平成16年度記録 

宝塚合唱連盟第38回合唱交歓会
             (ボーイズ・エコー・宝塚出演)

  7月18日は、ベガホールで行われた宝塚合唱連盟の合唱交歓会に行ってきました。昨年よりこの時期に開催されることになったので、大人の団体と違って毎年団人に入れ替わりのあるボーイズ・エコー・宝塚にとっては、入団してすぐに舞台に上がるということは少なくなりました。団員も23人と微増しているそうですが、諸般の事情で当日出演したのは17名でした。ボーイズ・エコー・宝塚の出場は後半の2番目で、今回は久しぶりに1列に並びました。ミッキーマウスの模様の入ったTシャツに白半ズボン、白ハイソックスという夏衣装も、2回目になると見慣れたという気がします。

 この日の演奏曲は、「クラリネットをこわしちゃった」「象だゾウ」「歌声のメッセージ」「歌に願いを」の4曲で、前半2曲が楽しい歌、後半2曲が歌に込めたメッセージという組み合わせです。
 歌の第一印象は、以前より声がよく出るようになってきたということです。また、初舞台の団員が約半数いた過去2年と比べて、安定した歌を歌えるようになってきました。しかし、「クラリネットをこわしちゃった」は、全員声をそろえて歌っているのですが、「オー」や「コラ!」という部分も全員で歌っているために、その部分が沈みがちでした。もう少し工夫すれば、その部分がよいアクセントになって面白いのにと感じました。「象だゾウ」も、声の大きさと速さを工夫することによってもっと山場を作ることができます。このような歌を感動的に歌うことは難しいと思いますが、工夫によって山場を作ることはできます。そういうところが、これからの課題になってきます。
 後半の2曲は「歌が伝えるメッセージ」を主題にした歌ですが、尻上がりによくなってきて、「歌に願いを」は、なかなか聴かせる歌になっていました。10分ほどの舞台でよさを出し切ることは難しいと思いますが、選曲にストーリー性やドラマ性があると、いっそう聴かせる歌を歌えるようになることでしょう。


第38回宝塚市民合唱祭


 秋晴れの11月3日(文化の日)は、宝塚ベガホールで行われた、第38回宝塚市民合唱祭に行って来ました。今年の出場団体はかなり増えて41団体でしたが、ボーイズ・エコー・宝塚の出場に合わせて午前10時に会場に着きました。団体数が多くなれば、一団体の持ち時間は当然少なくなります。1団体8分ということですから、演奏は1〜3曲ということになります。その中で持ち味を発揮するためには、選曲がとても大切になってきます。雲雀丘学園PTAコーラス「ローズ・エコー」のように「南国の薔薇」1曲というのもありましたが、こういう選曲もまたよいのではないでしょうか。6番目の登場となったボーイズ・エコー・宝塚は、秋にちなんだ「おまつり」の歌を2曲と、「山寺のおしょうさん」でした。ストーリー性のある選曲はいつもながらですが、合唱曲としての魅力はどうかという角度から聴いてきました。

  2曲の「おまつり」のうち、1曲目はどこかで聞いたことがあるけれど思い出せないまま、曲の最後の「か、か、からすカンスケさん。・・・」になってから、小学生の頃「みんなのうた」でやっていたことを思い出しました。ボーイズ・エコーのハイトーンが生かされる曲ですが、前半をやや抑えて、最後の山場をたたみかけるようにすることで、この歌の持ち味はさらに生かされると感じました。2曲目の「おまつり」は、ドイツ民謡に日本語の歌詞をつけたものです。おそらく原曲は、「おまつり」とは関係ないでしょう。この曲は、曲そのものが単純な有節歌曲のため、変奏曲風に編曲しないと、がんばっても上手に聞こえないというところがあります。たくさん並んだ「おまつりソング」の1曲ならよかったのですが・・・。しかし、最後の「山寺のおしょうさん」は、合唱曲として面白い味付けができていました。歌詞の旋律と木魚の音をまねた部分がからみあって、合唱だからこそこんなことができるという合唱本来の楽しさを味わうことができました。最後に挨拶した新人の河原君は気品のある声で、歌うように話していて印象に残りました。来春の記念定期演奏会に向けて、これらが今後どう高められていくかが楽しみです。 

