スーパーロボッコ大戦
EP1


AD1945 ロマーニャ上空


「何だあれは………」

 眼帯を外し、それを見た少女の呟きが、全ての始まりだった。
 虚空に浮かぶ奇怪な渦に、皆の緊張が高まっていく。

「ネウロイの仕業か!?」
「いえ、違います。こんな反応初めて………」
「気をつけて! あれの向こう側が感知できないわ! 全機散開! 指示があるまで攻撃は…」

 命令は最後までが発せられる事は無かった。
 突如として渦が急激的に広がり、全てを飲み込んでいく。

「待ひ…」
「きゃ…」
「芳佳ちゃ…」

 退避命令も、悲鳴も、友の名を呼ぶ声も、全てが飲み込まれていく。
 そして、その場にいた者達全てを飲み込んだ渦は、まるで録画映像を急速に巻き戻すかのように集束していき、消える。
 後には、何も無い空だけが残った。
 誰もいない空が………



AD2300 ネオ東京

「おっ買い物〜、おっ買い物〜」

 高層ビルの立ち並ぶ地球屈指の大都会の一角、若者向けのファッション店のひしめく大通りを、一人の少女が歩いていた。
 ロングヘアーをポニーテールにまとめ、天真爛漫を絵に描いたような少女が街を歩くと、周囲の人々がざわめき始める。

「あ、神楽坂ユナだ」
「ユナりん! 新曲良かったよ」
「ありがと〜♪」

 声をかけてくる人々に気さくに手を振る少女の横手、音楽店のウインドウには紛れも無く彼女自身、《全銀河的お嬢様アイドル・神楽坂ユナ》の新曲ポスターがデカデカと張り出してある。

「ユナさ〜ん、待ってくださ〜い」

 自分を呼ぶ声にユナが振り向くと、そこにはこちらへと向かってくる紙袋からあふれ出さんばかりのハンバーガー、正確にはそれを抱えたショートボブの少女の姿があった。

「ユーリィ、またそんなに………」
「新発売のベジタブルラー油バーガーですぅ♪ ユナさんにも1個あげるです♪」

 やや変わった喋り方をするその少女は、男でも持つのが苦労しそうな紙袋満載のハンバーガーを、歩きながらも次々と平らげながらユナのそばへと歩み寄ってくる。
 瞬く間に紙袋の中身が少女、ユーリィの口の奥に消えていく様にユナは思わずため息を漏らすが、幸せそうなユーリィの顔にそれ以上何も言えずに、渡されたハンバーガーの包みを開けようとした時だった。

「ユナ!」
「うわ!?」

 突然自分を呼ぶ声に、驚いたユナの手からハンバーガーが零れ落ちる。

「脅かさないでエルナー! 落っことしちゃったじゃない!」
「今はそんな時じゃありません!」

 ユナは声をかけてきた相手、宙に浮かぶ機械のような妖精のような、風変わりな形の小型ロボに怒鳴り帰すが、その小型ロボ、正確には《光のマトリクス》と呼ばれるアンドロイドの一体、《英知のエルナー》が慌てた声を上げる。

「なあに? せっかくのオフだからこれからショッピングなのに……」
「それが、この近辺の次元定義係数が異常値を示しています! これは次元転移の前兆です!」
「定義ケース? 次元てんいって?」
「何か来ます!」

 エルナーの警告を上げた時、突然ユナの前方に奇妙な渦が現れる。

「うわわわ!? これの事!?」
「あ〜! まだ食べてないです〜!」

 渦の出現と同時に、周囲を暴風が荒れ狂い、そこにいた者達が逃げ惑う。
 ユーリィだけは、暴風で紙袋から飛ばされていくハンバーガーを必死になって追っていた。

「通常の空間転移ではありません! このエネルギー量だと時間、いえもっと別の…」

 エルナーの解析は、突然響いた地響きに遮られる。
 地響きの正体は、渦から突き出された脚が起こした物だった。

「あれはいったい……!」
「ロボット!?」

 突き出されたロボットを思わせる金属質の脚に引きずられるように、渦の中から更なる体が抜け出してくる。
 それは、巨大な四本足に、戦車の車体を載せたような奇怪な存在で、全身が金属のような光沢を放ち、車体の側面に赤い光を放つ部分もある。
 問題はその巨体で、一軒家ですら軽く押しつぶせるような巨大な存在が、白昼にいきなり市街地に出現した事に、それを見ていた者達は唖然とするしかなかった。

