このバングラディシュ人は、博士号を取得することを目的として来日したものである。自国では某大学の「助手(Assistant Professor)」という立場にあり、バングラディシュの大学からも二重に給料をもらっている。他の日本人の大学院生よりも実働時間は明らかに多いのだが「物覚えが極端に悪く、何度も同じ失敗を繰り返すので、研究成果は余り上がっていない」という話である。学習能力が、全くないのだと思う。そのくせ、自分の意見を決して曲げず、自分が間違っていても「おまえが間違っている(1)」と相手を罵倒するような人間である。
彼にとっての私は「自分の邪魔をする敵」に違いない。私に注意されてから、私以外の人にだけ挨拶しようとする彼の露骨な行為は、他の大学院生を味方に付け、自分の利益をはかろうとする、彼一流のパフォーマンスである。こうした彼の懸命の努力が功を奏したのか、最近では、彼の仲間内だけでの挨拶が、この部屋には蔓延している(2)。
まあ、別に無理に挨拶してもらわなくても結構だが、こういう場面に日頃から接していると、たまに挨拶されたときでさえ、私に対して挨拶してくれているのか、分からなくなることがある。
[脚注]
(1) 英語で書くと「You are wrong!」だが、彼の「ユ〜〜〜、ア〜〜〜、ロ〜〜〜ング」という非難口調が、おおかたの行為に対して寛容なはずの、私の神経を逆撫でする。
(2) 「挨拶もまともに出来ない人が私と同じ部屋にいる」と思うだけで、気が滅入ってしまう。ここは複数のグループ、または個人が共用する部屋である。仲間内だけで挨拶を交わしたいのなら、自分たちだけの部屋を持ったときにでもやればよい。そうは言っても多勢に無勢、庇(ひさし)を貸して母屋を取られる事態だけは、是が非でも避けなければならない。