスが登場する番組の後期頃には、ビデオデッキというそれまで放送局にしかない新製品も出始めていましたが、家庭に普及するにはまだ極めて高価過ぎるものでした。しかも、ソフトは120分収録できるものが1本100円台になった今からは想像できないほど高価でした。だから、当然のことながら、子どものお小遣いで手に入るいうなものではありませんでした。現在ほとんど録画が残っていない理由もそのようなところにあります。当時絶大な人気を誇ったこの番組のCDが初めて復刻されたことは、放送文化史的な価値と共に、この時代に少年少女時代を過ごした世代の人にとっては、かけがいのない1枚でありましょう。

   音響だけでは表現できないものが
 しかし、このCDを1度通して聴いた感想は、この番組は音響だけでは表現できない部分があまりにも大きいということです。それは、CDの中に「体操の音楽」があるということだけでなく、ビッグマンモスを中心とするビデオを先に見てしまったためでもありましょう。この番組の歌は、映像でしか真に理解できないものがあります。

   ビッグマンモスに特化したDVDの発売を
 さて、このCDの中でビッグマンモスは、「あの子のこころはボクのもの」と「ゆくぞ!ビッグマンモス」の2曲を歌っています。(その他にも数曲参加していますが)とりわけ、「あの子のこころはボクのもの」は、おそらくこの番組の本来の視聴者である幼児には理解不可能なものでしょうし、歌い手より年上の少女にとってかなり斬新な歌詞と振付けの曲として受け容れられたことでしょう。その受容の心理はおそらくジャニーズjrを鑑賞するのと同質のものでしょう。しかし、ビッグマンモスが再評価されるとしたら、彼等がこの時代の少年の理想像を演じていたことを抜かして語ることはできません。同世代の少年が出演している「天才テレビ君」との違いがそこにあります。ビッグマンモスに特化したCD、いやDVDの発売が待たれるところです。

PONYCANYON INC.(PC)(M)
発売日: 2008/12/17  2500円


ハリー・セヴァーが加入したCantores Episcupi
「Strawberries&Cream」「Twilight」

  

  ボーイ・ソプラノのハリー・セヴァーは、「美しい水車小屋の娘」を録音したのとほぼ同時期、Winchester Collegeの学生によって組織される男声アンサンブルのCantores Episcupiに加入していましたが、変声期前と変声中に2枚のCDを残しています。

      「Strawberries&Cream」
 1枚目の
「Strawberries&Cream」で採り上げられた曲は、ビートルズをはじめとするポップスとミュージカルのナンバーや映画音楽であり、ハリー・セヴァーは男声アンサンブルの一員として歌っています。また、その位置づけはアルトということで、「美しい水車小屋の娘」のような輝かしさは抑え気味ですが、歌声が前面に浮かんでくるときには、持ち前の明るい声質を響かせています。しかし、その響きは、アルトそのものではないと思える箇所もあります。その歌声が前面に出てくるミュージカル「オリバー!」のナンバー「愛はいずこに」では、オリジナルのデニス・ウォーターマンの頼りない歌唱よりも、精神的にしっかりしたオリバー少年を想像しました。また、「And so it  goes」は、最もアルトらしいしっとりとしたまろやかな響きの歌唱が印象的です。「風のささやき」では、もの悲しげなスキャット風のバックコーラスと力強いソロが対比的に聞こえて来ます。

      「Twilight」
  「変声期の声なんか聴かれたくない、ましてや残したくない。」たいていのボーイ・ソプラノならきっとそう思うでしょう。でも、ハリー・セヴァーは、「たいていの」ボーイ・ソプラノではありませんでした。2枚目の「Twilight」のジャケットでもハリー・セヴァーの位置づけはアルトということでしたが、確実に前作の「Strawberries&Cream」と違って変声期が始まっていることが伺えます。しかも、ときおりは変声前の甲高い響きも聞こえながらテナーの響きに近づいているところが興味深いです。しかも、「Panny Lane」では、器楽的なオブリガードを声で表現するという新たな試みにも挑んでいます。変声期は普通声域が狭くなり1オクターブがやっとという場合もあるのですが、声楽を学び続けてきたハリー・セヴァーは、一生で一番広い声域を与えられたときと受け止めたのか、「Grease Magamix」では、まるで声のデパートのようにいろんな声質と高さの声を組み合わせてむしろ変声期を楽しんでいるかのごとき表現をしています。「Starship」は、まさに合唱版「芸術家のカドリーユ」というアレンジで心から楽しめました。

