4月29日は「みどりの日」各地でいろいろな催しが行われました。
宝塚市では、第8回花と緑のフェスティバルが開かれました。会場となった宝塚市役所前の河川敷特設会場野外ステージにボーイズ・エコー・宝塚が出演すると聞いて、追っかけ取材してきました。今日はそのレポートを報告します。
天気晴朗なれど風強しといった今日の阪神地方でしたが、美しい花で飾られた野外ステージは砂埃の立つあまり良くない条件。それでも、ダンス系の出し物にはあまり影響はありませんでした。しかし、繊細なボーイ・ソプラノにとっては影響は大。さて、どんな歌声を聴かせてくれるのでしょう。やがて。司会者の紹介を聞きながら、私の前に座っていたおばあちゃんは4歳ぐらいの男の子の孫に、
「男の子だけの合唱団よ。」
と、説明。孫は「だんご三兄弟」を期待していたようです。今日の曲目は@青い地球は誰のもの A川は誰のもの BビリーブCゆかいな行進(アメリカン・パトロール) Dだんご三兄弟の5曲です。
ぶっつけ本番で11時15分から始まった舞台には13人の少年と、マネージャーの1人の少女が並びました。「青い地球は誰のもの」が始まって先ず感じたのは、マイクの高さが少年達の身長にあっていないので歌声が拾えていないこと。ぶっつけ本番は厳しいなと痛感しました。また、伴奏もいつもと違ってエレピアン。音の大きさのバランスが最初はうまくいっていませんでしたが、こちらの方は次第に合ってきました。 少年に声量の大きさをを求めるのは酷ですから、野外ではマイクをいかに活用するかも課題だなと思いました。特にソリストはマイクの前で歌った方がよいでしょう。そんな中でノリがよかったのは、ゆかいな行進(アメリカン・パトロール)。やっぱりこういう元気のよい歌が野外ではいいのかな。また、だんご三兄弟は演出があるので楽しめました。
音楽的には厳しい面もありましたが、教育的には価値あるイベントでした。髪の毛が舞い上がり、砂埃の立つ中でも少年達はしっかり立って歌っていました。そうです。長い人生の中には最悪の条件の中で戦わねばならない時だってあります。泣き言を言っては負け。風の日には風の日の生き方があるんです。見る人はそこまで見ています。少年合唱のファンはただ少年のきれいな声だけを求めているのではありません。規律ある凛々しい少年を求めているのです。それは、ただのわがままに過ぎないものを個性と呼び、みんなと揃え協調することを罪悪視する今の日本の悪しき風潮の中でダイヤモンドのごとき価値を持っています。
中安先生、どうか少年達に不易の価値を植えつけてください。私もできる限り応援しますから。
昨日(30日)は、宝塚ベガホールで行われた、第33回宝塚合唱連盟合唱交歓会に行って来ました。(もう、追っかけという雰囲気になっています。)
もちろんお目当てはボーイズ・エコー・宝塚ですが、宝塚の合唱事情も知りたいと思って行ってきたのです。出場団体は14、実際にはさらに2つ加盟団体はあるそうです。また、加盟していない団体も入れると30を越えるとか・・・人数も8人から60人ぐらいまで、年齢も最年少のボーイズ・エコー・宝塚から平均73歳の混声合唱団「宝唱会」まで、でもほとんどは女声合唱団でした。(全国的にもそうでしょう)実力的にもかなり高いレベルの合唱団がいくつもありました。人口20万人の宝塚市がいかに合唱が盛んかというバロメーターです。
