両生類の「研究」に関する質問(1)

>両生類(サンショウウオ類)用の麻酔についてですが、先生は、どちらで購入されておりますか? 麻酔は、どの程度の時間効くのでしょうか? 麻酔をかけすぎて、死ぬようなことはありますか? また、麻酔使用時の注意事項がありましたら、ご教授願います。 (2009年1月8日)

麻酔からのスムーズな回復を願うなら、MS-222の0.1%溶液がベストです。この濃度で、両生類が死ぬようなことは滅多にありません。この溶液をタッパーに入れ、空気が入らないように密閉した状態で、両生類に麻酔をかけます(空気の層があると、麻酔にかかるまで時間を要します)。1時間くらいは麻酔が効いています。その後、汲み置きの水道水(カルキを抜いた水)に個体を入れておくと、麻酔からスムーズに覚醒させることが出来ます。MS-222は、現在はシグマから購入できます(価格は変動しますが、25gで6,700円[100gで21,600円]程度です)。ちなみに、両生類の麻酔に関する一般的な回答は、以下のURLにあります。


>両生類の卵のゼリー層を簡単かつ大量に除去する方法がありましたら、お教え下さい。現在、発生の授業の初めに、各ステージでホルマリン固定しておいたヤマアカガエル卵を自分で切らせて観察させたいと計画しています。ただ、現代の高校生は余り実験技術が良くないため、卵のゼリー層を除いてから、20%寒天に包埋して切らせることとしました。しかし、ヤマアカガエルのため、ゼノパスのように紫外線照射では全くゼリー層は破壊されません。現在のところ、キウイフルーツ破砕液で処理してみようかと考えていますが、キウイはコラゲナーゼだったような......、基質特異性が気になります。 (2007年6月16日)

両生類の卵のゼリー層を簡単かつ大量に除去する方法として昔から使われているのは、チオグリコール酸ナトリウムです。これの2.5%溶液を炭酸水素ナトリウム飽和溶液でpH7.6〜8.0に調整し、この溶液に卵を浸します。およそ10分間前後で、ゼリー層は溶解しますので、試してみて下さい。

ちなみに、これは生きた胚に使用する方法ですので、ホルマリン固定したものですと、pHをもっと高めに調整すれば、ゼリー層の溶解に要する時間は短縮できます。


>両生類の幼生が、ヤゴなどの捕食者がいる場合、尾高を高くすることはご存知だと思います。推進力をあげて捕食者から逃げるためだと考えられています。同じ尾高が高くなるという結果でも、他の要因に反応した結果である可能性も考えられます。実験では「水深が深くなった場合でも尾高が高くなる」という結果を得ました。このような結果を発表している先行研究をご存知かどうかをお聞きしたくて、メールしました。もしご存知なら、できるだけ新しい論文を紹介していただけると助かります。 (2007年4月28日)

ご存知かもしれませんが、捕食者からの化学的刺激を受けて、両生類の幼生が尾高を高くすることを述べた最初の研究では、下記文献あたりが有名かもしれません。
・Lardner, B. 2000. Morphological and life history responses to predators in larvae of seven anurans. Oikos 88: 169-180.
・Van Buskirk, J., and B. R. Schmidt. 2000. Predator-induced phenotypic plasticity in larval newts: trade-offs, selection, and variation in nature. Ecology 81: 3009-3028.

これもご存知かもしれませんが、オタマジャクシの形態の多様性(Altig, 2006)や無尾両生類への無脊椎動物による捕食(Toledo, 2005)に関しては、比較的、最近のレビューが利用できます。これらのレビューでは幼生の尾高を直接的には取り上げておりませんが、ある程度の情報は引用文献などから得られると思いますので、参考にして下さい。
・Altig, R. 2006. Tadpoles evolved and frogs are the default. Herpetologica 62: 1-10.
・Toledo, L. F. 2005. Predation of juvenile and adult anurans by invertebrates: current knowledge and perspectives. Herpetological Review 36: 395-400.