For detailed information on Cantores Episcopi's CDs, please visit Keiko's website
:

http://blog.goo.ne.jp/kurikeinosuke/



北村匠海の「リスに恋した少年」



  NHK「みんなのうた」平成20年2・3月のうたとして登場した「リスに恋した少年」が、3月5日にCD化されました。この作品はリスと遊ぶためにスウェーデンからロンドンまで遊びに来た親子のエピソードがもとになっています。ロンドンの観光地めぐりよりも子どものささやかな夢を叶えることに重きを置いた旅というところが、ほほえましいです。
 歌っている北村 匠海(きたむら たくみ)は、平成9(1997)年生まれの子役モデル。これまでにもCM等に出演していますが、映画「DIVE!!」も近日公開予定です。決して歌い巧者ではありませんが、少年らしい素朴な歌い方がこの歌の場合かえって好ましく、可憐な容姿とあいまって、人気上昇中です。

http://www.youtube.com/watch?v=qSNubdLe5rc


フレーベル少年合唱団の「千の風になって」

  

  フレーベル少年合唱団は、最近音楽的な質も向上し、秋の定期演奏会だけでなく、毎月六義園で開催される野外コンサートをはじめ、CD録音、テレビやコマーシャル出演と意欲的に取り組んでいますが、このたび、「千の風になって」をCD化しました。といっても、日本語詩の作詞・作曲者でもある新井満氏がプロデュースしたメモリアル盤のCD中の1曲という位置づけです。このメモリアル盤では、演奏はほとんど器楽によるもので、フレーベル少年合唱団が録音したものは、周防義和のシンセサイザーと共演です。シンセサイザーの幻想的な響きに乗って、少年たちの透明感あふれる歌声が聞こえてくるという企画です。
  ルルルルル〜というスキャットで始まり、オブリガードを多用したこの編曲は、聴く人の魂を癒してくれます。途中からは、ボーイ・ソプラノソロも入って、その部分はけなげにさえ聞こえます。
  フレーベル少年合唱団は、数十年ぶりに単独のCDを出してもよい時期に来ているのではないでしょうか。



第2期 THE CHOIRBOYSキャロルアルバム



  イギリスの聖歌隊から選抜されたソリストで作られたコーラスユニットとしては、10年ほど前に結成され、いつの間にか消滅したボーイズ・エア・クワイヤーや、2005年末にCDデビューを飾った「クワイヤーボーイズ」が挙げられますが、このたび、2年後に「クワイヤーボーイズ」がメンバーも新たにして、CDアルバムを出しました。たぶん旧メンバーは変声期に入ったものと思われます。新メンバーは、ウィリアム・ダットン(William Dutton 1995.1.20生)、ビル・ゴス(Bill Goss 1994.12.11生) アンドリュー・スウェイト(Andrew Swait  1994.10.2生)の3名で、アンドリュー・スウェイトは、既にソロ・アルバムを出しており、本ホームぺージの「世界」のソリストのコーナーでも紹介しています。昨年末に発売された日本盤では次の14曲が歌われており、しっかりした基礎に基づいた安定感のある芯の通った歌を聴かせてくれます。

クワイヤーボーイズ
CD:UCCS-1112 \2,500(\2,381) UCJ [2007年11月7日発売]

1. オ・ホーリー・ナイト(さやかに星はきらめき)
 (with オール・エンジェルス)
2. ああベツレヘムよ
3. ディンドン、高らかに(フランス民謡)
4. どんな甘美な音楽よりも
5. メリー・リトル・クリスマス
6. きよしこの夜
7. 木枯らしの風ほえたけり
8. 神の子イエス様
9. 神のみ子のイエス様は
10. 昔、ダビデの村の
11. 甘い喜びのうちに
12. 神のみ子は今宵しも
13. ひいらぎとつたは
14. あめにはさかえ



妻吹俊哉とフレーベル少年合唱団の競作

 

 「となりのお兄さん」的な雰囲気の妻吹俊哉のデビュー盤のメインには、アイドル歌手槙みちるが1966年に創唱した宮川泰作曲の「若いってすばらしい」がカヴァーされています。これは、なかなかダイナミックな歌唱で好感がもてます。カップリングには、妻吹俊哉の師匠 合田道人の書き下ろし作品「愛ひとつぶん」が収録されています。これは、一言一言をかみしめるように表情豊かに歌われています。さらに、合唱用のアレンジとして、フレーベル少年合唱団が歌ったものも収録されています。フレーベル少年合唱団の歌は、同じ曲でもかなり雰囲気が違う歌唱で、さわやかさとひたむきさが売りです。10歳前後の少年が理解できる愛情表現はこのようなものなのだろうかと想いながら聴いていました。私には、「おおおお〜」というせり上がるような合唱表現が背伸びのようにさえ聞こえるのですが、フレーベル少年合唱団の最近の活動を知る上では、ぜひ聴いてほしい1曲です。


ボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトソロによるモーツァルトのレクイエム



 ボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトソロによるモーツァルトのレクイエムの録音があるということは、かねてより聞いていましたが、本日、そのCDを手に入れることができました。ヨゼフ・クリップスの指揮でウェルナー・ベック(ボーイ・ソプラノ)ヴァルター・ルートヴィッヒ(ボーイ・アルト)というウィーン少年合唱団員をソリストに、さらに合唱のソプラノとアルトにも少年合唱を用いており、ウイーン宮廷合唱団、管弦楽団が演奏していることがCDジャケットには書かれています。1950年録音と書いてありますが、もう少し前という説もあります。
 大人の女声によるモーツァルトのレクイエムと比べると、ソリストの二人は不安定な声で声量不足でもあり頼りなさそうにも聞こえますが、そこはかとない色気を感じるのは私だけでしょうか。この曲のもっているどろどろした部分は見事に消されていますが、その代わり、清潔な色気を感じてしまうのです。それこそが、まさにボーイ・ソプラノ&ボーイ・アルトの魅力です。
 なお、このCDは、タワーレコードの企画によるもので1,000円とお手頃ですが、他の店にあるのでしょうか?



