実務の友   裁判文書表記法
(注)1 裁判所の文書のうち司法行政文書は公用文作成の要領に準拠していますが,裁判文書は,それに準拠しつつも,必ずしもこれに拘束されず,専門的な概念の言葉遣いや独自の表記,慣用的な表記が多く認められています。
2 この資料は,法律文書起案の参考用に,日本語の表記法,公文書の書き方等に関する文献,裁判所の文書についての公開資料,公開の判決書,判例検索システムの判例等の表記法に基づいて,独自に「横書き書法」をまとめたものです。文責は,すべて,このサイトの管理者にあります。
資料
裁判文書の標準的書式
2008.07.13
 
  問題となる表記 望ましい(許容される)表記 備  考 参考
  裁判文書の書式設定 A4版使用,横書き,左綴じ 文字の大きさ12ポイント,1行37字・1ページ26行,余白幅(上端35o,下端27o,左側30o,右端15〜20o)
  項目の細別 「第1 → 1 → (1) → ア → (ア) → a → (a)」の順 公用文作成の要領に準拠する。
  句読点 裁判所では,句点に「。」(マル),読点に「,」(コンマ)を用いる。 句点に「.」,読点に「、」(テン)は使用しない。
参照:テンでばらばらな句読点
  (金額)
547万320円
 5,470,320円
547万0320円 547万320円,547万0,320円とは書かない。「万」の字が位取りの役割をする。全角数字を用いる。参照:数字の表記を考える
表中の金額は,半角で3桁の位取りがあってもよい。
  (時間)
午後零時15分
午後0時15分,午後零時15分 算用数字で表記する場合は通常「0時」にするが,「零時」でもよい。判例では「0時」の使用が多くなっている。
  (小数点)
2・064
2.064 ピリオド(.)を使用し,全角数字で書く。中点(なかてん「・」)は使用しない。
  3ヶ月 3か月,3箇月 「ヶ」は,「箇」の竹冠の一部を簡略記載したもので,使用しない。
  一つ,二つ 1つ,2つ 漢字で書くのが本則であるが,最高裁判決では,「1つ」,「2つ」などの使用例が見られる。
  (概数)
二,三回  数十人
2,3回  数10人 漢字で書くのが本則であるが,最高裁判決では,「2,3回」,「2,3日間」などの使用例が見られる。高裁判決では「数10人」と記載している例もある。
  (住所)
石川県金沢市○○二丁目
地方裁判所本庁所在地の都市,政令指定都市は,都道府県名の記載は不要。 (東京都は記載する)  
  3丁目 三丁目 住居表示に関する法律」に基づき,市区内の住所は,町名,街区符号,住居番号で表示される。「三丁目」は,町名の一部になるので,原則として,漢数字で表記する。「3丁目」と表記する扱いも多い。  
  (法令の条文)
民法第94条第2項,民法第398条の2第2項
民法94条2項,民法398条の2第2項 法令の序数には「第」を付けるが,判決文等では読みやすくするため省略している。ただし,枝番が付いた場合には,「第」を入れている。  
  送り仮名の付け方 「取り扱う」「取扱い」のように送り仮名を送るのが通例であるが,名詞形では送り仮名を送らないで「取組」のように書く慣用例もあるので注意。 名詞形に送り仮名を送らない慣用例として,数は少ないが,他に,「受取」,「支払」のように書く例もある。
あくまで 飽くまで  最高裁判例では,漢字表記となっている。  
  予め あらかじめ    
  明渡す。明け渡し,明渡し請求 明け渡す。明渡し,明渡請求    
如何なる いかなる 「如何なる範囲」などと書く例もある。
  如何 いかん 「如何」と書く例もある。「本人の意思や努力の如何に関わりなく存在する」
  以上,以下,未満,超える 「以上」,「以下」は,その数値を含む。
「未満」,「超える」は,その数値を含まない。
「以上」,「以下」は,その数値を「以て」上又は下を意味する。「未満」は「未だ満たさず」の意味で,その数値を含まない。
  以前,以後,前,後 「以前」,「以後」は,その数値を含む。
「前」,「後」は,その数値を含まない。
上記「以上」等の説明参照 
  一審判決,第一審裁判所 1審判決,第1審裁判所 最高裁の「第一小法廷」等の法廷の呼称は,固有名詞として漢数字を使用。順番を表す場合は,算用数字を使用。  
  一旦 いったん 「一旦」と,漢字で書く場合もある。 
  未だ いまだ 「未だ」を使用している例もある。 
伺われる 窺われる (例)○○したことが窺われる(様子を見る,推察する意味で使われる。)。
 拝聴,訪問の意味の場合は,「伺う」。
 
倒産の恐れ 倒産のおそれ 漢字は,「恐れ」でなく「虞」  
  および 及び 「おって,かつ,したがって,ただし,ついては,ところが,ところで,また,ゆえに,」の接続詞は仮名で書く。
「及び,並びに,又は,若しくは」の4語は,原則として,漢字で書く。
 
  「及び」と「並びに」の使い分け 大きいグループの並列的接続に「並びに」,中の小さい並列的接続に「及び」を用いる。 「憲法14条1項及び81条並びに国籍法の解釈」のように書く。
(a及びb)並びに(c及びd)
並列的接続が1段階の場合は,「a,b及びc」と書く。
 
・・・するが,・・・したが,・・ 一文で「が」の繰返しは避ける。    
  貸付ける。貸し付け,貸付け契約 貸し付ける。貸付け,貸付契約    
  かならず 必ず 平成22年改訂常用漢字表  
繰返し,繰返す 繰り返し,繰り返す    
コンピューター,プリンター コンピュータ,プリンタ IT技術関係では末尾を伸ばさない扱いであるが,判例では両方の使用例がある。   
さまざまな 様々な    
さらに さらに(接続詞)
更に(副詞)
「さらに,Aに対し,」(接続詞)
「更に検討すると・・」(副詞)
 