但し、残念ながら「水深が深い場合に両生類の幼生の尾高が高くなる」という先行研究は、私も寡聞にして知りません。もしかしたら、そのような研究は存在しないのかもしれませんが、それはそれで面白いと思います。お役に立てなくて、申し訳ありません。


>I'm interested in obtaining a collapsible nylon mesh trap that was pictured on your web page. I have had difficulties finding such a trap and wondering if you could give me some advice on finding such a trap? Your help would be appreciated. (2006年8月5日)

In U.S.A., you can get collapsible nylon mesh traps from Ranger Products, Inc., Detroit, MI. Please see Adams et al. (1997) for the detail.
・Adams, M. J., K. O. Richter, and W. P. Leonard. 1997. Surveying and monitoring amphibians using aquatic funnel traps. Pp. 47-54. In: D. H. Olson, W. P. Leonard, and R. B. Bury (Eds.), Sampling Amphibians in Lentic Habitats. Society for Northwestern Vertebrate Biology, Olympia, Washington, U.S.A.


>4月から私が入る研究室では、2年前から佐渡の復元棚田(ビオトープ)で両生類の調査をおこなっています。過去2年間で確認された両生類は、クロサンショウウオ、アカハライモリ、ニホンアマガエル、ヤマアカガエル、ツチガエル、モリアオガエルの6種類です。棚田は全部で40枚あるのですが、クロサンショウウオとヤマアカガエルが産卵場所として好む棚田とそうでない棚田があることがハッキリして来ました。そこで今年は、この2年間の成果をふまえて両生類のハビタットとしてのビオトープの評価を考えています。ハビタットの具体的な調査方法や、参考になりそうな文献があったら、ぜひ教えて下さい。 (2005年4月2日)

お話をうかがう限りでは、復元棚田全域の「種の出現数(species richness)」の調査は済んでいるようですね。これらの棚田で、両生類の「生息環境(habitat)」を評価する場合、産卵場所と非産卵場所の物理的パラメータを調べて比較するのが、確実な方法だと思います。

物理的パラメータには様々なものが考えられますが、まず40枚ある復元棚田の立地条件を抽出する必要があります(例えば、クロサンショウウオやヤマアカガエルの普段の生息場所である林や草むらといった後背地の縁からの距離、繁殖移動の障壁となりそうな地形、周囲の畦道の状態、等々)。

それから、棚田それぞれの形状や大きさ、傾斜角度、陽当たりの良さ、捕食者の有無、水深、水質(BOD, COD, pH, etc)、水温、気温、地温、湿度、等々を物理的パラメータとして抽出し、それらの季節的変化も視野に入れて調査を進めて行きます。これらのデータを主成分分析やロジスティック回帰分析にかけて解析すれば、彼らが産卵場所として好む棚田とそうでない棚田の違い、つまり「彼らの産卵場所に対する嗜好性に影響を及ぼしているファクター」が明瞭になるはずです。

参考文献としては、以下の本が役に立つと思います。
・Olson, D. H., W. P. Leonard, and R. B. Bury (eds.). 1997. Sampling Amphibians in Lentic Habitats. Society for Northwestern Vertebrate Biology, Olympia, Washington, U.S.A.


>両生類の胃内洗浄法とは、どのような方法か、教えていただけると嬉しいです。 (2005年3月5日)

これは、生理食塩水をスポイトなどで個体の胃の中に送り込み、胃の中にある未消化の食べ物を洗い出す方法です。この方法で調べれば、その個体が「何を餌にしているのか?」が判明します。


>(北海道)厚岸町の助成金研究の要旨には「別寒辺牛湿原にエゾアカガエルはたくさんいたが、エゾサンショウウオは確認されなかった」と書いてありました。しかし、厚岸湖の南側や少年自然の家、北大実験所周辺の水域では、エゾサンショウウオが普通に見られます。「別寒辺牛湿原一帯には、どこにでもいる」というのが、私の認識です。これは、単に運悪く「羽角さんが見つけられなかった」ということではないのでしょうか? (2004年5月1日)