今日の曲目は前回と同じ@ゆかいな行進(アメリカン・パトロール) A川は誰のもの Bビリーブ Cだんご三兄弟の4曲です。歌い込まれていることが期待されます。舞台には前回の野外ステージとほぼ同じ14人の少年と、マネージャーの1人の少女が並びました。いつも最初はのどが暖まっていないのか、「ゆかいな行進」は活気がいまいちでしたが、「川は誰のもの」や「ビリーブ」は声質と曲が合って叙情性がよくでていました。今日は野外と違って、歌詞もしっかりと聞き取れました。特に「ビリーブ」のソロの圓井良平君は、きれいな声質ですが、ちょっと恥ずかしそうに歌っていました。それは可愛さにもつながるのですが、どうか自信を持って堂々と歌ってくださいね。どうも男の子は照れがあると、声が弱々しくなるのが残念です。これはソロでも、多人数で歌っても同じことです。人数も多いときは45人いたそうですから、それをカバーするのは、正しい発声と自信と誇りです。また、だんご3兄弟は聞けば聞くほど「黒猫のタンゴ」と曲想が似ています。団子とタンゴが似ているだけではないように感じます。ボーイズ・エコー・宝塚は、2つの小学校を母体にした合唱団なのですが、特に中高学年の団員が増えることが今一番の課題でしょう。(たぶん)近畿地方唯一の少年合唱団なのですから、その発展を祈らずにはおれません。私もかかわった以上、できるだけの応援はします。
今日も、ボーイズ・エコー・宝塚の演奏会のレポートをします。今日は、中安先生からご案内をいただいて、宝塚東公民館で行われた阪神ブロック子供会運営研究大会に行って来ました。もう、ここまでくると完全に追っかけという雰囲気になっていますね。この建物は洋館風の立派なもので、宝塚市はこういう文化施設に金をかけていることに感心しました。今日は音楽会というより、アトラクション的な出演で、約150名の観客も音楽を聴きに来たというより、子供会育成のための勉強にこられた方の集いでした。
今日は、子供会の育成者でない私は、お目当てのボーイズ・エコー・宝塚の出演の前にさっと現れて、終わるとさっと去っていくという月光仮面のようなレポートをしてきました。まず、観客の反応がちょっと違います。幕が左右に開いて、赤いブレザーに白い半ズボン、白いハイソックスの制服姿の少年たちがきちんと並んで現れるとどよめきが・・・
そうです。今こういうきちんとした少年をみることは希なことになってきました。だらしないシャツ出し、ハーフパンツといった格好が定番化し、(僕は大嫌い)中には金髪・茶髪の少年まで現れるようになった今、こういう気品を感じさせる少年たちをみると、実にさわやかな気がします。
さて、今日の曲目は前回ほぼと同じ@ 川は誰のもの、A ビリーブ B 元気に笑え C ゆかいな行進(アメリカン・パトロール)D だんご3兄弟の5曲です。いっそう歌い込まれていることが期待されます。
舞台には14人の少年と、マネージャーの1人の少女が並びました。「川は誰のもの」は、今回が一番歌詞がしっかりと聞き取れました。このような曲では歌詞が大きな意味を持ちます。「ビリーブ」のソロの圓井良平君は、今日は堂々と歌ってくれました。声が少しひっくり返るところはありましたが、それをカバーする叙情的な声は、曲想にもあっており、ボーイ・ソプラノ ソロの魅力を感じさせました。
「元気に笑え」は、今日が初演です。メラー作曲のいかにも少年合唱のための曲という感じの歌で、後半の笑い声をどう表現するかがポイントですが、2部に分かれた合唱の楽しさはきちんと伝わってきました。まだこれから歌い込まれるとよくなっていくことでしょう。
「だんご3兄弟」は、振り付けがあるのですが、今日は長男役を6年生の圓井勇樹君が、休んだ子のピンチヒッターで登場。これが結構いいんです。6年生なのに照れもないし、長男という感じがでていて。しかも、観客が手拍子をして応援。アンコールで演奏される「ラデツキー行進曲」の雰囲気なんです。舞台と客席が一体になった楽しい15分間でした。
休暇がとれましたので、8月11日9:30〜11:30、宝塚市立宝塚小学校で行われましたボーイズ・エコー・宝塚の「夏休みコーラス体験」を参観しました。前夜、急に指導者の中安保美先生に参観をお願いしたのですが、快諾がいただけました。
