Chapter:2−3 大好きな友達


「ルフィーナちゃん、まだ明かり点かないのかい?」
「うん…普通のランプは壊れてるみたい」

 6人は、ルフィーナの家に着いた。しかし、ランプが壊れていて、部屋の中は真っ暗だ。暗闇の中、サンドラの声が聞こえる。

「しょうがないねぇ…『火のマナよ、我が指先に集え…マナ・トーチ!』」

 サンドラは、自らの指先に魔法の炎を宿した。ようやく、部屋の中が見える様になった。部屋の中には5人…何故かアルフの姿は無かった。

「あれ?そういえば、アルフは?」

 クレイアが心配そうに全員に尋ねた。他の4人も顔を見合わせた。どこかではぐれてしまったのだろうか?

「私、探してくる」

 クレイアは立ち上がると、家の外に向かった。


 アルフは、ルフィーナの家のすぐ傍にいた。ルフィーナの家はウィバースの中でも小高い所にある。そのため、付近は階段状になっている。
 アルフは、その段差に座り、うつむいていた。

(…僕の事、みんなどう思っているのだろう?)

 考えれば考えるほど、思考は悪い方向へと向かっていく。

(もしかしたら、僕は初めから友達だなんて思われていなかったのかも…)
「アルフ」

 思考の渦に飲み込まれていたアルフは、クレイアの一言で現実に引き戻された。クレイアは心配そうに傍らでアルフを見ている。

「どうしたの?ウィバースは夜になると急に冷え込むから、家の中にいた方がいいわよ」
「クレイア…でも、僕は…」

 アルフはそれ以上何も言えなかった。クレイアはアルフの隣に座り、アルフの手の上に自分の手を重ねた。
 アルフは、一瞬体を強ばらせたが、ゆっくりとクレイアの方を見つめなおした。正確には、クレイアの紫色の瞳を。

「ねぇ、アルフ。瞳の色って、そんなに重要な事かしら?」



「もし、瞳の色が違うから友達になれないのなら、私たちは出会う事は無かったはずよ。だって、私は水精族よ。虹精族じゃないわ。でも、こうして友達になれた。アルフは、それがちょっと大げさになっただけよ」
「それはそうだけど…」

 クレイアの性格は、アルフもよく知っている。その優しい声を聞いていると、心の奥底のわだかまりが消えていく気がする。
 ちょうどそのころ、家の中からルフィーナが出てきた。

「クレイア、アルフは見つかった?」
「見つかったも何も、ずっとここにいたみたいよ、どうしたの?」
「これなんだけど…アルフ、使い方分かる?」

 アルフは、ルフィーナに言われて彼女が手に持っていた「モノ」を受け取った、それは台座の上に大きな水晶が置かれた様な物だった。

「水晶ランプ…?」

 それは、「水晶ランプ」といって、水晶を利用して作られた魔法的なランプだ。光や虹の精霊術が使えないと使用は難しいが、燃料が必要なく、水晶が壊れない限りは半永久的に使える。
 しかし、ルフィーナから渡されたそれは、長い事使われてなかったのか随分とホコリを被っている。
 アルフは水晶ランプのホコリを吹き飛ばし、手をかざすと意識を集中した。しばらくして水晶ランプから柔らかい光があふれてきた。

「これで、今晩中は持つと思うよ」
「ありがとう、アルフ」

 ルフィーナは、クレイアとは反対のアルフの隣に座った。アルフは少し、気まずさを隠せずにいられなかったが、クレイアは先ほどの話を続けた。

「これは私は小さい頃に聞いた話なんだけどね、自分の事を『友達』って思ってくれている人は、自分の事が大好きなんだって」

 クレイアは、アルフの手を少し強く握ると、話を続けた。

「私はアルフの事、大好きよ。ルフィーナちゃんはどう?」
「うん!私もアルフの事好きよ」

 ルフィーナはクレイアの話に同感だったかのように、大きく頷きながらそう言うと、アルフに抱きついた。アルフは少し動揺と隠せず、あたふたとしている。
 ちょうどその時に、ルフィーナの家の明かりが突如消えた。サンドラの集中が途切れたのだろう。明かりが消えると同時に、ヴォルティスの叫びと共につまずき転ぶ音が響いた。

 外にいる3人は顔を見合わせると、アルフの膝の上に置かれた水晶ランプに視線を落とした。

「…戻ろっか?」

 アルフの提案に他の2人は安心したように頷き、ルフィーナの家に戻った。



 6人は、これからどうするか話し合っている。ジェルナの占いの内容は、考えれば考えるほど分からなくなっていく。

「他に何か手がかりは無いのでしょうか?」

 シェイディルは、全員に問いかけたが、他に当たるふしはない。そんな中、ヴォルティスが何か思いついたようだ。

「あそこなら、何かあるかもしれないな…」
「『あそこ』ってどこなんだい?」
「本当は行きたくないけどな…」

 ヴォルティスは肩をすくめると、その場所を話した。

「ラバハキア。ラバハキア図書館」

 ひとまずは、次の行き先が決まったようだ。



Chapter:2−3 終わり


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