Sleeping Beast
──written by 紫月sama@Cheshire Cat |
間もなく2学期の中間試験である。そのため部活が休みなのを幸いに宍戸と長太郎はふたり、宍戸の家で試験勉強をしていた。やっぱり効率が良いとは言い切れないのだが、ともかくふたりで一緒に居られればそれで良かった。硝子のテーブル越しに向かい合って、それぞれの試験勉強に精を出す。 6時間目が終ってから、ほとんど寄り道もせずに真っ直ぐ宍戸の家へ来たのだが、そろそろあたりは暗くなってきている。最初のうちは雑談を交わしながらやっていた勉強だが、次第にふたりとも口数が少なくなっていた。 宍戸は数学の試験範囲に該当する問題集に取り組んでいた。難易度が3種類ほどある問題の、最も難しい問題を漸くのことで解き終えて、解答と照らし合わせる。見事に合っていて嬉しくなった宍戸は、満面の笑みを浮かべながら顔をあげた。 「……長太郎?」 飛び込んできた光景に、宍戸は驚いた。向かいで熱心に英語の単語を書きながら覚えていたと思った長太郎は、いつのまにかノートに突っ伏して眠ってしまっていたからである。そういえば今日は朝から欠伸のし通しだった、などと思い出しながら、宍戸は長太郎を起こそうと試みる。 「おい、寝てんじゃねーよ。おら、起きろよ!」 しかし長太郎はピクリとも動かない。よほど眠いのだろうか。 宍戸は思案する。一応今日は泊まりのつもりで長太郎は来ている。だから明日の学校の用意もしてあれば、制服も脱いでハンガーにかけてあるから皺にもならない。だがここでこのまま寝ていられると、少々困る。というよりも、長太郎がこのままでは体勢的に辛いだろう。 「長太郎!こんなところで寝るなよ。…寝るなら俺のベッドで」 「ん……ん――」 漸く生返事が返った。しかし目を覚ましていないことは確実で。宍戸はあきれて、長太郎を揺さぶりに掛かった。ようやくぼーっと身体を起こした長太郎だが、目が半眼だ。ぼんやりと一瞬宍戸の方を見たかと思うと、コテンと今度はフローリングの床の上に転がってしまった。 宍戸は呆れた。机の上を見ると、広げられたノートの上にはよだれのしみまである。 まるで子供のようだった。いや…自分たちはもちろん子供なのだけれど。でもいつも自分に相対する長太郎は、もう少し大人びたイメージで。 「なんか、遙香みてえだな」 妹の名前を出してみる。7歳児と同じと言われては長太郎も嫌かもしれないが、宍戸の妹はよくリビングで眠ってしまって、宍戸が部屋のベッドまで抱いて運んでやることもしばしばだったのだ。しかし妹は幼いから良いが、長太郎は宍戸よりも体格が良いので、まさか抱きかかえて運ぶことなどできない。 「おーい、バカちょーたろ、起きろ!」 「…うー……や…眠……」 ぐずぐず言うだけで、目はもう開かれなかった。 はあああ、と溜息をこぼして宍戸は思案する。どうあっても長太郎は起きないつもりのようだ。仕方なくベッドから枕を引っ張り出してきて、長太郎の重い頭を抱えて持ち上げると、その下に差し込む。それから上掛けを一枚かけてやる。 「世話のかかるヤツ。……ってか、弟出来たって感じだな」 きっと長太郎が聞いたら怒るだろうけれど。 でもこんな風に眠っている姿は幼くて、かわいくて。いつもとは違う愛しさが胸に込み上げる。 ふと思いついて身をかがめ、頬に唇で触れてみた。普段宍戸からはキスをすることなどほとんど無く。長太郎は寝ているというのに、恥ずかしさに顔が赤くなる。 そんなことも知らずに、長太郎は眠りつづけている。 |
さらに引き続き、紫月さんのテニプリサイト【Cheshire Cat】の30000HIT記念フリーSS〜v ──マジ早っ……。 それにしてもタイトルから萌なお話です。だって、もう、眠るケモノですよ!?(笑) あ〜ん、ス・テ・キッv(ばかだ……) こういうね、片方が寝てる姿をもう一人が見守るっぽいのはとても好きなのです。──長太郎くんヨダレたらしてますが(笑)。この色気のなさがまたステキ(爆笑)。だってまだ中学生ですものね〜vv(萌萌) 宍戸サンが“お兄ちゃん”しててらぶりーです。 いいなあ、私もこんな可愛い恋人なら欲しいよ……(無理!)。 (2002.9.17 UP) |