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逸失利益の現在価額を算定するための方式
交通事故等による逸失利益計算の実務・最高裁判例・参考文献 【→読む】
実務ソフト「Jの窓・逸失利益計算ソフト」で計算ができる 【→解説】
2002.03.04〜2004.04.29
 1 逸失利益の現在価額を算定するための方式
     (1)一般的な計算方法
     (2)具体的な計算方法
     (3)係数の利用
     (4)近年の実務変化
     (5)コンピュータの活用
 2 係数表で参考となる資料


1 逸失利益の現在価額を算定するための方式

(1) 一般的な計算方法
 将来生ずるであろう利益についての損害賠償を,今,一時金の形で請求する場合,その現在額を算定するには,その利益が生ずるであろう時までの中間利息を控除しなければなりません。
 この中間利息を控除する方法には,単利で計算するホフマン式計算法と,複利で計算するライプニッツ式計算法とがあります。

 将来得る利益の額をA,その利益が生じるまでの期間をn,利率をr,現在価額(手取額)をXとすると,
  ホフマン式計算法の場合は,次の算式により計算します。
      X = A/(1+nr)
  ライプニッツ式計算法の場合は,次の算式により計算します。
      X = A/(1+r)^n  (^nはn乗であることを示す。)


(2) 具体的な計算方法
 例えば,毎年200万円の利益(収入)が15年間生じるときの計算方法は,1年ごとの計算結果を加算して,次のようになります(ただし,年利5%の場合で計算)。

 ホフマン式計算法では,
      X = 2000000/(1+1×0.05) + 2000000/(1+2×0.05)
        + 2000000/(1+3×0.05) + 2000000/(1+4×0.05)・・・・
        + 2000000/(1+15×0.05)=2196万1670円
 ライプニッツ式計算法では,
      X = 2000000/(1+0.05)^1 + 2000000/(1+0.05)^2
        + 2000000/(1+0.05)^3 + 2000000/(1+0.05)^4・・・・
        + 2000000/(1+0.05)^15=2075万9316円
 のとおり求められます。


(3) 係数の利用
 ところが,これでは,計算が煩雑になるので,年数に応じた係数をあらかじめ算出しておき,この係数を乗じて中間利息控除後の金額を簡単に算出するようにしています。この係数をホフマン式計算法ではホフマン係数,ライプニッツ式計算法ではライプニッツ係数と呼んでいます。
 しかし,この係数の算出は実際上容易ではなく,通常は,あらかじめ年数,年利率に応じて算出した係数一覧表を用意し,又は参照して,該当する係数を拾い出して計算しているのが実情です。

 上記の例でいえば,年利率5%で計算した各係数表において,年数15年の欄から該当する各係数値を拾い出し(ホフマン係数表では10.98083524,ライプニッツ係数表では10.37965804),これにより計算すると,
 ホフマン式計算法では,
      X = 2000000×ホフマン係数(10.98083524)=2196万1670円
 ライプニッツ式計算法では,
      X = 2000000×ライプニッツ係数(10.37965804)=2075万9316円
 となります。
 ホフマン係数とライプニッツ係数の間では約0.6くらいの差があり,算出金額に約120万円強の違いが生じますが,これを年数30年で計算すると,ホフマン係数は18.02931362,ライプニッツ係数は15.37245103で,差は大きく広がります。年数が増えるほど,受け取る側としては,ホフマン係数を適用した方が断然有利となります。


(4) 近年の実務変化
 これまで,裁判実務では,交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法として,ホフマン方式によるか,ライプニッツ方式によるか,必ずしも統一されていませんでした。
 しかし,近年,特段の事情のない限り,年5%の割合によるライプニッツ方式を採用する方向で,統一化の動きがあります(「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(判例タイムズ1014号(2000年1月1日号)62頁,判例時報1692号162頁等参照)。

