■2025年152月号

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バイオジャーナル

ニュース


●ゲノム編集
●ゲノム編集による大規模なDNAの脱落

 スイス・チューリッヒ大学のフェデリカ・ライモンディらの研究チームによるゲノム編集を用いた遺伝子治療の実験で、大規模なDNAの脱落が起きていた。研究チームは、慢性肉芽腫症の治療に向けて、その培養細胞を用いて実験していた。この疾患は、特定の遺伝子の働きが欠落して病気を引き起こすことがわかっており、ゲノム編集技術を用いてその遺伝子の箇所に、正常に働く遺伝子を導入する研究が行われてきた。実験の結果、目的とする箇所への遺伝子の導入には成功したものの、遺伝子を導入した周辺で数百万に及ぶDNAが脱落していた。以前から、ゲノム編集技術の問題点として指摘されていた、DNAの大規模な入れ替えや脱落が実際に確認されたことになる。〔Communication Biology 2024/10/9〕

●北米事情
●米国連邦地裁、2020年USDAのGMO規制緩和は無効

 トランプ政権下の2020年、米国農務省(USDA)がGMOの規制をほとんど撤廃したことに対して、食品安全センターなどの消費者団体や環境保護団体などが訴えていた裁判の判決が出た。連邦地裁はUSDAの2020年の規制緩和を無効とする判決を下した。トランプ政権の規制緩和策は、GMOの規制は政府が行うのではなく企業の自主的な判断に委ねるとしていたが、判決では、2020年の規制緩和は、それ以前の規制の根拠と矛盾しており、科学的根拠がない、とした。〔Center for Food Safety 2024/12/6〕

●欧州事情
●欧州委員会のグリホサート再承認に環境保護団体が異議申し立て

 農薬行動ネットワーク・ヨーロッパ(Pesticide Action Network(PAN) Europe)とそれを構成する環境保護団体は、2023年末に欧州委員会がグリホサートを再承認したことに対して、2024年1月に見直しを求めたが、欧州委員会は9月に却下した。そのため欧州司法裁判所に異議を申し立てた。理由として、グリホサートを安全だとする欧州委員会の科学機関の結論は根拠がなく、法的要件も満たしていない、と指摘している。〔PAN Europe 2024/12/12〕

●ニューGMOフリーゾーン
●イタリア・ポッピ市が世界初のニューGMOフリーゾーン宣言

 イタリアのトスカーナ州アレツォ県にあるポッピ市が、世界で初めてゲノム編集などの「ニューGMO(NGTs :New Genomic Techniques)」フリーを宣言した。人口約6000人の市だが、政府がニューGMOを推進していることから、市民や農家の利益を守るために、市議会が決議した。〔CROCEVIA 2024/10/31〕