第6回 全国少年合唱大会開催記念CD発売

第2回全国少年合唱大会岡山大会(2000.2.11)のCD



  平成19年2月11日に岡山で開催された第6回全国少年合唱大会の成功を期して、桃太郎少年合唱団が録音した7年前の貴重な記録がCD化されました。私はこのコンサートのステージを視聴していますが、このCDは参加4団体の歌唱の魅力を再確認するものになっています。初めてミュージカルに挑戦した栃木少年合唱団、多様なレパートリーの一端を披露した呉少年合唱団(この当時は象牙色の制服)、明るい歌声で唯一の混声合唱を聴かせる広島少年合唱隊、清澄なハーモニーでCDでもその魅力を確実に伝えることができる桃太郎少年合唱団、150人を超える全員合唱と多彩な歌を聴かせてくれます。(このときの私のコンサート評は、「全国少年合唱祭」に書いています。


ハリー・セヴァーの「美しき水車小屋の娘」

  

   14歳の少年声楽家による「美しき水車小屋の娘」

 ハリー・セヴァー、その名を私はボーイズ・エア・クアイアの一員として来日したイギリスのトレブルの一人としてしか記憶していませんでした。その少年が前人未踏のボーイ・ソプラノによる「美しき水車小屋の娘」のCDを録音したといっても、その歌声に接するまでは「ボーイ・ソプラノの想い出」に録音された記念碑的なCDであろうぐらいにしか思っていませんでした。しかし、その認識はこのCDに接することで一変しました。

   「美しき水車小屋の娘」の歌唱

 歌曲王シューベルトの代表作の一つである「美しき水車小屋の娘」は、若者の歌である故に、これまでテノールかバリトンによって歌われてきました。シューベルトはこの歌曲集をテノールのために作っていますが、テノールでも感情によって崩れがちな歌い手ではなく、フリッツ・ウンダーリヒやイアン・ボストリッジのような様式美をもったテノールによってこそ表現できる世界であると考えていました。また、バリトンでもテノールの技巧をもったディートリヒ・フィッシャー=ディスカウや、気品のあるゲルハルト・ヒュッシュ、ビロードのような甘美な声のジェラール・スゼーの歌の評価が高くて、思慮深くて深みのある渋いバス・バリトンの持ち歌ではないと思ってました。さらに、カウンターテノールのヨッヘン・コヴァルスキーによる「美しき水車小屋の娘」もありましたが、これは歌そのものよりも技巧を聴いてしまいました。
 それでは、「美しき水車小屋の娘」はボーイ・ソプラノによって歌われたことはないのでしょうか。ありますとも!おそらく1960年代のウィーン少年合唱団員によって歌われた第1曲「さすらい」と第2曲の「どこへ」の歌唱が。しかし、この「さすらい」は前途への期待に満ちた希望の歌であり、「どこへ」は、ひたすら美しい流麗な歌であって、決して嘆きや苦悩といった激情を伴った起伏に満ちた歌ではありません。このソリストが全曲を歌ったとき、どんな歌を歌ったのだろうという興味はありますが、おそらくきれいな歌だっただろうと推察します。

   激しい感情表現と「初恋」の痛み

 先ず、何も見ないでCDの歌を聴きました。それから、歌詞の邦訳を見ながら聴きました。14歳の少年が、これまでに体験してきたことは、これから歩んでいく長い人生からすれば入口のわずかなことでしかないでしょう。それでも、感受性豊かな少年がそれを自分の心と身体で感じたことは、もっと増幅されて聴き手に伝わってきます。ハリー・セヴァーという14歳の少年声楽家の「美しき水車小屋の娘」は、思い込みが激しく、それ故に傷つきやすい感受性豊かな青春期の少年(それは青年と呼ぶべきかもしれませんが)の歌唱でした。とりわけ、「いらだち」「ぼくのもの」「ねたみと誇り」「いやな色」の激しさは、これがボーイ・ソプラノの音色かと思うようなものでありました。それでありながら、決してむき出しの感情の赴くままに歌われているのではありません。そこには、感情を抑制した知的なきらめきも感じます。それが同じ1曲の中に同時に現れているのです。とりわけ「しぼんだ花」の最後の「春は来たのだ。冬は去ったのだ」の印象的な一節は、まるで自分に言い聞かせているかのようでさえあります。さらに、終曲の「小川の子守唄」は、まるで石川啄木作詞 越谷達之助作曲の「初恋」の痛みに通じているように感じます。青春期は、人の精神におけるシュトゥルム・ウント・ドラング(「疾風怒濤」というよりも「嵐と衝動」がふさわしいでしょう)の時期。ハリー・セヴァーは、その青春期の精神を歌曲集「美しき水車小屋の娘」に乗せて感受性豊かに表現したのではないでしょうか。
 

