実務の友   建物明渡請求等に関する判例集
2003.9.5-最新更新日2006.08.10
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 敷金返還と原状回復特約に関する判例集    敷金返還等に関する判例集

索  引

■ 正当事由の斟酌事情 -----------------------------------------------------------
     1 最高裁二小判昭和25.2.14民集4巻2号29頁
     2 最高裁二小判昭和25.6.16民集4巻6号227頁
     3 最高裁二小判昭和26.9.14民集5巻10号565頁
     4 最高裁二小判昭和27.12.26民集6巻12号1338頁
     5 最高裁二小判昭和29.1.22民集8巻1号207頁
     6 最高裁三小判昭和30.6.7民集9巻7号865頁
     7 最高裁一小判昭和32.3.28民集11巻3号551頁
     8 最高裁三小判昭和36.11.7民集15竄P0号2425頁
     9 最高裁大判昭和37.6.6民集16巻7号1265頁
■ 正当事由の判断時期 ------------------------------------------------------------
    10 最高裁1小判昭和41.11.10民集20巻9号1712頁
■ 建物の朽廃・滅失と正当事由 -----------------------------------------------------
    11 最高裁三小判昭和32.12.3民集11巻13号2018頁
    12 最高裁二小判昭和33.10.17民集12巻14号3124頁
    13 最高裁三小判昭和35.4.26民集14竄U号1091頁
    14 最高裁一小判昭和42.6.22民集21巻6号1468頁
    15 最高裁二小判昭和43.12.20民集22巻13号3033頁
■ 立退料と正当事由の補完 --------------------------------------------------------
    16 最高裁二小判昭和38.3.1民集17巻2号290頁
    17 最高裁一小判昭和46.6.17裁判集民事103.135
    18 最高裁一小判昭和46.11.25民集25巻8号1343頁
    19 最高裁二小判平成3.3.22民集45巻3号293頁
    20 東京高裁判平成10.9.30判例時報1677号71頁
■ 立退料・増額の申出時期 ---------------------------------------------------------
    21 最高裁三小判平成6.10.25民集48巻7号1304頁

■ 契約解除 ---------------------------------------------------------------------
    22 最高裁3小判昭和31.6.26民集10巻6号730頁
    23 最高裁1小判昭和31.12.6民集10巻12号1527頁
    24 最高裁1小判昭和32.9.12民集11巻9号1510頁
    25 最高裁3小判昭和35.6.28民集14巻8号1547頁>
    26 最高裁3小判昭和39.7.28民集18巻6号1220頁
■ 特約の効力 -------------------------------------------------------------------
    27 最高裁1小判昭和41.4.21民集20巻4号720頁
    28 最高裁1小判昭和43.11.21民集22巻12号2726頁
    29 最高裁1小判昭和43.11.21民集22巻12号2741頁
    30 最高裁2小判昭和51.12.17民集30巻11号1036頁
■ 造作買取請求権 ---------------------------------------------------------------
    31 最高裁1小判昭和29.1.14民集8巻1号16頁
    32 最高裁1小判昭和29.3.11民集8巻3号672頁
    33 最高裁1小判昭和29.7.22民集8巻7号1425頁
    34 最高裁2小判昭和31.4.6民集10巻4号356頁
    35 最高裁3小判昭和33.10.14民集12巻14号3078頁



