小出から只見線のディーゼルカーに揺られて、新潟県で最後の駅になるのが、この大白川である。破間(あぶるま)川沿いの小さな集落に造られた駅は、遠目で見たら、秘境を感じるロケーションの素晴らしさに感動を覚える人も少なくないかも知れない。

 1971年に只見線が全通するまでは終着駅としての役割を持ち、全通後も交換設備を有しているので、タブレット交換をするために、山奥の村で利用者がさほど多くないのにも関わらず、駅員を配置していた。

 そんな只見線にもCTC化の影響で、列車運行の遠隔操作が可能となったのを機に、2009年に無人化され、新潟県内にある只見線の駅はすべて無人駅となってしまった。

 また大白川の両隣には田子倉柿ノ木といったハイレベルな無人駅が存在していたが、共に廃止され、駅名標にはステッカーが貼られている。ハード面では合理化されてしまってはいるが、未だに旧国鉄型のディーゼルカーで車掌つきというシチュエーションは全国的にも珍しいのではないか。

 現在の大白川における一番の注目ポイントは、駅舎の2階にある蕎麦屋である。1988年に入広瀬村(現:魚沼市)の自然活用センターの併設駅として建て替えられた駅舎ではあるが、2階の部分が使われなくなると聞いて、蕎麦の生産者である主人がオープンした店が「平石亭」である。

 店は土休日の昼間のみ、豪雪地帯のため、もちろん冬季休業で、営業時間帯にやって来る列車は閉店1時間前のみなので、駅併設なのに店のアクセスは車が最も適している。

 生産者の自家製蕎麦は言うまでもなく美味ではあるが、山菜の名産地である旧入広瀬村においては季節の天ぷらや山菜の小鉢がついた鬼面そばをお勧めする。子供の頃は苦味があって敬遠がちだった山菜だが、採れたての影響もあるが、油で揚げたり、炒めたりすることで旨味が加わることに気づき、その点では自分も齢をとってしまったことがどこか切なくなった。

 只見線の始発に乗るために夜中に大白川に到着した時は車は1台も無かったが、蕎麦を食べ終えて退店した時には、さほど広くない駅前広場には県内外の車でびっしり埋まっていた。通の人にはよっぽど名が知れているお店だということを感じた。

                                                           (2016.5.1)

一般利用者が使える大白川の駅舎の中。狭い通路には自動券売機が置かれている
山奥の終着駅の雰囲気を感じる大白川の駅構内
Oshirakawa


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大白川の駅構内の脇には破間川が流れている。
大白川の駅名標。廃止になった柿ノ木、田子倉はシールで隠された
2階には休日の昼間のみ営業する蕎麦屋は入っている大白川の駅舎
大白川