ケンちゃんの「主題歌コレクション」



 「ケンちゃん」シリースは、昭和40〜50年代に子ども時代を送った人にとっては懐かしい番組ですが、その主題歌を集めたCDが発売されています。「ジャンケンケンちゃん」(1969)から、「フルーツケンちゃん」(1976)まで7年間にわたっての主題歌集は、宮脇康之(1961〜)の歌声の成長を聴くことができる貴重なCDです。聴き直してみて、8歳頃の舌っ足らずの甲高い声から変声期の歌声までを記録しています。ボーイ・ソプラノ期の歌としては「おもちゃ屋ケンちゃん」(1973)が充実した歌を歌っています。「おそば屋ケンちゃん」(1975)では、変声期を終えたばかりの艶のない歌声を聴くことができます。その中間である「ケンにいちゃん」(1974)では、天地総子が歌っていることから、この時期は歌えるような状態ではなかったのではないかという想像をすることさえできます。
 B面には、弟役で出演していた岡浩也のまだ幼い時期のかわいい歌声を聴くことができます。岡浩也は、その後多くの歌声を残しています。
 さて、宮脇康之は、日本の子役史上最高の人気子役です。写真にもある柔らかな横分けのヘアースタイルは、前で髪を切りそろえる坊ちゃん刈り全盛のころ、「けんちゃんロマネス」と呼ばれ、おしゃれなヘアースタイルでした。また、一年中半ズボンというスタイルを日本中に定着させました。このように、宮脇康之はファッション分野でも児童文化に影響を与えた子役と言えます。
 

アンドリュー・スウェイトの「ライト・オブ・ザ・ワールド 」



@ G・F・ヘンデル:神の光の永遠の泉
A ワルター・アルコック:サンクトゥス
B ジョフリー・バーゴン:ヌンク・ディミッティヌス
C ジョン・ダンクワース:ライト・オブ・ザ・ワールド
D F・メンデルスゾーン:主を待ちます
E G・F・ヘンデル:正しきことを述べる者の足は美しい
F サミュエル・セバスチャン・ウェズリー:父なる神の息吹き
G F・シューベルト:アヴェ・マリア
H R・シューマン:The Angel's Goodnight
I C・ヒューバート&H・パリー:Long Since in Egypt's Plenteous Land
J 伝承歌(マルコム・アーチャー編曲):Brother James' Air
K B・ブリテン:《キャロルの祭典》より 子守唄、この小さな嬰児
L J・ラッター:神は見守り祝福なさる
M G・フォーレ:慈悲深き主イエスよ
N コリン・マウビィ:アヴェ・ヴェルム・コルプス
O 伝承歌:ロンドンデリーの歌
P W・A・モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
Q モートン・ラウリッドソン:慈しみと愛
R ジョン・ラッター:ゲール人の息吹き
S 伝承歌:アメージング・グレース

アンドリュー・スウェイト(トレブル)、
カールトン・エセリントン(オルガン)、
ベンジャミン・ニコラス(指揮)、テュークスベリー修道院学校合唱団

 イギリスで注目を集めているトレブルのアンドリュー・スウェイトとテュークスベリー修道院学校合唱団が歌うキャロル、合唱作品集。この録音をしたとき(2005年)アンドリューはまだ10歳ということですが、繊細で透明度の高い音質ありながらも安定した歌を歌っています。選曲も宗教曲でも親しみやすいものが多く、ヘンデル「メサイア」からモーツァルトやシューベルトの有名な作品、「ロンドンデリーの歌」や「アメージング・グレース」など多彩です。なお、アンドリューはその後合唱団を退団したという情報も入っていますが、確かではありません。、





ウィリアム W. スピアマン 4世

   

"JOYFUL JOYFUL"

1.ジョイフル・ジョイフル(ベートーベン『第九』のテーマより)
2 .ピエ・イエス(A.ロイド=ウェッバー)
3.アメイジング・グレイス
4.アヴェ・マリア(F.シューベルト)
5.野ばら(F.シューベルト)
6.すみれ(W.A.モーツァルト)
7.アヴェ・マリア(C.グノー、J.S.バッハ)
8.アヴェ・ヴェルム・コルプス(W.A.モーツァルト)
9.アヴェ・マリア(G.カッシーニ)
10.ピエ・イエス(G.フォーレ)
11.グリーンスリーブス
12.エーデルワイス(R.ロジャーズ)
13.主われを愛す
14.久しく待ちにし

ウィリアム W. スピアマンIV (ボーイ・ソプラノ)
岡田知子(ピアノ)
MM-1113/平成13年10月25日発売/¥2,914(税抜)


