「実務の友」資料
実務の友
住宅ローン計算も分かる
利息計算,債務返済方法の算式


(1) 5/100の 「/」 は「÷」の計算符号を,文字右肩の小さな文字は計算上の「べき乗」を示します。
(2) 【1行数式】とある部分をコピー&ペーストしてGoogle 電卓機能を利用(Google検索)すれば,計算結果を確認できます。
2002.1 - 2011.7 Ver.3


1 利息

 (1) 利息の意義
 利息は,「元本の使用の対価」。
 元本の存続期間に応じ日割をもって計算される(民法88条2項,89条2項)。

(天然果実及び法定果実)
第88条  物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
2  物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

(果実の帰属)
第89条  天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
2  法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。


 (2) 利息の表示方法
 利息は,元本に対する割合(利率)で定められる。
 利率の定め方としては,日歩,月利,年利がある。

 日歩は,100円に対する1日の利息の割合を示す。
 日歩何銭という形で示される。
 100円に対し1日当たり何銭の割合による利息を払うかを意味する。
 月利は,1月当たりの利息を意味し,年利は,1年当たりの利息を意味する。
 年利を月利に換算する場合には,年利を12で割って算出する。

(注) 1968年金融制度調査会の「金利および金融機関の規模に関する中間報告」を契機に,公定歩合,貸出金利等が順次年利建方式に移行。
 現在,わが国の主要金利は年利建表示が原則になっている。


 (3) 利率の換算
 年利7.3%の場合
   日歩に換算  7.3%÷365=0.02%(日歩2銭)
   月利に換算  7.3%÷12=0.6%
 日歩30銭の場合
   年利に換算  30銭×365/100 = 109.5(%)


 (4) 利息の計算方法
 利息の計算方法上の重要な区分としては,単利と複利がある。

 単利は,元金に対してのみ利息を支払うもの
 複利は,一定期ごとに利息を元金に繰り入れ,元利合計に対し利息を支払う
ものである。

 いずれにしろ,(1)元金,(2)利率,(3)貸借期間が計算の3要素であり,こ
れが分かれば計算ができる。
 基本的に,利息は,「元金 × 利率 × 利用期間」で算出される。

 いま,元金をA,年利をr%,貸借期間をn年とすると,
  n年後に受け取ることのできる元利合計Sは,

   単利の場合    S=A(1+nr)
   複利の場合    S=A(1+r/2)2n
 となる(複利は,半年複利の場合)。

 消費者金融などでは,通常,単利が用いられ,利息を計算をするときには,
年利率で年に満たない期間(平年)の場合,一般に日割計算で,
    元金 × 年利率 ÷ 365 × 利用期間(日数)
の算式により利息が計算される。


   利息計算機・日歩年利換算機
   単利・複利計算比較


2 利息の法的規制

利率は,利息制限法(1条1項)により,次のとおり制限されている。
  (1)元本が10万円未満の場合    年20%
  (2)元本が10万円以上100万円未満の場合  年18%
  (3)元本が100万円以上の場合   年15%

(注) 賠償額の予定(遅延損害金)は,利息の1.46倍まで(4条1項)
 所定利率を超過する部分は民事上無効である。

 以前は,貸金業の規制に関する法律(43条)により,
登録した貸金業者が所定の契約書面,受取証書を交付するなど一定の要件を充足 するときは,年29.2%(2月29日を含む1年の場合は,29.28%)ま での利息の収受も有効とされていた。
 なお,平成18年12月13日成立の「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」 (同年12月20日公布)により,利息制限法,貸金業法,出資法が改正され,「みなし弁済」制度 は廃止され,貸金業者の上限金利は20%に引下げられた(2010年(平成22年)6月18日施行)。

     
利率一覧表
     金銭消費貸借契約上の上限利率の推移一覧


3 利息の計算(単利の場合)


(1) 利息=元金×利率×期間


(2) 元利合計=元金×(1+利率×期間)


        元利合計−元金
(3) 利率=―――――――――
         元金×期間

(4) 割引手取額=元金×(1−利率×期間)


         元金−割引手取額
(5) 割引率=――――――――――
          元金×期間


4 残債務額の計算


 借受金の残債務は,次の計算式で算出する。

  残債務額=元金−(返済額−返済時までの期間に応じた利息)

 日割計算の場合

  残債務=元金−(返済額−元金×年利×日数/365)
     ただし,365は,平年の1年の日数。

 なお,期間の計算については,「片落とし」と「両端入れ」がある。
 「片落とし」は,貸付日から返済日までの貸借期間のうち,片方のみを日数として計算に入れるもの。
 「両端入れ」は,貸借期間の貸付日,返済日のいずれも日数として計算に入れるもの。
 両端入れは,貸借期間が短い場合,実行金利が大きく変化する。


