大地震の時の心得など

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心得とか鉄則は、度重なる震災から得られた教訓を基に、大地震が起こったときどう行動するのが最も安全かを教えています。これらの心得等は平均的な対処方法ですので、むしろこれらの心得等を参考にしながら、自分の置かれている環境ではどのような状況が生じるのか想定しておくことが重要と思われます。

その他、警句、標語、歌留多などには、心構えとして参考になるものやなるほどと思うものがあります。

心得、鉄則など

心得などの特徴

出現頻度図

地震に際しての鉄則、あるいはポイントを含めて、いわゆる心得などは、8~10の項目にまとめられているのが一般的であり、各都道府県や市町村によってその内容は若干異なっています。表現の違いも入れるならば雑多と言えるほどたくさんあります。基になる心得などがあり、最近の地震やその地方の過去の地震を参考にして、編集されているのでしょうか。

以下、6つの心得などを示しますが、これらに共通している項目は、右のレーダーチャートに示すように、身の安全、火の始末、塀など危険なものに注意などがあります。その他、デマ、津波、崖崩れなども頻度の多い項目です。

揺れにほんろうされ、自分の意志で行動できないような場合、あるいは地震の揺れによって建物が倒壊して閉じ込められたり大ケガをした場合は心得通りに実行しょうとしても出来ません。もちろん、建物の倒壊によって圧死した人にとっては心得などが役に立たないのは当然です。まだ身の自由が利くような揺れのとき、あるいは大きなゆれを凌いで無事であったとき、さて何をしなければいけないのか教えてくれるのが心得です。

地震に出会ったときの心得

(今村明恒* 1926 出典:「永濱宇平 丹後地震誌 1929」 の巻末資料より)

大正十五年十一月 理学博士 今村明恒

  1. 最初の一瞬間に於いて非常の地震なるか否かを判断し機宜(きぎ)に適する目論見を立てること、これには多少の地震知識を要す。
  2. 非常の地震たるを覚えるものは自ら野外に避難せんと力(つと)めるであろう、数秒間に広場へ出られる見込みがあれば機敏に飛び出すが良い、但し火の元用心を忘れざること。
  3. 二階建、三階建等の木造家屋では階上の方却って危険が少ない、高層建物の上層に居合わせた場合には野外への避難を断念しなければなるまい。
  4. 屋内の一時避難所としては堅牢なる家具の傍らが良い、教場にては机の下が最も安全である。木造家屋内にては桁、梁の下を避けること、又洋風建物内に於いては張壁、暖炉用煉瓦煙突等の落ちて来そうな処を避け、止むを得ざれば出入り口の枠構の直下に身を寄せること。
  5. 野外に於いては屋根瓦、壁の墜落或いは石垣、煉瓦塀、煙突等の倒潰し来る虞(おそれ)ある区域から遠ざかること、特に石灯籠に近寄らざること。
  6. 海岸に於いては津浪来襲の常習地を警戒し、山間に於いては崖崩れ、山津浪に関する注意を怠らざること。
  7. 大地震に当り、凡そ最初の一分間を凌ぎ得たらば最早危険を脱し得たものと看做(みな)し得られる、余震恐れずに足らず、地割れに吸い込まれることは我が国にては絶対に無し、老若男女総て力の有らん限り災害防止につとむべきである。火災の防止を真っ先にし人命救護をその次とすること、これが人命財産の損失を最小にする手段である。
  8. 潰屋からの発火は地震直後にも起こり十二時間の後にも起こる、油断なきことを要する。
  9. 大地震の場合には水道は断水するものと覚悟し機敏に貯水の用意をなすこと。
  10. 余震は其(その)最大なるものも最初の大地震の十分の一以下の勢力である、最初の大地震を凌ぎ得た家屋は仮令(たとえ)多少の破損傾斜をなしても余震に対して安全であろう、但し、地震でなくても壊れそうな程度に損したものは例外である。

( )内の読みを追加

* 今村明恒 東京帝国大学教授 明治大正から昭和初期にかけての著名な地震学者で地震学会の設立者。最初の日本地震学会は1880年(明治13年)に設立されて1892年(明治25年)に解散しています。ここでいう地震学会とは現在の日本地震学会の直接の前身で、昭和4年に設立されました。

大地震のときの心得八か条

(村松郁栄・藤井陽一郎 「日本の震災」 三省堂新書 1970)

  • 第一条 まず、じょうぶな家具に身を寄せる。
  • 第二条 狭い路地、へいぎわ、岸や川べりに近寄るな。
  • 第三条 手早く火の始末を。
  • 第四条 1分すぎたらまず安心。
  • 第五条 人命救助には消火が第一。
  • 第六条 海岸では津波、山では山津波に注意。
  • 第七条 余震を恐れず、デマに迷うな。
  • 第八条 秩序を守り、衛生に注意せよ。