喜び勇んで行った宝塚小学校は、先年の阪神淡路大震災で大きな被害を受けましたので、最近建てかえられ、美しい校舎になっていました。練習会場の多目的室は、木の床が美しい部屋で琴が並んでいる部屋でした。11日はお盆前の帰省時期ということもあって、参加者は10名でしたが、間近で練習風景を参観することができました。
礼に始まって礼で終わる、こういう当たり前のことが今、学校教育でおろそかにされていますが、ボーイズ・エコー・宝塚にはきちんと残っています。こういう姿を見ると、教育において「形から心」ということをもっと強調してよいのではないかと思います。
…古い奴だとお思いでしょうが、古い奴ほど新しいものを欲しがるもんでございます。どこに新しいものがございましょう。ただの気ままを個性と呼ぶ風潮のため、子ども社会は荒れ放題。今の世の中真っ暗闇じゃござんせんか。…
鶴田浩二の歌のセリフじゃありませんが、しつけの原点は、気ままをとることじゃありませんか。そういうことを改めて感じました。
練習は母音の発声から。キーを上げながら進め、自分の声が耳にどのように響くかを確かめられるように約20分続いていきます。中安先生と辻先生のティーム・ティーチングは、息がピッタリあって進められていきます。さて、歌の好きな少年が集まっているとはいえ、発声練習という基礎訓練がわんぱく時代の少年達に好まれることはこれまでもなかったでしょうし、これからもないかもしれません。しかし、それなしには、人を慰め励ますような歌を歌うことはできないのです。その意義をどう伝えておられるのか、また伺ってみたいと思いました。
しかも、姿勢は立って歌うのかと思えば、基本的に正座。これには驚きました。10分もてばいいかなと思っていたのですが、2年生でも30分もつ少年もおり、最初から無理と決めてしまう方が問題かなと思いました。私は立って歌うか、椅子に座って歌ったことしかないので、この練習方法は集中力を高めるためかと感じました。
1時間半の中で練習された曲は、8月25日の「宝塚まつり」で歌われる「宝塚市歌」「宝塚讃歌」をはじめ、「ホルディリディア」「川で歌おう」「オリバーのマーチ」「勇気100%」と多彩でした。歌の指導においては、たとえの効用が大きいものです。ピアノ伴奏の辻先生はこれがうまい。曲想を子どもにわかる言葉に置き換えることの意味を改めて感じました。練習を通して、指導者と子どもの信頼関係が築かれていく過程も垣間見ることができました。もちろん合唱団の少年達の中には、美しい声や音感といった音楽的才能に恵まれていると感じる子どももいますが、全員がそうというわけではありません。しかし、練習の真剣さにおいてはそれが逆転することもしばしば見られました。そういうことも、また人生において大切なことかと思います。
それにしても、ボーイズ・エコー・宝塚は、精神的な面を大事にする合唱団だと思いました。金、金、金、物、物、物の世相の中で、毅然として心が優位であることを主張することは今や、勇気のある行動になってきました。いわゆる月謝を取ることもなく、歌を通して、地域や、社会へ奉仕しようとするというその姿勢は、高く評価できます。ますます応援しようという気持ちになって帰路につきました。
平成11年11月3日
今日は、宝塚ベガホールで行われた、第33回宝塚市民合唱祭に行って来ました。出場団体は偶然のことでしょうが、回数と同じ33団体で、午前10時から午後4時前までの長丁場のコンサートです。もちろんお目当てはボーイズ・エコー・宝塚ですので、午後の3番目という時間帯に合わせて午後1時に会場に着くようにしました。ところが、行ってびっくり!約400席の会場はほぼ満席で立ち見も出るほど。それもそのはず、純然たる観客プラス演奏者が出演の前後は観客なのですから、観客数が多いはずです。それにしても人口20万人の市に老若男女これだけの合唱団があるということは、それも音楽が盛んであるというバロメーターです。