「第6回身体障害者補助犬シンポジウム」



紙ふうせんとともに「翼をください」を歌うボーイズ・エコー・宝塚

 宝塚市で、平成16年12月5日恒例の「なくそう心の段差 第13回障害者週間記念事業 弟6回身体障害者補助犬シンポジウム」が開かれました。このシンポジウムには、ボーイズ・エコー・宝塚も出演することは知っていましたが、参加することはできませんでした。翌日の毎日新聞の地域ニュースとしてかなり大きく紙面をとって写真入りで、この情報が掲載されていましたので、中安先生からいただいた情報を合わせて紹介します。

 午前の部には、障害者もメンバーに加わる「おあや座」が「続江戸の12月」を上演。次に宝塚小学校女子児童による音楽隊の吹奏楽が演奏されました。その後、ボーイズ・エコー・宝塚は、「歌のメリーゴーランド」「世界中の子どもたちが」「鉄腕アトム」「山寺のおしょうさん」「しあわせ運べるように」の5曲を歌いました。その後、4人のショートスピーチ。午後は開会挨拶に続き、メインのシンポジウム。特別ゲストの紙ふうせんのコンサートの最後には、、ボーイズ・エコー・宝塚が再び登場。「翼をください」を一緒に歌い盛り上がりは最高潮に。「来年見直されることになっている補助犬法をより血の通ったものに」との大会アピールを読み上げたのは団長の稲垣拓君でした。稲垣君は、
「どんな場所でもシンシアがおとなしいのが印象的だった。一緒に歌えてとてもうれしい。」と笑顔でインタビューに答えたそうです。


第22回「宝塚ニューイヤーコンサート」


  今年も、ベガホールの正面には恒例の干支の鶏とひよこの絵と「2005」という数字の飾りが飾られ、例年通り郷土民謡の「千吉音頭」で開演しました。今回、よく頑張ったのは、小1〜小5というボーイズ・エコー・宝塚と、ほぼ同年齢のベルキッズ宝塚による「美しく青きドナウ」で、ハンドベルだけでこの大曲に挑戦した意欲は高く評価できます。
 さて、ボーイズ・エコー・宝塚の出場順は5番目でしたが、21人の団員が2列の定位置に並ぶ速さは、ベガホールの舞台に上がるたびにスムーズになってきました。児童合唱団の整列の速さと歌の実力には関係があるように感じます。それは、自分の立場の自覚とつながっているからです。
 この日の曲目は「花祭り」「世界中の子どもたちが」「しあわせはこべるように」の3曲。「花祭り」は、言葉がはっきりせず、歌の輪郭がくっきりと描けていないという感じがしました。しかし、2曲目の「世界中の子どもたちが」になると、観客に伝えようという気持ちが前面に出てきて、次第によい歌になってきました。3曲目はおなじみの「しあわせはこべるように」。阪神・淡路大震災から10周年を1日後に控え、もっともふさわしい選曲です。もう、ボーイズ・エコー・宝塚の歌で10回近く聴きますが、この日の歌は前半にしっとりと聴かせるだけでなく「泣き」の要素があり、(こんなことは初めてです)、それが後半の大きな山場づくりに活かされていました。ということで、この歌は、ボーイズ・エコー・宝塚の代表曲としての位置を確かなものにしました。
 フィナーレの合同演奏はいつものように松山雅晴先生の指揮で「栄光の架橋」「威風堂々」。アンコールが「ラデツキ―行進曲」と「すみれの花咲く頃」でした。この中で、「ラデツキ―行進曲」は、スマトラ沖地震とインド洋大津波の死者を悼んで手拍子を控えるというものでしたが、それだけに演奏に集中できました。ボーイズ・エコー・宝塚のメンバーの口が、いつも以上に縦に長くなっているのが印象的でした。
 いくつかの課題はありますが、この勢いを3月の定期演奏会につないでほしいと願っています。


