現代型ショッカー考

ショッカー(SHOCKER)・・・Sacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm
劇場版「仮面ライダー the First」パンフレットにある一文。いわゆるダブルミーニングというやつでしょうか。訳は載っていなかったのですが、あえて略すなら「全体進化に関する神聖同盟」とでもいえばいいのでしょか。Hegemonyは同盟というよりも、覇権と訳した方がいいので、人類進化に関しての神聖なる権力そのものという意味合いを指しているととるべきか。これは、おそらくは映画用に考えられた用語でしょうが、ライダーワールドにおけるショッカーの「傲慢さ」をうまく表現していると思います。
では、具体的にショッカーとはいかなる組織なのか。
パンフレットにある一文をまたまた紹介すると
誰にも知られることなく、人間社会を裏から支配しようとする秘密結社。目的のためなら手段を選ぶことなく、政治家であろうが、大企業であろうが、構わず抹殺する。組織の全貌は一切不明だが、世界中にネットワークを持つ組織である。改造人間を作り出せることから、一般に知られているものより、高いレベルの技術を有していると思われる。とある孤島に改造人間の実験基地を設けている。
ということになります。ちなみに昭和の初代ライダーでは「世界征服を企む悪の秘密結社」となっています。上記文節の「裏から支配」というのが、いかにも現代的ですね。映画版では、ショッカーに不利な法案を通そうと尽力する(正確にはそうだと思われる)石橋蓮司演じる議員が、改造人間スパイダーに暗殺されております。で、それが大掛かりな事件となって警察が動いている様子がないのも、ショッカーが裏の世界で強大な権力を構築しつつあるという意味なのでしょう。

さて、現代において「悪の秘密結社」とはいかなる存在なのでしょう?
まず、組織というものを構成する要素を考えてみましょう。
一般的に、組織論、企業論における3要素
  1. ヒト
  2. もの
殆どの経営学のテキストには、こう書いてあるはずです。かのドラッガー先生だって、そう仰います。
では、ひとつひとつ整理を。

ヒト

言うまでもなく、「人材」ですね。この場合の人材とは、ショッカーの場合、まず経営者(大首領)、役員(幹部)、マネージャー(怪人)、現業社員(戦闘員)という構成がまず考えられます・・・この例え、問題ありますか、問題ありますか?・・・あっても、気にしないでください・・・
ショッカーの場合、典型的なトップダウン人事の組織でしょうから、そのピラミッドは徹底していることでしょう。
ただし、戦闘及び戦闘力に絞って考れば、このような単純な縦割りの構図が浮かびますが、それだけでは組織は動きません。特にショッカーの場合、現状の一般社会に出回っているのとは桁違いのテクノロジーを有しています。それを維持、発展させていこうと思えば、科学者、技術者の確保は必須事項。
ですから、ショッカーにとって必要な人材とは下記のような人材ではないと。
  1. 強力なカリスマ性
  2. 強靭な肉体、高い戦闘能力
  3. 高い知能
このうち、を備えた人間は、改造人間、戦闘員に。を備えた者は科学者グループ。或いはを兼ね備えた者は大幹部への道を歩むことになるのではないでしょうか。
で、実に妄想チックですが、ショッカーが人事募集をかけると次のようになるのでは?
求む!!幹部候補生
年齢条件 特に指定なし。健康状態良好なるを望むが、そうでない場合でも改造手術による体質改善を考慮します。
学歴 不問。しかし、有名大学理科系(特に医療系)出身者優遇します。
勤務時間 不特定、ドーピング併用の残業あります。
勤務地 世界中。但し、地下或いは孤島といった環境下での勤務も考えられます。
福利厚生 なし。但し、偽札、偽パスポート、偽造クレジットカードなど支給いたしますので、余暇の過ごし方はご自由に。
主要取引先 ダミー企業、大学の研究室、先端企業の研究施設、某大物代議士事務所などとひっそりとお付き合いしています。
※野心、征服欲など旺盛な方、執念深い方、ご応募お待ちしております。
こんな感じ^^;

カネ

さて、問題はこれです。表向き社会に溶け込む必要上からも、「お金」は必要です。偽造で通すという手もありますが、現代のショッカーは、社会を「裏から支配」している組織です。大量の偽造通貨は、経済市場を崩壊させるだけ。表社会を悪戯に破壊するのは、ショッカーの目的とするところではありません。
では、いかなる手段で資金を確保するか?
考えられる手段としては・・・