5 返済方法の計算式

借受金の返済方式には,
  (1)元利均等返済方式
  (2)元金均等返済方式
  (3)アドオン方式
 の3つがある。

(1) 元利均等返済方式の場合
○ 元利均等返済方式とは,
  毎回の返済額(元金,利息の合計)を均等にした返済方式
 ローンで最も普及した返済方式。裁判所の調停では,
一般に,この返済方式が用いられている。

  【メリット】
    ・ 毎回の返済額が一定で,返済計画が立てやすい。
    ・ 返済するにつれ,元本が増加,利息減少。      
    ・ 元金均等返済に比し,当初返済額が少なくて済む。
  【デメリット】
    ・ 元金均等返済に比し,総返済額が多くなる。


 ア 毎回の返済額の算出

        借入金額×利率×(1+利率)返済回数
 毎回の返済額=――――――――――――――――――
            (1+利率)返済回数−1

     又は

              借入金額×利率
     毎回の返済額=―――――――――――――
            1−(1+利率)−返済回数

(注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。
   この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。

(例) 借入金1000万円,利率年3.0%,返済期間20年の場合の
   各月返済額

  1000万円× 3/100/12×(1+3/12/100)20×12
 =――――――――――――――――――――――=5万5459円
        (1+3/100/12)20×12−1

 【1行数式】:
 10000000*3/100/12*(1+3/12/100)^(20*12)/((1+3/100/12)^(20*12)-1)

 イ 支払利息の合計金額の算出

 支払利息の合計金額=(毎回の返済金額×返済回数)−借入金額

(例) 借入金1000万円,利率年3.0%,返済期間20年(月返済)の場合の 支払利息の合計金額

 利息合計金額=(5万5459円×20×12)−1000万円=331万0160円


【1行数式】: (55459*20*12)-10000000


 ウ 借入可能金額(元金)の算出

           1回の返済額×(1+利率)返済回数−1
    借入可能金額=――――――――――――――――――
              利率×(1+利率)返済回数

 (注) 毎月返済額の場合には,返済回数に月数を用いる。
     この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。

(例) 年間返済可能額150万円,利率年4.0%,返済期間25年の場合の借入可能金額

            150万円×(1+4/100)25−1
     借入可能金額=――――――――――――――― =2343万3119円
              4/100×(1+4/100)25

  【1行数式】:
      1500000*((1+4/100)^25-1)/(4/100*(1+4/100)^25)

 エ 返済限度額に応じた返済回数の算出

                  各回返済限度額
         log{―――――――――――――――}
               各回返済限度額−残元金×利率
    返済回数=――――――――――――――――――――
              log(1+利率)

(注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。
   この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。


(例) 残元金20万円,利率年5.0%,各回(月)返済限度額1万円の場合の返済回数

 log{1万円/(1万円−20万円×5/100/12)}
=――――――――――――――――――――=20.9回=21回
      log(1+5/100/12)

 【1行数式】:
   log(10000/(10000-200000*5/100/12))/log(1+5/100/12)

 オ 均等返済弁済途中での返済回数毎の借受残元金の算出

  n回後の  各回返済額−(1+利率)×(各回返済額−残元金×利率)
  借受残元金=――――――――――――――――――――――――――――
                      利率
  又は

    n回後の   各回返済額×{(1+利率)全回数−n −1}
    借受残元金=―――――――――――――――――――――
             利率×(1+利率)全回数−n

 (注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。
    この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。

(例) 残元金20万円,利率年5.0%,各回(月)返済限度額1万円の場合の
   返済10回後の残元金

   1万円−(1+5/100/12)10×(1万円−20万円×5/12/100)
 =――――――――――――――――――――――――――
            5/100/12
 = 10万6595円(小数点以下切捨て)

 【1行数式】:
 (10000-(1+0.05/12)^10*(10000-200000*0.05/12))/(0.05/12)


(2) 元金均等返済方式の場合
 ○ 元金均等返済返済方式とは,
   毎回の元金の返済額を均等にした返済方式

   【メリット】
     ・ 毎回確実に均一に元金部分が減少,これにつれ利息も逓減。
     ・ 元利均等返済に比し,総返済額が少なくてすむ。
   【デメリット】
     ・ 当初の返済額が多くなる。収入が多くないと借りにくい。

  ア 各回返済額の算出

           借入金額
     各回返済額=―――― ×{1+(返済回数−計算対象の回数+1)×利率}
           返済回数

       (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。

    (例) 借入金1000万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の第1回目の返済額

               1000万円
       第1回目の返済額=――――×{1+(20−1+1)×5/100}=100万円
                20

     【1行数式】: 10000000*(1+(20-1+1)*5/100)/20


  イ 支払利息の合計金額の算出

                借入金額  (返済回数+1)×返済回数
     支払利息の合計金額=――――― ×――――――――――――― ×利率
                返済回数         2