ボーイズ・エコー・宝塚、今日の演目は、演奏時間の関係で、「マーチングマーチ」「勇気100%」「元気に笑え」の3曲。最初にマネージャーの大塚さんが、張りのある声で
「今日は『元気』をテーマに歌います。」と言って、曲の簡単な解説を。このテーマ、いいですね。子どもの頃、『元気』はただ病気の反対語でしかなかったのですが、だんだんその本当の大切さがわかるようになってきました。人に元気を与える人にも会ってきましたし、人から元気を奪う人にも会ってきたからです。そういう人たちに出会うたびに人に元気を与える人になろうと思ってきました。元気は人格形成にも影響します。それは好奇心を触発し、何事にも共鳴し感動する精神を育てます。「歌」・・・それは当然人に元気を与えるものでなくてはいけません。悲しい曲でさえ、慰めや癒しを与えてくれるものでなくてはいけません。
今日は曲が快活なものということもあってか、14人の少年たちと1人の少女の声も最初から好調。立つ位置が前だったことも、声が天井に抜けなくてよかったです。
「マーチングマーチ」は、さわやかな演奏で山場がうまく作れていました。
「勇気100%」、これはSMAPの歌であるということは知っていましたが、「忍たま乱太郎」のテーマでもあったのですね。(これは知りませんでした)こういう歌を小さいときから聞きつけて育っている現代の子どもたちにとっては、自分たちの感性にぴったり合った曲かもしれません。歌いたい歌の一つでしょう。はっきり言って、創唱者のSMAPよりきれいな声と歌でした。(ジャニーズ系はダンスが主で歌は従ですからね)途中4人が前に出てきたので、何をするのか見ていると、会場に向かって手裏剣投げのポーズではありませんか。もちろん投げるのは空気の手裏剣!また、鈴木君の側転などの意外性のある演出も相まって、楽しい演奏でした。聖なる声だけが少年合唱の魅力ではないことを実感しました。
さて、今日の最大の収穫は「元気に笑え」でした。6月の初演から約半年、練習の成果がはっきりした形の結実を生んでいました。この曲はメラー作曲のいかにも少年合唱のための曲という感じの歌で、前半の歌としての部分をカンタービレの精神を生かして歌い、後半の笑い声をそれとどう対比して表現するかがポイントですが、ソプラノパートを歌う富谷昭夫君と新入の山下君が最初から張り合うように絶好調のビンビン響く歌声で歌えば、それが全体を引きずるようになって、たいへん盛り上がっていました。もう6月に見られた不安定感はありません。よい歌は歌い込むことによって、だんだんよくなることを実感しました。
今日は終演後、指導者の中安先生とお話する機会もあり有意義でした。『元気』をいっぱい頂いて家路につきました。
「ボーイズ・エコー・宝塚」のステージに接して以来1年が経ちました。その間、練習を含め7回の演奏に接してきました。我々と少年達の1年では成長が違います。それを確かめる楽しみを胸に、今日は、阪急清荒神駅前の宝塚べガ・ホールで行われた第17回宝塚ニューイヤーコンサートに行ってきました。
雨模様にもかかわらず、午後2時の開演のときは約600席の8割ぐらいが埋まっていたでしょうか。舞台正面には干支の龍の飾り付けが雰囲気を高めていました。音頭・合唱・ミュージックベル・金管アンサンブル・室内楽・吹奏楽からなる10団体(3団体が初参加でさらに充実)の合同公演最初の演目は、今年も千吉音頭子ども会による「千吉音頭」和太鼓をメインに歌と踊りで賑々しく始まりました。「ボーイズ・エコー・宝塚」の団員のお囃子が、太鼓と張り合うようにビンビン響きます。セリフは聞き取れなくても、雰囲気はこれで一気に盛り上がります。和服姿の女の子の踊りが華を添えてくれます。
