駅の真ん前を国道が通り、背後には海岸段丘が迫っている駅、石谷。1930年に信号場として開業した後に戦後の1946年に正式な駅に昇格。1949年に改築された駅舎は入口の駅名表示板が変えられた以外は今も現役である。
駅舎内の切符売り場の窓口はすでに塞がれているが、かつての駅事務室には有人駅時代に使っていたと思われる年代物のソファーが残っていたり、隅には宿直室もある。この時は偶然にも事務室の入口に鍵がかかっておらず、少しだけ中をのぞいてみたら、宿直室の所にあった灰皿には吸い殻が山積みされていた。無人化はされても建物自体は保線作業員用の詰所として利用されているのだろう。
そんな石谷の駅舎のすぐ隣にニシンの供養塔がある。かつての北海道はニシンが大漁に獲れていた時代があり、あまりにも捕れ過ぎたが故に食べきれずに腐らせて廃棄したというエピソードもある。現在は有形文化財に指定されているこの供養塔は、まさしく北海道の歴史を物語る貴重なものであると言える。
石谷の目の前に噴火湾は広がり、駅周辺は漁港に立地した集落があるが、近年では列車を利用する人が少なく、1日の平均乗車人員が3人以下という状態が続いていた。JR北海道は函館本線内における1日の利用者が3人以下の駅を2022年の春に5駅廃止する方針を打ち出した。発表当初はどの駅かは明言しなかったが、マスコミの情報入手は早く、森町にあるこの石谷と
本石倉、七飯町にある
池田園、
流山温泉そして
銚子口であることが判明した。他にも宗谷本線の歌内と根室本線の糸魚沢も対象となっているが、函館本線内では廃止を分散ではなく、選択と集中という方法を採ったということになる。
私が石谷を訪問した時にも、廃止の情報を耳にしたと思われるようなファンが1人いた。これから石谷にも駅廃止に対する反響が増えてくると思われる。
(2021.9.23)