高校の世界史でクレタ島のクノッソスの迷宮伝説を習った。牛の怪物ミノタウルスの物語で、ガイドブックにも見応えありと書いてあったので楽しみにしてたが、実際行ってみると、なんのことはない遺跡だった。期待しすぎていたようだ。 |
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クレタ島にはもうひとつの名所がある。サマリア渓谷だ。全長18キロの渓谷を約5時間かけて歩く、5月から9月の限定トレッキングだ。ツアーも出ているが、私は個人で行った。早朝ピレウスからのフェリーでクレタ島に着いた私は、荷物をハニアのバスターミナルに預け、そこからローカルバスに乗った。ツアーは毎日出ているが、ローカルバスは月曜のみと聞いていたので、こんな慌ただしいスケジュールになったのだが、どうやらバスも毎日走っているようだった。(が、語学が不自由なので確証はない) |
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ローカルバスはハニアからオマロスという渓谷の入口までで、そこからはひたすら歩く。といっても道はほとんど下りだけ。要するにバスで高い所へ運んでもらって、渓谷をずっと海に出るまで下っていって、そこはバスが走ってないので、ボートでバスの走ってる所まで渡って、バスで町まで戻る・・・という仕組み。(ツアーでもバスが専用バスだというだけで、同じ行程である) いざ、小石だらけの道をどんどん下っていき、川を渡ったり、両脇に縦横模様の地層が剥き出しの岩肌の間を、声を反響させながら歩いたり、時には一面「地獄の石積み」のように小石を積んである場所に出て、「日本だけの風習じゃないんだ」と感心したり、岩だらけの急斜面のあちこちにいる山羊を見て「山羊ってあんな崖を歩けるんだ」とか思いながら、やっと終点の海沿いの村アギア・ルーメリに到着。 |
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帰りはここから一日2便のボートに乗ってスファキアへ渡る。 ツアー客はスファキアで予め大型バスが待っていてすぐに帰れるのだが、ローカルバスはちょっと待たなければならなかった。 1時間ほど待ってやっとバスに乗る頃には日も暮れかかっていた。席に座り一息ついて窓の外を見ると、眼下を何台もの大型バスが連なって、港からクネクネ続く坂道を登ってくる。サマリア渓谷からの観光客が戻ってくる最終時間なのだろう。ポツポツとしか木の生えてない灰色の山肌は紫色に染まり、その中をバスの明りが次々と動いている様はパレードのようで、おまけに月なんかも出ていて、とてもロマンチックだった。 |