○ 借家法第1条ノ2にいわゆる「正当ノ事由」の有無の判断等
 1 最高裁二小判昭和25.2.14民集4巻2号29頁
(最高裁HP該当判例)
1 借家法第1条ノ2にいわゆる「正当ノ事由」の有無の判断
2 上記の「正当ノ事由」の有無を判断するに当り参酌すべき借家人側の一事情
3 6カ月の猶予期間を付さない家屋賃貸借契約の解約申入の効力
(判決要旨)
1 借家法第1条ノ2にいわゆる「正当ノ事由」の有無は,貸家人の事情だけでなく,借家人の事情をも考慮し,双方必要の程度を比較考慮して決しなければならない。
2 貸家人の解約申入後,借家人において他に家を捜す努力をせず,2カ年の日時を徒過した事実は,右の「正当ノ事由」の有無を判断するに当り,参酌すべき借家人側の一事情たり得る。
3 借家法第3条による解約の申入れは,必ずしも当初から6カ月の猶予期間を附さなくても,解約申入後6カ月を経過すれば,解約の効力を生ずる。
(判決理由抜粋)
1 「借家法第1條の2の規定は本来何等正当の理由がないのに,賃料値上げ其他家主の単なる私欲の為めに借家人の住居の安定が侵されることを防止する為めに設けられた規定である。例えば家賃値上げの請求に応じない借家人に対し賃貸借解除,明渡請求を以て脅かして家賃値上げを承諾せしめ又はそれでもなお値上げを承諾しない借家人に対しては解除明渡を強行して他に高賃料を以て賃貸せんとするが如きである。其故法文には「自ら使用することを必要とする場合其他」云々と書いてあって,当初は「自ら使用する」場合は絶対理由と解されて居たのである。しかし其後漸く住宅難が烈しくなるに従い「正当理由」は借家人の事情をも考慮し双方必要の程度を比較考慮して決しなければいけないと解されるに至り,住宅難の度が増すにつれ右の比較において漸次借家人の方に重さが加わり家主の請求が容易に認められなくなって来たけれども,立法本来の趣旨は前記の様なものである。其故本件において原審が認定した様な被上告人の明渡請求事由は被上告人の側だけについて考えれば正当の事由といい得べきこと勿論である。これに対して考えるべき上告人等側の事情は第一に住宅難であり,容易に移転し行くべき家が得られないということである。目下の住宅難は顕著な事実であるから其事は上告人において証明することを要しない。しかしそれだからといって絶対に住宅が得られないというわけではない。親戚,友人等の関係から案外容易に得られた例もないわけではない。其故前記の如く被上告人の側に一応正当の理由が存する以上上告人等の方でも互譲の精神を以て家を捜す努力ぐらいはしなければならない。いくら住宅難だからといってそれだけで捜しもしないでがんばっているのはいけない。十分努力して捜したけれども移転すべき家を見出し得なかったという事情であるならば,そのことと被上告人の明渡請求事由とを比較して見て或は上告人等の拒絶が正当と見られるに至るかも知れない。
2 (続き)「しかし原審の認定した処によると被上告人はともかく上告人等の移転すべき家を提供し今日なお空けてあるに拘わらず上告人等はこれに一顧も与えず,既に2カ年の日時を経過して居るのに其間家を捜す等の努力をした形跡は少しも認められないというのである。原審はこれ等の事実とも参酌した上,それでは被上告人の請求を拒絶し得ないものと認定したのであって此判定を違法とすることは出来ない。」
3 「(略)借家法第3条による解約の申入れは必ずしも当初から6カ月の猶予期間を附さなくても解約の効力を生ずるものと解すべきであり,(略)論旨は理由がない。」


○ 借家法第1条ノ2にいわゆる「正当の事由」
 2 最高裁二小判昭和25.6.16民集4巻6号227頁
(最高裁HP該当判例)
(判決理由抜粋)
 「借家法第1条ノ2に規定する建物賃貸借契約解約申入の「正当の事由」は賃貸借の当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し社会通念に照し妥当と認むべき理由をいうのであってもとより賃借人側の利害のみを考慮して判定すべきものではないことは言うまでもないところである。(略)  賃貸借解約申入の「正当の事由」を判断するに当事者の職業,風俗習慣,教養の差異も一の事情として斟酌され得るものである。」


○ 借家法第1条ノ2にいわゆる「正当の事由」
 3 最高裁二小判昭和26.9.14民集5巻10号565頁
(最高裁HP該当判例)
(判決理由抜粋)
 「借家法1条の2に規定する建物賃貸借解約申入の「正当事由」とは,賃貸借の当事者の双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し,社会通念に照し妥当と認むべき理由をいうのであって,所論のように特に賃借人側の利害のみを重視して判定すべきものではない。」


○ 現に賃借人居住中の家屋を買い受けた者の賃貸借解約申入が正当事由なしと判断すべき一事情
 4 最高裁二小判昭和27.12.26民集6巻12号1338頁
(最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 現に賃借人居住中の家屋を買い受けた者の賃貸借解約申入が正当事由なしと判断すべき一事情
(判決要旨)
 現に賃借人居住中の家屋を自ら使用する目的で買い受け賃貸借解約の申入をした場合には、その買受に際し賃借人につき家屋明渡の意思の有無を確めないのみならず、その後も賃借人に対し移転先の提供等家屋明渡後における住居の安定の保障について考慮を払つた形跡がないという事実は、右解約の申入につき正当事由がないと判断すべき一事情たり得る。
(判決理由抜粋)
 「原判決は上告人は本件家屋の買受に際し被上告人が右家屋に賃借居住中であることを知りながら被上告人について家屋明渡の意思があるか否かを全然確かめないのみならずその後現在に至るまで被上告人に対し移転先の提供等本件家屋明渡後における被上告人の住居の安定の保障について考慮を払った事跡は全然存しない事実を確定し右事実を本件解約申入につき正当事由の有無を判断する一事情としてその他の事実と共に考慮した上正当事由がないと判断したものであって,(略)論旨は理由がない。」


