中央本線の穴山はかつてはスイッチバックの駅であった。中央本線の歴史は古く、この辺りは明治37年には鉄道が走っており、それに遅れて大正2年に穴山の駅が開業した。当時の列車の動力源は蒸気機関車で、ただでさえ山道の多い甲斐路では坂を上るのに一苦労なのに勾配の途中に駅を造ることは安全の保障が出来なかったこともあり、スイッチバックと言う措置をとった。山梨県内では他にも
笹子や初狩の駅なども同じような経緯でスイッチバックになっていた。
しかし昭和48(1973)年の5月に線路の複線化による運行が始まり、山梨県内の駅のスイッチバックはほとんど廃止され、今では
初狩の貨物線だけが残っている。
穴山の駅に降りてみると駅前の敷地が広く、更地になっている土地が線路に続いているのを見るとスイッチバックの駅だったんだなと感じる事ができるが、線路やホームは跡形もなく消え去っているので鉄道の事がよく分からない人にとっては「何で土地がこんなに余っているんだ」と思われるかも知れない。穴山の駅舎の前はJR東日本系列の会社が管理する月極の駐車場ができ、車が主に生活の足となっている県で車と鉄道の共存の新しい形を作ろうとしている気がした。
(2002.9.11)