<プロフィール>
ウィリアム W. スピアマン 4世 (William W. Spearman IV)

1987年 横須賀に生まれ。
5歳の頃から、横須賀米海軍のシアターグループに所属し、ミュージカルに出演し子役を務める。主な作品は、ミュージックマン、サウスパシフィック (南太平洋)等。 また、海外のプロや合唱団との共演、音楽之友社のレコーディング等で幅広い 活動をしている横須賀芸術劇場合唱少年少女合唱隊のオーディションに1998年に 合格し、武田雅博、渕上千里両氏の指導のもと、数々のオーディションにも選抜さ れ、同年、ルーマニア国立劇場主催の“カルメン”に子役の一人として出演。2000年には、東京交響楽団の定期演奏会、“DAN YEAR 2000 ”の“ 夕鶴”に子役 ソロに抜擢される。  その後、東京ヴィヴァルディ合奏団のクリスマスコンサートに 出演し、アヴェマリア、ピエイエスなど、主にクラシック、宗教音楽をうたう。平成13年にはファーストアルバム「ジョイフル・ジョイフル」を、平成18年には欧米的な音楽センスと、日本人を母に持つ故の美しい日本語、そして天が授けたソプラノで、『日本の歌』を繊細に色彩豊かに表現している。


JOYFUL JOYFUL のCD                                                       Kiyoshi
 昨日やっと"JOYFUL JOYFUL"のCDを購入しました。新宿のタワーにも渋谷のタワーにもなく、渋谷のHMVでようやく見つけました。これでは地方ではなかなか購入できないかもしれません。さて2914円という価格は、輸入盤を買い慣れているとだいぶ高いと思います。これで充分楽しめれば悪い気はしないのですが、収録時間がなんと33分30秒。これではシングルにも等しい時間です。同じようなCDが、イギリスのものだと60分以上ある場合が多いですから、これではなおさら高い買い物をしたという印象が強くなるでしょう。
 ウィリアム君の声は、細くてとてもきれいだと思います。歌の方は、後半になるほど声が安定し良くなってきます。カッチーニのアヴェマリアやエーデルワイスなどはとてもきれいで、印象に残りました。特にアメイジング・グレイス、グリーンスリーブス、主われを愛すなどの歌は、独特の歌いまわしで魅力があります。自分流の歌い方を身につけているようです。正統的なボーイ・ソプラノ用の歌よりも、アメリカの民謡、聖歌そしてフォスターの歌などをもっと聴いてみたい気がしました。


JOYFUL JOYFULのCD購入                      館長
  11月2日の夜、JOYFUL JOYFULのCDを入荷しましたという電話が入りましたので、3日大阪のシンフォニアで購入しました。
 ウィリアム君の声は、確かにKiyoshiさんも書かれているように繊細な美しさが魅力的です。また、いくつかの歌はただ、楽譜どおり正確に歌うのではなく、独自の節回しで歌っており、これが新鮮な感じを受けました。もう、この少年は
「自分の歌」として歌うことを覚えているのでしょうか。「エーデルワイス」はこれまでに聴いたどれよりも清楚で、しかも、最後の盛り上げ方も全体と調和しており、この歌の本質をつかんでいると感じました。歌全体を大きくつかんで歌っていることは、他のいくつかの曲でも感じました。
 フォスターの歌曲は、意外にこれまでボーイ・ソプラノでほとんど歌われていません。(大人の声楽家でも、リチャード・クルックスのテナーによって歌われたSP時代の歌唱を超えるものがないような状態です。)ウィリアム君なら、きっとよい歌を歌ってくれることでしょう。変声期までに残された時間は短いかもしれませんが、もっと多くの歌を残してほしいと願っています。

『美しい日本の歌』
Beautiful Japanese Songs


1 朧月夜 2 早春賦 3 花 4 さくらさくら 5 浜辺の歌 6 ゆりかごの歌 7 茶摘
8 夏は来ぬ 9 この道 10 夏の思い出 11 海  12 我は海の子 13 椰子の実  14 ちいさい秋みつけた
15  里の秋  16 夕焼小焼  17 紅葉  18 赤とんぼ  19 故郷  20 冬景色  21 雪  22 ペチカ

ウィリアム W. スピアマンIV (ボーイ・ソプラノ)
岡田知子(ピアノ)
MM-1201/平成18年3月25日発売/¥2,914(税抜)¥3,060(税込)


