平成10年度

第16回宝塚市ニューイヤーコンサート   平成11年1月10日

 ついに行って見てきました。「ボーイズ・エコー・宝塚」

この名前をはじめて見たのは、一昨年の初詣で宝塚市にある清荒神(きよしこうじん)に行ったときです。市の広報掲示板の新春コンサートのポスターに他の音楽団体に混じってこの名前が書いてあったのです。名前からして、少年合唱団らしいというにおいがしたのです。関西にも少年合唱団があるのだろうか?

 そして、今年も初詣でこの名前の入ったポスターを発見。ぜひ確認したいものと思って、ちょうど日曜日だったので、阪急清荒神駅前の宝塚べガ・ホールである第16回宝塚ニューイアーコンサートに行ってきました。

 午後2時の開演のときは約400席の6割ぐらいが埋まっていたでしょうか。ホールはパイプオルガンもある立派なもの。ウサギの飾り付けが雰囲気を高めていました。音頭・合唱・金管アンサンブル・室内楽・吹奏楽からなる8団体の合同公演最初の演目は、千吉音頭子ども会による「千吉音頭」。和太鼓をメインに歌と踊りで賑々しく始まりました。音頭を歌う少年の声がマイクを通してではあるが太鼓に負けずによく響く・・・何を歌っているかは殆ど聴き取れないけど。後で聞くと、この少年たちも「ボーイズ・エコー・宝塚」の団員とか。お目当ての5番目少年合唱「ボーイズ・エコー・宝塚」の前には、正司泰一郎宝塚市長まで駆けつけて挨拶。
「宝塚市は音楽文化都市として・・・・」
やっぱり宝塚市は全国的にも宝塚歌劇の町として有名だと思います。宝塚市は歌劇、温泉、手塚治虫記念館、植木、介助犬・・・といいイメージですよね。音楽人口も多いと思います。こういう町の文化的雰囲気が関西では珍しい少年合唱団を生む土壌となったのでしょう。

 登場した「ボーイズ・エコー・宝塚」の団員たちは16人の少年と、2人の少女(マネージャー)。指導はこのコンサート協会の代表でもある中安保美先生。制服は赤いブレザー、黄色いシャツ、白い半ズボン、白いハイソックス。こういう服装を身につけると、少年は可愛く見えるからふしぎです。舞台奥の壇の上に一列に並んで歌い始めました。1曲目の「しあわせを運べるように」は、阪神淡路大震災後作られた曲で、「地震にも負けない強い心を持って・・・」と歌われるその歌は、Nコンで神戸市立港島小学校の合唱部の紹介のとき部分的に聴いたことがあります。でも、全曲聴くのは初めて。阪神淡路大震災で大きな被害にあった宝塚市の子どもたちにとっては、この歌には特別な想いがあると思います。人数のせいもあってやや細い歌声でしたが、心のこもった歌でした。さっきの「千吉音頭」で歌った3年生ぐらいの少年(あとで鈴木君とわかりました)の声が飛びぬけて美しい!きっとこれから伸びるだろうな。2曲目の「青い地球は誰のもの」・・・これは、ビクター少年合唱隊の天使のハーモニーシリーズにあります。それと比較したらいけないかもしれませんが、柔らかい歌声でした。3曲目は「うさぎ」・・・ウサギ年にちなんだ選曲でしょう。ウサギの衣装をつけた千吉音頭子ども会の子どもたちの特別出演もあり楽しめました。ところが、そちらに目がいって、歌の方がお留守に・・・

 その後も、フィナーレの出演者の合同演奏で「オーシャンゼリーゼ」と歌劇「アイーダ」より「凱旋の場」で、可愛い姿と歌声を披露してくれましたが、単独の演奏は、10分足らずなので、まだその全貌はわかりません。しかし、こんなに近くに少年合唱団があったということが嬉しい驚きです。終演後は、出口で「今日のひととき」を歌って見送り。ところが、この歌が2.3メートルという近くだったので、ボーイ・ソプラノの美しい響きがびんびん響いて今日一番の感動!3月21日(日)には定期演奏会もあるとか。行ってみたいな・・・


