−彼処は息苦しいだろう…?




…なら、どうだと言うの。






 陽だまり












別に聞き耳を立てるつもりはなかった。
しかし偶然聞こえてきた台詞に思わず嘲笑さえ浮かぶ。

息苦しいだと?
自らの手で作り出した箱庭であるのに?
そう運命付けられたと信じていたのに?
中の登場人物は外界を知らぬまま育ち、そして死に逝く。
間際に見た外の光に目を細めながら。


救いの手など遅すぎる。
そんなものに何を期待するというの。
縋れば何かが得られるの?

私達はそこまで莫迦ではない。
貴方の人形では決してないのだから。
傲った貴種は何て愚かなのか。
貴方は良く知っていると思っていたのだけど…。






−君はザトーの…。残念、だったな。


−…余計な気遣いよ。


貴方は何も知らないのでしょう。
今更出てこられても良い迷惑。
貴方の出る幕など既に無い。


私達の世界はもう変わらないのだから。


変えようがない生き方と、道。
それを信じて死ねなかった。
だから私達は…あんな箱庭でさえ、帰るべき場所なのだと感謝した。
あんな箱庭にさえ…安息を求めた。
外への自由など、ただの幻想だと教え込まれたのだから。
そして彼処は…あの人は、嫌になるくらい     。





−…どうして君は彼を追うのかね?


−愚問ね。


理由が要るのならすぐに差し出すわ。


−殺す為よ。確実に。


−放っておいても奴は死ぬぞ。


−だから何?貴方には関係無い。




貴方は無関係だから。
関わって欲しくない。
邪魔なだけ。


−奴は私だけの獲物だ。



それは相手が神であろうと譲れない事実。



















−私じゃ貴方は殺せないようね。

−それで普通なのだがね。


嘘ではない余裕。

私は、此処で唯待っていることしか出来ない?
それが私が救われる道?
何から救われるの?
分からない。











自己主張ばかりする太陽はいずれ楽園を焼き滅ぼす。

そこには万人に愛される温もりなど存在しない。

ただ有り難迷惑な光だけが差す牢獄だ…。










この世に神など存在しないから。
運命なんてものも無いなんて。
気付くのが少し、遅かったのね。
貴方の居ない世界は…少し広すぎる気がするわ。
どうしてかしら……。



ザトー…、今でも分からない。
貴方は誰を愛したって言うの。

















  -END and MORE-


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後書:
イグゼっぽいですが。この後にというかセットでもう一つお話があります。MOREをクリックすれば跳びます。
この話、最初はヴェノミリで書こうと思っていたのですけど…
趣向が変わりスレ様と嬢になりました。この二人の会話は中々好きです。
CPでは無いのですけど排除する仲でもない、と。
嬢としては関わりたくない相手なのでしょうけど…ヴェノムが挑むのを見過ごしてますし。
この後スレ様は立ち去り、嬢はヴェノムと顔を合わせるのが理想だなぁ…(笑)というかそれで書いてます(汗)

お題に対して…
『陽だまり』と聞くと暖かくて気持ちの良いイメージがあります。
今回は敢えてそのイメージを崩して書いてみました。