この道 : 国道418号線
【川辺町〜恵那市】
【国道151号交点〜南信濃村終点】




 国道418号線は福井県大野市を起点に、終点長野県下伊那郡南信濃村まで続く道だ。途中、岐阜県加茂郡八百津町と恵那市の間に不通区間がある。長さは、不通区間に入るまでが142.5km。不通区間から終点までが97.8km。酷道マニアの間では、この不通区間はあまりにも有名だ。
 さらに注目すべきことに、起点から岐阜県本巣市までは157号線との重複区間となっている。なんと、伝説の「温見ストレート」も418号線の一部なのである。418というお尻から数えたほうが早いほど大きなシリアルナンバーを与えられている事からもわかるとおり、それ以外でもコンスタントに酷道区間があり、まさに酷道界のサラブレットとでも言うべき路線だ。



 加茂郡川辺町。それまで一時的に41号線の道を「間借り」していた418号線は、新山川橋北詰交差点でひとり立ちを果たす。41号に合流する直前までは農道と見紛うばかりの頼りない道だったのだが、一人歩きをはじめた直後はかなり立派な道だ。
 交差点の名前にもなっている新山川橋は赤い鋼鉄製の立派な橋だ。この橋からは飛騨の山並みと、そこから流れ下ってきた飛騨川が見える。美しい眺めだ。
 飛騨川を渡った直後に右折。地図で見るとここから少しばかり南下することになるのだが、41号線に合流して北上したのとほぼ同じだけの距離を、川の右岸から左岸に渡ってまた南下する形になる。いかに「間借り」のためとは言え、無駄の多いルーティングだ。
 川辺町と八百津町の境界は、低いながらも山で隔てられており、418号線はこの山を越えていく。




 農道のように頼りない418号線。41号線からJR高山本線の線路越しに。
 八百津町は、最近では「命のビザ」の杉原千畝の出身地として知られている。第二次大戦中、ホロコーストの犠牲になりそうだったユダヤ人に日本行きのビザを発行し、彼らを助けた外交官である。この他、昭和の口裂け女騒動の発生地が、一説に八百津町内だったと言われている。のどかな雰囲気のところで、杉原はともかく口裂け女のイメージには程遠い場所だ。民家のすぐ近くにまで猿がやってくるようなところである。
 数年前までの418号線は八百津町の市街地を通っていたようだが、最近では町中よりもかなり山の上のほうにある新道を通るようになった。近年になってこの道の近くに、杉原の事跡にちなんだ人道の丘公園がつくられた。
 人道、すなわち人の道。この先の418号線がおよそ人の通う道とは思えない惨状を呈するようになることを思えば、なんとも皮肉なめぐり合わせだ。




 猿もおるでよ、八百津町。
 人道の丘あたりでは、眼下に丸山ダムを見下ろす事ができる。道はここからダムの少し上程度の高さにまで下るのだが、このあたりからそろそろ418号線は酷道の様相を見せ始める。見通しの悪いブラインドカーブ。幅員は車1台強の狭路。下は丸山ダムによってせき止められた木曽川の淀みという断崖路なのだが、ガードレールなどは存在しない。
 途中、旅足川にかかる旅足橋だけはいやに立派である。やはり幅は車一台が通れる程度しかないのだが、それでもどこか心強い。
 そこからさらに進むと、ついに418号線のランドマークであるあの標識がその姿を現す。




 丸山ダム。このダムの水位が上がり、418号不通区間は水没すると言うが…。
 いよいよ418号線通行止め標識のご尊顔を拝む時がやってきた。思わず襟元を正したくなるような、厳粛な気持ちで対面する。418号おにぎりを覆い隠す、見るも無残な白バッテン。
 看板自体は思っていたよりもずいぶんときれいに保たれているようだった。通行止め区間の前に立ちはだかる最初で最後の砦となるため、関係当局もメンテナンスには余念がないのだろうか。
 普通の車であればここで右折などしない。よしんば右に進んだとしても、途中ですごすごと引き返さざるを得ない。おとなしく左に進路をとるのが賢明な者の取る行動だ。