運悪く、ですか? 皆さん、同じようなことをおっしゃいますね。「エゾサンショウウオが別寒辺牛湿原にいる」とのことですが、1997年におこなった私たちの調査(羽角, 1998; 羽角・神田, 1998)は「湿原の内部」だけです(とは言っても、この湿原は「6,510ha」の広さがあります)。エゾサンショウウオが「湿原の周辺部」に生息しているのは調査前から知っていますが、湿原の内部にもいるとしたら、それこそ大事(おおごと)です。あれだけ探しても見つからなかったのに「どこにでもいる」と書かれると、私としては困ってしまいます。ご指摘の水域は、別寒辺牛湿原からは相当に離れていると思います。湿原の内部でエゾサンショウウオの生息が確認されている地域があれば、私のほうが知りたいくらいです。
・羽角正人.1998. 別寒辺牛湿原の両生類相の調査、及び各種幼生の生育環境の解析. 平成9年度厚岸湖・別寒辺牛湿原学術研究奨励補助金実績報告書.
・羽角正人・神田房行.1998. 別寒辺牛湿原の両生類相. 環境教育研究 1(1): 165-169.


>おっしゃる通り、エゾサンショウウオの生息が確認されているのは、湿原の周辺部でした。ただ、私は、湿原の内部でもいるような話をしている人を、何人か知っています。エゾサンショウウオは、やはり湿原の内部にもいるのではないでしょうか? (2004年5月1日)

その情報は、どれくらい正確なのでしょう? ここで問題になっている別寒辺牛湿原は、別寒辺牛川流域に広がる低層湿原です。エゾサンショウウオの卵嚢が産出される繁殖期(4〜5月)には、湿原の内部に通じる幾つかの道路の入口は、鉄のゲートで全て閉鎖されています。ゲートを開ける鍵がなければ、自動車は通行できません。自動車がなければ、湿原を踏破するのは難しいでしょう。それくらい広いです。調査期間中は、一番近いゲートからでも歩いて1〜2時間は掛かるような場所で、たまに釣り人と遭遇することがありましたが、この時期の湿原の内部は、一般の方々が簡単に入り込めるような場所ではありません。雨が降れば、道路はぬかるんで自動車はスタックしますし、谷地眼(やちまなこ)にも落ちました。また、車輛通行不可能な道路にゲートはないのですが、こういったところにはヒグマが闊歩していて、何度も身の危険を感じました。今、生きているのが不思議なくらいです。ですから、その情報は「湿原の内部ではない可能性が高い」と思います。

ただ、こう書くと、別寒辺牛湿原の周辺部から採取したエゾサンショウウオを湿原の内部に移入・放逐し、定着したころ合いを見計らって「湿原の内部にもいる」と主張する輩が、現に出て来ないとも限りません。実は、過去に厚岸水鳥観察館の掲示板で、これと同様の意見に対する書き込みをおこなったことがあり、それに触発された誰かが、別寒辺牛湿原内部へのエゾサンショウウオの移入を、既に実行してしまっている可能性が捨て切れないのです。

もちろん、当時の調査が湿原の内部を網羅していないことは重々承知です。実際問題として、別寒辺牛川の川筋に沿った湿地帯は、カヌーでもなければ調査は難しいでしょう。でも、もしエゾサンショウウオが湿原の内部に生息していないのだとすれば、歴史的プロセスや地理的プロセスといった、それ相応の理由があるはずです。ですから「湿原の周辺部から内部へのエゾサンショウウオの移入だけは、くれぐれも避けて欲しい」と、私自身は願っております。


>学生実習で「カエルを麻酔して脳から神経細胞の電気的信号を取り出す」というテーマを新たに加えることになり、準備をしているところです。装置などがだいたい出来上がったので、さて実際にカエルでやってみようかというところで、思わぬ問題が出てきました。麻酔の問題です。インターネットを色々と調べて「MS-222」から最終的に先生のページにたどり着き「p-アミノ安息香酸エチル」がよいとのことで購入しておいたのですが、さて使おうかと思ったら、水に溶けないではありませんか!? 維持麻酔用の0.005%は、エタノールに溶かしてから水に薄めることで上手く行きましたが、先生お勧めの0.1%溶液は、この方法では作れません。先生は、どうやって「p-アミノ安息香酸エチル」の0.1%水溶液を作製しているのか、具体的な方法を教えていただけると助かります。 (2003年3月8日)

