おひさまおひさまみたいだ。大石は思った。 『太陽』と言うよりも『おひさま』と言った方がよく似合う。 「何かいいことでもあったのか?」 「ううん〜、にゃんでもにゃ〜い」 そう言いながら、おひさまは、ぽかぽかと幸せオーラをまき散らしている。 試合中の、こわいくらいに真剣な表情もいいけれど、こんな時の英二は本当に幸せそうで、見ているだけで頬がゆるんできてしまう。 いや、これなら見なくてもわかるかもしれない。 「不二と何を話したんだ?」 「ん? フジ? いつ??」 同じクラスの不二と英二は、部活もあるし、朝から晩までずっと一緒だ。寂しくないと言ったら嘘になるが、英二の様子を想像するのも楽しいからそれはそれでいい。 「こないだ不二がずいぶん朝早く来たことがあったんだ。どうしたのかと思ったら、英二のどこが好きかって聞かれて焦ったよ。──英二だろう?」 「ああ……ソレか」 「うん、それ」 「ソレねぇ……」 うう〜んと呻って英二が眉間にしわを寄せた。しっかりした眉が少したれ気味になって、いかにも困った顔になる。かわいい。 見つめていると、ちらりこちらを見た英二と目が合った。視線は感じていただろうに、英二はなぜか目を瞠った。ふっと目をそらしたかと思うと今度は突然上体を前に倒す。驚く大石の前で、ごつ、と鈍い音が英二の額とテーブルの間に挟まれた。 「え、英二?」 さすがに驚いて声をかけるとテーブルを伝って呻り声が返ってくる。 「う゛うぅ……、なんで大石ってばそんなにカッコイイかなぁ……」 「──────え?」 拗ねたような英二の声はよく聞こえていたけれど、何を言われたのかよくわからずに、思わず問い返してしまっていた。 「だ〜からぁ〜〜っ。────エージくんは今、おーいしのカッコ良さにやられてノックダウンのくらくら中なの!!」 がばっと身を起こしたと思ったとたんに早口でまくし立てられる。あっけに取られていると、人の部屋のクッションを勝手にひとつ強奪した英二が赤くした目元をのぞかせてこちらを睨んでいた。 「ええと……」 反応に困るとはこういうことを言うのだろう。笑っては悪い気もするし、今さら照れるのも何か違う気もする。もちろん照れくさいけれど、英二相手に恥ずかしがっていては身が持たない。何せ相手は天然で大石を喜ばせることばかりする、生きたびっくり箱なのだ。 びっくり箱か。 自分の発想に自分で呆れて、大石は笑い出していた。 驚いた英二がとたんに拗ねた顔になる。 「なっ……! なんだよ笑うコトないだろぉっ!?」 「ご、ごめん、……ちがうんだ英二」 「なにが!」 「いや……。────英二ってかわいいなと思ってさ」 「…………っっ!」 大きな猫目をこれ以上ないくらいに見開いて、英二は真っ赤になって硬直している。触ったら熱そうだなどと考えながら、大石は膝立ちで英二の隣に回り込んだ。 「英二」 呼びかけて顔をのぞき込む大石を避けるように、英二が顔を伏せようとする。肩を掴んで阻み、大石は元気よく跳ねた髪の先に唇を寄せた。 「英二、キスしていいか?」 「にゃ……っ」 「──いや?」 ふるふると頭を振る動きに合わせて日焼けして赤くなった髪も揺れる。 「じゃあ顔あげて。これじゃキスできないよ」 「う゛……っ」 数秒後、意を決して顔を上げた英二は、目の縁も頬も、耳まで真っ赤になっていた。 抱きしめた身体は熱いくらいで、おひさまみたいだ、思いながら触れた唇は、干し立ての布団のにおいがした。 fin. |
こめんと(byひろな) 2003.8.11 大石さんてばアレですよね、なにげにアレだよね……(ドレ)。 ひさしぶりのテニプリ更新、しかもちょー久しぶりの大菊です。オフラインで出した『君が好き』という塚不二話の、裏話(?)、大菊バージョン。 実は書いたのはすんごい前(一年近く前?(^^;))なんですが、……すっかりうっかり書いたのを忘れていまして、思い出したのが冬だったんで、夏になってからUPしよう〜と思っていたのでありました。 もしかすると最初で最後の大菊オンリ話かも? うちの塚不二のお話は、書いていなくても裏で必ず大菊なんですが、塚不二+菊、はあっても塚不二+大菊ってあんまし書いていませんねえ私。なんでだろ、やっぱ愛の差?(ぃゃ別に大石さんが嫌いなわけではなく(^^;)。他の三人がすんげぇ好きなわけで……) |