1、裏社会を支配する。

いきなりヤバイねたですが、こちらのリンクをご覧ください。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/s53/s530200.html
昭和53年の警察白書です。特筆すべきは、この時ですら、裏社会に流れたとされる資金は検挙されただけでも、193億円!!
現代では、この額、増えこそすれ、減っているとは考えにくい。実体総額でいえば、十分ショッカーを維持することが可能な金額が算出できるのではないかと思います。
しかし、この方法。違う意味でリアルすぎるのでやめましょう(^^ゞ

2、テロ等非合法手段での資金確保

の手段と同じように思われますが、こちらは別組織の名を使い、正面から政府なり、企業なりから資金をかすめとる方法です。但し、この方法だと、これこれこういう事件が・・・と事件そのものが表ざたになる恐れがあり、「裏から支配する」つまり人知れず・・・という部分の矛盾が生じます。

3、表向きの集金システムを作り上げる。

どういうことかというと、表向き経済活動を行う組織を作り上げ、一般社会から得た正当な資金の一部をこっそりショッカーに回すという方法です。
考えられる組織形態としては
  • 政府・・・そのものズバリですな。これだと国家機密費などの扱いで、各セクションから資金を調達できます。余談ですが、石森版原作ライダーでは、ショッカーの正体は「日本政府」となっているといわれているようですが、正確には違います。あくまでも「日本政府が過去作成したプログラム」をショッカーが引き継いでいるのです。
  • 企業・・・問題はかなりの巨大企業でなければ難しいということ。その意味では「555」のスマートブレインなんか、うまいところを狙ったという感じです。また、単一の企業でなく、「赤い牙」のTARONや「009」の黒い幽霊団のような複数の企業体連合という方法もあります。ライダーでは、Xに出てくるGODがこれに近いか。
  • その他団体・・・はっきりいいましょう。「宗教法人」です。その表向きの活動が合法的かつ正当なものであれば、誰も手を出しにくいし、資金面でもこの日本では税法上優遇されているので、資金配分も融通が利く。この手法、ゆうきまさみが「バーディ」で使ってますね。でも、これもシャレにならないのでやめましょう(^^ゞ
  • 組織横断型ネットワーク・・・政府機関、民間企業、報道機関、各種研究機関の中に「組織内結社」を作り、有力者同士が連携をとってその組織内結社の連合組織を作り上げるという方法はどうでしょう。怪しさとしては、これが一番私好み(笑)ただ機密保持の点で問題はあるかもしれませんね。
書いているうちに変な汗が出てきました・・・

ヒトとカネに関して書いているうちに思ったのですが、カモフラージュの方法を色々とるにせよ、それが人類社会を「裏から支配」する構造をとる為には、それなりの歴史が必要ではないかとふと思いました・・・ええ、いま思いつきました(笑)
とすると、起源をいつにするか。
確か、昭和TV版のショッカーでは「ナチスの人体実験での云々」というくだりがあったように思いましたが・・・これは日独友好に傷がつくので止めましょう^^; それに、これだと出発点はせいぜい近代ということに落ち着きます。
ここはゴルゴム(BLACK)方式をとりますか。
つまり、人類発祥と軌を同じにして発達した組織であると・・・
ちなみに、バダン方式だと人類発祥以前までさかのぼることになります。
また、表向きの企業或いは企業連合体という設定を使うなら、中世でも可能ではないかと思います、「十字軍」「薔薇の騎士」あたりを絡めると、オカルトファンの人にも喜ばれます(何のこっちゃ)