第20回定期演奏会に寄せて


 ボーイズ・エコー・宝塚のみなさん、第20回記念定期演奏会おめでとうございます。今回は、ちょうど合唱団の成人式に当たる定期演奏会になります。少年時代のわずかな期間だけ与えられ、ときに元気よく、ときに繊細な歌声を聴かせるボーイ・ソプラノは一種の魔力を持っています。古今東西多くの人たちがその不思議な魔力にとりつかれてきました。
 さて、ボーイズ・エコー・宝塚を応援し始めて6年あまりが経ちました。最初ここまでのかかわりをもつことになるとは思ってもみませんでしたが、指導者の中安保美先生・辻潤子先生の歌による社会奉仕という崇高な教育理念と情熱に触れ、また、団員のみなさんの成長を見、さらに、日本の少年合唱団が共通して置かれている苦しい現状を知りました。
 昭和30年のウィーン少年合唱団の来日をきっかけにして、雨後のたけのこのように誕生した全国40団体近くあった少年合唱団も、諸般の事情で解散したり、少年少女合唱団に改組したりして、現在ではわずか10団体となってしまいました。このままでは、日本から少年合唱団が消滅してしまうのではないかと心配しています。
 そのような中で、ボーイズ・エコー・宝塚が、近畿地方唯一の少年合唱団として、また、音楽文化都市宝塚の誇り・アイドルとしてその灯を継承発展されておられることは、ただ宝塚だけでなく祖国日本の文化発展のためにも価値あることと考えております。最近では、東京はじめ全国各地からボーイズ・エコー・宝塚を鑑賞しに来られる人も現れるようになってきました。宝塚に音楽団体は数多くあるといえども、このような団体は「宝塚歌劇」と「ボーイズ・エコー・宝塚」ぐらいでしょう。
 少子化、受験の低年齢化という大きな社会的問題や、少年のスポーツ志向、また、わがままと個性の区別さえつかなくなり、みんなと揃えて協調することを罪悪視するような今の日本の悪しき風潮の中で、少年合唱団を運営するのはたいへん難しいことと推察します。事実、ボーイズ・エコー・宝塚でも、団員の確保と音楽的水準の向上という課題は常に大きいと伺います。しかし、一生のうちで最も感受性豊かな少年時代に美しいものを美しいと感じる心を育てることや、仲間と協力して一つのものを作り上げる喜びを知ること、また、規律ある凛とした態度を身につけることは、一生の宝となると確信します。価値観の混乱した今の日本で、少年達に美しい精神を植え付けるためにも、ボーイズ・エコー・宝塚の今後の発展を心より祈念するものです。

ボーイズ・エコー・宝塚 第20回定期演奏会


   成人式のお祝い
 ボーイズ・エコー・宝塚 第20回定期演奏会は、団の成人式にも当たるものです。久しぶりに会場を西公民館からベガホールに移し、渡部市長の挨拶を得るなど記念定期演奏会にふさわしいものになりました。とりわけ、新市長の渡部完さんは、舞台挨拶の中で、ボーイズ・エコー・宝塚が、日本に数少ない少年合唱団で関西唯一の存在であることを高く評価し、市として、これからも応援するというメッセージを送られました。このことは、団員数が13人となった5年ほど前、宝塚少年少女合唱団に併合したらどうかという行政の姿勢と比べると180度の転換であり、音楽文化都市である宝塚市長の見識としてすばらしいものです。厳しかったこの時期に踏ん張られた中安先生、辻先生をはじめ当時の団員の保護者のがんばりがこの日につながっているのです。
 
   好調なスタート
 昨年に続き寺本君の指揮、有留君のピアノ伴奏による団歌で始まった第1ステージは、「歌はぼくたちの宝物」と題されていましたが、いつもより好調なスタートでした。と言いますのも、ボーイズ・エコー・宝塚の第1ステージや第1曲目は、まだのどが温まっていないという感じで不安定なところもあり、歌っているうちに次第に調子を上げて、最後のステージで大きな感動につながるというパターンが多かったからです。第1ステージは、5曲からなっていましたが、「歌のメリーゴーランド」のような30数年ぶりに聴く曲から「栄光の架け橋」のような最新の曲まで並んでおり、どの歌も、その歌に求められるものを過不足なく表現し、充実したステージという感がしました。

