第1回 全国少年合唱大会栃木大会 |
第2回 全国少年合唱大会岡山大会 −元気を出そう!少年合唱団− |
第3回 全国少年合唱祭広島大会 −ぼくたちの清純な歌声をあなたの心に響かせたい− |
広がる友情の輪 |
第4回 全国少年合唱祭呉大会と今後の課題 |
第5回 全国少年合唱祭栃木大会の成果と課題 |
回(主管団体) | 1(栃木) | 2(岡山) | 3(広島) | 4(呉) | 5(栃木) | 6(岡山) |
年 | H.11(1999) |
H.12(2000) |
H.13(2001) |
H.15(2003) |
H.18(2006) |
H.19(2007) |
参加団体 | 栃木 桃太郎 広島 |
栃木 桃太郎 広島 呉 |
栃木 桃太郎 広島 和歌山 |
桃太郎 広島 呉 |
栃木 桃太郎 呉 京都 |
桃太郎 呉 京都 広島 |
オブザーバー参加 | 宝塚 呉 |
第6回 全国少年合唱大会岡山大会 平成19(2007)年2月11日 岡山市民文化ホール |
「晴れの国」岡山で
第6回全国少年合唱大会は、平成19年2月11日(日)桃太郎少年合唱団の主管で行われました。昨年の第5回栃木大会が、雪という天候に恵まれない大会でしたが、記録的暖冬の今年の岡山大会は、「晴れの国」と呼ばれる岡山らしい冬としては穏やかな天気でした。この大会のため、桃太郎少年合唱団では1年前から趣意書を作って各少年合唱団に呼びかけるということをしてきました。また、福武文化振興財団をはじめとする地域の企業の助成を得てきました。そういう努力もあって、当初5団体の参加が予定されていましたが、直前になって栃木少年合唱団が不参加となりました。理由は近く中学生の宿泊行事があって重なるということだそうです。その分、各団は、当日のプログラムにない曲まで演奏してくれました。
この日、会場の岡山文化ホールの幕は開いたままで、6’th Japan Boys Chorus Festibalという横断幕が目に入りました。舞台へ出入りしやすい1階の前席は、各合唱団の座席で約200人の団員と関係者が座り、一般客はその後ろと2階ということで、合計約500人ぐらいの観客であったでしょう。団員に他の団体の演奏を視聴させそのよいところを盗ませることも、この大会の大切な目的の一つであることから、この座席の配置はたいへんよいと思いました。
ステージは、トップバッターの桃太郎少年合唱団が舞台に上がりながらも、舞台下の3団体と共に歌う合同演奏の「夢の世界へ」で開幕しました。伴奏がこれまで聞き慣れたものと違うこともありましたが、人数の多さが大きな盛り上がりをつくることが心に残りました。
いぶし銀の魅力
桃太郎少年合唱団は、オルバンのミサ曲第6番より4曲と、十八番の橋本祥路の曲という組み合わせでした。どちらかというと地味な選曲でしたが、少年合唱の王道を歩む桃太郎少年合唱団にとっては、こういう選曲がその持ち味である清澄な響きを生かしていることは間違いありません。
大塚先生の指揮でオルバンのミサ曲第6番を聴くのは2回目。この曲の骨格らしきものが少し見えてきました。アルペジオの伴奏に導かれたほの暗い「キリエ」は、ときどき激しく神へ憐れみを請います。「グロリア」は、次第に精神の高揚を見せながら神の栄光を頌えます。「サンクトゥス−ベネディクトゥス」は、微妙な声の重なりが盛り上がりながら心安らかな世界へと誘い、「アニュス・デイ」において、ひたすら祈り続ける敬虔な小宇宙が展開されていきます。曲の最後辺りに見られる曲想の変化が心に残ります。
棚田先生指揮による「歌をありがとう」「翼を抱いて」は、桃太郎少年合唱団らしい清澄な響きを聴くことができました。しかし、ぜいたくを言えば、これらの曲を何年も聴き続けている私には、ボーイ・ソプラノが一番美しく輝く年齢の団員が少ないことによる突き抜ける音色を聴くことができなかったことに少し淋しさも感じました。そういう意味では、今回の桃太郎少年合唱団の演奏は、選曲的にもいぶし銀の魅力と言えるのではないでしょうか。
彩りと活力のあるステージ
広島少年合唱隊は、持ち前の明るい声質を生かした彩りと活力のある舞台を展開しました。選曲も多彩で、一曲ごとに広島少年合唱隊のもっている引き出しの数の多さを表していました。指揮は平田先生。「Let’s Search
for
