この道 : 国道160号線





 国道160号線は、能登半島最大の都市にして、地理的にもちょうどその中央に位置する石川県七尾市と、富山県西部にある高岡市を結んでいる。総延長は46.1km。経由地は富山県氷見市のみ。その経路のかなりの区間は富山湾の海岸線を走るという湾岸道路だ。能登半島の内陸部は、その付け根(口能登)から先端部(奥能登)に至るまで、山塊が横たわっている。高度こそさしたる物ではないが、大きな道はどうしても起伏の少ない海岸沿いの低平地に発達しやすくなるのである。
 160号線は、終点・高岡で北陸の最重要路線である国道8号線(旧北陸道)と接続していることもあり、奥能登と富山県を半島西岸経由で結ぶメインルートになっている。なお、今回実走したのは上り車線なので、レポートも終点・高岡から起点・七尾に向かう構成になっている。



 もうちょっと気の利いた写真は無かったのかという感じなのが申し訳ないです。
 高岡市終点付近。富山県内の8号線は、各都市の中心市街地を避けたコース取りをされている区間が長い。高岡市の場合も同様で、8号線は郊外地区付近を通っている。道幅が広く高い建物が無いため、どことなく空虚さの漂う道だ。
 160号線は、そういう場所で8号線に接続している。なお、その接続形態は信号交差点ではなく、いわゆるジャンクションとなっている。岐阜県岐阜市と高岡を結ぶ156号線との交点も、この近くにある。とにかくスムーズに車を流したい8号線側の意図が見て取れるようだ。終点付近はいかにも田舎の国道という雰囲気だが、やがてちょっとした丘陵地帯を越えて氷見市に入る。



 高岡市街の様子は、156号線レポート参照のこと。
 氷見市は富山県下で最大、北陸地方でも有数の漁港を中心に発展した街で、ブリが特に有名。市外南部の長い下り坂を下っていると、右手に富山湾が見え、まさに漁業の街を実感できる。能登半島は完全に石川県に属しているイメージが強いが、氷見はすでに半島に入ったところに位置する街だ。160号線は、この氷見の街のまん真中を走っている関係で、沿道はにぎやか、交通量も多い。
 ただ、一見した限りでは観光客向けに海の幸を食べさせる店は少ないようだった。そういった店は160号線沿いよりももっと港寄りに多いのだろうか。幸町交差点あたりで右折すると氷見港で、近くには道の駅「氷見」フィッシャーマンズワーフ海鮮館などの施設がある。



 北陸の冬の味覚と言うと蟹のイメージが強いが、通な地元民は氷見の寒ブリである。
 氷見市外の北部にもまた、丘陵地帯が存在している。この丘陵地帯のあたりが阿尾の浦だ。温泉も出るようで、ホテルや旅館が立ち並ぶ。この高台を越えたあたりで、道は海岸沿いに進路を取る。海岸線の間際まで山が迫っている関係で、市街地域としては発達していない。波打ち際を目の前にして民家が建ち並ぶ、のんびりしたムードの海沿いの集落だ。このあたりのの色は、沖縄のそれを思わせるほど透明な青だ。浜も白砂の浜で、内海で波が穏やかなこともあり、どうやら夏場は海水浴客でも賑わうらしい。
 能登立山シーサイドラインの通称も持つこの近辺ではまた、晴れた日には富山湾越しに立つ立山連峰の姿を臨むことができる。山肌は遠目には青味がかって見えるため、ともすれば背景の空の青に山が溶けてしまうが、冠雪が残っていると、白い嶺々だけが空に浮かび上がって見え、幻想的ですらある。
 このあたりには、信号はおろか交差点さえほとんどない。海水浴シーズンでもなければかなり順調に流れそうなので、快適な海沿いのドライブコースになるだろう。




 ドライバーがきれいなに見とれてしまうのか、このあたりでは脇見が原因の事故も多いらしい。駐車スペースはちょくちょくあるので、海を見るのは車を停めて。
 七尾市に入っても基本的にはそれまでと同じような風景が広がっているのだが、心なしか漁家風の家が多くなるようにも思える。そんな漁村めいた集落を進んでいくうちに、道の駅「いおり」を通り過ぎる。サイズ的には並みの駅といったところである。そこからさらに進むと、なおも海沿いを行くルートと、山の中へ入っていくルートに分かれる。160号線は山側のルートだ。
 この山中ルートは、それまでの海岸道路が夢幻だったかと思えるほど、本当に山の中の道だ。能登半島では、このあたりの区間のように山が海にせまっている箇所も珍しくない。広い平地は限られた場所にしか無いため、現状のように大きな市街地が発達しにくいのだろう。もちろん、半島という地理的条件が大都市の成立には不利と言う面も大きい。




 七尾市は、能登半島のそうした限られた平地に発達した街だ。山を越えた直後は田園地帯だが、大田交差点を左折し、少し南西へ進むとJR七尾駅を中心とした七尾市街に入る。160号線の起点は、その街の一角、川原町交差点だ。一見すると特に目立ったところの無い三叉路のように見えるが、ここは3国道(160号以外の残り2国道は159号、249号)の起点になっている。
 50km弱と言う総走行距離のわりに全線走破のための所要時間は短く、1時間もあれば全区間を走り抜けられるだろう。



 3国道の交点が存在する街というのは、その地方の中心都市であることが多い。七尾市は、他都市に対する相対的な規模こそ小さいが、能登の中心都市に違いない。






ロケ地:道の駅 上平ささら館
今回使用した車
サニー(排気量:1500cc)

国道160号線総括
 156号線の続きなので、搭乗した車も同じ。
 基本的には海岸ドライブと街乗りがメインの路線で、一部区間が山道という感じだろうか。決して走りにくい道ではないが、七尾市内の山道はそれなりの坂になっている。パワーが必要だとすればそこだけだろう。結局のところ、軽でも問題なさそう。


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