   「ゆかいな歌」は肩の力を抜いて
 第2ステージは、初めて聴く曲でも楽しくリラックスして聴くことができます。「象だゾウ」のような題名からしてギャグになっているものはもちろん、「バケツの穴」のように二人ずつ交替して同じ節を歌い変化をつけたもの、「クラリネットをこわしちゃった」のように楽器の演奏を入れて曲の雰囲気を盛り上げたもの、「山寺のおしょうさん」のように編曲が面白いものなど、質の違う「ゆかいさ」を盛り込んでいました。「バケツの穴」は、4年生の並木君と河原君をメインに据えながらも、次々とメンバーが交代して歌うという変化を楽しむことができました。「クラリネットをこわしちゃった」では、特別出演の2代目団長の森正人さんがこわれたクラリネットを吹くという演出をしていましたが、こわれた音が決して歌のじゃまをしないという予定調和がすばらしいと思いました。「山寺のおしょうさん」は、合唱だからこそ表現できるという歌で最後を締めくくりました。

   日本の少年だからこそ
 聖歌隊的な美を感じることは少ないが、元気さを表現することは得意というのも、ボーイズ・エコー・宝塚の特色です。その一つの現れが、第3ステージの「おまつりワッショイ」です。これこそ、日本の少年だからこそ表現できるものです。団員もこの日初めてはっぴ姿で登場。獅子舞やおみこしを繰り出したりして楽しい雰囲気を盛り上げました。「村祭り」のように編曲が凝りすぎてかえって素朴な美しさを損なっていた曲もありましたが、「花祭り」は、ニューイヤーコンサートと比べて陰影を感じるよい歌に仕上がっていました。
 また、OB・保護者と共に歌った第4ステージの「鉄腕アトム」「太陽のマーチ(ラデツキー行進曲)」は、舞台上の人数も3倍ぐらいになり、力強い歌を聴くことができました。

   メッセージソング
 ボーイズ・エコー・宝塚の歌声が最も人の心を動かすのは、メッセージソングの数々です。いつものように最終の第5ステージは、そのオンパレードです。この日は特に、「U&I」と「世界が一つになるまで」のできばえがよかったように感じました。卒団生恒例のソロは、有留君が「折鶴」、寺本君が「翼をください」、稲垣君が「ビリーブ」を歌いました。有留君は、出だしは不安定さもありましたが、次第に調子を上げて「折鶴」に込められた願いを歌い上げました。寺本君は変声期に差し掛かっていましたが、それを乗り越える技をもっており、前半と後半を歌い分けて、前半はしっとりと後半は躍動感のある歌に仕上げていました。これまで数多くのソロを歌ってきた稲垣君は、彼の基準からすれば必ずしもベストではなかったかもしれませんが、この歌が持つ感動を伝えようという強い意志を感じる歌でした。ご卒団おめでとうございます。
 ただ、ベガホールの広さは、少年たちを疲れさせたのか、ア・カペラの「フィンランディア」と十八番の「しあわせ運べるように」は、残念ながらやや疲れが見えました。それでも、会場を後にするときには、満たされた気持ちになるから不思議です。これこそが、ボーイズ・エコー・宝塚が与えてくれる元気なのです。

   課題は克服され、解決されるためにある
 いろいろと工夫の跡が見られるステージでしたが、課題もあります。曲の紹介用のマイクをソプラノ側だけでなくアルト側にも置けば、舞台上の移動を最小にすることができます。また、会場が聴こうという気持ちの観客で埋められている時には、たとえソロでもマイクは必要なかったように思います。
 次に、自分が立つべき位置や舞台上での動きがまだよくつかめていない幼児の弟や妹たちのエキストラ出演は、楽しげな舞台の雰囲気を楽しむ2曲ぐらいにしぼることで、聴く人の歌への集中力をもっと高めることができます。こういったことは、やろうと思えばすぐにできることです。
 さらに、団員の増加のためには、練習会場になっている宝塚小学校と第一小学校の2校以外の児童が入団できるようにしなければ、限界があるでしょう。音楽的な質の向上のためには、少年合唱のよい演奏に接することが必要です。
 そのような課題もありますが、課題は克服され、解決されるためにあると考えれば、勇気が湧いてきます。これまで、多くの困難な課題を克服し、解決してきたボーイズ・エコー・宝塚ですから、この記念定期演奏会を機に新たな発展をすることを期待しています。


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