温かい心のお土産
ボーイズ・エコー・宝塚」定期演奏会 平成11年3月21日

 冷たい雨が降る中を、会場の宝塚市立西公民館に向かいました。
公民館というイメージから、ちょっとした集会所なのかなと思っていたら、これが予想以上の立派な建物。開場の午後1時に着いて中に入ると、お母さん方が、受付、案内など裏方をされていました。会場のホールは舞台付きの約150席でニューイヤーコンサート開場のべガホールほどの音響効果はなくても、かえって、少年の喉には無理のない広さです。(べガホールでは少年達の立つ位置が後ろだったため、20人足らずの少年達の声が上に抜けてしまう傾向がありましたから・・・) 今日はマネージャーの少女2名を含む19人が2列に並んで舞台の前方で歌っていたので、声は前に届きやすかったです。

 団歌に始まって、第1部の「楽しい歌」は、まだ声が温まっていないのか、それとも緊張していたのか、高い声が伸びていない印象を受けました。しかし、「オー・シャンゼリーゼ」「大きな歌」「うさぎ」と歌うにつれて、尻上がりに好調になり、「だんご3兄弟」は3人の少年が3つの団子の絵を持って、歌に合わせて動かすという楽しい演出もあいまって、第1部を締めくくるよい仕上げになっていました。何よりも、歌いたい歌と言う感じが伝わってきました。やっぱり、いつの時代も、子どもは時代の流行に敏感ですね。

 第2部「世界をひとまわり」は世界の民謡集、真紅のブレザーを脱いで、黄色いシャツに白い半ズボンというすっきりした姿で登場。教科書にあるような世界の民謡から ポーランドの子どもの歌「Wlazv Kolekna Pcolek」という珍しい歌まで11曲を聞かしてくれました。ソロあり、低・中・高別の歌ありと、歌い方にも工夫が見られましたが、何より低学年は細い声ながら素質としてよいものを持っている子が多く、2.3年後が楽しみです。特に宮城君の声はきれいです。鈴木君は音楽性豊かですが、声をいためているようなのでお大事にネ。「ウォルシングマチルダ」を独唱した5年生の加柴君の声は今が旬という感じです。この第2部を聞くと、指導者の中安保美先生の歌声を育てる理念が見えてきます。中安先生は品川三郎先生の系列の方ですから、頭声発声で量よりも質の美を第一義に考えられていると思います。

 第3部は音楽劇「おじいさんのお話」
宝塚の民話を素材にした愉快な話で、作曲はピアノ伴奏の辻潤子先生。(1)武庫川堤の狐 (2)泉流寺のねむり観音の二本立てでした。全体としてきりっとしたプログラム構成の中でこのような笑いの部分があるとほっとします。確かに、やや練習不足の感はあったものの、少年達の個性がよく見えてきました。とりわけ、観音様をやった川口君は、はまり役と言う感じで、存在感のある演技をしていました。このような地域の素材を使った音楽劇づくりは、これから小学校でも「総合的な学習の時間」に取り入れられるのではないでしょうか。

 第4部の「心にのこる歌」は平和や自然環境の尊さを歌った歌が中心。マネージャーの松本さん、卒団おめでとうございます。弟達のお世話ご苦労様でした。「未来へ」の独唱、現代的な感覚でよかったですよ。何と言っても、今日の圧巻は、「しあわせ運べるように」。ニューイヤーコンサートで聴いたときはもっとうす味だったのに、今日の心に迫る歌はどうでしょう。・・・亡くなった方のぶんまで、のところでは自分の言葉で歌っていることが伝わってきて、背筋がぞくっとする感動を覚えました。阪神淡路大震災を歌ったこの歌には、美しく生きたいという願いが込められており、この少年達にとっても一生忘れられない想い出の歌なのでしょう。ボーイ・ソプラノの響きとこの歌の心が合致するとき、そこに美しい世界が現れます。この歌は、これからも「ボーイズ・エコー・宝塚」の持ち歌となることでしょう。

 今日も終わりは「今日のひととき」で見送り。こういう観客を大切にする姿勢もこの合唱団のよさの一つ。中安先生は、少子化時代での「してもらう」から「できる」「してあげる」子になろうと言いつづけてこられたそうです。この少年達がさらに成長したときに、「させていただく」に高まってくれたらと願ったものです。冷たい雨が降る中を、温かい心のお土産をもって帰路につきました。


                                                戻る