 共同提言の中心部分の抜粋は,次のとおりです。
4 共同提言の骨子
 交通事故による逸失利益の算定において、原則として、幼児、生徒、学生の場合、専業主婦の場合、及び、比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする。
 交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情のない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する。
 上記のA及びBによる運用は、特段の事情のない限り、交通事故の発生時点や提訴時点の前後を問わず、平成12年1月1日以降に口頭弁論を終結した事件ついて、同日から実施する。
5 共同提言の運用
 なお、この共同提言の内容が、各裁判官の個々の事件における判断内容を拘束するものではないことは当然のことである。
 なお,従来ほぼ一般的な基準とされてきた年5%の利率設定について,これより低い利率を相当とする下級審判例も現れていましたが,平成17年の次の最高裁判例により,現在,実務的には統一が図られています。
  最三小判平成17.6.14平成16年(受)1888号損害賠償請求事件
【判決要旨】
   損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならない。


(5) コンピュータの活用
 しかし,いずれにしろ,この各係数は,コンピュータを使えば,係数表を指さし確認しながら数値を拾い出すことなく,いともたやすく,計算により求めることができます。
 「実務の友」では,その一例として,独自に上記の算式をプログラム化して計算ソフトを作製し,年利率と年数を指定しさえすれば,瞬時に係数を算出し,さらに逸失利益を算出できるようにしています。
 このソフトでは,年利率1〜5%に自由に設定でき,これによりホフマン係数,ライプニッツ係数のいずれでも瞬時に係数値を自動算出し,年齢と基本年収額,生活費控除率(労働能力喪失率)を入力すれば,たちどころに逸失利益を自動計算し,その結果を入力値と算式の説明付きで表示するようにしています。判決書や準備書面の記載にそのままコピーして使えるので,逸失利益の計算事務は,大幅に能率化されます。これがコンピュータ活用のメリットです。


2 係数表,計算方法等で参考となる資料
(1) 千種達夫「中間利息の控除と余命年数−ホフマン式計算表と生命表−」ジュリスト431号230頁
(2) 佐藤信吉(横浜国立大学教授)「逸失利益の現在価額を算定するための諸方式」判例タイムズ268号41頁以下
   @ 法定利率による単利現価表(5%のとき)
   A 法定利率による単利年金現価表(5%のとき)
   B 法定利率による単利年金現価表(5/12%のとき)
   C 法定利率による複利現価表
   D 法定利率による複利年金現価表
   E 修正年金現価表
(3) 佐藤信吉「ライプニッツ方式による年金的損害額の現在価額の計算法」判例時報619号16頁
    法定利率による複利年金現価表
    法定利率による複利現価表
(4) 佐藤信吉「物質的損害賠償額算定の新しい方法」ジュリスト363号(1967年2月)56頁
(5) 最高裁事務総局民事裁判資料第162号「訴額算定に関する参考資料」(昭和60年10月)11〜14頁
   第1表 ホフマン係数(年別)   法定利率による単価現価表
                        法定利率による単価年金現価表
        ホフマン係数(月別)
   第2表 ライプニッツ係数(年別) 法定利率による複利現価表
                        法定利率による複利年金現価表
 (同内容「訴額算定に関する参考資料」法曹会昭和63年3月発行)
(6) 篠原弘志(日本大学教授)「人身侵害の損害賠償ー逸失純収益の現在価額算定法を中心にー」判例時報652号113頁
(7) 編集代表倉田卓次・宮原守男「交通事故損害賠償必携」(平成9年11月版)資料編・資料6−19「ライプニッツ方式計算係数表」
(8) 加賀山茂・竹内尚寿「逸失利益の算定における中間利息控除方式の問題点について」(判例タイムズ714号17頁)
(9) ライプニッツ式,ホフマン式計算方法については,
  【最高裁2小判昭和53.10.20民集32.7.1500】の判例解説民事篇昭和53年度496頁以下〔37〕の解説に詳しい。




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