| バイオスティミュラント(Bio Stimulants:生物刺激資材)の開発は、ドイツのバイエルやBASFなどの農薬メーカーの参入が相次ぎ世界的な競争になっているが、日本でも活発化している。日本では、農水省が2021年5月に策定した新たな戦略「みどりの食料システム戦略」の中で取り上げ、急速に脚光を浴びることとなった。そこでは「バイオスティミュラント(植物のストレス耐性等を高める技術)を活用した革新的作物保護技術の開発」が戦略化されている。
2018年1月、雪印種苗など農業資材などを扱うメーカー8社によってバイオスティミュラント協議会が設立された。住友化学、シンジェンタジャパン、日本曹達、保土谷化学などの農薬メーカーが加わり、協議会の正会員は36社(2025年10月22日現在)に増えた。協議会では、この分野の市場規模は2032年に約1.6兆円(年平均成長率11.4%)になると見込んでいる。
農水省は2025年5月30日、消費・安全局名で、バイオスティミュラントに関する表示等の指針を策定、公表し、業界を後押しした。それに合わせ、バイオスティミュラント協議会も、そのガイドラインに沿った自主管理基準を発表している。
バイオスティミュラントは、土壌に施すことで農作物や土壌がもともと持つ機能を補助する資材で、栄養成分の取り込みや利用効率を上げ、乾燥や高温、塩害などに対して抵抗力をもたらし、農作物の品質や収量を向上させるものである。日本では以前から、米ぬかや油かすなどの有機物を微生物に発酵や分解させた「ぼかし肥料」が使われていた。従来はこれに近いものであった。
しかし、大手農薬企業の参入で異なったものに変わりつつある。原料に海藻、動植物抽出物、微生物やビタミンなどを用いるが、今後は効率を上げるために、遺伝子組み換えやゲノム編集などのバイオテクノロジーの応用が進むとみられているからだ。さらには商品化する際に、農薬や肥料などの成分を含んだ、ハイブリッドの製品が増えていくとみられている。
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