実務の友   出版物等による名誉侵害に関する最高裁判例集
最新更新日2003.11.3-2006.08.10
 文章内容を検索する場合は,[Ctrl]+[F]キー(同時押し)で,現れた検索画面に検索用語を入力して検索します。
索  引

     1 最高裁大判昭和31.7.4民集10巻7号785頁
     2 最高裁二小判昭和45.12.18民集24巻13号2151頁
     3 最高裁大判昭和61.6.11民集40巻4号872頁
     4 最高裁二小判昭和62.4.24民集41巻3号490頁
     5 最高裁一小判平成元.12.21民集43巻12号2252頁
     6 最高裁三小判平成9.9.9民集51巻8号3804頁
     7 最高裁三小判平成14.1.29民集56巻1号185頁
     8 最高裁一小判平成15.10.16民集57巻9号1075頁
     9 最高裁一小判平成16.7.5(最高裁HP新判例)
    10 最高裁一小判平成16.11.25(最高裁HP新判例)

   ○ ネットによる侮辱・名誉毀損に関する判例集


 1 最高裁大判昭和31.7.4民集10巻7号785頁 判例解説民事篇昭和31年度107頁 (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、民訴第733条(注:旧法)により代替執行をなし得る。
 右判決は憲法第19条に反しない。
(注)現行法関係:代替執行 民事執行法171条,民法723条


 2 最高裁二小判昭和45.12.18民集24巻13号2151頁 判例解説民事篇昭和45年度(下)850頁 
(判決要旨)
  民法723条にいう名誉とは,人がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉を指すものであって,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。


 3 最高裁大判昭和61.6.11民集40巻4号872頁,判例解説民事篇昭和61年度278頁,判例時報1194号3頁,判例タイムズ605号42頁(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 雑誌その他の出版物の印刷,製本,販売,頒布等の仮処分による事前差止めは,憲法21条2項前段にいう検閲に当たらない。
 名誉侵害の被害者は,人格権としての名誉権に基づき,加害者に対して,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができる。
 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷,製本,販売,頒布等の事前差止めは,右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等に関するものである場合は,原則として許されず,その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって,かつ,被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り,例外的に許される。
 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によって命ずる場合には,原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが,債権者の提出した資料によって,表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり,かつ,債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは,口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法21条の趣旨に反するものとはいえない。
(1につき補足意見,3,4につき補足意見及び意見がある。)


 4 最高裁二小判昭和62.4.24民集41巻3号490頁,判例解説民事篇昭和62年度285頁,判例時報1261号74頁,判例タイムズ661号115頁(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 新聞記事に取り上げられた者は,当該新聞紙を発行する者に対し,その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に,人格権又は条理を根拠として,右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。
 新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が,乙政党の社会的評価の低下を狙ったものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり,かつ,その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても,右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり,要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは,右広告の掲載は,その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図るに出たものであり,かつ,主要な点において真実の証明があったものとして,名誉毀損の不法行為となるものではない。


 5 最高裁一小判平成元.12.21民集43巻12号2252頁,判例解説民事篇平成元年度619頁,判例時報1354号88頁,判例タイムズ731号95頁(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し,かつ,有害無能な教職員等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において,右ビラの内容が,一般市民の間でも大きな関心事になっていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判,論評を主題とする意見表明であって,専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず,その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり,論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては,右配布行為は,名誉侵害としての違法性を欠く。


 6 最高裁三小判平成9.9.9民集51巻8号3804頁 判例解説民事篇平成9年度(下)1146頁 (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉殿損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。


 7 最高裁三小判平成14.1.29民集56巻1号185頁 判例時報1778号49頁 (最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 新聞社が通信社から配信を受けて自己の発行する新聞紙にそのまま掲載した記事が私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とするものである場合には,当該記事が取材のための人的物的体制が整備され,一般的にはその報道内容に一定の信頼性を有しているとされる通信社から配信された記事に基づくものであるとの一事をもって,当該新聞社に同事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。


 8 最高裁一小判平成15.10.16 平成14(受)846 謝罪広告等請求事件(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。
 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし,その番組の全体的な構成,これに登場した者の発言の内容,画面に表示された文字情報の内容を重視し,映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。
 テレビジョン放送をされた報道番組において,A市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し,B研究所の調査結果によればA市産の野菜のダイオキシン類濃度が1g当たり0.64〜3.80ピコグラムである旨記載されたフリップが示され,その野菜がほうれん草をメインとするA市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係の下では,その番組により摘示された事実の重要な部分は,ほうれん草を中心とするA市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり,その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり,別の調査結果においてA市産のラベルが付けられた白菜1検体から上記最高値に比較的近似した測定値が得られたことなどをもって,上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。
(3につき補足意見がある。)


 9 最高裁一小判平成16.7.15 平成15年(受)第1793号 謝罪広告等請求事件(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
  名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たる。


10 最高裁一小判平成16.11.25 平成13年(オ)第1513号、平成13年(受)第1508号 訂正放送等請求事件(最高裁判例HP該当判例)
(判決要旨)
  放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人は,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。



[ Top Menu ]