○ 賃借人の自己使用の必要と借家法第1条の2の「正当の理由」の有無
 5 最高裁二小判昭和29.1.22民集8巻1号207頁,判例解説民事篇昭和29年度15頁
(最高裁HP該当判例)
(判示事項)
 賃貸人の自己使用の必要と借家法第一条の二の「正当事由」の有無
(判決要旨)
 借家法第一条の二にいわる「正当の事由」とは、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照し妥当と認むべき理由をいい、賃貸人が自ら使用することを必要とする一事により、直ちに「正当の事由」ありとはいえない。
(判決理由抜粋)
 「借家法第1条の2にいわゆる「正当の事由」とは,賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し,社会通念に照し妥当と認むべき理由をいうのであって所論のように賃貸人が自ら使用することを必要とするとの一事を以て,直ちに右「正当の事由」に該当するものと解することのできないことは既に当裁判所判例の示すところである。」


○ 賃貸中の建物を自己使用の目的で買い受けた場合と解約申入れの正当事由の判断
 6 最高裁三小判昭和30.6.7民集9巻7号865頁,判例解説民事編昭和30年度74
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 賃貸中の建物を自己使用の目的で買受けた者が解約できるのは,必ずしも建物買受後,事情の変動を生じた場合に限るものではなく,新所有者の解約申入に正当事由があるかどうかは,右買受の前後の事情一切を参酌し,賃借人側の居住の安定と新所有者の自己使用の必要との双方の利害を比較衡量して判断すべきである。
(判決理由抜粋)
 「借家法1条は,建物賃借人の地位の安定を図る目的で,賃借権が元来単なる債権関係であるため賃貸借契約の当事者間にのみ効力を有するにすぎないのを,法律の規定によってその効力を拡張し,その権利の目的物たる建物につき物権を取得した第三者に対しても効力を生ぜしめたものである。それ故,賃貸中の建物を買い受けて所有権を新たに取得した第三者は,借家法1条の規定があることによって初めて法律上当然に従来の賃貸借関係を承継して賃貸人となるのであるから,同条は賃貸中の建物を買受けてその所有権を取得した者である以上,自己使用の目的を有したと否とを問わず,すべての建物の新所有者に適用ある規定であって,所論のように借家権侵奪目的の家屋買受人のみに備えるための規定ではない。そしてまた,借家法1条の2は,正当の事由ある場合に限り建物の賃貸人が解約権を有することを規定しているのであるから,同条により解約権を行使するには,建物の賃貸人たることと,正当事由の存することとの2要件が備われば足りるのである。そして,賃貸中の建物を自己使用の目的で買受けて所有権を取得した者であっても,借家法1条によって賃貸人となることには変りはないのであるから,同法1条の2の「賃貸人」中には,かかる者をも含むものと解すべきである。ただ,問題となるのは,右のような賃貸人には,如何なる場合に解約申入の正当事由が存するかであるが,かかる場合における正当事由の存否は,旧賃貸人の下において従前に発生した事由に限局するとか,或は新賃貸人の下において新たに発生した自己使用の必要事情のみとかに,形式的に制限すべきではなく,賃貸借承継の前後を問わず,あらゆる事情を参酌して,結局において賃借人側の居住の安定と,賃貸人となった者の側の自己使用の必要との双方の利害関係を実質的に比較考量した上,解約を正当と認むべき事由が存するかどうかを判断しなければならないのである。」


○ 代りの家屋の賃貸および引渡の提供を条件と定めて家屋明渡を命ずる判決の適否
 7 最高裁一小判昭和32.3.28民集11巻3号551頁,判例解説民事篇昭和32年度81頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 甲家屋の賃貸人が代りの乙家屋を提供してした解約申入が正当事由を具え,右申入により賃貸借が終了したとの事実に基き,賃貸人の家屋明渡の請求を認容する判決の主文において,賃貸人が乙家屋の賃貸および引渡の提供をすることを条件と定めて賃借人に甲家屋の明渡を命じても,違法ではない。


