ラブリー「フ〜ジ♪」 言葉以上に弾んだ調子で、後ろから伸びた腕が小柄な身体を抱きしめる。 「なあに、英二?」 「スキスキ〜っ」 満面の笑顔。頬と頬が、ぴたっとくっついた。 「──にょ?」 襟首を掴んで引き離され、振り向いた英二の目に映ったのは不満も露わな恋人の顔。 「エージ先輩、あんた抱きつく相手が違うでしょ」 きょとんと目を丸くしたまま、さっきまで抱きついていた相手に視線を戻した。 「…………」 瞬きもせずに不二を見上げていたリョーマが、ふいと視線を逸らす。口の中で小さく呟いたその言葉は、誰の耳にも聞こえることはなかった。 fin.
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こめんと(byひろな) 2002.5.13 突如奏さんにさしあげた桃菊&リョ不二創作(とも呼べない長さ(^^;))。──あとになって気づいたけど、菊ちゃんの相手、桃って断定していませんねコレ(^^;)。でも桃です。 5月5日は奏さんのサイト【hevenly kiss】1周年記念だと聞いて、それはお祝いするべし!と。ちょうどいいネタが浮かんだこともあり。 というわけで、36キューティーズのダンナたちパターンBです。おとなげないダーリンズ(笑)。──ほら、コドモの日だからね☆(滅) どうやら私、ダブルカプにするなら攻め同士・受け同士も仲が良いっていうのが好きみたいです。桃ちんとリョーマも、仲良いしね。部長&副部長も。 このネタ、ホントは絵が描けたら4コマとか1ページ漫画にするトコなのですが、どうにも描けないもので……文字で書くとテンポが難しいです(-゛-;)。けっこう、こういう小ネタはちょろちょろ浮かぶのですが、どう考えても漫画向きだよなぁと思ってそのままお蔵入りになるものも多いのです。マルチョンマンガですら描けないのですよ。カッコ悪っ! さてさて。このお話にはおまけが付いていました。つーかおまけのほうが本編よりも長いんですが(苦笑)。その後の桃菊と、その後のリョ不二。ラブラブな36コンビにわかってはいても「むっか〜」な、おとなげないダーリン達が、どうやらそんなの百も承知でやってそうな恋人に文句を言います。はてさて、恋人の反応は?(笑) よかったら、併せてお楽しみ下さいv →→ おまけ おまけのおまけ |
<おまけ その後の桃菊> 「なんでそんなに仲がいいかなぁ……」 「ん?」 「不二先輩のことっスよ」 「だってフジだもん」 答えになってないとむくれる桃城の少し前を歩く英二は、弾んだ足取り、上機嫌だ。 「なに、桃、ヤキモチ?」 振り返り、覗き込む瞳は楽しそうに瞬いていて。 「そっスよ。悪いっスか?」 「ううん、嬉しい」 にひゃっと笑み崩れる姿もまた可愛いと思うあたり、自分は相当重症なんだと思う。 「エージ先輩、前見て歩かないとコケますよ」 「んなコトしないって……、っと」 言ってるそばから体勢を崩した英二に手を差し伸べる。腕を掴んで引き寄せて、そのまま胸の中に抱きしめた。 「──も、桃?」 目が離せない。一瞬の隙に、どこかに飛んでいってしまいそう。 小さく洩れた呻きに、知らず力を込めてしまっていたことに気づいて慌てて腕を解いた。 「あのさ、桃」 「なんスか」 「フジとはこうだけど、──桃とはこうだよ?」 ぴとっとくっついた頬はすぐに離れて、代わりに触れた、唇の感触。 驚いて身体を離すと、いたずらネコがにやりと笑った。 「じゃあね、おっ先〜!」 「ぅあっ!? ちょっと待ってくださいよエージ先輩〜っ!」 ダッシュで遠ざかる英二の背中を追いかけながら、桃城の頬には笑みが浮かんでいた。 fin.
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<おまけのおまけ その後のリョ不二> 「──なんで抵抗しないんスか」 「だって英二だもの」 即答。リョーマは小さく息をもらす。 「オレはダメなのに……?」 「うん」 また即答。しかもにっこり天使の微笑みつき。 「だって、もっとして欲しくなったら困るよね?」 「…………」 真顔になったリョーマが、ふと口元を歪ませた。手を伸ばし、衿元を掴んで引き寄せる。 色の薄い瞳が見開かれるのを見ながら、その唇に口づけた。至近距離で見上げた瞳はまだ驚いて瞠られたままで。 「オレのこと、欲しくなった?」 不二の瞳が苦笑に細められた。ため息が頬に触れる。 「君のことは、いつでも欲しいよ」 綺麗な微笑みに惹きつけられる。再び口づけようと寄せた顔は、しかし手のひらに遮られた。 「──学校だよ」 「いつでもいいって言ったじゃないッスか」 「いいなんて言ってないよ」 「誘ったのアンタでしょ」 「うん。でもダメ」 「なんで」 もっとして欲しくなったら困るでしょう? もう一度繰り返して、不二はすっと身体を離した。リョーマをおいて、歩き出す。 舌打ちしたリョーマの頬は、かすかに赤くなっていた。 fin.
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