日本鉄道建設によって1975年に開通した三江線の新線区間は1日4往復のみという、線内で最も本数が少ない区間である。その中にある潮は江の川の景色が三江線で最も美しいと言える駅だ。
同じ新線区間の中にある
宇都井と並ぶ名物駅の一つだが、
宇都井の場合は駅そのものが観光スポットとなっているのに対し、ここ潮は江の川が作った景色に桜、温泉といった周囲の観光資源に恵まれた感じの駅である。
本数は少ない駅ながらも、近くには商店も存在する。また周辺の沿道には桜が植えられており、この時は開花前だったが、訪問客を歓迎する横断幕が掲げられていた。
潮の最大の観光スポットである温泉は駅から江津方面へ線路沿いの道路を5分ほど歩けば簡単に到着することが出来る。温泉がある宿「大和荘」は宿泊はもちろん、日帰り入浴も可能であり、潮に下車したら必ず訪問しておきたい所である。男湯からは三江線の線路が眺められ、タイミングを計れば浴場から列車の通過も拝める。
私が潮で下車して、「大和荘」に立ち寄った時は、大相撲春場所の千秋楽であり、テレビでちょうど新横綱の稀勢の里と照ノ富士という大一番が始まろうとしていた所だった。稀勢の里は初日から順調に白星を積みながらも、日馬富士戦で負傷をし、満身創痍ながらも休場をせずに相撲を続けていた。優勝は難しいと思われていたが、本割りでは、まさかの勝利で優勝決定戦に持ち込み、結びの一番を挟んで再び照ノ富士との優勝決定戦では土俵際からの大逆転勝利で奇跡の優勝を成し遂げた。将来的には消えゆく鉄路の地でまた一つ思い出に残るシーンを見た瞬間だった。
(2017.3.26)