2003WORK

11月号 A-1部門 準優秀賞 
 

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(注:雑誌をスキャンしたものを使用しているので、左端に光筋が入ってしまいます。この作品に関しては、光筋をカットすると渦も切れてしまうので、少し見苦しいですが、そのまま掲載しています。)

お昼頃、公園は桜満開の花見日和だった。まもなくどうした風の吹き回しか、まさに旋風が吹き荒れ、前も見えない位の桜吹雪。あちこちから観光客の喜びの嬌声がきこえてくる。
やがて薄暗くなり、人影もまばらになった頃、公園の別エリアで繰り広げられる花見宴会に向かう人達の足元を照らすためのぼんぼりに灯りがともった。 散りもの、宵のシアン色、灯りに弱い私は、人気のない池畔を大喜びで駆けずり回りながら撮影した。

次の朝、池一面の散花を、池にはまりそうな格好であれやこれやと撮ってると、どこからか「星野さん」と私を呼ぶ声を聞いた。
言い忘れたが私はひどい花粉症である。撮影時はいつも雑な格好をしてるのだが、春はとりわけひどい。「とてもじゃないが人には見せられない」モードだ。
「人違いのふりしようか?」と失礼な陰謀が頭をよぎる私におかまいなしに「よう会うなあ」と声は続く。どうやら相手には私だという確信があるようだ。
よく、道で知り合いと会って、どこまでも知らない振りを通したらどうなるかなーって暇つぶしに考えたりするが、現実には試したことはない。本当に親しかったら冗談で済むけど、知り合い程度だったら、単なる失礼な人になってしまうだろうし。そしてこの人もその程度の知り合いだった。もう観念するしかない。
花粉症対策で顔半分はマスク、上半分は眼鏡、頭には帽子の必殺スタイルだから、何故、あれほどの確信をもたれたか不思議だったが、あとで考えると、その人は私の「顔」を見て判別したのではなく、「不審な格好と行動をしてるチビ」という全体像を見て、遠くからでも私だと判別できたのだと気付いた。迂闊であった。変装してるつもりが(単に花粉予防してるだけなんだけど)かえって逆効果だったのだ。

最後に、このページを見て下さった方にお願いがあります。
春、顔がわからない位大きなマスクをして涙を流しながら桜の周りでウロウロしてるチビを見かけたら、見なかったことにして、そっとしておいてください。忘れて下さい。
そしてそこで見たモノを けっして他言しないで下さい。

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