お尋ねの麻酔薬「p-アミノ安息香酸エチル(Benzocaine: 4-Aminobenzoic acid ethyl ester)」の件ですが、何か誤解があるようです。図書館などで「The Merck Index」をご覧いただければ分かりますように、この試薬は水に難溶で「2,500mlのDWに25℃で1g(0.04%)」しか溶けません。これが、いわゆる飽和溶液になりますので、この粉末を室温で溶けるだけ溶かした水溶液の上澄みを、実際には使用することになります。両生類の麻酔の場合、これを2〜4倍希釈するか、或いはそのままの濃度で使用します。そのとき麻酔液を入れた容器を完全密閉し、中に空気の層を造らないことが肝心です(空気の層があると、両生類はなかなか麻酔に掛かってくれません)。


>精巣重量や輸精管重量を計測するには通常、湿重量ということになろうかと思いますが、解剖後すぐに計測するものなのでしょうか? それとも固定した後でも可能なのでしょうか?

精巣重量、輸精管重量、等々の計測は、全て固定後の試料でおこないます。ろ紙で余分な水分(70%エタノール)を吸って、乾かないうちに迅速に計測をおこないます。ちょっと考えて欲しいのですが、解剖した個体をすぐに計測するためには、色々な器官を切り出す必要があります。もし精液が詰まった状態で輸精管を切り出せば、切ったところから精液が流れ出てしまいますし、薄く拡がった輸精管上皮を少しでも傷つければ、そこからも精液が流れ出てしまいます。また精巣というのは軟らかいもので、ほんのちょっとの圧力を加えただけで潰れてしまいます。これらの器官を固定することで、重量の測定が可能になるわけです。こういうことは一般に、実際にやったことがない人には、なかなか分からないものです。


>ホルマリン固定を予定していますが、何日くらい浸けてからアルコール保存に切り替えるものなのでしょうか?

10%ホルマリン固定の場合、1〜2日くらい「振盪固定」すれば充分です。その後、70%エタノールで保存します。但し、固定液や固定時間というのは、試料の使用目的によって異なります。組織切片を作製する予定があるのなら、10%ホルマリンよりはブアン液や中性緩衝ホルマリンのほうがベターです。また酵素抗体法や免疫染色を考えているのなら、固定時間は一日半を超えてはいけません。この場合、固定液はブアン・ホランド昇汞液がベターで、固定後の試料は直接90%エタノールに移し、直ちに脱水・包埋する必要があります。重量の測定だけが目的であれば、10%ホルマリンでよいでしょう。


>麻酔に使用する「0.1%MS-222」というのは、この名称で購入できるのでしょうか?

麻酔薬の正式名称は「MS-222」で「これの粉末をDWに溶かした0.1%液を使用している」ということです(ドイツ製で高価。10gで9,800円くらい)。但し、現在は製造中止だそうです。私が代わりに使用しているのが「p-アミノ安息香酸エチル」で、これは「MS-222」と構造が似ているので、麻酔薬として充分に使えます(和光純薬製で安価。500gで6,700円くらい)。

(追記): その後「MS-222」が、シグマから発売されているという情報があった。カタログで調べてみると、25gで6,700円(100gで21,600円)という値段で、前述のドイツ製に比べれば安価ではある。ちなみに「MS-222」は面白いほど水によく溶け、また個体の迅速な麻酔からの覚醒は保証できる。但し、個体を解剖して殺すのであれば、敢えて高価な「MS-222」を麻酔薬として使うメリットはないと思われる(戻る)。


>繁殖行動の実験で「dim red light」とありますが、具体的にどのようなものを使ったのでしょうか? メーカーやW数などを教えてください。

東芝の親子型電球ですが、現在は製造中止だそうです。「暗室で使用する赤い電球」と言えば、理解していただけるでしょう。


>水槽の底には、どのような素材を入れるのでしょうか? また、入れる枝は1本で充分なのでしょうか?

素材として特別なものは、何も入れません。また、枝は1本にしてますが、途中で枝分かれしたもの(Y字形の枝)を使用しています。


>「aged tap water」とは「汲み置きの水」という解釈でよいのでしょうか?