3番目登場した「ボーイズ・エコー・宝塚」の団員たちは15人の少年と、1人の少女(マネージャー)。指揮はこのコンサート協会の代表でもある中安保美先生。ピアノ伴奏は辻潤子先生。実は関西地方も風邪の流行でやむなく欠席もあったとか。その少年、どんな思いで今日の日を迎えていることでしょう。また、声が本調子でない子もいたことでしょう。今日が終わりじゃないんだよと、声をかけたくなります。制服は赤いブレザー、黄色いシャツ、白い半ズボン、白いハイソックス。この可憐な服装も常連にはおなじみのものとなりました。今年は去年と違って、舞台奥の壇の上ではなく少しでも声が前に届くようにと舞台の中央辺りに一列に並んで歌いました。この合唱団では女子マネージャーが歯切れのよい声で曲目の解説をするのも、聴きどころの一つです。大塚さんの解説はいつも期待感を持たせてくれます。
1曲目の「しあわせを運べるように」は、震災復興に願いをこめてという、ニューイヤーコンサートの趣旨にぴったりの名曲。何度聴いても感動を新たにします。本当にあの阪神淡路大震災では、人の美しさと醜さが両方現れました。その美しさを代表するのが、この歌といっても過言ではないでしょう。作詩作曲者の臼井真先生(神戸の小学校の先生)も危機一髪で命を得たと聞いています。
地震にも負けない強い心をもって 亡くなった方々のぶんも
毎日を大切に生きてゆこう
傷ついた神戸を元の姿にもどそう 支え合う心と明日への希望を胸に
響きわたれ僕たちの歌 生まれ変わる神戸のまちに
届けたい わたしたちの歌 しあわせ運べるように
地震にも負けない強い絆をつくり 亡くなった方々のぶんも
毎日を大切に生きてゆこう
傷ついた神戸を元の姿にもどそう やさしい春の光のような未来を夢み
響きわたれ僕たちの歌 生まれ変わる神戸のまちに
届けたい わたしたちの歌 しあわせ運べるように
何と美しい詩でしょう。苦しみの中でこんな美しいものが生まれるとは。やはり、阪神淡路大震災で大きな被害にあった宝塚市の子どもたちにとっては、この歌には特別な想いがあると思います。この歌は「ボーイズ・エコー・宝塚」の団員にとって「僕たちの歌」なのです。だから、言葉の意味を伝えようという気持ちがよく歌に現れていました。
2曲目の「春の川で」。これは「スケーターズワルツ」で有名なワルトトイフェルの作曲です。歌詞が違うとかなり違うように聞こえるのは、「麦畑」と「故郷の空」だけではありません。この曲、教科書にも主旋律の一部が登場していましたが、今日の演奏でよかったのは、いわゆる中間部といわれるところです。この部分が充実しているから、主旋律の優雅さが生きてくるのです。
3曲目は「パフ」・・・たつ年にちなんだ選曲でしょう。ピーター・ポール・アンド・マリーのヒット曲で、童話風のファンタスティックなドラゴンを主人公にした作品です。同じ旋律が繰り返されるのをどう変化を付けていくかが味噌ですが、オブリガートがそれを果たしていました。ボーイ・ソプラノ(少年合唱)の魅力の一つはオブリガートにあることを再発見しました。長崎の竜踊りのような退場の演出も意外性があってよかったと思います。少年合唱はまじめな部分とこういうやんちゃな部分のバランスが大切かな。
フィナーレは約170名の出演者の合同演奏で「ビリーブ」と歌劇「タンホイザー」より「栄えよ音楽の殿堂」とアンコールの「野に咲く花のように」と「ラデツキー行進曲」で、歌声を聞かせてくれました。どれもオーソドックスな演奏の中に、ハンドベルを取り入れるなど、ユニークな部分もあって楽しめました。オーケストラとの競演というのは少年達にとって、よい経験だと思います。指揮者の松山雅晴先生は、出演者を生かし、つぼを心得た演奏をされる方です。 終演後は、今年も出口で「今日のひととき」を歌って見送り。そういった意味で、3月20日(祝)の定期演奏会につながるよい演奏でした。