 横須賀芸術劇場少年少女合唱隊をこのたび卒隊したウィリアム・W・スピアマンWが、待望のCD第2弾、「美しい日本の歌」を出しました。
 「変声後もボーイ・ソプラノを維持」という言葉がふさわしい清らかな声質で歌われる唱歌・歌曲は、1曲ずつ情感豊かに歌われています。高校生のウィリアム・W・スピアマンWのこの声をボーイ・ソプラノと呼ぶかどうかは、意見が分かれるところでありましょうが、メール・ソプラノやカウンター・テナーと呼ばずあえて、ボーイ・ソプラノと呼ぶだけあって、ボーイ・ソプラノらしい清純な音色を楽しむことができます。これは、奇跡的なことでもあります。
 選曲は童謡・唱歌・日本歌曲の中でも人口に膾炙した名曲を集めていますので、1曲ずつの解説をすることは避けますが、有節歌曲でも1番ごとに違う歌い方をすることで、単調さを避けるだけでなく、色彩感あふれる歌に仕上げています。そのような特色は、ジャンルとしては歌曲に顕著に表れています。逆にこの声質ではやんちゃさを表現するのは難しいかもしれません。そのような意味でも「浜辺の歌」「この道」「夏の思い出」のような叙情的な歌曲においてそのよさがよく現れていると思います。

 詳細は、http://www.meister-music.com/new.html



Play of Kotohisa's voice.   上野琴久 声で遊ぶ
Chirping of the last 「囀(さえず)り」




1.鳥のように(上野哲生)
2.きらら(上野哲生)
3.星のダンス(上野哲生)
4.ピエ・イエズ(A.L.ウェッバー)
5.くりんこりん〜トーナドーナ(松本雅隆:詞 上野哲生)
6.双子の星(上野哲生 宮沢賢治童話より)
7.今日も日が沈む(上野哲生)
8.アヴェマリア(G.カッチーニ)
9.Try-like(上野哲生)
10.星の国(上野哲生)
11.ののはな(谷川俊太郎:詞 上野哲生)
12.春のささやき(上野哲生)
13.アイ・アム・ザ・ウォルラス(ジョン・レノン)
14. 星の果てに(上野哲生&琴久)

歌/上野琴久 古楽器演奏・編曲・録音/上野哲生 panpipe&whisle/松本雅隆(2,7のみ)歌/上野律子〈6のみ〉
使用楽器 Psaltery,Santur,Lute,Zarb,Saz,Daf,Recorder/D-P&AppleG5sys,Mashfive,TC PowerCore,CAD E-200

 
 1〜2曲ならともかく、日本のボーイ・ソプラノをまとまって聴けるCD(LPレコード)は、極めて少ないと言えます。古いものでは、金子一雄による歌曲をSPから復刻したものがありますが、この30年間のいろんなジャンルを入れても、坂本秀明、岡浩也、玉元晃、村上友一、KOUJI、ウィリアム W. スピアマンIVぐらいしかありません。
 
  さて、このたび発売された上野琴久君による「囀(さえず)り」は、これまでのボーイ・ソプラノのCD(LP)とは、かなり異なったものになっています。それは、副題の「声で遊ぶ」に見られるように、ボーイ・ソプラノという声を素材として、どのような表現が可能であるのかを追求した作品になっているからです。確かに、このアルバムには、ロイド・ウェッバーの「ピエ・イエズ」やカッチーニの「アヴェ・マリア」のような、ボーイ・ソプラノの定番としてよく歌われてきた曲も入っていますが、それはメインではありません。むしろ、「このような曲もこれぐらい歌うことができます」という証として入れているように感じます。あくまでも、このアルバムのメイン曲は、上野琴久君のボーイ・ソプラノの魅力を活かし、新しい声と歌の可能性に挑戦した父 上野哲生氏の作曲によるものです。
 これに匹敵する企画は、20年ほど前に、細野晴臣がプロデュースした、越美晴によるボーイ・ソプラノ −あるいは天使ののど自慢− ぐらいでしょう。しかし、これは女声がボーイ・ソプラノ風の声の表現をするもので、ホンモノのボーイ・ソプラノによる歌ではありませんでした。また、スキャット風の表現をする歌は、これまでに西洋にも日本にも数多くありましたが、このCDは、それらとも一線を画しています。
 第1曲目の「鳥のように」を聴くと、「囀(さえず)り」という副題をつけたわけがわかります。小鳥の囀りをボーイ・ソプラノで表現したらどうなるだろうという挑戦がそこにあります。しかし、それは決して声帯模写的なものではありません。小鳥の囀りがもたらす可愛いなという心情を引き起こすものや心の安らぎをもたらすものをこの曲は表現しているのです。このように「きらら」「星のダンス」「星の国」「春のささやき」など標題となっているものが引き起こす心情風景をボーイ・ソプラノは、決して雄弁ではなくむしろ控えめに表現しています。
 琴久君は、「くりんこりん〜トーナ ドーナ」や「ののはな」のような日本語の歌詞を歌うときには、歌うというよりむしろ語るように表現しています。また、ジョン・レノンの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」では、従来の「ボーイ・ソプラノ」を超えた表現をしています。このあたりは評価の分かれるところでありましょうが、あえて、この1曲を入れたところにこのアルバムの挑戦があります。
 さて、これらの曲の伴奏は、すべて古楽器によって演奏されています。このアルバムの慎ましやかな表現は、この伴奏によるところが大きいだけでなく、ボーイ・ソプラノと不思議な調和をしています。上野琴久君は、この最初で最後のアルバムによって、日本のボーイ・ソプラノの新しいページを開きました。