○ 借家法第1条の2の「正当ノ事由」があるとされた事例
 8 最高裁三小判昭和36.11.7民集15竄P0号2425頁,判例解説民事篇昭和36年度395頁,判例解説民事篇昭和35年度172頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 家屋の賃貸人が歯科医師で明渡を求めている家屋以外に家屋を所有せず,現在使用している住宅及び診療所の明渡を求められている等(原判決理由参照)の事情がある場合には,賃借人が約20年前から賃貸人所有の右家屋を賃借し,メッセンジャー業を営みながら,10名を越える親族とともに,極めて貧しい生活を続けている等(原判決理由参照)の事情があるときでも,賃貸人のした解約の申入については,借家法第1条の2にいう「正当ノ事由」がある。


○ 正当事由の有無の判断には,当事者双方の事情を斟酌することを要する。
 9 最高裁大判昭和37.6.6民集16巻7号1265頁 ,判例解説民事篇昭和37年度215頁
(最高裁HP該当判例)
(判決理由抜粋)
 「土地所有者が更新を拒絶するために必要とされる正当の事由ないしその事由の正当性を判断するには,単に土地所有者側の事情ばかりでなく,借地権者側の事情をも参酌することを要し,たとえば,土地所有者が自ら土地を使用することを必要とする場合においても,土地の使用を継続することにつき借地権者側がもつ必要性をも参酌した上,土地所有者の更新拒絶の主張の正当性を判定しなければならないものと解するのを相当とする。」


○ 正当事由の判断時期
(1) 建物の賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟の維持と解約申入の意思表示
(2) 賃貸借の解約申入に基づく建物の明渡請求訴訟の係属中に正当の事由が具備されるに至った場合と当該賃貸借の終了
10 最高裁一小判昭和41.11.10民集20巻9号1712頁 ,判例解説民事篇昭和41年度486頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
1 建物の賃貸人が賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟を継続維持しているときは,解約申入の意思表示が黙示的・継続的にされているものと解すべきである。
2 建物の賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟において,右解約申入当時に正当事由が存在しなくても,右訴訟の係属中に事情が変更して正当事由が具備されるに至った場合には,その時から6箇月の期間の経過により,該賃貸借は終了するものと解すべきである。
(判決理由抜粋)
 「建物の賃貸借契約の解約申入に基づく該建物の明渡請求訴訟において,右解約申入をした当時には正当事由が存在しなくとも,賃貸人において右訴訟を継続維持している間に事情が変更して正当事由が具備した場合には,解約申入の意思表示が黙示的・継続的にされているものと解することができるから,右訴訟係属中正当事由が具備するに至った時から6箇月の期間の経過により該賃貸借契約は終了するものと解するのが相当であり,このような場合に,所論のように,正当事由が存在するに至った後に,口頭弁論期日において弁論をなしまたは期日外においてとくに別個の解約申入の意思表示をなすこと等を,必ずしも必要とするものではない。」


○ 建物の朽廃した場合と建物賃貸借の終了の有無
11 最高裁三小判昭和32.12.3民集11巻13号2018頁,判例解説民事篇昭和32年度262頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 建物が朽廃してその効用を失ったときは,その建物の賃貸借は当然終了するものと解すべきである。


○ 建物が未だ朽廃に達していないと判断された事例
12 最高裁二小判昭和33.10.17民集12巻14号3124頁,判例解説民事篇昭和33年度275頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「木造建物が,その柱,桁,屋根の小屋組などの要部に多少の腐食箇所がみられても,これらの部分の構造にもとづく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存立し,内部への出入に危険を感じさせることもないなど原審認定の状況(原判決理由参照)にあるときは,右建物は未だ借地法第17条第1項但書にいう朽廃の程度に達しないものと解すべきである。」
(判決理由抜粋)
 「所論は本件建物が未だ朽廃の程度に達しないとの原判決の認定を種々非難するが,原判決は証拠に基づき諸般の状況を認定し,とくに「本件建物は,木造建物部分の骨格部分ともいうべき柱,桁,屋根の小屋組等の一部に多少の腐蝕箇所のあることが認められるけれども,とにかくこれら部分の構造にもとずく自らの力によって屋根を支えて独立に地上に存立しているものであり,もとより内部への人の出入に危険を感ぜしめるようなものではないことが認められる」と認定し,そして「本件建物は未だ建物としての社会的経済的効用を失う程度にはいたらないものであり,借地法第17条第1項但書にいう朽廃の程度には達しないものというべきである」と判示しているのであってその判断は正当である。所論はこれと異なる前提にたって原判決を非難するに帰し,採用できない。」


