focus



   the focus ── 焦点、注目・関心の中心





「ねえ、センパイ」
 後ろ姿は、いつもと変わりない。
 声をかけられ、不二周助はいつも通りの笑顔で振り返った。
「? なに、越前君」
 首を傾げると、色の薄い髪がさらりと耳元で揺れる。同じ色の瞳は、白い瞼に隠されて見えない。
「あんた、何考えてんすか」
「何考えてるって……? いつ、今?」
「──いつも。センパイて何考えてんのかわかんないすよね」
「そうかな。別に、みんなとそんな変わらないと思うよ。授業の進みのこととか、部活のこととか、──今は、君のこととか」
「オレのこと?」
「君って面白いなあと思って」
「センパイ、オレに興味あります?」
「うん、そうだね」
「もっと知りたい?」
「うん……越前君?」
 歩み寄ったリョーマに淡い色の瞳が警戒の色を帯びる。
 閉ざされた空間。ふたりきり。
「じゃあ、──」
 手を伸ばしてあまり変わらない太さの腕を掴んで引き倒す。ふいをつかれてよろけた不二の身体を、リョーマは壁際に追いつめて肩を押さえた。尻餅をつく形で座りこんだ不二が鋭い眼差しをリョーマに向ける。
「どういうつもり」
「オレのこと、知りたいんでしょ」
「──こういうやり方は感心しないな」
「イヤなら逃げれば。あんたのほうが力はあると思うけど」
「イヤなわけじゃない。──いいよ、君なら」
 言って目を閉じる。肩に触れていたリョーマの手が離れ、しばらくして不二はそっと目を開いた。
「越前君?」
「何考えてんすか。…………誰のこと考えてんの」
「──君のことだよ」
 視線が絡み合う。とてもじゃないが『愛しい人』を見る眼じゃない。リョーマは思った。──自分も人のことは言えないけれど。
 『愛おしい』という言葉から連想するようなあたたかなものを、リョーマはおよそ、目の前のこの先輩に対して感じたことがない。あるとすれば、むしろ逆に、そのあたたかさを破壊するような、灼けつくような衝動だ。
 対する不二の瞳は静かに冷めている。
「君が僕に対してどんな想いを抱いているのかはわからないけど、たぶん僕は、君が思っているより、君のことを知りたいと思っているよ」
「オレの……何を知りたいって」
「君の衝動」
 短く返された言葉に、リョーマは肩を揺らした。
「君のその目が、何を見ているのか。僕の中に……何を求めているのか」
「そう言うあんたは」
「わからない? 僕が何を見ているのか」
 口を噤んだリョーマに、不二はかすかに表情を和らげた。間違えてしまいそうになる。この人の、この外見に惑わされてはいけないことはわかっている。
「君なら即答すると思っていたんだけど。案外謙虚なのかな」
「オレは、そんな自惚れ強くない」
「自惚れていいのに。──今の僕の関心は、すべて君に寄せられていると言っても過言じゃない」
「ふぅん……そうなんだ」
「そうだよ。君しか見てない」
「──ウソツキ」
 不意に身を包んだ衝動に突き動かされるまま、白い細い首を押さえて唇を塞いだ。息を継ごうと動くその抵抗を封じ込めてしまいたい。
 激しく噎せる身体を放り出して、リョーマは立ち上がった。背を丸めた身体は、見下ろすとより小さく見える。
「ねぇ、センパイ」
 見上げた淡い色の瞳の端に滲む涙が劣情を煽る。
「──あんた、何考えてんの」
 問いは自分に返る。
 何を考えているかなんて。──もうずっと、たったひとつのことしか考えてない。
 馬鹿みたいに。たったひとつ。
 不二周助は静かに笑った。勝利を確信した笑みのように、リョーマには見えた。
「君と同じことだよ。──って言ったら、信じてもらえるかな」
「信じて欲しいならそれなりのコトしたら?」
「僕なりの努力はしているつもりなんだけど、まだ足りないんだ……?」
 そう言う眼差しは、やはり静かに冷めている。
 無言で見下ろすリョーマに、不二は小さく息をついた。
「難儀な性格だよね。君も。──僕も」
 密かな笑みを浮かべたまま天を仰ぐ。晒された白い首すじに、引き寄せられるまま牙を立てた。







the focus ── 焦点、注目・関心の中心、病巣







こめんと(byひろな)     2002.11.15

…………(無言)。
なんなんでしょう、この寒いヒトタチわ。
って、書いてるの私ですが(^^;)。白々しく寒々しいリョ不二。愛情・思慕と言うよりはもっと衝動、そして焦燥。
これも恋愛というのなら攻撃的な愛。──嫌ですね、私はそんなの(なら書くなよ・苦笑)。
リョ桜のリョーマくんは意外とシャイボーイ(笑)で格好良くかわいくですが、リョ不二のリョーマサマは、かなり容赦ない感じでございます。不二様も遠慮しないしね。そして自分が相手に惹かれているのと同じく、相手が自分に惹かれていると信じて疑わない二人…………。

なんかこの二人、リョ不二より不二リョの方がシアワセになれるような気がしてきたよ(気のせい)。
ていうか。
うちの攻めリョが(ってうちのリョーマはもともと攻めですが〜。でも菊リョ(笑)。リョ菊も好きだけどねん♪)サイテイ過ぎるのがイケナイんですね……(反省)。

次の更新は反動のように(?)可愛らしいタカフジで!!





テニスTOP    Parody Parlor    CONTENTS    TOP

感想、リクエストetc.はコンテンツ欄のメルフォからお願いします