Tomorrow」は、この合唱団の混声合唱団らしい声域の幅を活かした若々しい歌になっていました。曲想は一転して静寂へと変わり、フォーレの「レクイエム」より「ピエ・イエズ」では2人のソロを配し、ボーイ・ソプラノの繊細で清純な声の魅力を全面に立てていました。続く「一本の樹」では、歌に詩の朗読を加え、話し声と歌声の接点を探りました。また、プログラムにはない「怪獣のバラード」では、着ぐるみの怪獣こそ出てきませんでしたが、あふれんばかりの元気よさを表し、最後を飾る「カンタール」では、合唱における振り付けは、ここまで可能であるという視覚と聴覚の両方に訴える演奏を披露しました。これで、平和を祈る「折り鶴が飛ぶ日」が加わると、広島少年合唱隊の縮図になると感じました。
サプライズの連続
呉少年合唱団の指揮は田中先生。ア・カペラ曲が多く、歌声そのものを聴かせるという選曲が目につきましたが、同じア・カペラでも「音戸の船頭歌」では、波と櫓をこぐ擬音を背景(伴奏ではない)に歌われる民謡独特の節回しが聞かせどころであり、「反核の玉」では、命の叫びに近い歌声を聴くことができました。ただ、「ゆかいに歩けば」では、オブリガードを生かせばもっとよくなるのにとか、「けだものがきた」では、アクセントになるセリフをもっとゆっくり言って印象づけることができれば、さらによくなるという注文もあります。また、プログラム最後の「宇宙戦艦ヤマト」では、おそらく初めての混声合唱に挑みました。中学生はもとより、半ズボンの小学生でも身長160cmを超える体格の大きい少年が目につくので、きっと何人かは変声期に入り、ファルセットで歌っているなと思っていましたが、舞台上で場所移動して歌い始めると、かえってその方が自然に感じられました。
これも驚きでしたが、本当の驚きは、その直後にきました。「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」のピアノ伴奏に合わせて退場した団員が、灰色の上着を脱いで空色のベストスタイルで再登場。これは、演出としても最高で、プログラムにない「アレルヤ」と歌劇「魔笛」より「パ・パ・パ」の2曲を歌ってくれました。これらは、声量もあり、それまでの歌とまた違う一面を見せてくれました。
歌声に反映していた話し声
京都市少年合唱団男子部の二人の中学生が団の紹介をしたとき、何とその話し口のおっとりとしていること。まるでお公家さんが話しているようでした。ところが、歌い始めると、それがそのまま歌にも反映していました。京都市少年合唱団のボーイ・ソプラノの育成においては、柔らかい声という声の質の面を重視し、声量をあまり求めていません。それが、1800人収容の京都コンサートホールのような大きな会場では、ややもの足りなく感じることもあるのですが、この800人定員の会場ではむしろそのソフトな歌声がプラスに働いていました。人数的には30人ほどで、しかも中学生の比率が3分の2ぐらいで、全員が揃った時の響きとは違いましたが、選曲の面白さもあって、これまでに感じなかったよさを感じました。京都市少年合唱団男子部は、毎年の定期演奏会でも毎年違う曲を歌うなど広いレパートリーをもっていますが、それだけに、これが十八番というものがあまりはっきりしません。この日歌われた曲が十八番かどうかはわかりませんが、持ち味を生かしていたことは確かです。
指揮は山口先生。曲の順番はプログラムとは違いましたし、全部初めて聴く曲ばかりでしたが、リズムにおもしろさのある曲を楽しむことができました。3曲は「バイエル」を編曲したものでしたが「ハンガリー風シチューの作り方」は、リストの「ハンガリー狂詩曲」を彷彿させる速いフリスカ調のリズムが耳に残り、「ピアノ先生の言うことは」は、「ハイ」というかけ声やお囃子がユーモラスで、「虫歯のタンゴ」は、「歯が痛いのに歯医者さんがお休み」という面白い歌詞がタンゴのリズムに乗せて面白おかしく歌われました。「星めぐりの歌」と「初心の歌」は、それと比べると印象が希薄でした。
力強い合同演奏
このコンサートの最後を飾るのは合同演奏。「マイ バラード」「With You Smile」「ビリーブ」は、160人ほどの人数で歌われる力強い迫力もありましたが、歌詞にメッセージ性があり、それが少年合唱である故に生きることを感じました。
確かに、少年合唱大会のあり方には、課題もありますが、このコンサートに関する限り、少年の歌声の魅力を堪能することができました。
第6回 全国少年合唱大会岡山大会の成果と課題 |
全国少年合唱大会(祭)の今後 |