しがたい し難い 「許し難い」,「賛成し難い」などと使われる。   
  従って, したがって, 「および」の項参照   
  支払う。支払い,分割払い,支払い期日 支払う。支払,分割払,支払期日 名詞形に,送り仮名「い」を送らない。  
すべて 全て 平成22年改訂常用漢字表 
  に過ぎない。 にすぎない。 「過ぎない」を許容している例もある。 
但し, ただし, 「および」の項参照   
  但書 ただし書 「なお書き」,「おって書き」は,「き」を送る。  
  たとえば, 例えば, 平成22年改訂常用漢字表  
  だれ 「誰もが願う」,「当該行為をする者が誰であるのかは」などと使用することも多い。  
読点(テン)の打ち方(原則としてテンを打つ場合) ・・したとき  ・・したので  ・・したから
原則として 例えば
・・に限り この場合において
・・とともに ・・この限りでない。
・・も同様とする。
・左のような表記では,必ず読点(テン)を打つ。
・主語の後,条件句の前後には読点を付す。
・かつ,ただしの前後には読点を付すのを原則とする。
・「・・で」「・・であって」の後にも読点を付す。
 
 
「・・の時,」
「・・のとき,」
「時」は時点を示し,「とき」は場合を示す。 →参照:「場合」と「とき」の使い分け   
尚, なお,    
  ないし 「・・から・・まで」と書く。 「1月ないし6月の間」 →「1月から6月までの間」と書く。表中では「1月〜6月」の表記も可  
ならびに 並びに 「及び」と「並びに」の使い分け参照  
はじめて 初めて 平成22年改訂常用漢字表  
  はなはだ 甚だ 平成22年改訂常用漢字表 
  「場合」と「とき」の使い分け 大きい条件に「場合」,小さい条件に「とき」を用いる。 「・・の場合で,・・のとき,」のように書く。 
  パーセント パーセント,% 近年,「%」の表記も出ている。 
一人で,二人で 1人で,2人で 「1人で出かけた」,「鍵を2人で所持し」などと表記する場合もある。 
附せん,附則,附属,附帯,寄附,附置 左の6語のみ「附」を用いる。   
または 又は 「負傷又は疾病により」などと書く。「および」の項参照
接続詞の「また,」は,仮名で書く。例:「また,○○については,〜」。
 
  「又は」と「若しくは」の使い分け 大きいグループの選択的接続に「及び」,中の小さい選択的接続に「若しくは」を用いる。 「本件海岸の使用若しくは収益又は占用の許否の基準」,「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 」(刑法208条・暴行罪)などのように書く。
(a若しくはb)又は(c若しくはd)
選択的接続が1段階の場合は,「a,b又はc」と書く。
 
  稀ではない まれではない 「稀」を使用する例もある。  
メートル メートル,m 文中に「m」の表記も可 
申立てる。申立,申立て書 申し立てる。申立て,申立書    
  もしくは 若しくは 「又は」と「若しくは」の使い分け参照  
  して貰う。 してもらう。    
  もっぱら 専ら 平成22年改訂常用漢字表  
喧しい やかましい    
埒外 らち外 例「法原則のらち外にある」
  乱用 濫用   例:権利の濫用  
略称の書き方 ・・(以下「貸金業法」という。)  ・・(以下,単に「利息の制限額」という。)   「以下」の次の文が短い場合は,読点「,」はなくてもよい。長い場合は,「,」を付す。
  リンクを貼る リンクを張る  
割り当てる。割り当て,割り当て額 割り当てる。割当て,割当額    
  割引く。割引き,割引き手形 割り引く。割引,割引手形 「割引」の「き」は送らない慣用扱い。→比較:「割当て」  
最高裁民事判例の
よくある論理の展開表現
(1) 法○条の趣旨は,・・と解せられる。そうすると,・・と解するのが相当である。
(2) 前記事実関係によれば,・・が明らかである。そうすると,本件××は・・と言わざるを得ない。
(3) したがって,○○は,・・すべきである。
(4) よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判断する。
 

参考資料
 ・ 文化庁・国語施策情報,国語表記の基準
 ・ フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「公用文作成の要領」
 ・ ISOZAKI YOUSUKE氏「公用文の書き方」(柏谷研究室・ハンドアウト)
 ・ 「司法行政文書の書き方」(司法協会)
 ・ Web裁判所の判例検索システム所収の各判例の表記
 ・ 裁判文書A4判化書式(日本弁護士会連合会)
 ・ 法学・法令用語の読み方書き方(RONの六法全書 on LINE)
 ・ 田中豊著「法律文書作成の基本」(日本評論社・2011年)
 ・ 法制執務研究会/編「新訂 ワークブック法制執務」(ぎょうせい・2007年)
 ・ 「有斐閣 法律用語辞典」第3版(有斐閣・2006年)
 ・ 田島信成著「最新 法令用語の基礎知識」三訂版(ぎょうせい・2005年)
 ・ 法曹会新書「似たもの法律用語のちがい」(法曹会)
 ・ 木下是雄著「理科系の作文技術」(中公新書)
 ・ 本多勝一著「日本語の作文技術」(朝日文庫)
 ・ 清水幾多郎著「論文の書き方」(岩波新書)
 ・ 法令における送り仮名 , 法令における漢字使用  (法制執務コラム集
 ・ 講談社校閲局編「日本語の正しい表記と用語の辞典」第2版(講談社・2001年)
 ・ ものの数え方(助数詞)(みんなの知識・ちょっと便利帳)
 ・ YAHOO!JAPAN 辞書(国語辞典外)







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