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法律文書作成の要領と技術

 法律実務家は,実務上の問題解決のために,必要な情報を収集し,これを整理・加工(入力)し,自らの知識・能力において判断処理をし,その解決案を表現・行動(出力)していきます。
 問題解決のためには,的確な情報の収集,入力,出力が必要であり,この情報処理の過程においては,最終的に,他人を理解し説得させ得るコミュニケーション能力,文書作成能力が基本的に重要な能力になります。

 文書とは,一定の媒体の上に,一定の符合を用いてする,人の人に対する意思の表示です(注1)。一定の表記法に従い,簡易明瞭な書き表し方をしなければ,その意思表示は明確に相手に伝わりません。文書によって的確に意思が相手に伝わり,理解され,説得力を持ってこそ,そこに文書表現の強みがあります。

 これからの法律実務家(注2)には,法的知識を基に,創造的思考力を駆使し,説得力ある有為な表現力・交渉力・行動力等を発揮することが求められます。
 そこで基本的に大事なことは何かといえば,表現力,とりわけ,誰にでも明確に意思が伝わる,達意簡明な文書を書く力,表記法に則って的確な文章が書ける力が重要になります(注3)。それなくして他者に対する説得力,交渉力も生まれません。Web法科塾の中に「リーガル・ライティング」の項を設けているのも,一つは,そうした理由からです。

 的確な説得力ある文章を作成するためには,まずもって,一定の表記法,文書表記に関する統一的な約束事に従うことです(注4)。ここに,「文書作成の要領と技術」として,参考とすべき「公文書作成の要領」等の内閣の告示・通知集をまとめてみました。→「公用文作成要領」を見る

 ある最高裁裁判官が,かつて,ある弁護士会会報において,事務局,裁判部の文書(弁護士の文書も含む)に誤字,脱字,送り仮名の誤り等のケヤレス・ミスが多いことを嘆かれ,次のように述べておられました。
 「ミスの多い文章を読ませる人は,他人に対する思いやりの乏しい人と評されてもやむをえないであろう。」,「私が誤字等を指摘するのに対し,・・(略)「字を知らないわけではないし,大きなことはきちんとしているから,そんな小さなことは大した問題ではない」と言わんばかりである。気の弱い私は,声には出さず,「小さいこともきちんとやれずに,大きいことがちゃんとできるもんか」と心の中で呟いている。他人の文章も自分の文章も,もっと大切に取り扱ってほしいとの思いを強くする昨今である。」(「自・他の文章をもっと大切に」)と。

 上記の話を思い出しては,自戒としております。


(注1) 大判明治43.12.20大審院刑事判決録16輯1572頁
   「文書トハ文字若クハ之レニ代ル可キ符号ヲ用ヒ永続スヘキ状態ニ於テ或物体ノ上ニ記載シタル意思表示ヲ云フモノニシテ法律上其物体ノ種類ニ制限ナキヲ以テ・・・」
(注2) 法務省:「新司法試験において選抜すべき法曹像」についての意見等の整理参照)
(注3) 「訴訟書類は、簡潔な文章で整然かつ明瞭に記載しなければならない。」(民訴規則5条
(注4) 小林啓二裁判官(2000年4月当時仙台高裁判事)「判決文の作成について」(判例タイムズ1021号6頁)



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