ぜひ、このCDをお手にとってお聴きください。このCDの入手方法等、詳細は、下記のホームページをご覧ください。

http://homepage2.nifty.com/tessey/


参考・引用文献

   本ホームページの研究編については、下記の文献を参考・引用しております。

1、新書館編 「少年合唱団」  新書館 1986
2、カワイ楽譜編 「声楽・合唱辞典」 カワイ楽譜 1970
3、音楽の友社編 「オペラ辞典」   音楽の友社 1993
4、音楽の友社編 「成長に応じた発声指導」   音楽の友社 1992
5、音楽の友社編 「GRAND OPERA」 音楽の友社 1991〜93
6、増山のりえ著 「天使の歌声」〜「ラヴェンダー・エンジェル」 白夜書房 1993
7、増山のりえ著 「THE・TREBLE」 雑誌「ショパン」 東京音楽社 1991〜92
8、増山のりえ著 「ボーイ・ソプラノあらかると」「マックス・エマヌエル・ツェンチッチ リサイタル プログラム」 1992
9、米山文明著 「声がよくなる本」 主婦と生活社 1977
10、林 義雄著 「声がよくなる本」 音楽の友社 1961
11、加藤友康著 「ボイス&ボディートレーニング」 桐書房 1989
12、永吉大三著 「発声法の理論と技法」(改訂版) 音楽の友社 1982
13、澤田 昭著 「現代青少年の発達加速」 創元社 1982
14、松村直行著 「変声期と教材」大阪教育大学紀要第23巻第X部 1974
15、堀内 修著 「オペラに乾杯」 ベストブック 1994
16、永竹由幸著 「オペラと歌舞伎」 丸善 1993
17、瀬高道助著 「バロックのカストラート」〜「オペラの饗宴」 洋泉社 1990
18、ペヨトル工房編「カストラート・カウンターテナー」ペヨトル工房 1995
19、アンガス・ヘリオット著 美山良夫他訳 「カストラートの世界」 図書刊行会  1995
20、パトリック・バルビエ著 野村正人訳  「カストラートの歴史」 筑摩書房  1995
21、品川三郎著  「児童発声」  音楽の友社  1955
22、岩崎洋一著  「小学生の発声指導を見直す」   音楽の友社  1997
23、中尾和人著 「発声のヒント」  音楽の友社   1974
24、楓田琴次著 「かたい声、やわらかい声」 日本放送出版協会 1976
25,長田暁二著  「童謡歌手から見た日本童謡史」 大月書店  1994
26、アレキサンダー・ヴィデシュニック著 金子登・金子エリカ共訳「ウィーン少年合唱団」 東京音楽社 1969
27、ラインハルト・ティール著 堀江みどり訳 「天使はうたう」 東京音楽社 1980
28、ケネス・S・ホイットマン著 小林利之訳   「フイッシャー・ディスカウ」 東京創元社 1985
29、カンティド・ボンヴィテイーニ著 白崎容子訳   「ルチアーノ・パヴァロッティ」 音楽の友社 1993
30、ヘルマン・プライ著 原田茂生・林捷訳   「ヘルマン・プライ自伝」 メタモル出版 1993
31、ホセ・カレーラス著 酒巻和子訳 「自伝・奇跡の復活」  音楽の友社 1989
32、家里和夫著 「スゼーの肖像」 春秋社 1988
33、長谷川新一著 「世界の少年合唱をたずねて」 東京音楽社 1972
34、竹宮恵子著 「鏡の国の少年たち」 新書館 1980
35、島田祐子著 「オペラとロックそして演歌」日本放送出版協会 1980
36、永田文夫著 「世界の名曲とレコード・シャンソン・カンツォーネ編」 誠文堂新光社 1967
37、五十嵐喜芳著 「幸福だった少年時代」〜 「くらしの中の音楽」音楽の友社 1960
38、美輪明宏著 「紫の履歴書」 角川書店 1983
39、東京書籍編 「ひとりで ふたりで みんなと」 東京書籍 1992
40、大阪教育図書編「中学生の性教育ABC」 大阪教育図書 1992
41、伊藤武敏・藤井憲・渡辺陸雄著 「変声期における歌唱指導」 教育芸術社 1985
42、関 計夫著 「劣等感からの解放」 牧書店 1961
43、観世栄夫著 「『真の花』を咲かせる技と心」〜雑誌「歴史街道」PHP 1990.11
44、神渡良平著 「天地を貫く真理を己の生き方とする」〜雑誌「致知」 致知出版社 1994.2
45、磯部俶著「遙かな友に−我が音楽人生」音楽の友社 1991
46、服部公一著「子どもの声が低くなる」 ちくま書店 1998
47、鈴木松美編著「日本人の声」 洋泉社 2003
48、ダンスマガジン編 「少年合唱団」 新書館 2004
49、堀内敬三編 「学生の音楽事典」 音楽之友社 1957
50、長谷川新一他著 「歌おう 東京少年少女合唱隊 50年の挑戦」 朝日新聞社 2001
51、杉山 知子・佐藤 桂子 小学校高学年の歌唱と器楽に関する一考察──声質の自覚症状に関連して──
   美作女子大学・美作女子大学短期大学部紀要 1998
52、熊本県内の小・中学生における変声期の歌唱指導における実態調査 熊本大学教育実践研究 2002
53、子どもの身長を伸ばす育児法と治療法 額田 成 2004

