南下沼が現存していた時には、北海道にはよくある貨車駅の無人駅。それが下沼の正直な印象だった。

 幌延町が秘境駅を一つの観光資源として着目した時、ヨド物置の待合室が有名な糠南と共に白羽の矢が立ったのは、この下沼であった。2017年には当時ボロボロだった駅舎の壁面をきれいに塗り替え、さらにその全面に秘境駅妖怪の「ぬまひきょん」というキャラクターを描いて大幅なイメージアップを図った。

 この取り組みが功を奏した様で、訪問客が増えて今では道内における注目の秘境駅の一つであると言っても過言ではない。駅舎の中に入ってみると、クリパで使ったようなリースを始め、様々なものが飾られていて華やかだ。

 さらに下沼の駅のすぐ近くには「権左衛門」という名前の湧水がある。私が南稚内から始発列車に乗って下沼を下車した時、除雪をしに来た地元の方に場所を教えてもらって行ってみたら、駅前通りを歩いて1分くらいで簡単に見つけることができた。いちおうコップは用意されていて、いつでもそして誰でも飲むことはできるが、とりわけ夏場には空のペットボトルを準備しておけば大いに役に立つと思う。

 下沼の地名の由来はアイヌ語の「パンケ=ト」(下の沼)を訳したもので、駅の西側に地名の語源となったパンケ沼がある。しかし駅から徒歩で30分くらいの距離がある上に、両隣に列車交換が可能な駅が存在していて列車での訪問が容易な場所なので沼への訪問は難しく、駅周辺散策はやはり湧水に落ち着いてしまうかも知れない。

 「秘境駅の里」として立ち上がった幌延町。「ぬまひきょん」の誕生によって、下沼は町とファンによって親しまれる駅に生まれ変わった。

                                                           (2021.2.23)

下沼のホーム。地名の由来はパンケ沼を和訳したものである。
貨車改造の駅舎に描かれている「ぬまひきょん」反響が大きく、すっかり人気の高い駅となった。
Shimonuma
下沼の駅前通り。駅のすぐそばに湧水があって、お馴染みの観光スポットとなっている。
下沼の駅舎の中。飾りつけや寄贈品などが置かれ、駅への愛着がひしひしと伝わってくる。
貨車駅の下沼。町の観光資源化によって置かれた環境が大きく変化した駅である。


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下沼