ボーイズ・エコー・宝塚のみなさん、第15回定期演奏会おめでとうございます。少年時代のわずかな期間だけ与えられ、ときに元気よく、ときに繊細な歌声を聴かせるボーイ・ソプラノによる少年合唱は一種の魔力を持っています。今日も、素晴らしい歌声を期待しています。
さて、ボーイズ・エコー・宝塚を応援し始めて1年あまりが経ちました。最初ここまでのかかわりをもつことになるとは思ってもみませんでしたが、指導者中安保美先生の歌による社会奉仕という崇高な教育理念と情熱に触れ、また、団員のみなさんの成長を見、さらに、日本の少年合唱団が共通して置かれている苦しい現状を知るにつれ、応援せずにはおれない気持ちになってきました。
昭和30年のウィーン少年合唱団の来日をきっかけに雨後のたけのこのように誕生した全国30数団体の少年合唱団も、諸般の事情で解散したり、少年少女合唱団に改組して、現在ではわずか10団体となってしまいました。このままでは、日本から少年合唱団が消滅してしまうのではないかと心配しています。そんな中でボーイズ・エコー・宝塚が、近畿地方唯一の少年合唱団として、また、音楽文化都市宝塚の誇り・アイドルとしてその灯を継承発展されておられることは、ただ宝塚だけでなく祖国日本の文化発展のためにも価値あることと考えております。
少子化、受験の低年齢化という大きな社会的問題や、わがままと個性の区別さえつかなくなり、みんなと揃えて協調することを罪悪視するような今の日本の悪しき風潮の中で、少年合唱団を運営するのはたいへん難しいこととと推察します。事実、ボーイズ・エコー・宝塚でも、団員の確保と音楽的水準の向上という課題は常に大きいと伺います。しかし、一生のうちで最も感受性の豊かな少年時代に美しいものを美しいと感じる心を育てることや、仲間と協力して一つのものを作り上げる喜びを知ること、また、規律ある凛とした態度を身につけることは、一生の宝となると確信します。価値観の混乱した今の日本で、少年達に美しい精神を植え付けるためにも、ボーイズ・エコー・宝塚の発展を心より祈念するものです。
このように生きたい
第15回 ボーイズ・エコー・宝塚定期演奏会を鑑賞して
3月19日の昼頃、Kiyoshiさんより突然お電話。
「明日のボーイズ・エコー・宝塚の定期演奏会に行きたいと思うんですけど・・・」
ということで、意外に早く再会が実現しました。この日は前日の雨が嘘のような晴天。日中は春らしい暖かい日差しで、大阪で待ち合わせて、乗り換えしながら阪急小林駅前にある宝塚市立西公民館へ向かいました。少し早くついたのですが、この日も受付はアットホームな雰囲気で、最後の練習の歌声が漏れ聞こえてきます。この日も、Kiyoshiさんと並んで鑑賞。
人生の縮図
ボーイズ・エコー・宝塚は、人数的には17人と厳しい状況が続きますが、それを逆手にとって、団員一人ひとりを生かす演奏会を目指しているようです。
この日の第1部は、団歌は歌詞がはっきりしていてとてもよいスタートだと思いました。ところが、スタートは緊張するものです。それが歌に現れ、第1部「水の旅」はかなり曲によってできぐあいに差が出ました。出だしがよいと最後まで好調でしたが、出だしでつまずくと、しまったという不安な気持ちが歌声や表情に出てしまって乗り切らないというところもありました。これが、生演奏の魅力でもありこわさでもあります。しかし、これは音楽だけでなくあらゆることに言えることで、人生の縮図とも言えます。こういう経験は決してむだにはなりません。それでも、「川はだれのもの」は歌い込まれていて、自信のようなものが感じられましたし、「川で歌おう」では、ソロの魅力を楽しむことができました。練習態度抜群の尾崎君は青竹のようにまっすぐで真摯な歌声を、山本君はまろやかな歌声を、圓井君は情感豊かなアルトを聴かせてくれました。昨年夏には練習風景を参観できたので、性格が歌声にも反映することを感じましたし、一人ひとりを生かす演奏は、ボーイ・ソプラノの図鑑を見ているようでした。
