ウランバートルのレストラン


モンゴル・ウランバートルのレストランでは「注文通りには、料理が出て来ない」というケースが少なくない。

2005年1月3日(月曜日)、現地時間の午後6時30分、エーデルワイスホテルにチェックインした。このホテルも御多分に漏れず朝食付きだったのだが、1月8日(土曜日)のチェックアウトまで5回の朝食のうち、注文通りの料理が運ばれて来たのは、たった1回であった。

ここでの朝食は、併設のレストランで「7:30〜9:30」と決められている。しかし、この時期の夜明けは午前8時半頃で、なおかつ外は寒いので「午前9時頃にならないと、誰も動こうとしない」そうである。そのため、私は同室の藤則雄さん(金沢学院大学)と一緒に、だいたい午前9時前後にレストランに行き、朝食を採っていた。

席に着くと、ボーイが朝食の注文票を持って来るので、自分が食べたい項目にチェックを入れる。例えば、パンだと「プレーン(普通の食パン)、トースト、ロール」から選び、エッグだと「オムレツ、ボイル(ゆで卵)、サニーサイドアップ(目玉焼き)」から選ぶわけである。ところが、チェックを入れた料理の材料が、切れていることが多い。その場合「ないから別のにして」と言って変更を求めるのは、まだ良いほうで、有無を言わさず別のものを出して来るのが、ほとんどであった(1)。

フルーツジュースがオレンジジュースに代わったり、ロールパンが普通の食パンに代わったり、ホットで注文したはずのハムが冷製だったり、注文したはずのヨーグルトが来なかったり、注文したはずのニンジンのサラダがメインディッシュに付かなかったり、逆に注文もしていないキャベツのサラダが付いたり、チーズを付けるのを忘れたり、コーヒーを運んで来るのを忘れたり、といった「一体、何のための注文票なのか?」と思えるような、いい加減さであった。モンゴルでは、これが普通らしい(2)。

1月7日(金曜日)の午前11時50分に、通訳のオトゴンさんと買い物を終えて入ったウランバートル市内の「普通のレストラン(ゴアンズと呼ばれる食堂)」は、彼女によると比較的まともな部類に入るらしいのだが、それでも注文通りには出て来なかったようである。また、英語のメニューもあるのだが、彼女によるとモンゴル語のメニューとは対応していないらしい。ここでは、ゆで卵、ピクルス、マッシュルームのサラダ(900Tg)、チキンのクリームスープ(900Tg)、ボーズ(蒸し肉餃子)のサワークリーム乗せ(1,200Tg)、食後に紅茶(リプトンのインスタント、250Tg)を注文した。彼女と二人分の税込みで、6,500Tgであった(これには15%の剰余価値税を含んでいて、日本円だと600円くらいである)

クリームスープには、具が何も入っていなかった。「これはチキンで、だしを取っているのか?」と良いほうに解釈し、オトゴンさんに尋ねてみると「チキンが無かったんでしょう」とのことであった。これで値段は同じである。ボーズには、サワークリームの代わりに、マヨネーズが掛かっていた。これも「サワークリームが無かったんでしょう」とのことであった。代用品に、マヨネーズ......。う〜ん、マヨネーズ味の餃子は、生まれて初めて食べた。私が、いわゆるマヨラーならともかく、なんとも表現しようのない、微妙な味であった。ちなみに、サラダに関しては、どこのレストランでも外れがない(3)。

[脚注]
(1) 私はロールパンが食べたかったので、ずっとロールの項目にチェックしていた。しかし、いつもボーイは「ない、ない」の繰り返しで、漸くありつけたのは最終日の1月8日だけであった。そのため、初日の1月4日は代わりにトーストを注文してみたのだが、これが、いつ焼いたのか分からないくらいに冷えた代物であった。冷たいトーストに溶けないバターを乗せて食べるのが嫌で、それからはロールパンの代わりに普通の食パンを注文していた。同様に、メインディッシュの注文で「ミートパティー」にありつけたのも最終日だけであった。ちなみに、このミートパティーは、薄切りの牛タンをソテーしたような料理で、もしかしたらモンゴルに来て食べた料理の中では、ベストな部類に入る料理のひとつかもしれなかった(煮込んだり蒸したりする料理以外の調理法があった???)。
(2) ただ、料理の値段が安いのが、救いと言えば救いであった。ウランバートルのレストランでは「サラダ(salad)、スープ(soap)、メイン(main)」から一品ずつ選んで、料理を注文するのが一般的である。諸事情から、このホテルのレストランで、1月5日の夕食を藤さんと二人だけで採ることになった。そのとき注文したのは、ニンジンとチーズのサラダ(ニンジンとカッテージチーズの千切りにサワークリームをかけ、パインアップルを添えたサラダ)、ニンジンのクリームスープ、ヒレ肉のステーキ(250gくらいの量で、ブラウンソースのマッシュルーム添え。付け合わせはフライドポテト、ライス=長粒米、赤キャベツ、キャベツとニンジンの千切りの酢漬け)の三品であった。値段は順に1,000Tg(=トゥグリク)、800Tg、2,900Tgで、合計が4,700Tgであった(これに15%の剰余価値税が掛けられるのだが、それでも5,450Tg。これは、日本円だと500円くらいである)。この値段で、この味、この量なら、申し分ない。
(3) 1月8日の昼食に、藤則雄さん、通訳のウンドラさんとオトゴンさん、それに私の4人で入ったゴアンズと呼ばれる食堂のひとつ「Winners」は、ベストな部類に数えられるレストランであった。注文通りの料理が運ばれて来ることは言うに及ばず、これまで入ったどのレストランの料理よりも質が高く、またボーイの注文の取り方も、きびきびしていた。気に入った。おいしいものが食べたくなったら、このレストランに行こうね(値段は他より若干、高い程度なので、かなりお勧めである)。ちなみに、ウランバートルにある中国料理やタイ料理の専門店では、料理は注文通りに出て来るのが普通である。もちろん、値段も高い。


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