「おっきいです〜」
「エルナー、あれはいったい何!?」
「分かりません! ただ…」

 エルナーの言葉は、再度遮られる。
 突如出現したその謎の存在の車体のような部分が光ったかと思うと、そこから赤い禍々しい光を放つビームが放たれ、その先にあったブティックを吹き飛ばしたからだった。

「きゃああああ!」
「わあああ!」

 事態が全く分からないが、危険な事だけは認識した人々が口々に悲鳴を上げながらその場から逃げ惑う。

「ユナ!」
「分かってる! 行くわよユーリィ!」
「はいです〜!」

 周囲にビームを放ちまくる存在に、ユナの目が真剣な物へと変わり、手を上へとかざす。
 するとその身に纏っていた衣服がボディスーツへと変わったかと思うと、更にその上にプロテクターが装着されていく。
 ユナのもう一つの姿、《光の救世主》のバトルスーツ姿へと変じたユナは、その手に剣と銃、二つの役割を持つマトリクスディバイダーPlusをかざす。
 その隣では同じくバトルスーツ姿になったユーリィが、両手に剣・槍・銃に変化する2本一組の武器、双龍牙を構える。

「オフを台無しにしてくれたお礼をしてあげる!」
「え〜い!」

 二人の少女が左右へと分かれ、それぞれの武器が左右の脚を狙う。
 外しようも無い一撃は謎の存在の脚をえぐるが、突然えぐられた傷口が無数の六角形のブロックに区切られたかと思うと、新たに生じたブロックが瞬く間に傷口を覆い、即座に再生してしまった。

「ウソ!? そんなんアリ!?」
「再生能力! しかもこんなに早い……」
「じゃあもう一撃です〜!」

 ユーリィの双龍牙が再度謎の存在の脚をえぐるが、その傷も瞬く間に再生してしまった。

「どうなってるのエルナー!」
「半端な攻撃は効かないようです! もっと強力な…」

 三度、エルナーの言葉は今度は間近に飛来したビームによって遮られる。

「うわわわわ〜!」
「何か、何か手は……」

 転げるようにしてユナはビームから逃げ、エルナーは謎の存在への有効攻撃方法を必死になって探ろうとする。

「ちょっとそこのアンタ! 何してくれてんのよ!」

 いきなりの怒声に、三人が思わずそちらへと振り向く。
 そこには、ユナ達と同じようなバトルスーツ(もっとも何故かバニーガールを思わせる奇抜な格好)姿の女性が、手にゴールドアイアンを持って謎の存在へと突きつけていた。

「せっかく、彼が最先端モード貢いでくれるトコだったのに、あんたがビームなんて撃ち込んでくれたせいで逃げちゃったじゃない!」

 よく見るとその女性が立っているのは一番最初にビームを撃ち込まれたブティック(のガレキ)で、彼女の髪もあちこち焦げている。

「ま、舞ちゃん……」

 その女性、ユナの通う白丘台女子高の担任教師・徳大寺 舞、またの名を《六本木の舞》が体から焦げ臭い匂いを漂わせながら謎の存在を睨みつける。

「あらユナ、ちょうどいいわ。これからこいつシバくの手伝いなさい!」
「それが舞、あれは非常に高い再生能力を持ってます。下手な攻撃は通用しません!」
「あに〜!?」

 私怨MAXの舞が、エルナーの言葉に更に憤怒を高まらせる。

「だったら土下座してごめんなさい言うまでシバき続けるのよ!」
「だからそれをどうやって…」

 ビームを乱射しまくる相手に、エルナーも焦りを感じ始めた時だった。

「これは、また次元転移反応!?」
「ええ!! まだ来るの!?」
「来ます!」

 エルナーの声と同時に、戦闘が行われている地点の上空に再度、謎の渦が現れる。
 だが、そこから出てきたのは小さな二つの人影だった。

「……女の子?」

 シルエットを見たユナが、小さく呟いた。



「うわぁ〜!」
「きゃああ!」

 甲高い悲鳴を上げながら、二人は虚空へと放り出される。

「えい、この!」

 その内の一人、海軍のセーラー服に身を包んだおかっぱ頭の小柄な少女は、その脚にまとった魔道エンジン内臓の震電型ストライカーユニットに魔力を注ぎ込み、なんとか体勢を立て直した。