その通り、汲み置きの水道水です。水道水に含まれるカルキ(さらし粉)をとばすために、汲み置きにします。水道水をすぐに使いたければ、除塩素剤としてハイポ(チオ硫酸ナトリウム5水塩)を入れます。


>固定した標本でも、輸精管内の精子数をカウントすることは可能でしょうか? その場合、どのような固定の仕方がよいのでしょうか?

可能です。固定標本の収縮をなるべく抑えたいのであれば中性緩衝ホルマリンがお勧めですが、10%ホルマリンでもブアン液でも大して変わりはないでしょう。


>精子数をカウントするための試薬等がありましたら、教えて下さい。

精子の核を染めるということであれば、ヘマトキシリン染色で充分です。私が頻繁に使用するのは「Carazzi's hematoxylin」ですが、時間に余裕があれば「Delafield's hematoxylin」の使用をお勧めします。


>組織標本の作製は、ご自分でなさったのですか? 私は「病理(臨床検査の世界では、組織標本を作ったり染めたりするのは、病理という分野になります)」は、......(以下略)。

組織標本に限らず、何から何まで、全部と言っていいほど、自分ひとりでやっています。組織標本の作製は、主に医学書院発行の「病理組織標本の作り方(慶応義塾大学医学部病理学教室編集)」を参考にしています。理学部では、医学部や医療技術短大と違って、組織標本を作製する専門の技官はおりません。そのため、何でも自分でやるのが当たり前になっています。先日は、大学に集中講義で来られた、京都大学医学部胸部疾患研究所の某教授が、私がミクロトームを回して組織切片を作製しているところを見学して「現在は、こういうプロフェッショナルが少なくなってしまった......」と、妙に感心してくれました。


>私の大学で動物実験指針を準備中ですが、その中で「麻酔下における外科的処置の後に、著しい不快感を伴なう実験」という処置例の記載があります。これに該当すると、実験前および結果公表前に学内委員会の協議を経なければなりません。両生類では年齢推定のために指を切りますが、これは欧米では麻酔をかければ許されているのでしょうか? それとも「著しい不快感を伴なう実験」とされているのでしょうか?

動物実験指針の件ですが、ご承知のように、欧米では動物に苦痛を与える処置を施さないことが、実験をおこなう上での大前提になっています。そのため「深い麻酔」をかけて、動物に痛みを感じさせることなく、解剖なり切除なりすれば、大方の実験は許可されることになっています。さて、問題の両生類の年齢査定のための指切りですが、現在のところ「欧米の研究者が『野外で』動物に麻酔をかけて指を切っている」という話は、聞いたことがありません(『実験室で』麻酔をかけるのは当然の行為ですが......)。また指切り法をおこなった私の投稿論文でも、この点は指摘されたことがありません。但し最近の動向では、指切り法より痛みの少ない「PIT tag」の使用が奨励されているようです。ですから野外の場合でも、今後は動物に麻酔をかけてから指を切ったほうが無難だとは思います。


>オオイタサンショウウオ用に開発していたmtDNAのプライマーが、どうやら他種にも充分に使えそうなことが分かりましたので、系統解析をやってみようと考えています。サンショウウオ科のエタノール液浸サンプルをお持ちでしたら、......(以下略)。

博物館等で所蔵する液浸標本の多くは、10%ホルマリン液で固定した後、70%エタノールで保存しています。通常は、この状態のものを「エタノール液浸サンプル」と言います。従って、他人に尋ねるときは「ホルマリンを使わずに、エタノールだけで固定した液浸サンプル」と書いた方が、間違いは少ないでしょう。

ちなみに見分け方ですが、エタノール液浸でも、ホルマリンで固定したものは、サンプル全体が堅くなっています。これに対し、エタノールだけで固定したものは、サンプル全体が柔らかい感じがします。


>mtDNAの解析用サンプルには、アセトンも使えるそうです。どのような利点があるのかは忘れましたが、......(以下略)。

アセトンは、生化学屋さんが精製のときに使うものですから「酵素活性を阻害しない」という利点があります。例えば、ウシガエルのLHやFSHを精製するときは、取り出した脳下垂体をアセトンで乾燥させます(いわゆるアセトンドライのことです)。またアセトンは、酵素組織化学では頻繁に使われます。


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