 恵那市側にある418号線通行止め標識。八百津町側と違って大上段に構えるかのような標識である。かなり高い位置にあるだけにうっかりすれば見落としてしまいそうなのだが、仮に418号線方向に直進してしまったとしても、間もなく行き止まりになる。こちら側は周辺に民家があり、小集落をなしている。
 少し川上にある武並橋を渡って木曽川の左岸に移る。川に面した斜面は意外と急で、坂を登りきるまでは民家もほとんどないが、峠を越えればなだらかな下り斜面上に田畑が広がり、その中にポツリポツリと民家が点在する田園地帯になっている。



 国道19号線交点。道路時刻表では一応「交点」と表記されているが、418号線は19号線から一方的にまたがれている。
 移転されたのか、はたまた残念ながら閉鎖されたのかはわからないが、私が国道(酷道)の世界に足を踏み入れたのは、偶然「マニアニッポン」というサイトの418号線レポート(「3ケタマニア」)を見たのがきっかけだった。その中の、19号線にまたがれる418号線の図が印象深かった。リスペクトの意味を込め、ここにその写真を掲載しておく。
 なお、19号線にまたがれる直前には中央道にもまたがれているが、これは致し方ないか。





|中略


 418号線は、長野県下伊那郡売木(うるぎ)村で国道151号線と交差する。交点付近には道の駅「信州新野千石平」が設置されている。基本的には151号線向けのものであろうかなり大規模な道の駅だが、418号のルートから大きく外れるわけではないので、設置者側にも418号線利用者の便利に供しようという意識があったのだろう。
 三信を結んだ旧遠州街道から国道へと生まれ変わった151号線は、愛知長野県境に横たわる新野峠付近に限って酷道区間が存在するのだが、売木市街以北は一気に道路事情が改善する。それに引き換え、交点以後の418号線は151号線の酷道DNAを受け継いだのかのような悪路となっている。交点付近においてこそ並みの村道程度の水準は保っており、この路線が事実上の生活道路に「国道」の名を冠しただけのものであることがうかがえるが、売木の隣の天龍村に入るあたりから俄かに雲行きが怪しくなる。
 もともと売木と天龍の両村はかなり急峻な山によって隔てられている。418号線は、これらの山を穿ちながら、天龍村内を縦貫している天竜川に注ぐ早木戸川に沿って設置されているのだが、この地域にはほとんど平地が無い。わずかでも自然の平地があれば人間の居住地用に回されている感じで、道路用には断崖絶壁を削って無理やりスペースを造っているとしか思えない。418号線は天龍村の集落の上方を、とってつけたように伸びていて、その悪路ぶりたるや、八百津町の通行止め区間とどっこいどっこいである。八百津の道にアスファルト舗装を施せば天龍村地内の道になるし、逆に天龍の道の荒廃が進めば八百津の道になる。いや、考えようによっては八百津町よりもこの区間の方が性質が悪い。見通しの悪い極狭隘路に加えて小刻みなアップダウンが断続的に続く。ここを走った時はたまたま後部座席に乗っていたためにいっそう揺れ幅を大きく感じたのかもしれないが、まるでロデオだ。




 「地域の活性化をめざして・国道418号改良整備促進」。国道418号整備促進期成同盟会の願い。
 酷道傾向には、天龍村の中心集落を越えて南信濃村に入っても変化が見られない。軽自動車ですら窮屈そうに走る隘路区間には、困ったことにあまり多くの退避場所は用意されていない。対向車のドライバーが粗忽者だったりするとブラインドカーブを抜けたところで正面衝突を起こし彼我共に仲良くお釈迦になってしまったりすることも考えられるのだが、それは極端な話であるにせよ、自分なり相手なりの運転の要領が悪いと、どちらが進みどちらが戻るかの意思疎通がうまくいかずに立ち往生してしまうことも十分に考えられる。その状態で渋滞が発生してしまうといよいよ始末に終えなくなるので、運転操作は慎重に、しかし対向車との離合時には即断即決が重要だと思われる。
 ところどころで道が良くなったりすることもあるのだけれど、全体としては疑いをさしはさむ余地のないほどのレベルの酷道状態を保ったまま、418号線は終点を迎える。終点は国道152号線との交点だ。南北に伸びる152号線に、西からやってきた418号がぶつかる形
になっている。しかし南信濃村界隈では100番台国道ですら生活道路程度の整備しかされておらず、そこにはおよそ2国道の交点とは思えないような貧弱な交差点が存在するばかりだった。







ロケ地:未定
今回使用した車
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国道418号線総括
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