54、竹内秀男「変声期と合唱指導法のエッセンス」〜授業で聴かせたい変声の様子〜 教育出版 2013


「過ぎゆく時と友だち」 新しい別部屋を作成しました。赤字の題名をクリックしてください。

  
  漫画家の竹宮恵子が、ブレインの増山法恵と共にボーイ・ソプラノによるレコード「ガラスの迷路」と「過ぎゆく時と友達」を企画・制作したことは、この分野の愛好者にはよく知られているところです。特に「過ぎゆく時と友達」には、12曲の独唱曲(一部バリトンの平野忠彦や少年合唱とのかけ合いもある)が収められています。この当時の日本のボーイ・ソプラノの歌唱力の水準を知る上でも貴重なLPですが、25年経つ今も未だCDに復刻されていません。このレコードのCD化をすすめる運動を展開したいものです。
 そこで、このレコードがどのように優れたものであったのかを、このHPを通して曲は順不同に伝えていきたいと思います。

書籍紹介

扶桑社ミステリー アン・ライス著、柿沼瑛子訳「トニオ、天使の歌声」
 (上巻下巻に分かれた文庫本) 2冊とも800円+税
1人のカストラートの生涯を書いた作品 下巻の最後に増山のりえ先生の解説あり

「TOKYO FM少年合唱団 20年のあゆみ」

 ウィーン少年合唱団をはじめ、世界の少年合唱団について採り上げた書籍はそれなりにありますが、日本の少年合唱団に関する書籍は、ほとんどないというのが実情でしょう。磯部俶の自伝エッセイ「遙かな友に」の中にフレーベル少年合唱団のことが採り上げられた数ページと、もともと少年合唱団として出発した東京少年少女合唱隊の「歌おう 東京少年少女合唱隊 50年の挑戦」ぐらいかもしれません。アルバムとしても、桃太郎少年合唱団第40回定期演奏会のときに発行されたメッセージと写真で綴られた豪華なプログラムがあるぐらいです。
 2005年、TOKYO FM 少年合唱団が創設20周年を迎えましたが、その20年のあゆみをを編集したアルバムが発行されました。フルカラー88頁の豪華版で、過去のすべての定期演奏会、外部出演、海外公演の記録、合宿等が掲載されています。
 写真集ではありますが、定期演奏会のプログラムも掲載されていることから、この合唱団がどのような曲を採り上げて演奏きたかということがよくわかります。指導者がプロの音楽家であることから、いわゆる教育音楽としての合唱曲だけにとどまらない多様な選曲が見られます。また、写真を見ても、視覚的にも楽しめる演出がある合唱団であることがわかります。さらに、この20年間の制服だけでなく少年服の変遷が伺えるのも、写真集ならではです。
 卒団生たちの一言も、短い言葉の中に万感が込められており、読みごたえがあります。あの美しい歌声を届けてくれた少年が、ステージの裏側ではこんな悩みをかかえながら頑張っていたのかということを知るとき、かえって感動が大きくなるのを覚えます。

 定価 \5,000 (税込)で、TOKYO FM 少年合唱団のホームページを通して購入可能です。

 桃太郎少年合唱団創立50周年記念誌

 

  平成24(2012)年、桃太郎少年合唱団は創立50周年を迎えました。11月には記念定期演奏会を行いましたが、それに先立って同年8月に創立50周年訳念誌を発行しています。ページ数も128ページからなり、桃太郎少年合唱団の紹介や歴史はもとより、多くの写真によって飾られています。
  特筆すべきは、多くの紙面を使って、当時の三木行治岡山県知事の情熱によって桃太郎少年合唱団が誕生したことが描かれていることです。また、日本の少年少女合唱団組織への参加を通して、児童合唱の振興に貢献したことや、数少なくなった少年合唱団の調査を通して、組織化を図っていったことは、高く評価されますが、これらの詳細についても記述されています。

 「音楽現代」’14 3月号


  ボーイ・ソプラノのコンサート評が、著名な音楽雑誌に掲載されることは、極めて稀なことです。ところが、「音楽現代」’14 3月号 142ページ(写真は136ページ)には、津嶋りえこが、平成25(2013)年12月23日にサントリーホールで行われた東京ヴィヴァルディ合奏団 第14回ファンタジックなクリスマス(独唱 栗原一朗)のコンサート評を書いています。限られた紙面の中で、栗原一朗の歌の本質について正鵠を射た批評を書いています。


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