「ダウントン・アビー」に学ぶ英語表現 第1話

make a differnce

重要である。違いを生じる。影響がある。

Woman at the post office: Don't be stupid. None of them will be up for hours and what difference will it make?

郵便局の女性:馬鹿言わないで。(お屋敷の)誰もあと数時間は起きてこないわ。(今行ったって、普段の時間に配達に行っても)大して違いはないわ。

What difference will it make? は逐語訳すると「それは何かの違いを作りますか」になる。「どんな違いがあるっていうの?」ということだから、反語表現に取れば「全然違わない」「どちらも変わりはない」となる。

It makes no difference. や It doesn't make any difference. も「違いは全くない」ということだから「関係ない」や「重要じゃない」と訳されることがある。

It makes no difference where you are from. あなたがどこの出身であるかは関係ない[重要でない]
 (井上永幸・赤野一郎編集『ウィズダム英和辞典第3版』三省堂)
 where や whether などの間接疑問の節が続くこともある。it は形式主語で後ろの節が真主語であると考えられる。

また、会話で“What's the difference?”「どこが違うと言うの?」「大して違わないわ」というのもよく使われる。

There's no sign of someone

Thomas: Any sign of William?
      One of the maids: No.

トーマス:ウィリアムを見なかったか?
メイドの一人:いいえ、見なかったわ。

sign は「標識」「看板」「しるし」「形跡」「身ぶり」「兆し」と当てる訳語に迷う語のひとつ。

sign of someone で「誰かの形跡」となる。「人物がいるのか、いないのか」「その人物の存在」「その人物の居所」などの話に使われる。ここでは完全文ではないが「ウィリアムの形跡が何かなかったか」→「ウィリアムを見なかったか」となる。

I waited for two hours but there was still no sign of her.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
 「私は2時間待った。しかし彼女は依然として現れなかった」

高圧的な表現

William: I'm not late, am I?
Thomas: You're late when I say you're late.

ウィリアム:僕、遅れてないだろ?
トーマス:俺が遅れていると言ったら、遅れてるんだ。

トーマスの言葉の逐語訳は「私があなたが遅れているというときには、あなたは遅れている」。つまり善悪の判断は、全てトーマスが持っていることを宣言している。一種のパワハラだ。

sooner or later

Anna: Why didn't you put the lights on?
Daisy: I daren't.
Gwen: Well, it's electricity, not the devil's handiwork. You'll have to get used to it sooner or later.

アンナ:どうして電灯を点けなかったの?
デイジー:怖かったのよ。
グウェン:えー、ただの電気よ。悪魔の仕業じゃないのよ。どのみち慣れてもらわなくちゃならないわ。

put on something や put something on で、「(電灯などを)点ける」「(衣服などを)身に着ける」。dare は「勇敢にも〜する」だが、多くは否定文で使われ「〜する勇気がない」「思い切っては〜できない」。助動詞と動詞の使い方がある。

get used to something は「何かに慣れる」。get が be になると「何かに慣れている」。to は不定詞の to ではなく、前置詞。動詞を後ろに置くときは動名詞にする。

I'm not used to eating so much at lunchtime.

  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 8th edition”)
  (“Oxford ADVANCED AMERICAN Dictionary: For Learners of English”)
 このころは電気が発明されて徐々に広まってきている状況。ダウントン・アビーのお屋敷には、自家発電機がある模様。電線は、まだそこまで引かれていないのだろう。村から離れているためか、村にも電線が引かれていないかは不明。

sooner or later は「より早くか、より遅く」なので「早かれ遅かれ」「遅かれ早かれ」。後ろの方をよく聞くか。「どのみち」「いずれにしても」と訳されることもある。

諸行無常

Thomas: Is it really true?
William: Afraid so.
Mrs Patmore: Nothing in life is sure.

トーマス:それは(本当に)本当なのか。
ウィリアム:残念ながらそう思うよ。
パットモア:人生において、確かなことなんて何もないのさ。

I'm afraid.... などで I think.... と同じように使われる。be afraid は好ましくないことや残念な結果を告げるときなどに使われる。今回は、タイタニックが沈没したという事実が it や so で表されている。

be supposed to-infinitive

Lady Edith: I thought it was supposed to be unsinkable.
Robert, Earl of Grantham: Every mountain is unclimbable until someone climbs it, so every ship is unsinkable until it sinks.