「リーネちゃん!」
「芳佳ちゃん!」

 同僚で親友の名を呼びながら、互いに手を伸ばして掴みつつ、体勢を立て直した二人のウイッチは、そのまま上昇しながらあたりを見回す。

「ここ、どこ?」
「ウソ、さっきまで……」

 改めて上空から下を見た二人は、眼下に見た事もない高層ビル群が立ち並ぶのに絶句する。

「みんなは!?」
「私達だけ……?」

 他のウイッチの姿が見当たらない事に、二人の顔に困惑が浮かぶが、それは足元から飛来したビームによって消え去る。

「これって!」
「芳佳ちゃん、あそこ!」

 おさげ頭に、大人しそうな印象(胸除く)の少女が足元に蠢く存在を指差す。

「ネウロイ! 誰か戦ってる!」
「行こう、芳佳ちゃん!」
「うん!」

 二人のウイッチは力強く頷くと、それぞれの脚のストライカーユニットに魔力を注ぎ込み、急降下していった。


 上空から飛来した銃弾が、謎の存在に突き刺さる。

「あの子達だ!」
「実弾? しかも炸薬式? そんな古い装備を使って……いえ何かエネルギーを帯びている……ユナの力にも似た?」

 ユナの顔に突然出現した謎の少女達が敵ではないらしい事を悟った笑みが浮かぶが、エルナーは別の疑問を感じる。
 急降下した二人の少女の姿をエルナーはよく観察すると、二人とも両足に変わった飛行ユニットを装備しており、そこからエネルギー体のプロペラが旋回して彼女達を飛ばせているのが見えた。
 しかも、彼女達の頭には犬猫のような獣耳が生え、腰から尻尾まで生えている。

「彼女達は一体………」
「ようし、こっちも!」

 俄然やる気が出てきたユナが謎の存在に再度攻撃しようとした時、その上部が旋回し、そこにある砲塔のような物に赤い光が点る。

「いけない!」

 それが今までと比べ物にならない威力のビーム発射の予兆だと悟ったエルナーだったが、その脇を一つの影が通り過ぎる。

「危ない!」

 足に飛行ユニットを装備した小柄な少女は、急降下から水平飛行に移りながらユナの前に出ると、そこで垂直ホバリングしながら両手を前へと突き出す。
 すると少女の前に巨大な光のシールドが現れ、放たれたビームはそれに阻まれ、四散していく。

「すごい、なんて強力なシールド……」
「大丈夫!?」
「うん、ありがとう!」

 シールドを展開させながら、声をかけてきた少女に、ユナは満面の笑みとお礼で応える。

「私は神楽坂 ユナ。あなたは?」
「芳佳、宮藤 芳佳だよ」
「ありがとう芳佳ちゃん!」

 再度お礼を述べるユナだったが、芳佳の背に似合わない巨大な機関銃、九九式二号二型改13mm機関銃が背負われているのに小首を傾げる。

「物騒なの持ってるね」
「え? ウィッチならこれくらい……」
「ウイッチ? なにそれ?」
「え?」

 てっきりユナもウイッチだと思っていた芳佳だったが、ユナの手に握られたマトリクスディバイダーPlusを見て今度はこちらが首を傾げた。

「とりあえず後! こいつやっつけないと!」
「でも街の中になんで大型ネウロイが!?」
「ネウロイ? あれの事ですか?」
「ネウロイも知らないの…」

 疑問の声に芳佳がそちらを向き、そこに浮かんでいるエルナーに思わず目をしばたかせる。

「何これ? ユナさんの使い魔?」
「エルナーだよ、使い魔とかいうのじゃないけど……」
「知ってるなら教えてください! あのネウロイとかいう存在の弱点は?」
「コアだよ! どこかコアがあるから、それを壊さないと!」
「コア? でも、どこに?」
「えっと、坂本さんがいたらすぐ分かるんだけど……」