元気をください
第2部「元気の出る歌」は、この一年間テーマとして取り組んできたことですが、一生をかけて取り組むほどねうちのあることです。「アンパンマンのマーチ」は決して幼稚な歌ではありません。みんなの美しい夢を守るために、たとえ自分が傷ついてもがんばり続けるアンパンマン。生きることの本当の意味を求め続けるアンパンマンの生き方は、すばらしいではありませんか。次々と歌われる歌の数々は、きっと聴く人の心を励ましてくれたに違いありません。
「勇気100%」の原曲は、地声で歌われるためあまり感動しなかったのですが、頭声で歌われると実にさわやかです。鈴木君の側転見たかったなあ。あれは曲のイメージに合っていました。音楽的に聴かせたのは「元気に笑え」と「パフ」。第2部では、ボーイ・ソプラノの元気な面と繊細な面を両方楽しむことができました。
これは叙情劇だ
第3部の音楽劇「犬と魚屋」は、ジーンとさせる話です。魚屋が捨て犬に寄せる愛に満ちた行動は胸を打ちます。魚屋の脚にまとわりつく捨て犬の演技はなかなかよかったです。ただ、歌と比べると劇は全体的にやや練習不足気味で、山犬役はもっと悪役に徹して欲しかったです。この劇の筋は大好きですから、いつの日か再上演されることを期待しています。
憧れがボーイ・ソプラノで歌われるとき
しかし、第3部で自分を出したことが緊張感を解きほぐしました。第4部の「心にのこる歌」は文字どおり心を動かす歌が続き、大きな盛り上がりを見せました。団長の富谷昭夫君、卒団おめでとうございます。長い間ご苦労様でした。「サヨナラの代わりに」の独唱、リズム処理の難しい歌ですが、団員に、また会場のみんなの心に何か残そうという気持ちは伝わってきました。いつもほのぼのとした雰囲気で、人の心に安らぎを与える歌をありがとう。
よく考えてみれば、第4部で取り上げられた歌は、人の生き方に関係する歌が多いですね。「野に咲く花のように」では、人をさわやかに、なごやかにして・・・そんなふうに生きていけたらすばらしいと歌われます。「Believe」では、君がくじけそうになったり、誰かが泣き出しそうになったときは、僕が支え、一緒に歩こうと歌われます。「しあわせ運べるように」では、地震にも負けない強い心をもって亡くなった方の分も毎日を大切に生きてゆこうと歌われます。何てすばらしい生き方でしょう。「このように生きたい」という憧れが清純なボーイ・ソプラノで歌われるとき、そこに美しい世界が現れます。ボーイ・ソプラノを聴く喜びがそこにあります。
何と言っても、この日の圧巻は、「Believe」と「しあわせ運べるように」でした。この順序は前回と同じですが、何度聴いてもよいものは心を打ちます。また、出来映えも昨年以上でした。「Believe」は来年から使われる教科書にも登場するそうですが、山下君兄弟のソロも生きていました。歌も声と歌心が合致して背筋がぞくっとする感動を覚えました。「しあわせ運べるように」は、もうすっかりこの合唱団の十八番となりました。この歌を歌わせたら、日本中のどの少年合唱団よりも心に響く歌を歌ってくれることでしょう。ほとんどの子どもたちは、幼いなりに阪神淡路大震災の体験をもっており、その中で人が支え合う姿を見てきたからこそこんな心に迫る歌が歌えるのだと思います。
平成の音楽松下村塾
歌が人の心を動かすのは、その歌の心が聴き手に伝わるからに他なりません。少年の歌が大人の心を動かすのは、自分が失いそうになっている、あるいは失ってしまった美しいものを呼び覚ましてくれるからとも言えます。
ボーイズ・エコー・宝塚は、たとえ規模は小さくても平成の音楽松下村塾として、ひたむきな姿で人の心に灯をともし続けて欲しいと願ったものです。
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