イーディス:それは沈まないとされていると思いましたわ。
ロバート:どんな山でも、誰かが登るまでは登ることができないのだ。同じように全ての船が、沈むまでは沈まないのだ。

“S supposes O to do something”で「SはOが〜すると思う」という意味になる。“S supposes O to be C”ならば「SはOがCだと思う」という意味になる。これを受動態にしてOを主語にすると、“O is supposed to do something”,“O is supposed to be C”となる。「〜するものと考えられている」「〜であると思われている」という意味になるのは理解できる。

“un動詞able”が2つ出てきている。unsinkable と unclimbable である。un は not のこと、able は「できる」という形容詞。“un動詞able”で「動詞できない」という意味になる。「沈むことができない」「沈む可能性がない」→「沈まない」。「登ることができない」→「登れない」。

真っ青だった

Miss O'Brien: Her Ladyship was the colour of this cloth.

伯爵夫人はこの布の色だった。→ 伯爵夫人の顔は真っ青だった。

this cloth「この布」は、「白いシーツ」だった。イギリス英語では color は colour とつづる。

ジョン・シルバー

Thomas: I can't believe I've been passed over for Long John Silver.

ロング・ジョン・シルバーのために昇進の対象から外されたとは、私は信じることはできない。→ 片足の海賊に昇進を横取りされたなんてお笑い草だ。

Long John Silver は、スティーブンソンの『宝島』に登場する海賊船の操舵員。右足を失っていて松葉づえをついている。背が高いので Long の形容が付く。悪役だが魅力的な人物として描かれている。運動神経は敏捷で、常人と同じように行動できる。

tongue-tied

Mr Carson: If you find yourself tongue-tied in the presence of His Lordship, I can only assure you that his manners and grace will soon help you to perform your duties to the best of your ability.

もし君が、伯爵閣下の前で、あなた自身の舌がしっかりと結びつけられているのを見つけても、私はあなたにこの事だけは保証できる。閣下の態度と優しさは、すぐに君を助けて、君の能力の最善まで、君の義務を果たさせることを。→ 君が閣下の前で緊張して何も話せないとしても、閣下のお人柄と優しさに触れれば、すぐに力を発揮できるようになると保証するよ。

tongue-tied は「舌が結びつけられて」→「舌が動かなくなる」→「舌がもつれる」→「しどろもどろになる」

There are worse professions.

George Murray: His special field is company law. His mother is alive and he lives with her, his father obviously is not; he was a doctor.
Robert, Earl of Grantham: I know. It does seem odd that my third cousin should be a doctor.
George Murray: There are worse professions.
Robert, Earl of Grantham: Indeed.

マーレイ:彼の特別分野は会社法です。彼の母親は存命です。彼は母親と暮らしています。彼の父親は明らかに生きていません。父親は医者でした。
グランサム伯爵:知っている。私の三番目のいとこが医者だったとは、本当におかしな感じだ。
マーレイ:もっと悪い職業もいくつかあります。→悪くない職業です。
グランサム伯爵:確かに。

first cousin は「いとこ」。second cousin は「またいとこ」「はとこ」。third sousin は「みいとこ」「そのまたいとこ」「またまたいとこ」。

more than one way to skin a cat

Thomas: Can't get rid of him just (b)cause he talks behind our backs.
Miss O'Brien: There's more than one way to skin a cat.

トーマス:僕たちの背中で彼は話しているからと言うだけでは、彼を取り除くことはできない。→僕たちの陰口をたたいているという理由だけでは彼を追い出せないよ。
オブライエン:猫の皮を剥ぐための方法は、1つよりもたくさんある。→ 彼を追い出す方法は他にもあるわ。

get rid of something は「〜を取り除く」。just because...は「……という理由だけでは」。behind one's back は「陰で」「人のいないところで」。

more than one way to skin a cat は「別の方法がある」ということで「簡単にあきらめるな」と伝えたいときに使う。19世紀中ごろから合衆国で使われ始めた。イギリスにも入ったのだろうが、オリジナルはイギリスの“There are more ways of killing a cat than choking it with cream.”であったとか。

時間ができれば追加する。
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