 首を傾げるユナに、芳佳も困惑するが、そこに再度ビームが飛来し、芳佳のシールドを揺らす。

「くっ!」
「大丈夫、芳佳ちゃん!」
「これくらい平気! どんどん攻撃して、装甲が壊れればコアが見えるはず!」
「了解! この〜!!」

 ユナが中心となって、ネウロイに銃撃を叩き込んでいくが、表面の装甲は剥がれ落ちても即座に再生し、コアらしき物は見えてこない。

「あ〜ん、全然ダメ〜」
「頑張って! 私が守るから!」

 ユナが思わず愚痴をこぼすが、芳佳はそばにいる者全てを守るべく、更にシールドを巨大に展開させていく。

「そこです!」

 ネウロイの砲塔から再度強力なビームが放たれようとしたのを、上空からもう一人のウイッチ、リーネことリネット・ビショップが自分の身長ほどはあるボーイズMk1対戦車ライフルで正確に砲身を狙撃。
 装甲目標破壊用の強力な13・9mm弾が直撃した砲塔は放たれようとしたビームも巻き込んで誘爆するが、それもフィルムを逆に回すように再生していく。

「このままでは追い詰められる一方です! 私がサーチしてみます!」
「お願いエルナー!」

 エルナーがネウロイの周囲を旋回飛行しながら、ありったけのセンサーでネウロイをサーチしていく。
 飛来するビームをかわしながらのサーチに、苦労しながらもようやくエネルギー反応の違うポイントを発見した。

「有りました! 胴体部中央、コアらしき物の反応です!」
「ありがとうエルナー、って中央?」
「あの装甲の中!?」

 ようやく探り当てたコアが、分厚い装甲の中にある事を知った皆の顔が驚愕に彩られる。

「弱点さえ分かっちゃえば、簡単じゃない! こういう奴は腹が弱点って相場が決まって…」

 一人、息ようようと舞がネウロイの足をかわしながら胴体下部に潜り込み、ゴールドアイアンを構えるが、暗かったはずのネウロイ胴体下部に、無数の交点が出現する。

「え? うきゃあああぁぁ!」

 途端にネウロイの胴体下部全てから一斉にビームが照射され、舞が命からがらその場から転げ出す。

「そんなんあり!?」
「やはり上部を狙うしか……でもこの装甲の硬さでは……」
「うわあ! こっち来る〜!」
「でもどうにかしないと街が……!」

 こちらへと突撃してくるネウロイにユナが慌てふためき、芳佳もシールドを解除して宙へと舞い上がった時だった。

「お待ちなさい!」

 凛とした声と共に、どこからともなく一輪のバラがネウロイの前に突き刺さる。

「かよわき花に迫る悪の影…けれどこの私が散らせはしない! お嬢様仮面ポリリーナ! 愛と共にここに参上!!」

 声のした先、そこに覆面を着け、手にステッキを持った一人の少女が立っていた。
 名乗りを上げるその少女、ポリリーナに皆の視線が集中する。

「きゃあ〜! ポリリーナ様だ〜!!」
「何だろ、あの人………」
「さあ………」


 黄色い歓声を上げるユナと対照的に芳佳とリーネは突然の登場に呆気に取られる。
 だがネウロイは容赦なくポリリーナに向かってビームを発射するが、ポリリーナは身軽な動きで宙へと舞い上がりながらビームを回避する。

「バッキンビュー!」

 ポリリーナが宙を舞いながら手にしたステッキを投じ、旋回しながらネウロイへと襲い掛かるが、その分厚い装甲を僅かに砕いただけでステッキはポリリーナの手元へと戻ってくる。

「キャ〜! ステキ、ポリリーナ様〜!」
「……ペリーヌさんみたい」
「そうだね」

 歓声を上げ続けるユナの隣へと着地したポリリーナだったが、自分の攻撃がほとんど効いておらず、しかも再生していく事に目を見開く。

「いい所に来てくれましたポリリーナ!」
「エルナー、あれは一体?」
「ネウロイと彼女達は呼んでいます」
「あの子達?」

 上空を舞う二人のウイッチを認めたポリリーナが、視線をネウロイへと向ける。

「あの胴体部の中央に弱点のコアらしき反応があります! しかしあの装甲と再生能力の前に手も足も出ません!」
「ならば、こちらも向こうの手と足を封じるのよ! 舞、足を狙って!」
「分かったわ!」

 ポリリーナが駆け出し、舞もそれに続く。
 飛来するビームをかわしながら、ポリリーナの手にしたステッキがムチへと変化し、舞の両肩からスパークを帯びた球体が発射される。