○ 朽廃時期の迫った賃貸家屋に対する大修繕の必要と借家法第1条ノ2にいわゆる正当事由
13 最高裁三小判昭和35.4.26民集14竄U号1091頁,判例解説民事篇昭和35年度172頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 賃貸家屋の朽廃の時期が迫った場合,これを大修繕するために賃貸借を終了させる必要があり,その必要が賃借人の利益と比べてこれにまさるときは,解約申入につき借家法第1条ノ2にいわゆる正当の事由があると解すべきである。
(判決理由抜粋)
 「賃貸家屋の破損腐朽の程度が甚しく朽廃の時期の迫れる場合,賃貸人たる家屋の所有者は,その家屋の効用が全く尽き果てるに先立ち,大修繕,改築等により,できる限りその効用期間の延長をはかることも亦,もとより所有者としてなし得る所であり,そのため家屋の自然朽廃による賃貸借の終了以前に,意思表示によりこれを終了せしめる必要があり,その必要が賃借人の有する利益に比較衡量してもこれにまさる場合には,その必要を以つて家屋賃貸借解約申入の正当事由となし得るものと解すべきを相当とするのであって,かかる場合にまで常に無制限に賃貸借の存続を前提とする賃貸人の修繕義務を肯定して賃借人の利益のみを一方的に保護しなければならないものではない。」


○ 建物が火災により滅失して建物賃貸借契約が終了したと認められた事例
14 最高裁一小判昭和42.6.22民集21巻6号1468頁,判例解説民事篇昭和42年度300頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 賃借建物が,火災により,2階部分は屋根および北側土壁がほとんど全部焼け落ち,柱,天井の梁,軒桁等は半焼ないし燻焼し,階下部分は北側土壁の大半が破傷したほかはおおむね被害を免れているが,罹災のままの状態では風雨をしのぐべくもなく,倒壊の危険さえもあり,完全修復には多額の費用を要し,建物全部を取り壊して新築する方が経済的である等判示事実関係のもとにおいては,該建物は火災により全体として効用を失い,滅失し,建物賃貸借契約は終了したと解するのが相当である。


○ 建物の朽廃による建物の賃貸借契約の終了が認められないとされた事例
15 最高裁二小判昭和43.12.20民集22巻13号3033頁,判例解説民事篇昭和43年度(下)1372頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 建物の土台の一部が低下し,柱の一部も土台との接合部において腐蝕し,このため建物が傾斜している場合であっても,土台を固着し,柱の腐蝕部分は切り取って継ぎ足し,これを土台に定着させる等通常の補修を加えれば,倒壊の危険を免れ,なお相当期間建物の効用を果たすことができるときは,建物の朽廃によりその賃貸借契約が終了したと認めることはできない。


○ 移転料の提供により借家法第1条ノ2にいわゆる正当の事由を具備したと認め引換給付の判決をしても違法ではないとされた事例
16 最高裁二小判昭和38.3.1民集17巻2号390頁 ,判例解説民事篇昭和38年度92頁
(最高裁HP該当判例)
(判決理由抜粋)
 「家屋賃貸人において借財返済のため賃貸家屋を高価に売却する必要があるが,他方賃借人が理髪業者であって他に適当な移転先がない等原判決認定のような事情がある場合において,賃貸人が移転料を支払うという申出と同時に解約の申入れをし,かつ移転料と引換えに明渡を求める申立をしたときは,それをもって正当事由を具備したと判断し,移転料と引換えに明渡を命ずる判決をしても違法ではない。」


○ 立退料の支払と引換えに家屋の明渡を求めたときは,借家法1条の2の「正当事由」の判断として斟酌されるとした事例
17 最高裁一小判昭和46.6.17裁判集民事103.135 ,判例時報645号75頁
(判決理由抜粋)
 「借家法1条の2にいう正当の事由とは,賃貸借当事者双方の利害関係,その他諸般の事情を綜合考慮し,社会通念に照らし妥当と認むべき理由をいうのであって,賃貸人が解約申入に際し,賃貸人の家屋明渡により被る移転費用その他の損失を補償するため,いわゆる立退料等の名目による金員を提供すべき旨申し出で,右金員の支払と引換えに家屋を明け渡すことを求めたときは,そのことも,正当事由の有無を判断するにつき,当然斟酌されるべきである。その場合,右金員の提供は,それのみで正当事由の根拠となるものではなく,他の諸般の事情と綜合考慮され,相互に補完し合って正当事由の判断の基礎となるものであるから,解約の申入れが金員の提供を伴うことによりはじめて正当事由を有することになるものと判断されるときでも,右金員が,明渡によって借家人の被るべき損失の全部を補償するに足りるものでなければならない理由はないし,また,右金員がいかなる使途に供され,いかにして損失を補償しうるかを具体的に説示しえなければならないものでもない。」