大地震発生時の鉄則9ケ条

(溝上恵 徹底検証「東京直下大地震」 小学館文庫 2001)

  • 第1条 地震だ!火を消せ! グラッときたらまず火の始末を。
  • 大地震の火災では道路が寸断され、消防車による消火は期待できない。
  • 地震の犠牲者の多くは焼死によるもので、火の始末が大きな災害を防ぐことになる。
  • 第2条 次に安全確保を。わが身と家族の安全を確保しょう。
  • 地震は長くても1~2分。火を消したら素早く机やテーブルの下に潜って落下物や倒れてくる家具から身を守る。自分のおかれた状況に応じて、最も安全な場所に移動する。
  • 第3条 慌てて外に飛び出さない! 屋外はけして安全でない。
  • 地震の時には屋内も安全ではないが、屋外のほうがガラスや看板、自動販売機など倒壊物・落下物の危険が高く、慌てて動きまわると思わぬ大惨事になる可能性が高い。
  • 第4条 出口の確保を! 建物に閉じ込められないように。
  • 激しい揺れで建物がゆがむとドアが開けられなくなることがある。特に、マンションやアパートでは、通常出入り口は一つしかない。まずは戸を開けて出口の確保をする。
  • 第5条 周囲の危険に注意を払う。 危険なものから身を避けよう。
  • 屋外ではブロック塀や門柱など、実に危険物が多い。倒壊物・落下物に注意!
  • 第6条 自動車は左に寄せて停車。 規制区域では運転禁止。
  • 自動車を運転中に大地震が発生したら、まわりの交通に注意して道路の左側に停車する。道路の中央は必ず空けること。
  • 第7条 山崩れ・崖崩れ・津波に注意。
  • 急傾斜地では地滑り、海岸地帯では津波の危険が待ち受けていることもある。
  • 第8条 避難は徒歩で、持ち物は最小限に。
  • 避難する際も、揺れが収まってから自動車で移動することは極力避ける。都心部では全面的通行が制限されるほか、各地で発生した事故で大渋滞が予想される。
  • 第9条 デマに注意! 正しい情報で動くこと。
  • 大災害が起こると、心理的動揺からデマや流言が発生しやすいといわれている。

地震 その時10のポイント

東京都(東京消防庁「地震に備えて」より)

  • ① グラッと来たら、身の安全
  • ② すばやい消火 火の始末
  • ③ 窓や戸を開け 出口を確保
  • ④ 落下物 あわてて外に飛び出さない
  • ⑤ 室内のガラスの破片に気をつけよう
  • ⑥ 確かめ合おう わが家の安全 隣の安否
  • ⑦ 協力し合って救出・救護
  • ⑧ 避難の前に安全確保 電気・ガス
  • ⑨ 門や塀には近寄らない
  • ⑩ 正しい情報 確かな行動
  • 付帯資料
  • 火を消す3度のチャンス
  • チャンス1 揺れを感じた時
  • チャンス2 大揺れがおさまった時
  • チャンス3 出火した時

地震時の心得10か条

東京都 「防災のしおり」より

  • 第1条 わが身と家族の身の安全!
  • 大きな揺れは、1分程度です。丈夫なテーブルや机などの下に、身をかくし頭を保護するようにしましょう。
  • 第2条 グラッときたら火の始末 火が出たらすばやく消火!
  • 火の始末が大きな災害を防ぎます。小さな地震でも火を消す習慣をつけましょう。
  • 第3条 あわてて外にとびだすな!
  • むやみに外に飛び出すのは危険です。周囲の状況をよく確かめて、落ち着いて行動しましょう。
  • 第4条 戸を開けて出口の確保!
  • 特に、コンクリート建てのマンションなどは、地震の揺れでドアがゆがみ部屋に閉じこめれることがあります。戸を開けて出口を確保しましょう。
  • 第5条 戸外では頭を保護し危険なものから身を避けよ!
  • 屋外にいるとき地震におそわれたら、ブロックべいが倒れたり窓ガラスや看板などが落ちてきます。安全な建物か近くの広い場所に避難しましょう。
  • 6 百貨店・劇場などでは係員の指示に従って行動を!
  • 大勢の人が集まるところではパニックが起きる心配があります。巻き込まれないように、冷静な行動を心がけましょう。
  • 7 自動車は左に寄せて停車 規制区域では運転禁止!
  • 勝手な行動は混乱のもと カーラジオの情報により行動をしましょう。
  • 8 山くずれ・がけくずれ・津波に注意!
  • 山くずれ・がけくずれ・津波の危険地域ではすばやく避難しましょう。
  • 9 避難は徒歩で持ち物は最小限度に!
  • 自動車を使うと、渋滞を引き起こし、消火活動や救援活動の妨げになります。避難は徒歩で、荷物は最小限のものだけにしましょう。
  • 10 デマで動くな 正しい情報で行動!
  • 震災時はデマなどに惑わされやすくなります。報道機関や区市町村、消防、警察などからの情報に注意しましょう。