「バッキンビュー!」
「爆光球!」

 ムチがネウロイの左の前足を絡め取り、放たれた爆光球が右の前足を痺れさせる。

「今よ!」
「ユーリィに任せるですぅ!」

 ネウロイの動きが止まった所に、ユーリィが駆け出し、ネウロイの足を伝って胴体へと登っていく。

「クルクル〜パ〜ンチ!」

 掛け声と共に、ユーリィの腕が振り回され、拳がネウロイの胴体上部に叩き込まれる。
 見た目と裏腹に強力な威力の篭ったパンチが、一撃でネウロイの上部装甲を大きく歪ませた。

「すごい! 私達も!」
「芳佳ちゃん、一緒に撃って!」
「うん!」

 ユーリィの怪力に目を見張りながらも、芳佳がリーネを肩車するようなフォーメーションを組み、二つの銃口から魔力の篭った弾丸がユーリィが歪ませた装甲へと叩き込まれていく。
 次々と銃火と共に装甲が剥がれていき、やがて分厚い装甲の下から赤い光を放つクリスタルのような物が姿を現していく。

「見えた!」
「コアだ!」

 二人のウイッチが思わず笑みを浮かべた瞬間、二人の銃が同時に乾いた音を立てて銃火が止まる。

「あ……」
「弾切れ……」

 残弾が尽きた事に二人のウイッチの顔から血の気が引いていく。
 銃撃が止むと、ネウロイの装甲がすぐに再生を始める。
 コアが再度覆われていく直前に、コアを影が覆った。

「ライトニング〜、スマーッシュ!!」

 上空へと飛び上がったユナが、大上段から光の力を帯びた刃を振り下ろし、コアが覆われる寸前に一刀両断する。
 光の一撃の前に、コアは一瞬で粉々に砕け散り、それに続いてネウロイの体も光の粒子となって砕け散り、霧散していく。

「やったあ〜♪」
「ざまあみなさい!」
「ふう……何とかなりましたか」

 ユナ達が歓声をあげる中、芳佳とリーネも降下してきて間近へと着地する。

「ユナさん、すごかったよ」
「芳佳ちゃんもね。それに、さんじゃなくていいよ」
「え、でも……」
「一緒に戦ったんだから、お友達でいいでしょう? ね♪」
「……うん! そうだねユナちゃん!」

 笑みと共に差し出されたユナの手を、芳佳も笑みと共に握り返す。

「じゃあ改めて。私は神楽坂 ユナ、現役アイドルで《光の救世主》もやってるんだ」
「私は宮藤 芳佳。扶桑皇国海軍 遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊 連合軍第501統合戦闘航空団、軍曹だよ」
「ユナさんのパートナーで妹分のユーリィ・キューブ・神楽坂ですぅ」
「私はリネット・ビショップ。ブリタニア空軍 第11戦闘機集団610戦闘機中隊 連合軍第501統合戦闘航空団曹長です」
「軍曹に曹長って、あんたら軍人なわけ?」
「その年で?」

 舞とポリリーナの疑問の声に、逆に芳佳とリーネが首を傾げる。

「え? でもウイッチは大抵10代でしか戦えないし……」
「そもそも、ここはどこなんですか? 私達はロマーニャの上空にいたはず……」
「ロマーニャ? ここはネオ東京ですよ?」
「ネオ東京……東京!? ここが!?」
「そもそも、あなた達は扶桑皇国海軍とかブリタニア空軍と名乗ってますが、そんな国も部隊も存在しませんよ?」
「ええ!?」

 エルナーの説明に、芳佳は思わず大声を上げる。
 だが、リーネは別の物に気を取られていた。

「芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、あれ……」
「あれって何リーネちゃん?」

 リーネが困惑の顔で、ある物を指差す。
 芳佳がその指の先を見ると、そこには戦闘被害を免れたカレンダー表示機能付き屋外時計があり、カレンダーにはAD2300 5 7と表示されていた。

「AD2300って……」
「何言ってんの、今年は西暦2300年じゃない」

 呆れた顔で言う舞の言葉に、リーネの瞳が大きく見開かれた。

「だって、私達がいたのは、西暦1945年ですよ!?」
「じゃあ、ひょっとしてここって……」
『未来!?』






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