○ 借家法1条の2に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟において当事者の明示の申立額をこえる立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することを相当と認めた事例
18 最高裁一小判昭和46.11.25民集25巻8号1343頁 ,判例解説民事篇昭和46年度537頁
(最高裁HP該当判例)
(判決理由抜粋)
 「借家法1条の2に基づく解約を理由として家屋の明渡を求める訴訟において,その正当事由として,右家屋が京都市屈指の繁華街にある店舗でありながら老朽化して建替えを要する等原審認定のような諸事情(原判決理由参照)があるほか,家主がその補強条件として300万円もしくはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する額の立退料を支払う旨の意思を表明し,これと引換えに家屋の明渡を求めている場合には,500万円の立退料の支払と引換えに右明渡請求を認容することは相当である。」


○ 建物の賃貸人が解約申入後に提供又は増額を申し出た立退料等の金員を参酌して当該解約申入れの正当事由を判断することの可否
19 最高裁二小判平成3.3.22民集45巻3号293頁 ,判例解説民事篇平成3年度112頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「建物の賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申し出,又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても,右の提供又は増額に係る金員を参酌して当該解約申入れの正当事由を判断することができる。」
(判決理由抜粋)
 「建物の賃貸人が解約の申入れをした場合において,その申入時に借家法1条ノ2に規定する正当事由が存するときは,申入後6か月を経過することにより当該建物の賃貸借契約は終了するところ,賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申し出た場合又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても,右の提供又は増額に係る金員を参酌して当初の解約申入れの正当事由を判断することができると解するのが相当である。けだし,立退料等の金員は,解約申入時における賃貸人及び賃借人双方の事情を比較衡量した結果,建物の明渡しに伴う利害得失を調整するために支払われるものである上,賃貸人は,解約の申入れをするに当たって,無条件に明渡しを求め得るものと考えている場合も少なくないこと,右金員の提供を申し出る場合にも,その額を具体的に判断して申し出ることも困難であること,裁判所が相当とする額の金員の支払により正当事由が具備されるならばこれを提供する用意がある旨の申出も認められていること,立退料等の金員として相当な額が具体的に判明するのは建物明渡請求訴訟の審理を通じてであること,さらに,右金員によって建物の明渡しに伴う賃貸人及び賃借人双方の利害得失が実際に調整されるのは,賃貸人が右金員の提供を申し出た時ではなく,建物の明渡しと引換えに賃借人が右金員の支払を受ける時であることにかんがみれば,解約申入後にされた立退料等の金員の提供又は増額の申出であっても,これを当初の解約の申入れの正当事由を判断するに当たって参酌するのが合理的であるからである。」


○ 都心に立地する老朽化した木造2階建建物1階部分店舗賃貸借につき,建替えなどを理由とする解約の申入れが4000万円の立退料の提供により正当事由が具備するものと認められた事例
20 東京高裁判平成10.9.30判例時報1677号71頁
(判決理由抜粋)
 「本件建物の所在する場所は麻布十番のメインストリートに面し,平成11年ころには近くに二つの地下鉄駅も新設される予定で,商業地域,容積率500パーセントで,周囲には中高層のビルが少なからず建築され,土地の再開発,高度利用が徐々に進んでいるところ,本件建物は昭和21年建築(昭和34年改築)の2階建て建物で,いますぐに朽廃するわけではないとしても老朽化はかなり進行し,賃借部分の1階については控訴人が平成5年2月に施した天井の補強工事などにより営業に支障はないとしても2階は現状のままでは不陸傾斜により生活に適しない状態となっていて,社会経済的な観点からは建物敷地の有効利用が図られているものとはいえない。したがって,今後相当額の費用をかけて本件建物の延命を図るよりは建物の建替えを行って高層化し,自己所有建物で家族らとの居住と営業を実現したいとの被控訴人の希望も社会経済的な見地からは首肯されるというべきであり,被控訴人において本件建物部分明渡しによって控訴人に生ずる不利益をある程度填補することができれば,被控訴人の解約申入れは正当事由を備えるに至ると解するのが相当である。(略)
 本件建物部分の明渡しによる控訴人の不利益は,単に借家権の喪失に止まらず,今後他に新規の店舗を確保しても固定客の喪失等による営業上の損失が大きく,営業不振ないし営業廃止の危険性があること,代替店舗確保に要する費用,移転費用等が多額に及ぶことなどの諸点を勘案すれば,被控訴人の解約申入れの正当事由を具備するための立退料としては少なくとも金4000万円の提供を要するものと認めるのが相当である。」