      (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。

   (例) 借入金1000万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の支払利息の
      合計金額

                1000万円 (20+1)×20
      支払利息の合計金額=――――×――――――× 5/100=525万円
                  20     2



     【1行数式】: 10000000/20*(20+1)*20/2*5/100


  ウ 借入可能金額(元金)の算出

             初回返済額×返済期間
     借入可能金額=―――――――――――
             1+利率×返済期間

       (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。

  (例) 初年度返済額100万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の借入可能額

              100万円×20
        借入可能額=――――――― =1000万円
              1+5/100×20

     【1行数式】: 1000000*20/(1+5/100*20)


(3) アドオン方式の場合
 ○ アドオン方式とは,
  毎回の返済額が一定で,しかも,利息計算の際,元本の減少を認めない方式
  割賦販売商品の代金返済,少額の消費者金融等に適用されている。

  【メリット】
    ・ 毎回の返済額が均一で,計算が簡単。返済計画が立てやすい。
  【デメリット】
    ・ 返済終了時点まで当初元本に対する利息を付すので,
     実質金利は高い。
    ・ 実質金利月利は,元利均等返済方式よる月利より,
     大体1.4〜1.9倍多いといわれている。


  ア 各回返済額の算出

            借入金額×(1+利率×返済期間)
     各回返済額=――――――――――――――――
                 返済回数

   (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。

   (例) 借入金10万円,利率年4.0%,返済期間10年の場合の各回返済額

              10万円×(1+4/100×10)
        各回返済額=―――――――――――― =1万4000円
                   10

     【1行数式】: 100000*(1+4/100*10)/10


  イ 支払利息の合計金額の算出
     支払利息の合計金額=借入金額×利率×返済期間

    (例) 借入金10万円,利率年4.0%,返済期間10年の場合の支払利息の合計金額
        支払利息の合計金額=10万円×4/100×10=4万円

     【1行数式】: 100000*4/100*10


  ウ アドオン方式の利率から元利均等返済方式の利率への変換式
    (実質利率を求める)


                  元利均等返済方式の利率       1 
    アドオン方式の利率=――――――――――――――――――― −――――
              1−(1+元利均等方式の利率)−返済回数  返済回数

(注) 左辺の値との近似値を右辺で探して,元利均等返済方式の利率を求める。
 アドオン月利0.85%以上になると,返済回数によっては法定利率を超える実質年利が発生する。

(注) 以上の計算式に出てくる「べき乗計算」や「log計算」は,一般的な電卓では計算ができません。
  関数電卓を使うか,パソコンで,表計算ソフト(EXCEL等)により関数の計算式を組んだり,専用ソフトを使ったりする必要があります。

     *元利均等返済方式又は元金均等返済方式による返済シミュレーション
       ローン返済計算
     *債務弁済協定の調停・和解のための簡単な計算と条項の作成
       快速起案文具・債務弁済条項作成ソフト




(参考文献)


( 1) 関玄「利息計算の手引き」銀行研修社(昭59-16刷)
( 2) 松本一夫「元利均等月賦弁済に関する理論計算とその応用」(書協会報79号P48)
( 3) 久保下和雄「ポケットコンピューターによる利息計算の実際」法曹No409P39(1984年)
( 4) 金子正治「調停上元利均等月賦弁済額及び残債務額の算出について」(書協会報86号P34,
   同87号P84)
( 5) 越谷簡裁調停委員佐藤志津外「電卓型パソコン・ポケコンの調停における活用の実態」
   (書協会報95号P112)
( 6) 河合政長「貸し金調停における弁済計画の計算」(書協会報95号P137)
( 7) 角川総一「金利・利息計算のすべてがわかる本」総合法令出版(1992-1995)
( 8) 目黒政明「90分でわかる金利・利回り計算」かんき出版(1996年10月)
( 9) KDS(金融データシステム)編著「金利計算マニュアル」近代セールス社(1997年16版)
(10) 杉田利雄「電卓で金利計算」オーエス出版社(1996-1999)
(11) 小向宏美「金利利息のしくみがわかる本」総合法令出版(1998年3月)
(12) 黒田暉「金利・利回りがわかる本」すばる舎(1999年2月)
(13) 鈴木雅光「はじめての金利・利回り計算」ぱる出版(1999年8月)
(14) 島崎純一「住宅ローンこうすればラクになる」実務教育出版(2000年8月)
(15) 山本公喜「あなたの住宅ローン見直せば必ず軽くなる本」主婦と生活社(2001年6月)
(16) 芳沢光雄「ビジネス数学入門」日経文庫・日本経済新聞社(2002年1月)





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