地震が起きた時の心得

(静岡県)

  1. まず、わが身の安全を!
  2. すばやく火の始末!
  3. 火がでたらすぐ消火!
  4. 山崩れ、がけ崩れ、津波、浸水に注意!
  5. 生存者がいれば、助けを呼んで救出を!
  6. 狭い路地、塀際、がけや川べりに近寄るな!
  7. 避難は徒歩で!持ち物は少なく!電気・ガスの元栓をしめて
  8. 協力しあって応急救護、自主防災活動に参加
  9. 正しい情報をつかみデマにまどわされるな!
  10. 秩序を守り衛生に注意!

警句や標語

A. 寺田寅彦の伝説の警句

天災は忘れた頃に来る

または、 「天災は忘れた時分に来る」(今村明恒著『地震の国』より)、「天災は忘れられたる頃来る」(寺田寅彦記念館の碑より)

防災に関する文章などによく用いられる有名な警句で「天災は忘れた頃に来る」とか、「天災は忘れた頃にやって来る」と表現される場合が一般的ですが時代とともに変化しているようです。

この警句は寺田寅彦の言葉だと言われています。詳しくは、こちら

B. 関東大震災十周年記念塔の標語 1933

不意の地震に不断の用意

数寄屋橋の記念塔

朝日新聞の全国懸賞募集作品で、左に示す写真にある関東大震災の記念塔の標語になっています。

交通:地下鉄日比谷線、丸の内線、銀座線の銀座駅 数寄屋橋交差点の角の交番の裏側にあります。

詳しく見る




C. 永濱宇平の言葉 『丹後地震誌』1929

第一に防火 第二に救助 それから避難

避難を最優先するような行動は震災を拡大させると警告しています。

力武常次の地震いろは歌留多 2002

力武常次 「地震ジャーナル 33」 地震予知総合研究振興会 2002年より

 い   いつも用心 地震の 不意打ち

  ろ   ロス周辺 断層ばかりで 地震が恐い

   は   判定会 東海地震を 予知してね 

    に   日本列島 地震の 本場

     ほ   ほんとかね 高い確率 南海地震

      へ   平和でも 地震の危険 無視できぬ

       と   東京圏 直下地震が 恐ろしい

 ち   地殻の歪が 地震の 元凶

  り   リスクでも 最大なのは 地震災害

   ぬ   ぬるぬると 地殻が滑る ゆっくり地震

    る   類の無い 地震国だよ 日本は

     を   鬼も 恐がる 大地震

 わ   忘れるな 阪神・淡路 大地震

  か   関西の 地域危険度 低くない

   よ   予知すれば 被害減らせる 大地震

    た   大変だ 地震に続く 大津波

     れ   連動か 東海・南海 大地震

      そ   そろそろ 危険か 南海トラフ

 つ   津波だ 逃げろ 高台に

  ね   念には念を 地震の 備え

   な   ナマズ君 ほんとに地震 予知するの

    ら   乱世に 地震多しと 人は言う

     む   難しい 地震過程は 非線形

 う   占いを 科学に転化 地震予知

  ゐ   居酒屋で はずむ談義は 地震予知

   の   逃れえぬ 巨大地震の 来襲間近か

    お   恐ろしい 近代都市の 大震災

     く   悔しいが 直前予知は まだ出来ぬ

      や   やるべきだ 地震対策 強力に

       ま   マントルも 地殻も壊す 大地震

 け    堅実な 進歩続ける 地震学

   ふ    富士山の 直下地震は 低周波

    こ    こん畜生 地震予知は まだ出来ぬ

     え    遠州灘 巨大地震が 起こるかも

      て    天災が 人災化する 大地震

 あ   アナトリア(トルコ) 断層に住む 民憐れ

  さ   サンフラン シスコも危ない 活断層

    き   京都でも 地震確率 低くない

     ゆ   ゆさゆさと 海溝地震は 長周期

      め   明快な 解説ほしい 地震説

       み   みんなで 防ごう 地震災害

        し   震源を すぐに発表 気象庁

 ゑ    縁切れぬ 地震・火山の 結びつき

  ひ   飛騨山地 活断層が あまたあり

   せ   千年に 一度動くか 活断層

    す   進んでる 地震学でも 予知はまだ