Go Ahead氷帝学園中等部男子テニス部。次期部長は鳳長太郎で決まりだろうともっぱらの噂だ。 だけど本人は渋り顔。 「──俺、あんま向いてないんすよねぇ」 人のいない部室の壁によりかかって、しゃがみ込んでぼんやりどこかを見ている。同じように隣りに腰を下ろし、宍戸は怪訝そうな顔を後輩に向けた。 「なんでだよ。学級委員やってんだろ?」 いつだったか、たまたまのぞいた教室で、教壇に立って話し合いを進める長太郎の姿はなかなか見惚れるものがあった。 「それはジャンケンで負けたから……」 「ああ、おめー激ヨワだもんな。グーしか出さねぇの」 思い出して宍戸は息だけで笑った。 一説には、正義漢や熱血漢、頑固者はグーを出すことが多いという。 「けっこう向いてんじゃねぇの?」 「ダメなんすよね。部長って、皆のことちゃんと見てないとでしょう。俺、何かひとつのことに夢中になると周り見えなくなっちゃうから……」 「……そうか?」 こくり頷いて、何やら思案顔のその横顔は、また少し大人っぽくなったように、宍戸には思えた。 「──ああ、でも来年は宍戸さんいないから大丈夫かな」 「んだよソレ」 「宍戸さんいたら、俺、宍戸さんのことばっか見ちゃいますよ」 照れたように、長太郎は笑った。 「俺、宍戸さんのこと贔屓しないでいられる自信がないです」 「──────────バカ」 「はい」 「返事すんなよ」 「はい」 嬉しそうに微笑まれて、宍戸はふいと顔を背けた。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。 「宍戸さん」 一回り以上大きいからだが、宍戸を抱き寄せ背中を包んだ。 「宍戸さん、一年間、待っててくださいね。また一緒にダブルスしましょう」 「……ああ」 頷くと、抱き締める腕が強くなる。暑いから放せといつもなら言うところだが、今はそれを言う気にはなれなかった。 「俺、がんばりますね。跡部部長にも負けない立派な部長になります」 「あ〜……変なトコまで見習うなよ?」 氷帝学園中等部、男子テニス部部長・跡部景吾。──あらゆる意味で“帝王”と呼ばれる男だ。 「ああ、じゃあ青学の手塚部長を見習った方が良いですか?」 「いやそれもどうだよ……」 足して2で割れ、とは、なぜか言うのが躊躇われる。 「二人ともすごいですよね。テニスの実力はもちろん、大勢いる部員をちゃんとまとめて、公私のけじめもついてるし」 跡部が公私のけじめをつけられているかどうかは甚だ疑問だ、宍戸は思ったが賢明な判断で口を噤んだ。 それよりも。 「手塚“も”……?」 けじめがどうこうとは。 「え? ──あれ、手塚さんって不二周助と“そう”なんじゃないんですか?」 ──余談だが、氷帝テニス部員の多くには、跡部の影響により青学のNo.2・不二周助をフルネームで呼ぶ癖がついている。ルドルフにいる弟の方は、自然、不二裕太と呼ばれることになる。 「そ、そうだったのか……っ?」 あの男。あんな顔をしておいて。──跡部や忍足とかわんねぇんじゃん、宍戸は思わず友人達に対してあまりにも失礼な感想を抱いた。 「俺がそう思ってるだけで、違うかも知れませんけど」 そんな気がする、程度で口にできることでもしていいことでもない。長太郎が言うならそうなのだろうと宍戸は思った。 しかし。 あの手塚国光も、恋人と二人の時には表情を和らげたりするのだろうか。 思わずしっぽを振って駆け寄ってくる長太郎のように全開の笑みを浮かべた手塚を想像して、宍戸は血の引く思いを経験した。 無理矢理気を取り直し、今度は手塚のように仏頂面……もとい、冷静かつ真剣な表情でコートを見つめる長太郎の姿を想像する。 「宍戸さん? ──なんで赤くなってんスか?」 「──いや、なんでもねぇ……」 思い描いた勇姿に見とれたとは、とても言えたものじゃない。 「宍戸さん……?」 背後から宍戸を抱きしめたまま、長太郎が宍戸の顔を覗き込もうとしているのがわかった。見られる前に、腕を振りほどいて立ち上がる。 「いいかげん放せっ! 暑いだろ!!」 「ああ……」 ひどく残念そうに、長太郎が呟いた。 「長太郎、お前な、けじめがどうとか言うならまず! そのいちいちひっついてくるクセどうにかしろよ!」 「いいじゃないですか、ダブルスのパートナーなんだから、公認のラブラブで……」 「そーゆうモンダイじゃねぇっ!」 ダブルスの認識が間違っている奴らが多すぎる。宍戸はひとり地動説を唱える先人の気分だ。 「っつーかラブラブ言うな!」 「ラブラブですよ。──宍戸さん、大好きです」 「……っ!」 真っ赤になって言葉を失う宍戸を見上げて微笑んで、長太郎がふと表情を改めた。 「宍戸さん。見ててください。俺、行きますから。──必ず」 「ったりめえだ。負けたら承知しねぇぞ」 「はい」 強い意志を秘めた瞳が笑みに包まれる。良い部長になるだろうな、宍戸は思った。 fin. |
こめんと(byひろな) 2002.7.14 お待たせしました!! チョウシドです!!!! やったー!\(^o^)/ やりましたよ宍戸さん! ──────私、どうしてもこの子(チョタ坊)がどっかの風の守護聖様に見えて仕方がないんですが(激汗)。アハハン♪(何) そんなわけで(?)基本は「俺、あなたのためにがんばります!!(握り拳)」デス。 ああ、可愛いよ長太郎……! 攻め萌の女・相川ひろな、チョウシドにおける愛の割合は、長太郎:宍戸=7:3。宍戸さんFANの皆さん、ごめんなさい!(^^;) でも違うの、宍戸さんに愛がないんじゃなくて、長太郎への愛がありすぎるのよ……!! 宍戸さんは総受けで(をい)、でもチョタオンリーの方向で。長太郎は総攻めで、けど宍戸さんオンリーユー!!(ビシィッ! \(-゛-;)違) ……とか言いつつ鳳不二ってどう?o(^o^)o とか思っている自分がいる…………(激汗)。なんだかすっげぇフェニックスな感じだわ(笑)。 それにしても鳳宍の裏カプで塚不二を引っ張り出してくるヤツはそうはおるまい……(^^;)。ほかにもイロイロと。ええ、イロイロと(笑)。塚不二が出てきた時点で自動的にアレが加わり、他にもダブルス云々のところでアレとかアレとか……(あれ? タカフジは?(笑))。──蛇足ですが、うちの景吾様は世間に逆らい(?)総攻めでふ。そりゃもう傍若無人な帝王で!(爆笑) 以上、周りのイロモノカップル(ズ。←複数形)に比べたら、ずいぶんと愛らしく小さな恋のメロディーな感じの鳳宍でした(笑)。 ──宍戸さん、そんなにそんなに長太郎のことが好きなのね……(長太郎は言わずもがな)。 |