高山本線の猪谷は岐阜県と富山県との県境付近に位置する山間の駅で、近くには高原川と宮川が合流して名前を変えたばかりの神通川が流れている。

 高山本線は岐阜県内はJR東海の管轄だが、富山県にある猪谷から終点の富山まではJR西日本の管轄となり、駅名標もJR西日本仕様の青を基調としたものになっている。今まで無人のJR境界駅として津軽線の中小国を挙げていたが猪谷も無人化されたため、全国では2つ目となっている。

 猪谷は国鉄神岡線から第3セクターに転換した神岡鉄道が分岐している。神岡線の頃は富山からの直通列車があったそうだが現在はJRから神岡鉄道に直通する列車は1本もない。

 駅構内には貨物用の側線があり、その側線の近くには神岡鉱山の社宅がある。神岡鉄道は旅客部門に関して言えば全国の第3セクターで最も貧弱なレベルだが、今日まで生き残ったのは亜鉛の精錬に使う濃硫酸の貨物輸送が大きなウェイトを占めていた。だがタンク車の老朽化を機に濃硫酸の運搬をトラックやタンクローリー車に切り替えられてしまい、貨物の待機に利用していた側線も今では意味を持たなくなってしまった。貨物輸送という大きな収入源を失った神岡鉄道は2006年の12月に廃止される予定だ。

 猪谷はNHKで放送された「最長片道切符の旅」の中継駅となり、放送の中で駅前のモツ焼屋が紹介されたが、私が訪れたのが月曜日だったせいか店の入口には「準備中」の札が貼られていた。またその店の隣には猪谷関所館という資料館があるのだが、そこも月曜日が休館日だった。

 神通川や神岡鉱山というと亜鉛の鉱石に含まれたカドミウムが流出して発生した公害、「イタイイタイ病」をイメージしてしまうが、神岡鉱山の閉山や貨物列車がなくなった猪谷の駅構内を見ると公害の歴史がそのうち風化されてしまいそうな気がした。

                                                                   (2005.11.7)
猪谷
Inotani


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猪谷の駅舎
猪谷のホーム
猪谷の駅構内