○ 借地法4条1項所定の正当事由を補完する立退料等の提供ないし増額の申出の時期
21 最高裁三小判平成6.10.25民集48巻7号1303頁 ,判例解説民事篇平成6年度521頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 借地法4条1項所定の正当事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は,事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては,原則としてこれを考慮することができる。


○ 賃貸借契約の当事者の一方に著しい不信行為があった場合の解除と催告の要否
22 最高裁3小判昭和31.6.26民集10巻6号730頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 賃貸借の継続中,当事者の一方に,その義務に違反し信頼関係を裏切って,賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあった場合には,相手方は民法第541条所定の催告を要せず賃貸借を将来に向つて解除することがえきるものと解すべきである。


○ 催告後相当期間の経過後にした解除の効力
23 最高裁1小判昭和31.12.6民集10巻12号1527頁,判例解説民事篇昭和31年度218頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 債務者が履行の催告に応じない場合,債権者が催告の時から相当期間を経過した後にした解除の意思表示は,催告期間が相当であったかどうかにかかわりなく,有効である。


○ 賃料の受領拒絶があった場合とその後の賃料についての弁済提供の要否
24 最高裁1小判昭和32.9.12民集11巻9号1510頁,判例解説民事篇昭和32年度185頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 賃貸人が一たん賃料の受領を拒絶した場合であっても,特段の事情のないかぎり,賃借人は,その後支払うべき賃料につき弁済の提供をしない以上債務不履行の責を免れない。


○ 賃料不払を理由とする家屋賃貸借の解除と催告
25 最高裁3小判昭和35.6.28民集14巻8号1547頁,判例解説民事篇昭和35年度245頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 家屋の賃貸借において,賃借人が,11ヶ月分の賃料を支払わず,また,それ以前においても屡々賃料の支払を遅滞したことがあっても,賃貸借を解除するには,他に特段の事情がない限り,民法第541条所定の催告を必要とする。


○ 賃料不払を理由とする家屋賃貸借契約の解除が信義則に反し許されないものとされた事例
26 最高裁3小判昭和39.7.28民集18巻6号1220頁,判例解説民事篇昭和39年度229頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 家屋の賃貸借において,催告期間内に延滞賃料が弁済されなかった場合であっても,当該催告金額9600円のうち4800円はすでに適法に弁済供託がされており,その残額は,統制額超過部分を除けば,3000円程度にすぎなかったのみならず,賃借人は過去18年間にわたり当該家屋を賃借居住し,右催告に至るまで,右延滞を除き,賃料を延滞したことがなく,その間,台風で右家屋が破損した際に賃借人の修繕要求にもかかわらず賃貸人側で修繕しなかったため,賃借人において2万9000円を支出して屋根のふきかえをしたが,右修繕費については本訴提起に至るまでその償還を求めたことがなかった等判示の事情があるときは,右賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除は信義則に反し許されないものと解すべきである。


○ 借地契約における増改築禁止の特約と解除権行使の拒否
○ 前項の特約がある場合において建物の増改築を理由とする解除権行使の効果が生じないとされた事例
27 最高裁1小判昭和41.4.21民集20巻4号720頁,判例解説民事篇昭和41年度150頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 1 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に,賃借人が賃貸人の承諾をえないで借地内の建物の増改築をするときは,賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにかかわらず,賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において,増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは,賃貸人は,前記特約に基づき,解除権を行使することは許されないものというべきである。
 2 前記の特約がある場合において,借地人がその居住用建物の一部の根太などを取りかえ,2階部分を拡張してアパート用居室として他人に賃貸するように改造されたが,住宅用普通建物として前後同一であるなど判示事実(判決理由参照)のもとでは,賃貸人が右特約に基づいてした解除権の行使は,その効力を生じないと認めるのが相当である。