モノ

ここは、物質的なことだけでなく、技術面に行きましょう。
実際、今の世の中「カネ」の面が解決すれば、よほどの希少物資でない限り、大抵のものは入手できますから。
ショッカーの特色のひとつは、改造人間に代表される現代ではあり得ないオーバーテクノロジーです。
彼らはいかにしてこのような技術を手にしたのか。
考えられるのは
  1. 異星人
    まぁありがちな・・・・
    これなら、ほとんどすべての事象が説明可能ですな。あまり面白くないのでここは短く・・・
  2. 超古代文明
    ゴルゴムが代表例。アマゾンの十面鬼やZXのバダンもこれに含まれるか。デルザー軍団もこれに入れていいかも。
  3. 現状のテクノロジーこそがウソ
    人類の文明は、実はもっと発達していて、ショッカーがテクノロジーの発達そのものをコントロールしているという見方。TARON方式ですね。この見方は、個人的には一番面白いと思いますが、ここまで来るとすでに「支配しようとしている」ではなくて、「すでに支配してしまっている」状態ですな。
  4. 全く別系統のテクノロジー
    1の異星人テクノロジーと似た感じになりますが、パラレルワールド、異次元など根本的に人類のものとは異なる科学体系が、その技術の根っこにあるという考え方ですね。Black RXの「クライシス帝国」がそれにあたりますね。
  5. 未来のテクノロジー
    ライダーではおそらくこの設定はないと思うのですが、これなら現代では不可能な数々のオーバーテクノロジーを説明できます。未来人からの干渉というのは、いかにもSF的で009なんかでは使われた設定ではあります。ヒーローものではないのですが、松本零士さんの「ミライザーバン」など、記憶だけ未来から手に入れたオーバーテクノロジーという設定が光りました。
よくよく考えるに、このあたりの設定は過去のSFから拾うことが可能なんですね。ショッカーの場合、2と3の合わせ技が一番その性格として似合うのではないかと思います。

で、ここまでの部分で、私の妄想を整理すると・・・
  • ショッカーの起源は、古代〜中世という近世以前の時代に遡る。
  • 表向きの活動母体を有する。巨大大企業若しくはその連合体。
  • テクノロジーは、現代科学のそれを大きく凌駕する。
  • 政治経済だけでなく、科学技術を含めて、現代社会を裏から支配している。
私の妄想ショッカーは、「世界征服を企む悪の秘密結社」ではなく、「既に世界征服を果たしてしまっている秘密結社」ということになりますね。
それが例え「裏側から」であろうと、世界を支配しているということは、もはや政府と同じ。果たして、そんな組織とライダーが戦う必要があるのでしょうか。

例え世界を裏から支配している組織であっても、対象の国が「法治国家」「近代国家」である以上、表向きの手続きはとらなくてはいけません。その意味ではショッカーとて、(遠まわしながらも)法に縛られた存在であります。
もしも、法規を超えた何かを為そうというのなら、それは非合法、イリーガルな活動になります。逆に言えば、支配者側からすると自らが定めた法を逸脱するためにショッカーという組織が必要とも言えますね。この点、現実にある組織とつなげて深く考えると、また変な汗が出るので突っ込まないように(笑)

ショッカーの行うイリーガルな面での活動においてこそ、改造人間の出番があるのではないかと思います。そして、その犠牲になるのが、現実の戦争や政争と同じく、無辜の市民、弱い立場の人々になるのでしょう。

さて、ここでライダーの出番です。
劇場映画「仮面ライダー the First」にて本郷猛は言います。
「(ショッカーとは)美しいものを踏みにじるやつら」
「俺はただ美しいものを守りたいだけだ。」
「(美しいものとは)命です。」

このあたりの台詞にこそ、ライダーが戦う理由があるのだと思います。
世界を覆う大きな力、その力が小さな何かを踏みにじろうとする時、ライダーは敢然と戦う・・・現代において、絶対正義の存在は難しい。しかし、これなら・・・というのも私の妄想でしょうが・・・
改造人間の素体にしても、ショッカーが拉致しなくても、意外と成り手はいるのではないかと思います。世を儚んでいる者、世に恨みを持つ者、人を超えた権力を望む者・・・人間の欲望の合わせ鏡こそが、悪の秘密結社だと思いますから。

(つけたし)

某所、某人物より、ショッカーがさらってきた人をアジトの建設などでこき使っているのはなぜか?あのテクノロジーなら、専用の重機などを使えばいいのでは?第一、それが原因で秘密が漏れるのは?という突込みがありました。
この点に関しては、いかに技術が発達しようと、細かい部分、最終的な工程においては、人間の手が必要なのではないか、と思います。また、拉致してきても、使えそうな人材はさっさと改造してしまうので、残った人材を労働に使役していると。
あまりに大量に行方不明者を出すと、表の社会に多大な影響を及ぼすので、さらってきた人間は用が済めば記憶操作を行って解放・・・というのが全体のシナリオとか。

そして、その記憶操作が解けても、異星人によるアブダクションという模造記憶が解放されて、全体の記憶はカモフラージュされる・・・つまり、異星人によるアブダクションは、ショッカーによって作り出された「模造記憶」だったんだよ!!(某MMR調)

ていうか、最後はディックかよ!!
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