○ 建物の賃借人が差押を受けまたは破産宣告の申立を受けたときは賃貸人はただちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約の効力
28 最高裁1小判昭和43.11.21民集22巻12号2726頁,判例解説民事篇昭和43年度(下)872頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「建物の賃借人が差押を受け,または破産宣告の申立を受けたときは,賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は,賃貸人の解約を制限する借家法第1条ノ2の規定の趣旨に反し,賃借人に不利なものであるから同法6条により無効と解すべきであるとした原審の判断は正当であって,原判決には何ら所論の違法はなく,論旨は理由がない。」


○ 家屋賃貸借契約において1箇月分の賃料の遅滞を理由に無催告解除を許容した特約条項の効力
29 最高裁1小判昭和43.11.21民集22巻12号2741頁,判例解説民事篇昭和43年度(下)1216頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「家屋賃貸借契約において,一般に,賃借人が賃料を1箇月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は,賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば,賃料が約定の期日に支払われず,これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には,無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。したがって,原判示の特約条項は,右説示のごとき趣旨において無催告解除を認めたものと解すべきであり,この限度においてその効力を肯定すべきものである。」(5箇月分の賃料を遅滞した本件では,他に特段の事情の認められないかぎり,右特約に基づき無催告で解除権を行使することも不合理であるとは認められないとして,本件解除の効果を認めた原審判断を支持した。)


○ 賃借人が賃料の支払を1か月でも怠ったときは建物賃貸借契約は当然解除となる旨の訴訟上の和解条項に基づく契約の当然解除が認められないとされた事例
30 最高裁2小判昭和51.12.17民集30巻11号1036頁,判例解説民事篇昭和51年度442頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 「訴訟上の和解によって,建物の賃借人が賃料の支払を1か月分でも怠ったときは賃貸借契約は当然解除となる旨の定めがされた場合においても,賃料の延滞が1か月分であり,賃借人は,和解成立後賃貸人から賃料の受領を拒絶されるまで,約2年間右1か月分を除いては毎月の賃料を期日に支払っており,右延滞もなんらかの手違いによるものであって賃借人がその当時これに気づいていなかったなど判示の事情があり,賃貸借当事者間の信頼関係が賃貸借契約の当然解除を相当とする程度にまで破壊されたといえないときは,右和解条項に基づき賃貸借契約が当然に解除されたものとは認められない。」


○ 造作買取代金債権は建物に関して生じた債権か。
31 最高裁1小判昭和29.1.14民集8巻1号16頁,判例解説民事篇昭和29年度4頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 造作買取代金債権は,造作に関して生じた債権で,建物に関して生じた債権ではない。


○ 借家法第5条にいわゆる造作の意義
32 最高裁1小判昭和29.3.11民集8巻3号672頁,判例解説民事篇昭和29年度47頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 借家法第5条にいわゆる造作とは,建物に附加せられた物件で,賃借人の所有に属し,かつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい,賃借人がその建物を特殊の目的に使用するため,特に附加した設備の如きを含まないと解すべきである。(原審は本件建物が浅草にあり,結局店舗として使用せられるべき構造を有するものと認め,店舗の入口ガラス張大戸,陳列棚一式,カウンター戸棚付等を造作と認めて買取請求を認容し,酒場戸棚,酒場台,天井設備の扇風機,照明角燈,洋式及び支d式の照明器具等を造作と認めなかったが,最高裁は,原審の判断を正当とした。)


○ 造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係−留置権又は同時履行抗弁権の成否
33 最高裁1小判昭和29.7.22民集8巻7号1425頁,判例解説民事篇昭和29年度114頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 借家法第5条により造作の買取を請求した家屋の賃借人は,その代金の不払を理由として右家屋を留置し,または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。


○ 債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第5条適用の有無
34 最高裁2小判昭和31.4.6民集10巻4号356頁,判例解説民事篇昭和31年度49頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 借家法五条は,賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため賃貸借が解除されたごとき場合には,その適用がないものと解すべきである。


○ 借家法第5条にいう造作にあたらない事例
35 最高裁3小判昭和33.10.14民集12巻14号3078頁,判例解説民事篇昭和33年度268頁
(最高裁HP該当判例)
(判決要旨)
 外国人が日本式家屋の賃借にあたり監督官の許可を受けるため付加した設備で,建物の規模や一般日本人の生活の様式程度から考え,右建物用の設備として客観的に利便をもたらすものと認められないものは,借家法第5条にいう造作にあたらない(被上告人は駐留軍人で,買取請求の物件には「台所の瓦斯設備,配電設備,水洗便所(腰掛式)及びシャワー設備」等が含まれている。)




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